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蜂黒須怪異談∞X∞
0024話「ドリームライター」
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「1」
ーー「黒須公園・蜂夕祭りーー
真夏の蝉時雨が耳を刺す黒須公園。
夏休み期間中だが、この公園には両校の生徒が大勢集まっていた。
今日は石山県独自の「蜂夕祭り」。野花高校と姉妹校・鐘技高校の締結8周年を記念し、合同での祭典が開かれていた。
生徒たちは草笹に願い事を書いた札を結びつける。
その中で、楓は一人の少女に呼びかけた。
「友紀」
呼ばれたのはアルビノの肌に黒い着物をまとった鐘技高校の友紀。
日差しを避けるため日傘を差しているが、思うように札を結べない。
楓はそっと日傘を持ち、友紀が札を結ぶのを手伝った。
「ありがとうだべ、楓」
「日差しは避けないと。誰かに任せればいいのに」
「いや、それは無理だべ。願い事は、自分で結ばなきゃ」
楓は微笑みながら訊ねる。
「で、願い事はなんて書いたの?」
友紀は顔を赤くし、必死に答える。
「そ、それは秘密だべ!」
「ふふ、さっきチラ見しちゃったけど…恋の…」
「うわああやめてくれべ!」
楓は笑いながら、「それと《アレ》は大丈夫かしら?」と問いかける。
友紀は頷き、「いつでも大丈夫だべ」と答えた。
全校生徒が願い事を結び終えると、両校の校長がサプライズ企画を提案する。
特待生の楓と友紀が、夏の怪異談を披露することになった。
楓&友紀「ぜひ、私たちの怪異談で、この夏場を乗り切ってくださいね」
生徒たちは拍手喝采。
強い日差しを避けるため、披露の舞台は黒須公民館に移された。
⸻
「2」
薬川誠、32歳。駆け出しの小説家であり、アルバイト掛け持ちの日々。
古いノートパソコンを使いながら、今日も作品を書き進める。
眠気が訪れ、電気を消して布団に潜る。
その夜、夢の中で机に向かい、一枚のお札を書いた。
「最新型ノートパソコンがほしい」
目を覚ますと、隣には本当に最新型ノートパソコンが置かれていた。
「これは…夢…なのか!?」
頬を思い切りつねると、痛みが現実を証明した。
それ以来、夢に願いを書けば現実に反映されることを悟る。
彼はこれを活用し、欲しい物を次々と手に入れていった。
⸻
「3」
やがて誠は豪邸に住み、金と女に囲まれる生活を送る。
ある夜、愛人がふとつぶやいた。
「ねー?誠、怪獣のおもちゃがほしいわ」
誠は微笑む。
「いいよ。欲しいものなら何でも手に入る」
その夜、夢の中で「怪獣が欲しい」と札を書き込む。
翌日、現実に巨大な怪獣が現れ、町は混乱。
誠たちは必死で避難する。
⸻
「4」
石山県の避難シェルター。
怪獣の轟音と破壊音が迫る中、誠たちは身を潜める。
愛人たちは口論し、混乱が増す。
誠は目を閉じ、夢の中で解決策を探る。
夢に願いを書けば現実に反映される。
目を開くと、部屋に戻っていた。夢と現実を操る感覚。
しかし、すぐに気づく。
夢で書いた願いしか叶わず、現実での願いは無力であることを。
そしてこの密閉された部屋――出入り口はなく、何もない空間――で、彼は近づく死をただ待つしかなかった。
⸻
「5」
怪異談披露を終えた夜、友紀は自室で布団に潜る。
夢の中で、蜂夕祭で願いを書いた人物が迫ってくる。
心臓が跳ね、頰を赤く染める友紀。
その時、部屋のドアが開き、彼――が現れる。
「ん?どうかしましたか、友紀?」
友紀は思わずその場に倒れ込み、気を失った。
⸻
「6」
夢に書かれた願いは現実に影響を及ぼす。
誠のように欲望を夢に投影すれば現実を操れるが、その代償は計り知れない。
友紀が見た夢も、無意識の願望が怪異となって現れたものだったのか。
誰の手にも、この「ドリームライター」の力は、使い方次第で恐怖にも幸福にも変わる。
願いを書き、手を伸ばす者――その結末は、まだ誰にも分からない。
ドリームライター 完
ーー「黒須公園・蜂夕祭りーー
真夏の蝉時雨が耳を刺す黒須公園。
夏休み期間中だが、この公園には両校の生徒が大勢集まっていた。
今日は石山県独自の「蜂夕祭り」。野花高校と姉妹校・鐘技高校の締結8周年を記念し、合同での祭典が開かれていた。
生徒たちは草笹に願い事を書いた札を結びつける。
その中で、楓は一人の少女に呼びかけた。
「友紀」
呼ばれたのはアルビノの肌に黒い着物をまとった鐘技高校の友紀。
日差しを避けるため日傘を差しているが、思うように札を結べない。
楓はそっと日傘を持ち、友紀が札を結ぶのを手伝った。
「ありがとうだべ、楓」
「日差しは避けないと。誰かに任せればいいのに」
「いや、それは無理だべ。願い事は、自分で結ばなきゃ」
楓は微笑みながら訊ねる。
「で、願い事はなんて書いたの?」
友紀は顔を赤くし、必死に答える。
「そ、それは秘密だべ!」
「ふふ、さっきチラ見しちゃったけど…恋の…」
「うわああやめてくれべ!」
楓は笑いながら、「それと《アレ》は大丈夫かしら?」と問いかける。
友紀は頷き、「いつでも大丈夫だべ」と答えた。
全校生徒が願い事を結び終えると、両校の校長がサプライズ企画を提案する。
特待生の楓と友紀が、夏の怪異談を披露することになった。
楓&友紀「ぜひ、私たちの怪異談で、この夏場を乗り切ってくださいね」
生徒たちは拍手喝采。
強い日差しを避けるため、披露の舞台は黒須公民館に移された。
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薬川誠、32歳。駆け出しの小説家であり、アルバイト掛け持ちの日々。
古いノートパソコンを使いながら、今日も作品を書き進める。
眠気が訪れ、電気を消して布団に潜る。
その夜、夢の中で机に向かい、一枚のお札を書いた。
「最新型ノートパソコンがほしい」
目を覚ますと、隣には本当に最新型ノートパソコンが置かれていた。
「これは…夢…なのか!?」
頬を思い切りつねると、痛みが現実を証明した。
それ以来、夢に願いを書けば現実に反映されることを悟る。
彼はこれを活用し、欲しい物を次々と手に入れていった。
⸻
「3」
やがて誠は豪邸に住み、金と女に囲まれる生活を送る。
ある夜、愛人がふとつぶやいた。
「ねー?誠、怪獣のおもちゃがほしいわ」
誠は微笑む。
「いいよ。欲しいものなら何でも手に入る」
その夜、夢の中で「怪獣が欲しい」と札を書き込む。
翌日、現実に巨大な怪獣が現れ、町は混乱。
誠たちは必死で避難する。
⸻
「4」
石山県の避難シェルター。
怪獣の轟音と破壊音が迫る中、誠たちは身を潜める。
愛人たちは口論し、混乱が増す。
誠は目を閉じ、夢の中で解決策を探る。
夢に願いを書けば現実に反映される。
目を開くと、部屋に戻っていた。夢と現実を操る感覚。
しかし、すぐに気づく。
夢で書いた願いしか叶わず、現実での願いは無力であることを。
そしてこの密閉された部屋――出入り口はなく、何もない空間――で、彼は近づく死をただ待つしかなかった。
⸻
「5」
怪異談披露を終えた夜、友紀は自室で布団に潜る。
夢の中で、蜂夕祭で願いを書いた人物が迫ってくる。
心臓が跳ね、頰を赤く染める友紀。
その時、部屋のドアが開き、彼――が現れる。
「ん?どうかしましたか、友紀?」
友紀は思わずその場に倒れ込み、気を失った。
⸻
「6」
夢に書かれた願いは現実に影響を及ぼす。
誠のように欲望を夢に投影すれば現実を操れるが、その代償は計り知れない。
友紀が見た夢も、無意識の願望が怪異となって現れたものだったのか。
誰の手にも、この「ドリームライター」の力は、使い方次第で恐怖にも幸福にも変わる。
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ドリームライター 完
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