8 / 22
7話.レガフォー、集まる
検索したい。お前を消す方法──ではなく、三方からの壁ドンを抜け出す方法。
しゃがんで一条の長い足の間をくぐれないかと考えたが、距離が近過ぎて無理だ。しゃがんだ途端に膝がぶつかって、即バレるわ。
なら、こいつらが話し終えるまでここから逃げ出せない、ってこと? 嫌だ、俺は早くコンビニの新商品買って帰りたいんだよ、誰か助けてくれ!
「ちっ、思わず頷いてしまったが、やっぱ無理だな。時雨の初めては俺様のもんだ。恋人なら、全てを俺様に捧げるのが当然だろう? あいつがどんな声で鳴き、体のどこを触れば悦ぶのか、その一部始終をこの目で見逃す訳にはいかねぇ」
「えーっ、一条さんだけ時雨さんを独り占めしようだなんてズルいっすよ! オレとしぃちゃんは、一回だけってお願いしてるのに」
「そうだよぉ。初めてのちゅうは貰ったんだからいいでしょ? ボクたち、あの子ブタちゃんと別れさせるの手伝ってあげるからさ~。そしたらめでたく時雨ちゃんは一条の恋人になって、その後はずーっと独り占め出来るんだよ。だからぁ、せめてボクたちに思い出くらいちょーだい?」
「……ま、仕方ねぇ。俺様は寛大だからな。初めては譲れねぇが、お前らになら、一回だけは許してやってもいいぜ。絶対に一回だけだからな?」
一条が渋々承諾すると、ぶりっ子くんと爽やかワンコくんはニヤリと笑い、ぽそりと呟いた。
「その一回で時雨さんを堕としちゃば、こっちのもんっすよ。オレだけに夢中になるように、バッチリ躾けてあげちゃうんで」
「ボクのテクにかかれば時雨ちゃんもイチコロでしょ~。他の奴らじゃ物足りないって、自分からお尻を差し出しちゃうかもね。あ~、楽しみぃ」
そんな彼らの恐ろしい企みが聞こえなかったのか、一条が「何か言ったか?」と問いかけたが、二人は笑顔で首を横に振る。なんで俺に聞こえて、同じく二人の真ん中に立っていたお前には聞こえなかったんだよ。おかしいだろ。
もー。俺が心の中で嘆いている間に、こいつら最低なことを決めてやがるし。本人不在の中許可も得ず、勝手に体の貸し借りする話をすんなよ! 本当に時雨のことが好きなのか?
自分が抱けば、相手が無条件で喜ぶと思ってるなら、考えを改めてくれ。マトモな人はそう思わないんだって!
相棒として、なにより人として、彼らの蛮行を放っておく訳にはいかない。ここは一言忠告しておこうと、三人を睨み付けながら、話に割り込んだ。
「あの! どんなに好きでも、合意がなきゃダメに決まってますからね! 襲わないでくださいよ? やったら、即アウトで警察行き! 発覚次第、俺が通報してやりますから!!」
「うわ、声デカッ」
「え~? 犬に噛まれたと思って、許してよぉ」
「いや、だから、それで済むには大事すぎて無理ありますって! 不運だったね、で片付けられる程、軽い出来事じゃないんですから!」
「何必死になってんだよ。合意さえあれば良いんだろう?」
「ちゃんと話聞いてました? 無理矢理するのはダメなんですよ」
「ハッ。俺様と時雨は相思相愛なんだよ。問題などある訳ないだろうが」
出たぞ、俺様くんの謎理論。残念ながら今の所はまだ一方通行だ。時雨も道を開ける気がないから、諦めろ。
「ん? そういえば……この急に叫んできた人、誰っすか?」
漸く俺の存在に気付いた爽やかワンコくんが、アッシュブロンドの緩やかなパーマがかかった髪を揺らしながら俺を見下ろしてくる。
「時雨ちゃんの恋人なんだってさ~」
「ちげぇ。時雨に群がる、ただの虫ケラだ」
「ふーん。なんか間抜け顔してるっすね。なんで時雨さん、こんなの選んだんだろう」
「なんでだろうね~。でも、時雨ちゃんとはまだキスもセックスもしてないみたいだよぉ。手付かずの子ブタちゃんだけど、サンちゃん的にどう?」
「いや、全っ然興味湧かないっすけど。頼まれても嫌っすねー」
じろじろと無遠慮に観察された挙げ句、興味ないとばっさり断言された。ぶりっ子くん曰く処女厨らしいが、初めてなら別に誰でもいい訳じゃないらしい。くそっ、俺だって嫌だ。頼まれても男とセックスなんかしたくないよ。
なんだかこいつらと関わってみると、今までハブられてて良かったと思うわ。俺の学園生活、平和だったもん。ほんと、奴らの好みの範囲に入ってなくて良かったぜ!
「貴方たち。こんな人目につかない場所で集まって、一体何をしているんですか?」
しみじみとしていると、どこからか凛とした声が響いてきた。見ると、黒髪で眼鏡をかけた男子生徒が、冷やかな視線をこちらに向けてスタスタと歩み寄って来る。
「……二上かよ」
「あっ、フゥちゃんだぁ」
「あ、二上さん! お疲れっす!」
クール敬語眼鏡くんだ。これでレガフォーのメンバーがついに全員揃ったことになる。みんなで待ち合わせしていた訳でもないのに、なんで全員ここに現れたんだ? 俺はこの先のコンビニに用があるけど、お前らがいつも遊ぶ商業施設は反対方向だぞ。なんか今日の遭遇率おかしくない?
「ちょうどこのビッチに、時雨は俺様のもんだと教えてやってた所だ」
「ボクはね~、時雨ちゃんとえっちさせてってお願いしてたのぉ」
「オレも時雨さんの処女もらう約束してた所っす」
「いいえ違います、そんな話聞いてませんし約束もしてません」
俺はすかさず否定した。俺が時雨の力になれることはあまりないけど、せめて意思表示だけはしておこう。後で「俺は止めようとしていました」と堂々と証言するためにも。もしかするとクール敬語眼鏡くんだけはレガフォーの良心になってくれるかもしれないし……いや、どうせこいつも時雨に夢中だ。期待するのはやめておこう。
「……そうですか、随分と時間を持て余しているようで、羨ましい限りです。ちょうど良かった。これから図書室の書庫を整理するのですが、お手伝いをしてくださる方は──」
「なんだか萎えるツラ見すぎて、目が疲れてきたぜ。今すぐ時雨に会って癒されねぇとやってられねぇな」
「いっけな~い! 子ブタちゃんからお茶のお誘い受けてたの、忘れてたぁ。みんなバイバーイ!」
「おっと、そろそろオレは部活の時間なんで、お先に失礼するっすね」
クール敬語眼鏡くんの一言を合図に、三人は蜘蛛の子を散らすように去って行った。突然来てわいわいと騒ぎ立て、一瞬でいなくなったな。俺を拘束していたあの時間は、一体何だったんだよ……。
あなたにおすすめの小説
【完結】ハーレムラブコメの主人公が最後に選んだのは友人キャラのオレだった。
或波夏
BL
ハーレムラブコメが大好きな男子高校生、有真 瑛。
自分は、主人公の背中を押す友人キャラになって、特等席で恋模様を見たい!
そんな瑛には、様々なラブコメテンプレ展開に巻き込まれている酒神 昴という友人がいる。
瑛は昴に《友人》として、自分を取り巻く恋愛事情について相談を持ちかけられる。
圧倒的主人公感を持つ昴からの提案に、『友人キャラになれるチャンス』を見出した瑛は、二つ返事で承諾するが、昴には別の思惑があって……
̶ラ̶ブ̶コ̶メ̶の̶主̶人̶公̶×̶友̶人̶キ̶ャ̶ラ̶
【一途な不器用オタク×ラブコメ大好き陽キャ】が織り成す勘違いすれ違いラブ
番外編、牛歩更新です🙇♀️
※物語の特性上、女性キャラクターが数人出てきますが、主CPに挟まることはありません。
少しですが百合要素があります。
☆第1回 青春BLカップ30位、応援ありがとうございました!
第13回BL大賞にエントリーさせていただいています!もし良ければ投票していただけると大変嬉しいです!
ガラスの靴を作ったのは俺ですが、執着されるなんて聞いてません!
或波夏
BL
「探せ!この靴を作った者を!」
***
日々、大量注文に追われるガラス職人、リヨ。
疲労の末倒れた彼が目を開くと、そこには見知らぬ世界が広がっていた。
彼が転移した世界は《ガラス》がキーアイテムになる『シンデレラ』の世界!
リヨは魔女から童話通りの結末に導くため、ガラスの靴を作ってくれと依頼される。
しかし、王子様はなぜかシンデレラではなく、リヨの作ったガラスの靴に夢中になってしまった?!
さらにシンデレラも魔女も何やらリヨに特別な感情を抱いていているようで……?
執着系王子様+訳ありシンデレラ+謎だらけの魔女?×夢に真っ直ぐな職人
ガラス職人リヨによって、童話の歯車が狂い出すーー
※素人調べ、知識のためガラス細工描写は現実とは異なる場合があります。あたたかく見守って頂けると嬉しいです🙇♀️
※受けと女性キャラのカップリングはありません。シンデレラも魔女もワケありです
※執着王子様攻めがメインですが、総受け、愛され要素多分に含みます
不定期更新予定に変更させていただきます。
♡、お気に入り、しおり、エールありがとうございます!とても励みになっております!
感想も頂けると泣いて喜びます!
第13回BL大賞55位!応援ありがとうございました!
見ぃつけた。
茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは…
他サイトにも公開しています
処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる
猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。
しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。
当然そんな未来は回避したい。
原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。
さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……?
平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。
ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)
告白現場に遭遇したら、まさかの俺の推しだった
花魁童子
BL
配信者である主人公の浅葱は、推しの告白現場に居合わせてしまった。そしてそれと同時に推しには好きな人が⁉ それを知ってしまって、推しとまさかの付き合うことになってしまう。偽りの恋人だけどなぜか嬉しく感じる。高校生活を送っていくうちに芽生える思い‼ 二人の気持ちはどうなるのか⁉
血のつながらない弟に誘惑されてしまいました。【完結】
まつも☆きらら
BL
突然できたかわいい弟。素直でおとなしくてすぐに仲良くなったけれど、むじゃきなその弟には実は人には言えない秘密があった。ある夜、俺のベッドに潜り込んできた弟は信じられない告白をする。
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
百合豚、男子校に入る。
揺
BL
百合をこよなく愛する男子高校生・眞辺恵。
母の歪んだ価値観により共学への進学を断たれ、彼が入学させられたのは――
男同士の恋愛が“文化”として成立している、全寮制男子校《私立瑞嶺学園》だった。
この学園では、生徒会長は「抱かれたいランキング」で選ばれ、美貌こそが正義とされる世界。
それでも眞辺は決意する。
生徒会長になり、この学校を“共学”に変え、間近で百合を拝むことを。
立ちはだかるのは、顔面至上主義の学園制度、性に奔放すぎるイケメンな幼馴染、そして彼らに憧れ恋をする生徒たち。
さらに何故か、学園の人気者たちに次々と目をつけられてしまい――。
百合を拝むため男子校を変えようとする異端者が、歪んだ王道学園を改革する物語。