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4話
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「ふむふむ……あと三枚ですわね」
ルゥナは牢の床にトランプを一枚ずつ丁寧に立てていった。
誰もが退屈し、うめき声をあげるような地下牢の空気の中で、彼女だけはやけに楽しそうだ。
「……完成ですわ」
ドンッ。
重い足音とともに、鉄扉が開く。現れたのは監視長だった。腕を組み、無精髭を撫でつけながら、ぼんやりとルゥナの“作品”を見つめる。
「……なにをしている」
「ピラミッドですわ。食後の知的遊戯として、わたくしの習慣でしてよ」
「食後って……あんなもので足りるのか?」
「ええ、質素ではありますが、味は悪くありませんでしたわよ。特に干し肉、なかなかの歯ごたえでして」
あっけらかんとした笑顔に、監視長は頭痛を覚えた。
先ほど配膳した食事は、黒パンと冷めた豆スープのみ。それを「なかなか」と言い切る囚人は、彼の十年以上の監視経験で初めてだった。
「……なあ。お前、本当に囚人か?」
「まあ、形式上はそうなるのかもしれませんわね。ところで、少しだけお時間、頂けます?」
「……あ?」
「わたくし、大富豪という遊びが大好きでして。けれどここでは誰も相手をしてくれませんの。監視長さま、お手をお貸しいただけませんか?」
「冗談じゃない。俺は仕事中だ」
「まあ残念。わたくし、一度も大富豪で負けたことがないのですけれど」
「……」
その一言が、地雷だった。
「……やってやろうじゃねぇか。その自信、叩き潰してやるよ」
*
一時間後。
「革命されてる!? ってまたお前かよ!」
「革命返しですわ。……あら、まだ四枚残っておられますの?」
「ぐぬぬぬ……」
その場にトランプの山が積まれ、牢内の石台は完全にゲームテーブルと化していた。
「階段下りても負け……スペ三返されても負け……ちくしょう……!」
完全に火がついた監視長は、唸りながら札を切っていたが――
「……監視長? なにやってるんですか」
不意に背後から声がした。振り返ると、そこには若い監視官が目を丸くして立っていた。
「ち、違う! これは尋問の一環で――!」
牢の中に、再び笑いと嘆きが響いた。
こうしてルゥナ=フェリシェは、地下牢という閉ざされた空間ですら、自分のペースに引き込み、監視官すら巻き込んでいくのだった。
ルゥナは牢の床にトランプを一枚ずつ丁寧に立てていった。
誰もが退屈し、うめき声をあげるような地下牢の空気の中で、彼女だけはやけに楽しそうだ。
「……完成ですわ」
ドンッ。
重い足音とともに、鉄扉が開く。現れたのは監視長だった。腕を組み、無精髭を撫でつけながら、ぼんやりとルゥナの“作品”を見つめる。
「……なにをしている」
「ピラミッドですわ。食後の知的遊戯として、わたくしの習慣でしてよ」
「食後って……あんなもので足りるのか?」
「ええ、質素ではありますが、味は悪くありませんでしたわよ。特に干し肉、なかなかの歯ごたえでして」
あっけらかんとした笑顔に、監視長は頭痛を覚えた。
先ほど配膳した食事は、黒パンと冷めた豆スープのみ。それを「なかなか」と言い切る囚人は、彼の十年以上の監視経験で初めてだった。
「……なあ。お前、本当に囚人か?」
「まあ、形式上はそうなるのかもしれませんわね。ところで、少しだけお時間、頂けます?」
「……あ?」
「わたくし、大富豪という遊びが大好きでして。けれどここでは誰も相手をしてくれませんの。監視長さま、お手をお貸しいただけませんか?」
「冗談じゃない。俺は仕事中だ」
「まあ残念。わたくし、一度も大富豪で負けたことがないのですけれど」
「……」
その一言が、地雷だった。
「……やってやろうじゃねぇか。その自信、叩き潰してやるよ」
*
一時間後。
「革命されてる!? ってまたお前かよ!」
「革命返しですわ。……あら、まだ四枚残っておられますの?」
「ぐぬぬぬ……」
その場にトランプの山が積まれ、牢内の石台は完全にゲームテーブルと化していた。
「階段下りても負け……スペ三返されても負け……ちくしょう……!」
完全に火がついた監視長は、唸りながら札を切っていたが――
「……監視長? なにやってるんですか」
不意に背後から声がした。振り返ると、そこには若い監視官が目を丸くして立っていた。
「ち、違う! これは尋問の一環で――!」
牢の中に、再び笑いと嘆きが響いた。
こうしてルゥナ=フェリシェは、地下牢という閉ざされた空間ですら、自分のペースに引き込み、監視官すら巻き込んでいくのだった。
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