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第5話 戸川くんとはじめてのデート④
しおりを挟む「今日は付き合ってくれてありがとう!凄い楽しかったよ!」
戸川くんは私の手をぎゅっと握りながら笑いかけてくれた。
戸川くんとはじめてのデート、ふと気がついたらあっという間に17時を回っていた。少しづつ日も落ちてきて辺りは薄っすらと暗くなってきている。
今日は本当に楽しかった。最初余りに緊張してしまいどうなる事かと思ったけど、お洒落な雑貨屋さんとか色々回っている内にすっかり緊張も解けて楽しむ事が出来た。途中のお昼ご飯や美味しいパンケーキのお店なんかは事前に戸川くんが予約してくれていたみたいで並ぶこと無くスムーズに入店する事が出来た。
食事を終わらせた後、お支払いをしようとしたら「あ、いいよいいよ。今日は僕が誘ったんだし奢らせて!」と言ってご馳走にまでなってしまった。
バイトとかやってるの?と聞いたら、ご実家がデザイン事務所を営んでいるらしくそのお手伝いを高校生の頃からやっているらしい。実際にデザインをするとかでは無く、取引相手にプレゼンする時の資料作りをしているとの事だった。
「相手が望んでいる事と相手に伝えたい事をある程度教えて貰えれば意外と作れちゃうんだよね」
そう笑って話していたけれど、高校生の頃からパソコンでプレゼン資料を作るとか……しかもご実家はデザイン事務所なのか。何となく戸川くんがお洒落な理由が分かった気がした。
そんなこんなで楽しい時間を過ごした私達は如月駅の近くにある公園に来ていた。私の地元にある公園なんかとは全然違い綺麗に整備されていて近くにはお洒落なカフェがいっぱいある。周りは私達同様、カップルばかりである。木陰に空いているベンチがあったので2人で仲良く座る。
「今日は本当に送っていかなくていいの?」
「うん。大丈夫。ありがとう!」
そう言って戸川くんの方を見て微笑む。
私と戸川くんの家は如月駅からだと丁度反対側の電車になる。流石に送って貰うのは申し訳ないので駅で解散でいいよと私から戸川くんに言ったのだ。
今日デートをしてみて戸川くんと付き合えて本当に良かったなと思った。優しいし気が利くし、そして全くの予想外、と言うか考えてもいなかったけど実はお洒落で凄く格好良いって事もわかった。ただ1つ、1つだけ気になる事があった。
――戸川くんは女性慣れしすぎている――
今までは不思議な人だなとしか思って来なかったけど、今日デートしてみて分かった。明らかに女性慣れしている。恋愛経験の無い自分だってそれ位は分かる。デートは全てエスコートして貰い、しかもそれが全て完璧である。お洒落なご飯屋さんもカフェも全く臆さず当たり前の様に入って行き、お会計も気がついたら終わっていた。
そう考えて見ると私が生理痛でダウンしていた時にさらっと痛み止めをくれたのも何となく納得がいった。
戸川くんは女性に詳しすぎる。
そんな事を考えていると今まで想像すらして来なかった思いがもやもやと心に湧き上がってくる。
戸川くんはどんな学生生活を送ってきたのだろうか……そして今まで彼女とかいた事があるのだろうか。失礼な話になるかもしれないけど今まで戸川くんに対して女の影、と言うか女性遍歴なんて全く考えた事が無かった。しかし今日デートをしてみて明らかに女性慣れしている事が分かった。でもこう言う時は何て聞けば良いんだろう。切り出し方が全く分からないぞ……
あれやこれやと考え込んで下を向いていると戸川くんが私の頭を優しくぽんぽんとしながら
「大丈夫?疲れちゃったかな?」
と微笑みながらじっと目を見て来た。
「ううん。大丈夫。戸川くんが普段と全然雰囲気が違うのでびっくりしたな~と思ってたところ」
「そかそか。んー普段はね、特にお洒落とかは別に良いかぁと思っていつも家着のままで大学に行っちゃうんだよね。良く親父とか兄貴にもちゃんとした服装で行けっていわれるんだけど」
「あ、戸川くんお兄さんいるんだ」
「そだね、兄貴が1人。男の2人兄弟なんだ。兄貴は親父の事務所に就職して働いているんだけど、デザインをする仕事だからか親父も兄貴も服装に煩いんだよなー。高校2年の終わり位まではまぁそれなりに気を使っていたんだけど、何か面倒くさくなっちゃってね。3年からはもう結構適当で」
と少し照れながら話す。
そかそか。高2まではお洒落してたんだ。だったらその時は彼女とかいたのかな。何でお洒落辞めちゃったのかな、と色々考えていると戸川くんが座っていたベンチからすっと立ち上がった。
「さっ、もうそろそろ帰らないと完全に暗くなっちゃうし行こっか」
と手を差し伸べてくれる。
聞きたい事は色々あるけれど、はじめてのデートだし……これから聞く機会はまたあるよねと思い今日はこのままで良いやと決め、戸川くんの手を握ってベンチから立つ。と、そのまま戸川くんがぐっと力を入れて私を引き寄せる。私は気がついたら戸川くんの胸の中にいた。
「今日はありがとうね。楽しみにしていた鈴音さんとのデートだったし久々に着飾ってみたんだ。凄い楽しかったよ」
と耳元で囁かれる。
公園に来た時、同じ様にお礼は言われた。けれど先程のお礼とは全く雰囲気が違う、艶っぽい声が耳元で優しく響いた。戸川くんの左腕は私の腰を柔らかく抱き、右手は優しく頭を撫でてくれる。はじめて告白した時も同じ様に抱きしめられたけど、今回は前回よりも密着度が高い。そして戸川くんの顔がすぐ近くにある。
そのまま戸川くんは私の頬に軽く触れる様にキスをした。そして首元にも優しく触れる様なキスをする。私は抱きしめられた瞬間に頭がボーっとなって全てを戸川くんに任せていた。頬にキスをされた時、心臓がドキンと跳ねた。そして首元にキスをされた時は……全身に電流が走った様に体がビクッとなった。
ふと戸川くんを上目遣いで見上げる。相変わらず優しい目で私を見ている。どうすれば良いか全く分からないけど自然と私は両方の目を静かに閉じる。戸川くんの唇が私の唇にそっと触れる。
優しく抱きしめられながら生まれてはじめて私は男の子とキスをした。
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