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攻略編 3-6

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「聖女様、僕が案内したかったのはここです。」
レオが近道を知っているということだったが、思っていたよりも近くてあっという間についた。
開けた場所で、建物だけでなく人通りも少なかった。
「ここ?」
私が尋ねるとレオは答えた。
「そうです。それとここは僕の秘密の場所なんです。誰でも入れる場所ではなくて。」
(あら?そうなのね……知り合いの所有している場所ということかしら?)私は周りを見渡しながら言った。
「素敵な場所ね。」
(こんな場所が街にあったなんて知らなかったわ……)
するとレオは嬉しそうな表情を浮かべて言った。
「ありがとうございます!聖女様にそう言っていただけると嬉しいです!」(ふふっ、本当に嬉しそうね)
そんなことを考えているとレオが何かを見つけたようで声を上げた。
「あ!あそこに珍しい花が咲いているんです!」
(珍しい花?)私は不思議に思って尋ねた。
「どんな花なんですか?」
するとレオは嬉しそうな表情を浮かべて言った。
「虹色の花です!とても綺麗で、僕大好きなんです!」(へぇ……そんな綺麗なものがあるのね……)
私は興味を惹かれた。
「それは是非見てみたいですね」
私がそう言うとレオは笑顔で答えた。
「はい!案内しますね!」そう言って私の手を取ると歩き始めた。
しばらく歩くと、レオは立ち止まり言った。「ここです!」
(ここが虹色の花がある場所ね……)
私は花に視線を向けた後でレオの方を見た。すると彼は少し寂しげな表情を浮かべていた。そして小さな声で呟いた。
「でも、もう枯れちゃってるから……」
(え……?)私が驚いていると、レオは続けて言った。
「この花は僕が生まれた時に両親が贈ってくれたものなんです。」
(そうだったのね……)私は少し考えてから言った。
「レオ、その花を見せてもらっても良いですか?」
するとレオは嬉しそうな表情を浮かべて答えた。
「はい!もちろんです!」
(それにしても綺麗な花ね……)私はそう思いながら見つめていると、ふとあることに気づいた。
(あれ?これってもしかして……)私が考えていると、レオが声をかけてきた。
「聖女様?どうかされましたか?」(うーん……やっぱりそうよね……?)私は確信を持って尋ねた。
「この花はいつから枯れてしまったのですか?」
レオは少し悲しそうな表情を浮かべて答えた。
「えっと……確か二年前だったと思います。」
(やっぱりそうよね……)私は頷くと、レオに尋ねた。
「この花はまだ完全に枯れていないのではありませんか?」
すると彼は驚いた表情を浮かべた後で言った。
「え……?どういうことですか?」私は微笑んでから言った。
「この花は魔力で作られているものですよね?」私がそう言うと、レオは嬉しそうな表情を浮かべて言った。(ふふっ、正解みたいね)
「はい!そうです!」
(やっぱりそうだったのね)私は頷いてから続けた。
「レオ、この花に魔力を注ぎ込んでみてください。」
私がそう言うとレオは不思議そうに首を傾げた後で言った。
「えっと……でももう僕には魔力が...」
私は微笑んで答えた。
「この花は魔力で作られているので、魔力を注げば再び咲くのではないかと思ったのです。それに、これはレオにしかできないものだと思いますよ。」
私が微笑むとレオは嬉しそうな表情を浮かべて頷いた。
「はい!やってみます!」(僕だけの……)そしてレオは真剣な表情で花に向かって魔力を注ぎ始めた。すると、みるみるうちに花が色鮮やかに光り始めた。
(わぁ……!綺麗ね……)私がその光景を見つめていると、レオが嬉しそうな表情で言った。
「聖女様!咲きました!」(すごい!)私は微笑んでから言った。
「良かったですね。」
レオは嬉しそうに頷くと私に抱きついてきた。
「ありがとうございます!聖女様が僕のことを治してくれたおかげです!」
私はレオの頭を撫でながら言った。
「ふふっ、どういたしまして。」
「お礼に、1輪この花をあげます。」
(あら?いいのかしら……?)
私が悩んでいると、レオは笑顔で言った。
「遠慮しないで受け取ってください!」(聖女様に喜んでもらえたら嬉しいし……)
私は微笑んで言った。
「ありがとうございます。」
「この花は使い切るまでは枯れません。」
「使う?」
(どういうことかしら?)
私は不思議に思いながら尋ねた。
「この花から採れる蜜は特別な薬の材料にもなるんですけど、他の使い方もできます。僕からは伝えられないのですが、きっと聖女様ならその時が来れば魔力の反応によって分かると思います。」
(なるほど、そういうことなのね)
「そうなんですね、大事に使わせていただきますね。」
私がそう言うとレオは嬉しそうな表情を浮かべて言った。
「はい!是非使ってください!」
(それにしても綺麗な花ね……)私は再びその花を見つめながら思ったのだった。
そんな私に、レオは急に真剣な表情になって話を切り出してきた。
「この花たちを復活させたことによっても、聖女様の力が強まったと思うのですが念のため聖堂にもいきましょう。」
「そうなのね。何ヶ所も案内してくれてありがとう。」
「いいえ、聖女様のお役に立てて嬉しいです!」
はぁ...。無邪気で眩しくて天使みたい―――。
そんなことを考えつつも、レオには私の力が弱まっているということを悟られているんだろうなと思った。
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