小さな町の不思議・怖い話

みつか

文字の大きさ
61 / 65

座る

しおりを挟む
私の祖父は体育座りが大嫌いだった。
理由は少し大きくなるまで分からなかった……

じいちゃんはお茶目な人で子供好きだった。
『孫びいき』と言っていい程の溺愛ぶりだった。

戦争体験者で左の太ももには銃創跡がある。
夏になると半ズボン姿にえぐれた傷が目立つ。

「痛くないの?」

幼心に聞くと

「痛くないよ……」

と答える。そっと傷跡に触れようとすると

「アガァッッ!!」(痛ぁッの意味)

と、急に大声で驚かす。

驚かせた後は驚いた孫を横目に豪快に笑う。

「ハーッハッハッハッハッハッ!!」

毎回ビクッとなる絶妙な『間』に毎回驚かされ『笑いあう』までが一括りの変な遊び?をする。

(驚かされる方は毎回悪い事したかと思うのだが……本人は気にしていない)

部屋の角から急に飛び出して驚かしたり……驚かし系が多かったが基本お茶目な人で、豪快な笑い方は外まで響く。歌舞伎の様な笑い声明るい人だった。

そんなじいちゃんは戦争の事を多くは語らない人だった。どんなに聞いてもうまい具合にのらりくらりとはぐらかすのである。

「じいちゃんも、人を撃ったの?」

孫達の真剣なその疑問に生涯答える事はなかった。

「さぁ~?……どうだったかいやぁ~」

いつも『どうだったかな?』と忘れたフリをする。するとばあちゃんがやって来て

「じいちゃんは戦争には行ったけど、すぐ病気したから殆ど戦争には参加してないのよ。恥ずかしいから知らないふりしてるのよ~ふふふっ」

助け舟でいつも真相は分からずじまい……

「なぁ~んだ」

と毎回その話は終了となる。

皆でお茶を飲もうと畳の部屋で座る時、体育座りをする孫を見ると優しいじいちゃんが優しく怒る。

「はぎ(足)立てて座るのは良くない!行儀のわ~さッ。(悪い)正座するか、足伸ばして座れ~」

優しく諭す。
片足立てて座ってもいつも同じ様に

「行儀のわ~さッ!」(行儀の悪いッ!)

と、嫌がるのである。
幼い頃は大人の言う事は絶対だった時代。

じいちゃんに嫌われない様に畳の部屋では体育座りをしない様にしていた。

じいちゃんは大概あぐらを組んで座る。
新聞を読む時は畳に新聞を広げて隅から隅まで読む。が、人にはするなと言う片足を立てた状態で前に屈む姿勢で読んでいた。

じいちゃんに指摘した事はないが、その格好はなんだかモデルさんの様でサマになってカッコ良かった。哀愁漂う雑誌モデルにでもなりそうな雰囲気。

昔の人の割に他の人より身長が高く、手足も長い。少し日本人離れした顔立ちでイケメンだったじいちゃん。
(誰も似なくて残念。)

陽気な人だったが何故か雨の日は縁側の窓辺に立ち、山を見ながら音に鳴らない口笛を「シーシーッ」と鳴らしながら淋しげに揺れていた。

不思議な雰囲気を醸すじいちゃんだった……

あぐらはOK。あぐらから片足立ててもまぁ許そう。(食事の時はNG)体育座りはするな!そんなスタンスだった。

そんなじいちゃん、なぜ体育座りはNGだったかというと中学生に上がる頃にその事実を知った。

昔、塩炊きなどをする時に「ケンムン」が塩釜の近くで体育座りで火に当たりに(暖を取りに)集まって来ていたからだった。

孫達の体育座りは、塩炊き時代に出会ったケンムンを彷彿とさせ不快な気分になるからと静かに語るじいちゃんの目は寂しそうだった。

よほど酷い目に遭ったのだろうと、察する事が出来るのだが……今となって思うのはじいちゃんは実は『人』ではなかったのでは?と思う。

今や「体育座り」は健康に良くないとされ廃止されている学校が増えている。
孫達の健康を守るために、禁止していたのではないかと思う。

大正時代の人にしては手足が長くイケメン。もしかして未来から来た『未来人』だったのかも……その一方で片足を立てて座る姿のじいちゃんはもしかしたら人の姿を借りた『ケンムン』だったのかもしれない……






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

コウの怪異日誌

覧都
ホラー
主人公コウが経験する。不思議な体験記です。 不思議な出来事に興味がありましたら。 どうぞ。

百物語 厄災

嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。 小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。

奇談

hyui
ホラー
真相はわからないけれど、よく考えると怖い話…。 そんな話を、体験談も含めて気ままに投稿するホラー短編集。

それなりに怖い話。

只野誠
ホラー
これは創作です。 実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。 本当に、実際に起きた話ではございません。 なので、安心して読むことができます。 オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。 不定期に章を追加していきます。 2026/1/3:『おかのうえからみるけしき』の章を追加。2026/1/10の朝8時頃より公開開始予定。 2026/1/2:『そうしき』の章を追加。2026/1/9の朝4時頃より公開開始予定。 2026/1/1:『いえい』の章を追加。2026/1/8の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/31:『たこあげ』の章を追加。2026/1/7の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/30:『ねんがじょう』の章を追加。2026/1/6の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/29:『ふるいゆうじん』の章を追加。2026/1/5の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/28:『ふゆやすみ』の章を追加。2026/1/4の朝4時頃より公開開始予定。 ※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。

少し怖いホラー短編集(文字数500以下)

仙 岳美
ホラー
文字数500以下のショート集です、難しく無いので気楽にどうぞ。

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

怖いお話。短編集

赤羽こうじ
ホラー
 今まで投稿した、ホラー系のお話をまとめてみました。  初めて投稿したホラー『遠き日のかくれんぼ』や、サイコ的な『初めての男』等、色々な『怖い』の短編集です。  その他、『動画投稿』『神社』(仮)等も順次投稿していきます。  全て一万字前後から二万字前後で完結する短編となります。 ※2023年11月末にて遠き日のかくれんぼは非公開とさせて頂き、同年12月より『あの日のかくれんぼ』としてリメイク作品として公開させて頂きます。

処理中です...