とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎

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7話.レガフォー、集まる


 検索したい。お前を消す方法──ではなく、三方からの壁ドンを抜け出す方法。
 しゃがんで一条の長い足の間をくぐれないかと考えたが、距離が近過ぎて無理だ。しゃがんだ途端に膝がぶつかって、即バレるわ。
 なら、こいつらが話し終えるまでここから逃げ出せない、ってこと? 嫌だ、俺は早くコンビニの新商品買って帰りたいんだよ、誰か助けてくれ!

「ちっ、思わず頷いてしまったが、やっぱ無理だな。時雨の初めては俺様のもんだ。恋人なら、全てを俺様に捧げるのが当然だろう? あいつがどんな声で鳴き、体のどこを触れば悦ぶのか、その一部始終をこの目で見逃す訳にはいかねぇ」
「えーっ、一条さんだけ時雨さんを独り占めしようだなんてズルいっすよ! オレとしぃちゃんは、一回だけってお願いしてるのに」
「そうだよぉ。初めてのちゅうは貰ったんだからいいでしょ? ボクたち、あの子ブタちゃんと別れさせるの手伝ってあげるからさ~。そしたらめでたく時雨ちゃんは一条の恋人になって、その後はずーっと独り占め出来るんだよ。だからぁ、せめてボクたちに思い出くらいちょーだい?」
「……ま、仕方ねぇ。俺様は寛大だからな。初めては譲れねぇが、お前らになら、一回だけは許してやってもいいぜ。絶対に一回だけだからな?」

 一条が渋々承諾すると、ぶりっ子くんと爽やかワンコくんはニヤリと笑い、ぽそりと呟いた。

「その一回で時雨さんを堕としちゃば、こっちのもんっすよ。オレだけに夢中になるように、バッチリ躾けてあげちゃうんで」
「ボクのテクにかかれば時雨ちゃんもイチコロでしょ~。他の奴らじゃ物足りないって、自分からお尻を差し出しちゃうかもね。あ~、楽しみぃ」

 そんな彼らの恐ろしい企みが聞こえなかったのか、一条が「何か言ったか?」と問いかけたが、二人は笑顔で首を横に振る。なんで俺に聞こえて、同じく二人の真ん中に立っていたお前には聞こえなかったんだよ。おかしいだろ。

 もー。俺が心の中で嘆いている間に、こいつら最低なことを決めてやがるし。本人不在の中許可も得ず、勝手に体の貸し借りする話をすんなよ! 本当に時雨のことが好きなのか?
 自分が抱けば、相手が無条件で喜ぶと思ってるなら、考えを改めてくれ。マトモな人はそう思わないんだって!

 相棒として、なにより人として、彼らの蛮行を放っておく訳にはいかない。ここは一言忠告しておこうと、三人を睨み付けながら、話に割り込んだ。

「あの! どんなに好きでも、合意がなきゃダメに決まってますからね! 襲わないでくださいよ? やったら、即アウトで警察行き! 発覚次第、俺が通報してやりますから!!」
「うわ、声デカッ」
「え~? 犬に噛まれたと思って、許してよぉ」
「いや、だから、それで済むには大事すぎて無理ありますって! 不運だったね、で片付けられる程、軽い出来事じゃないんですから!」
「何必死になってんだよ。合意さえあれば良いんだろう?」
「ちゃんと話聞いてました? 無理矢理するのはダメなんですよ」
「ハッ。俺様と時雨は相思相愛なんだよ。問題などある訳ないだろうが」

 出たぞ、俺様くんの謎理論。残念ながら今の所はまだ一方通行だ。時雨も道を開ける気がないから、諦めろ。

「ん? そういえば……この急に叫んできた人、誰っすか?」

 漸く俺の存在に気付いた爽やかワンコくんが、アッシュブロンドの緩やかなパーマがかかった髪を揺らしながら俺を見下ろしてくる。

「時雨ちゃんの恋人なんだってさ~」
「ちげぇ。時雨に群がる、ただの虫ケラだ」
「ふーん。なんか間抜け顔してるっすね。なんで時雨さん、こんなの選んだんだろう」
「なんでだろうね~。でも、時雨ちゃんとはまだキスもセックスもしてないみたいだよぉ。手付かずの子ブタちゃんだけど、サンちゃん的にどう?」
「いや、全っ然興味湧かないっすけど。頼まれても嫌っすねー」

 じろじろと無遠慮に観察された挙げ句、興味ないとばっさり断言された。ぶりっ子くん曰く処女厨らしいが、初めてなら別に誰でもいい訳じゃないらしい。くそっ、俺だって嫌だ。頼まれても男とセックスなんかしたくないよ。

 なんだかこいつらと関わってみると、今までハブられてて良かったと思うわ。俺の学園生活、平和だったもん。ほんと、奴らの好みの範囲に入ってなくて良かったぜ!


「貴方たち。こんな人目につかない場所で集まって、一体何をしているんですか?」

 しみじみとしていると、どこからか凛とした声が響いてきた。見ると、黒髪で眼鏡をかけた男子生徒が、冷やかな視線をこちらに向けてスタスタと歩み寄って来る。

「……二上かよ」
「あっ、フゥちゃんだぁ」
「あ、二上さん! お疲れっす!」

 クール敬語眼鏡くんだ。これでレガフォーのメンバーがついに全員揃ったことになる。みんなで待ち合わせしていた訳でもないのに、なんで全員ここに現れたんだ? 俺はこの先のコンビニに用があるけど、お前らがいつも遊ぶ商業施設は反対方向だぞ。なんか今日の遭遇率おかしくない?

「ちょうどこのビッチに、時雨は俺様のもんだと教えてやってた所だ」
「ボクはね~、時雨ちゃんとえっちさせてってお願いしてたのぉ」
「オレも時雨さんの処女もらう約束してた所っす」
「いいえ違います、そんな話聞いてませんし約束もしてません」

 俺はすかさず否定した。俺が時雨の力になれることはあまりないけど、せめて意思表示だけはしておこう。後で「俺は止めようとしていました」と堂々と証言するためにも。もしかするとクール敬語眼鏡くんだけはレガフォーの良心になってくれるかもしれないし……いや、どうせこいつも時雨に夢中だ。期待するのはやめておこう。

「……そうですか、随分と時間を持て余しているようで、羨ましい限りです。ちょうど良かった。これから図書室の書庫を整理するのですが、お手伝いをしてくださる方は──」
「なんだか萎えるツラ見すぎて、目が疲れてきたぜ。今すぐ時雨に会って癒されねぇとやってられねぇな」
「いっけな~い! 子ブタちゃんからお茶のお誘い受けてたの、忘れてたぁ。みんなバイバーイ!」
「おっと、そろそろオレは部活の時間なんで、お先に失礼するっすね」

 クール敬語眼鏡くんの一言を合図に、三人は蜘蛛の子を散らすように去って行った。突然来てわいわいと騒ぎ立て、一瞬でいなくなったな。俺を拘束していたあの時間は、一体何だったんだよ……。

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