とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎

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18話.肝試しをする


 どうやら、ぶりっ子くんが肝試しのペア決めをするくじに細工をしたらしい。

「くっ。なんで……俺様のペアが時雨じゃなくて、このビッチなんだよ!」

 ワナワナと怒りに肩を震わせた一条が、俺をびしりと指差してきた。
 そう、ペアになったのは俺と一条。時雨と狂犬。二上とぶりっ子くんだ。俺だって詳しくは何も聞かされてないんだから、文句ならペア決めをしたぶりっ子くんに言ってくれ。

 ちなみに、肝試しの流れとしてはこんな感じだ。
 初めに出発するのは二上とぶりっ子くんペアで、山の中腹にある東屋へトランプのカードを一枚置いてくる。
 最初のペアが出発した十五分後に、時雨と狂犬ペアが別のカードを置きに向かう。
 また十五分おいて、最後に俺と一条が出発。東屋のテーブルに置かれた二枚のカードを回収して帰ってくる、というものだ。

 二上曰く、下山までは一本道なので脇道に逸れない限り、迷うことはないらしい。ルートも登りと下りで分かれているため、他のペアとはすれ違うこともなく、最後まで雰囲気が保たれたままなので心配するなとも。

 ……これは、迷子フラグかな? 俺以外の誰かがやらかしそう。

 一条はまだ不満そうにぶつぶつと文句を呟いているが、残念ながら相手にする人はこの場にいなかった。前方では他の四人が、どのカードを持って行くかで盛り上がっている。
 それが寂しかったのか、一通り文句を言って満足したのか、一条が俺に話しかけてきた。

「いや、ビッチじゃなくて童貞処女らしいが……嘘の可能性も捨てきれねぇしな。どのみち、貴様は時雨を狙う虫には変わりないし、ビッチ呼びで充分だろ? なぁ?」
「……お好きに呼んでください」

 どうせ、人の話を聞きやしないので。


 時雨と狂犬ペアも先ほど出発し、話し相手を失った一条が、仕方なさそうに俺に再び絡んできた。適当に話を聞き流しつつ相槌を打っていると、最初のペアが戻ってきたようだ。スマホの時計を確認すると、行き帰り含めて三十分程の距離か。結構かかるな。

「たっだいまぁ!」
「戻りました」
「無事に戻ってきたか。おい、目的地にカードをちゃんと置いてきたんだろうな?」
「アハッ! もち、超余裕ぅ~。夜の森ってすっごく雰囲気あるよねぇ。急にガサッとした音が聞こえた時は、ドキドキしちゃったよぉ」
「想像以上に暗く、音の正体が確認できなかったのは残念でしたね。いくら私の敷地内とはいえ、懐中電灯なしではうっかり迷っていたかもしれません」
「懐中電灯はわざと性能良くないのを用意したんだけど、大正解だったねぇ。はぁ、楽しかった~」

 満足そうに笑うぶりっ子くんに、二上がこくりと頷く。
 ねえ、だから迷子フラグを立てるのやめてもらえませんかねぇ?

「ねぇ、一条ぉ。もうそろそろ出発の時間だけど、大丈夫ぅ?」
「だっ、誰に向かって言ってんだ! 俺様に問題なんてある訳ねーだろ。ただ……こいつが、途中でビビって逃げ出さないかが心配だがな!」
「そうだねぇ、心配だね~」
「大森葉。頑張りなさい」

 そう言って、二上が俺に懐中電灯を渡してきたけど──。


 なるほどなぁ。頑張れってこれかぁ……。

 出発前に二上に言われたことを思い出しながら、俺はそっとため息をついた。
 暗い山道を懐中電灯で辺りを照らし、両肩に人の重みとぬくもりを感じながら歩く。背後からは小声で「怖くない怖くない怖くない」という呪詛のような呟きが聞こえる。いや、お前の方が怖いわ。
 風に揺れて木の葉がガサリと音を立てたり、虫の音が一瞬止まると、情けない悲鳴と共に俺の両肩を握る力が増した。歩きづらいし、普通に痛いのでやめてほしい。

 現在、一条は先頭を歩く俺の両肩を握って、自分の足元だけを見て歩いている状態だ。数歩進む度に「おい、そこにいるんだろうな?!」としつこく確認してくる。

 ここ数日で一条に『じゃんけんが弱い、カレーは甘口派、怖がり』という属性が一気に増えた。
 ほんと、こいつギャップ萌えでも狙ってんの? 属性を詰め込み過ぎるのは、キャラがブレるからやめときな?
 正直、こんなの見せられても、俺はこいつに対して「めんどくせぇ」という感想しか湧かない。これがもし、相手が女王様系美少女だったら話は別なんだがなぁ。じゃんけんに弱くて、カレーは甘口派で、怖がりな女の子、最高に萌えるじゃん。男がやっても全っ然、萌えないんだわ……。

 若干うんざりしながら足を動かしていると、木々の隙間から東屋の屋根が見えてきた。漸く折り返し地点か。ひとまず、これでこのひっつき虫とはオサラバ出来そうだ。

「一条様、もうすぐで目的地に着きますよ」
「ほっ、本当か……? よし、急げ。さっさとカードを回収して帰るぞ!」
「はいはい」
「か、勘違いするなよ? 別にビビってる訳じゃないからな! 俺様はただ、時雨に早く会いたいだけなんだ!!」
「……はいはい」

 おい、新たにツンデレ要素を増やしてくんじゃねーよ。もういいって……。

 東屋がはっきりと見えてくると、そこに人影があることに気付く。

「あれ?」
「どどどどうした!?」
「人が……」
「ひぃぃぃっ!!」

 肩にかかる痛みと重みを無視して強引に東屋へ足を進め行くと、うすぼんやりと懐中電灯の光に照らされた人影の正体が見えてきた。

「あっ、なんだ……時雨たちじゃん。まだ下山してなかったのか」
「……なんだと?」

 怯えていた一条も二人の姿を確認できたようで、安堵の息を漏らしたのが聞こえた。

「チッ、俺様を驚かせるとは……ふざけるなよ。生意気な奴め!」
「いってぇ!!」

 ばしんと肩を力いっぱい叩かれ、俺は痛みに声を上げる。この野郎……帰りは置いてってやろうか?

 それにしても、時雨たちがまだいるとは思わなかった。怖がる一条に合わせてゆっくり歩いてたし、途中で何度か立ち止まったりもしていたのに。最初のペアより確実に時間がかかっていたので、時雨たちもとっくに戻っていると思っていた。狂犬はレガフォーとしての付き合いがあり、一条の怖がりを知ってそうだから……俺たちを待っていてくれた、とか?

 一条が俺の背から離れ、嬉しそうな顔で時雨の名前を呼ぼうとした瞬間、狂犬が時雨の唇を奪った。
 それを目撃して、その場で固まる俺たち。

 え……は? えええええっ?! なに、今の?!
 ……えーと。次回『ドキッ☆男二人によるキャットファイト勃発! 時雨は誰を選ぶの?!』をお楽しみに!
 ──なんちゃって。


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