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第4話 戸川くんとはじめてのデート③
しおりを挟む私が知っている、私が今まで見てきた戸川くんは――
スニーカーにデニム、それにパーカーを合わせるような極々普通の格好をしている。所謂ファストファッションだけど、私自身そんなにお洒落じゃ無いし戸川くんの格好について思う所は別に無かった。髪型もちょっとボサッとしてるけど何となく清潔感があるので気になる事もなかった。
それなのに今、自分の目の前にいる男の子はどうだ。
茶色の綺麗な編み上げブーツを履き細身の黒いパンツをロールアップして合わせてる。ベージュのふわっとした少し緩めのカットソーをインナーに着て上着には少し色落ち加工されたデニムのカバーオール。10月も半ばになり少し涼しくなって来た気候にピッタリの服装である。
そして、髪型。
普段はボサッとしてる髪型が少しだけカールしてクルクルした、緩くウェーブがかかった様な感じに整えられている。いつもは若干目にかかってる前髪もふわっとしているおかげでしっかりと顔全体が見える。えっ、こんなにパッチリしていたんだ?ってくらい目もクリッとしている。
「え?え?あれ?戸川くん、だよね?えっと……あ、うん戸川くんだ」
よく目を凝らして見ればいつもの戸川くんの面影?がある。
「ごめんね結構待たせちゃたかな?」
「ううん、そんなに待ってないよ!でも……普段とちょっと雰囲気が違うからびっくりしちゃった。髪型とか」
「あ、そかそか。普段は面倒くさいから特にセットはしないんだけど、元々少し癖っ毛でね。すこーし整髪料つけてくしゃくしゃっとするだけで何となくパーマをかけた感じになるんだよね」
と、髪の毛をクリクリつまみながら笑顔で話してくれる。
その笑顔がまた……可愛いやら格好良いやらで思わず顔を下に向けてしまう。
私は戸川くんの事を外見だけで好きにはなった訳では無い。優しい気遣いやちょっと不思議な所が気になってふと気がついたら好きになっていた。
確かに外見は地味だけどそれでも良いなと思って告白をした。だが今、目の前にいる戸川くんはどうみてもお洒落で格好良い、そしてそんな人が自分の彼氏だと思うと何とも言えないドキドキした気持ちでいっぱいになってしまう、と同時に自分の格好やら外見が急に気になってしまう。
(自分の中では出来る限りお洒落をして来たけど、はたして戸川くんと釣り合っているだろうか?いやいやその前に、こんな格好良い人と付き合って良いんだろうか私?)
そんな気持ちでモジモジしていると戸川くんが「じゃ、行こっか」と手をさっと差し出してくれる。差し出された手におずおずと自分の手を重ねる。そんな私の手を優しく握って戸川くんは優しく微笑んでくれた。
戸川くんと手を繋ぎながら街中を歩く。この前告白した後に家まで送ってくれた時も手を繋いで一緒に帰ったけどあの時は頭がボーっとして殆ど記憶に残っていない。今日はそんな事が無いようにするぞ!と心に決めてデートに臨んだけど、まさかまたこんなに緊張する事になるとは。
そんな緊張している私の気持ちを知ってか知らずか、戸川くんが色々話しかけてきてくれる。
「今日はありがとうね。ちょっと待たせちゃったみたいだけど大丈夫だった?」
「うん。そんなに待ってないから大丈夫。待ってる間も人間観察とかしてたらすぐに時間が経っちゃった。こんな朝からナンパ?みたいな事してる人がいてびっくりしたよ」
「まぁ色々な人がいるからねぇ。鈴音さんは大丈夫だった?ナンパ
「あはは。大丈夫だよ~、私なんかにナンパで声かける人なんていないよ。それに待ってる場所が交番の横だったし流石に変な人でも話しかけてこないよ」
と笑いながら答えた。
すると戸川くんは少し微笑んだ顔で
「そんな事無いよ~。鈴音さんは可愛いよ。でも待ち合わせ場所を交番の横にしておいて良かった。もし電車の事故か何かで僕が遅れても変な輩に絡まれる事は無いかななと思って。大切な彼女だし」
と照れる様な事を言う。
この人は本当に何でこんなドキドキする事をさらっと言えるのだろう、と思わず繋いでいた手がピクッとしてしまう。しかもそんなドキドキする事を言ってくれる戸川くんを見上げると普段と違う、格好良くてお洒落な男の子がそこにいる。それが自分の彼氏と来たもんだ。
あー、もうこれ絶対に緊張して手汗かくな。こんなの緊張するなって方が無理だよ!と心の中で呟きつつ、チラチラっと戸川くんの顔を見上げては軽くニヤけてしまうのだった。
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