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15話
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「神託を、今ここに示す。――“災いの兆し、南より現れ、王国に影を落とす”」
神殿の正面広場に、再び人々が集まっていた。
朗々と読み上げられる新たなる神託。その言葉は、民衆の間に波紋のように広がっていく。
「……南って、まさか――」
「レーヴェンロー侯爵家、あそこは南方の出身だったはずだろう?」
「災いの兆しって……最近流行ってる“ふわふわ様”のことじゃ……」
ざわつく空気の中、王太子アルベリヒは一段高い場所から群衆を見下ろしていた。
彼の目は怒りに燃えている。
「やはり、あの女は放っておくべきではなかった。甘く見すぎた……!」
その隣で、リリィ=クロフォードは不安げに眉をひそめていた。
(こんなやり方で……また断罪を? 本当に、それが正しいの……?)
だが彼女の迷いなどお構いなしに、王太子は拳を握りしめ、声を張り上げる。
「令嬢シャルロット=ド=レーヴェンロー――あれは神の怒りを買う存在だ。再び、裁かねばならぬ!」
そして、王宮と神殿は再び“断罪の準備”へと動き始める。
*
その頃――
レーヴェンロー邸の庭園では、シャルロットが優雅に茶器を並べていた。
「今日は少し珍しい茶葉を使いますの。東の山岳地帯で採れた“白露香”……香りが、まるで朝の霧ですのよ」
「ええ、ええ、いい香りだけど……ちょっと、落ち着かないのよね、今日は」
ロジーナは椅子に腰を下ろしながらも、視線をあちこちに彷徨わせていた。
彼女の直感が、なにか“大きな波”を感じ取っていた。
「セバスティアン、ミルクはそちらに。あと蜂蜜も少しだけ」
「かしこまりました。……お嬢様、お手元にお気をつけて」
いつものようにセバスティアンが慎重にカップを運ぶ中、シャルロットはそっとポットを傾けた。
その瞬間――
「……あら?」
カップの中に、一本の茶柱が、まっすぐ立った。
「……ふふ、今日はいい日になりますわね」
その微笑みのうちに、ロジーナが息を呑んだ。
「シャルロット……もう一本……いえ、二本目……!?」
再び、茶柱が立ち上がる。
そして、三本目。
「え……嘘……? そんなことって……!」
それは、あり得ない現象だった。
茶柱が三本同時に立つなど、古の文献にもほとんど記録がない。
それは“神意の顕現”“流れの大激変”――
もはやただの吉兆ではなく、“神託の上書き”とも呼ばれる異常だった。
「まぁ、茶葉の厚みがちょうどよかったのかしら。……バランスが取れすぎていて、ちょっと怖いくらいですわね」
シャルロットは、そんな不思議な現象をただ優雅に眺めていた。
「グレイ、どう思います?」
猫は卓に飛び乗り、じっとカップの中を覗き込んだ。
その瞳に映る三本の柱――そして、何も語らず、ただしっぽを一度だけ揺らす。
「……これ、絶対ただ事じゃないわよ」
ロジーナは唇を引き結び、シャルロットの横顔を見つめた。
まるでこの世の流れが、彼女の手のひらに吸い寄せられていくような、そんな感覚。
「明日も、香りのよい茶葉が手に入るといいですわね」
どこまでも変わらぬ調子で、シャルロットは静かに笑った。
その背後で、王国の秩序が確かに揺れ始めていた。
神殿の正面広場に、再び人々が集まっていた。
朗々と読み上げられる新たなる神託。その言葉は、民衆の間に波紋のように広がっていく。
「……南って、まさか――」
「レーヴェンロー侯爵家、あそこは南方の出身だったはずだろう?」
「災いの兆しって……最近流行ってる“ふわふわ様”のことじゃ……」
ざわつく空気の中、王太子アルベリヒは一段高い場所から群衆を見下ろしていた。
彼の目は怒りに燃えている。
「やはり、あの女は放っておくべきではなかった。甘く見すぎた……!」
その隣で、リリィ=クロフォードは不安げに眉をひそめていた。
(こんなやり方で……また断罪を? 本当に、それが正しいの……?)
だが彼女の迷いなどお構いなしに、王太子は拳を握りしめ、声を張り上げる。
「令嬢シャルロット=ド=レーヴェンロー――あれは神の怒りを買う存在だ。再び、裁かねばならぬ!」
そして、王宮と神殿は再び“断罪の準備”へと動き始める。
*
その頃――
レーヴェンロー邸の庭園では、シャルロットが優雅に茶器を並べていた。
「今日は少し珍しい茶葉を使いますの。東の山岳地帯で採れた“白露香”……香りが、まるで朝の霧ですのよ」
「ええ、ええ、いい香りだけど……ちょっと、落ち着かないのよね、今日は」
ロジーナは椅子に腰を下ろしながらも、視線をあちこちに彷徨わせていた。
彼女の直感が、なにか“大きな波”を感じ取っていた。
「セバスティアン、ミルクはそちらに。あと蜂蜜も少しだけ」
「かしこまりました。……お嬢様、お手元にお気をつけて」
いつものようにセバスティアンが慎重にカップを運ぶ中、シャルロットはそっとポットを傾けた。
その瞬間――
「……あら?」
カップの中に、一本の茶柱が、まっすぐ立った。
「……ふふ、今日はいい日になりますわね」
その微笑みのうちに、ロジーナが息を呑んだ。
「シャルロット……もう一本……いえ、二本目……!?」
再び、茶柱が立ち上がる。
そして、三本目。
「え……嘘……? そんなことって……!」
それは、あり得ない現象だった。
茶柱が三本同時に立つなど、古の文献にもほとんど記録がない。
それは“神意の顕現”“流れの大激変”――
もはやただの吉兆ではなく、“神託の上書き”とも呼ばれる異常だった。
「まぁ、茶葉の厚みがちょうどよかったのかしら。……バランスが取れすぎていて、ちょっと怖いくらいですわね」
シャルロットは、そんな不思議な現象をただ優雅に眺めていた。
「グレイ、どう思います?」
猫は卓に飛び乗り、じっとカップの中を覗き込んだ。
その瞳に映る三本の柱――そして、何も語らず、ただしっぽを一度だけ揺らす。
「……これ、絶対ただ事じゃないわよ」
ロジーナは唇を引き結び、シャルロットの横顔を見つめた。
まるでこの世の流れが、彼女の手のひらに吸い寄せられていくような、そんな感覚。
「明日も、香りのよい茶葉が手に入るといいですわね」
どこまでも変わらぬ調子で、シャルロットは静かに笑った。
その背後で、王国の秩序が確かに揺れ始めていた。
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