はじめて出来た地味彼氏の戸川くん、実はワケありの元遊び人だった?

わーくほりっく

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第15話 戸川くんとはじめての喧嘩①

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パシーン!!

 頬を叩いた大きな音が街中に響く。
戸川くんは驚いた顔をして私を見つめた。


「私はあなたの事を許さない」


 怒りに満ちた目でキッと睨み、私は強い口調で言った。
頬を叩いた手がジンジンしている。
 他人に暴力を振るった事は、今まで生きて来た中で一度も無い。
そもそも本気で喧嘩をした事が無い。
 そんな私が手を上げてしまうくらいに、私は怒っていた。
 
こんなにも他人の事が許せないと思ったのは生まれてはじめての事だった……






今からほんの30分程前まで、戸川くんと如月駅でのデートを私は楽しんでいた。
 
 
 この前の車でのドライブデート以来、私と戸川くんは今まで以上に仲良くお付き合いをしていた。
 戸川くんがしてくれる突然のキスとかにも慣れて(?)以前の様に顔を真赤にして下を向く事は少なくなったけど、やっぱり未だにちょっとは恥ずかしい。



「この靴、この色とそっちのブラウン、どっちが良いかなぁ」


戸川くんが私の顔を見る。


「うーん、どっちも似合ってるけどな。でも戸川くんがこの前履いていた靴がこっちのブラウンに似ている色だから……今回はちょっと冒険して今試し履きしているブルーにしてみるとか」


と私は提案してみる。


「うん、なるほど。そうだね確かに言われてみれば似てるかも。じゃ今履いているこっちの色にするね!」


そう言って店員さんに声をかける。



土曜の昼下がり、街はそこそこ混んでいた。

 今は戸川くんのお買い物のお付き合いである。
その後は私のお買い物にも付き合ってもらう予定だ。


 11月も下旬になり、大分気温は下がってきたけど陽気のせいかそこまで寒さを感じない。


「ありがとう。良いお買い物が出来たよ」


にっこりと戸川くんが笑う。


「良かった!でも格好良い靴だったね。凄く良く似合っていたよ!」


そう言うと戸川くんは少し照れたようにはにかんだ。


 この前の神社で戸川くんの告白を聞いてから、私は戸川くんに対する堅さみたいな物が無くなり、自然体で接する事が出来るようになっていた。
 デートも変に緊張する事が無くなり、カフェや洋服屋さんに入るのも手を繋いで臆する事無く入っていける。
 相変わらずデートは戸川くんの方から誘ってくれるけど、今度は私が誘ってみたいな……そう思えるくらい、私は戸川くんと自然なカップルになっていた。


「お店も大分回ったし、そろそろ休憩にしようか?今日はお買い物の時間が読めなかったのでカフェの予約をとってないのだけれども大丈夫?普通に並びになっちゃうけど」


「うん。全然大丈夫だよ。戸川くんとの並びだったら全然苦じゃないしね。待ってる時間もデートの時間だよ」


と、笑顔で答える。


 如月駅周辺には幾つもお洒落なカフェが点在しているけど、遊びに来る人も多いせいか通常どこも軽い並びが発生している。
 ただ、待っている時間もいっぱいお話出来るし、私にとってそれも楽しいデートの一部である。


「あ、この前行ったあそこのカフェ、意外と並びが少ないよ!」


そう言って私は店先で数人が並んでいるお店を指差す。


「あ、本当だ。あのくらいの並びだったら15分前後くらいで中に案内されそうだね。あそこにしようか?」


「うん。そうしちゃおう!」


そう言って手を繋ぎ、私達は列に並ぼうとカフェの前に歩いて行った。


 列に並ぶと店先で待機している店員さんが人数とテーブル席かソファーの希望があるか、焼き上がりに時間がかかるパンケーキを注文するか聞いてくる。
 戸川くんが対応していると、すぐに何人かの男性グループが私達の後に並ぶ。たまたま並びが少なかったとは言え、やはり人気店である。
 すぐに並びが増えてきそうで、タイミングが良かったなぁと思っていると、後ろに並んだグループの先頭に居た男性が戸川くんを見て驚いた顔をする。


そして小さい声でぽそっとつぶやいた。


「えっ!?怜?」


 丁度その時戸川くんが「鈴音さん、ソファーで良いよね。後パンケーキは1つで良いよねぇそんなにお腹へってないし」と振り向いた。そしてその男性と私越しに目が合う。


「……あつし、か?」


そう小さくつぶやいた。


その声を聞いて、グループの人達全員がこちらを見る。


「え?あれっ?怜!?」


 1人が少し大きな声を上げた。他の人達は黙ったままちょっと驚いた顔で戸川くんを見ている。


「よう、久しぶり」


また1人、別の人が戸川くんに声を掛ける。


戸川くんは珍しくばつが悪い顔をして黙っていた。


 私はそんな戸川くんを見た後、改めてグループの人達の顔を見る。
 ……思い出した。どこかで顔を見た事があると思った。うん。でも皆面影がある。
 みんなイケメンだね。


 そのグループ……恐らく戸川くんとずっと友達だった、あのデスクの上に飾られた写真に写っていたであろう人達に私は声を掛ける。


「あ、あの戸川くんのお友達ですよね。中学校時代からの」


戸川くんがちょっと驚いた様な顔で私を見る。


「あ、自己紹介が遅れました。私、戸川くんとお付き合いしている鈴音と申します」


そう言って軽く頭を下げる。


「戸川くんのお部屋で皆さんのお写真が飾られているのを見て、戸川くんに聞いたら中学校時代からの友達だよって教えてもらって」


「凄い格好いい人達だねってお話をしたんですけど、皆さんお代わり無い格好良さなのですぐに分かりました」


と笑顔で話しかけた。


 神社で聞いた話だと……戸川くんは余り望まない形でお友達と縁が切れた。
だったら、また縁を繋げば良い。


そして戸川くんに向かって話しかける。


「ね、戸川くん。もし良かったら皆さんと一緒にお茶しない?随分お久しぶりみたいだけどこれも何かの縁だし。私は全然大丈夫だよ!」


そう戸川くんに話しかける。


戸川くんは少し驚いた顔をして


「いや、でも鈴音さんに悪いし、それに……敦たちにも都合があるだろうし」


と言ってグループの方を見る。


 グループの先頭の男性……敦くんはそんな戸川くんの言葉を聞いて「ははっ」と笑い後ろを向いて他のメンバーに声を掛ける。


「はい。俺たち久しぶりに怜に会えました。ここで怜とお茶したい人ー!」


と言って手を挙げる。


後ろに居たグループの人達全員が


「はーい!お茶したいでーす!」


と笑って手を挙げる。


「じゃ、そう言う事で宜しくね彼女さん……鈴音さんだったかな?」


と笑いかける。


「はい鈴音ですっ」と言う私の声を聞いた後、敦くんは戸川くんに話しかけた。


「ほら、怜!店員さんに人数の変更を伝えて伝えて。そっちが2人でこっちが5人だから計7人な!」


その言葉を聞いた戸川くんは、はーっっと大きい溜息をついた後


「わーかったよ。つーか、なんつータイミングだよ全く。はい7人ね。大人数になるから時間かかるかも知れないけどのせいじゃないからな!」


今までに私が聞いた事がない口調でそう答えた。


でも私にはその口調が何故か少しだけ嬉しそうな感じに聞こえた。
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