小さな町の不思議・怖い話

みつか

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呪い《旅先での後編》

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酷い気だるさと、死ぬ程の危険に晒されながら有名なお寺に相談にきた旦那。

「奥さんと自分の体調が悪くて……奥さんに至っては熱がずっと下がらずに体力も落ちてきています。ずっと眠れない状態ですし、何かおかしいと思いまして……どうかお力をお貸しください。」

住職さんは、じっと旦那の話す言葉を真剣に聴いていた。
じっと聴いていたが、旦那の背中の方へ歩き始めた。真後ろに立つと

「そのままで聴いてください。……何処かから何か持って帰りませんでしたか?……段々と貴方の背後に近づいて来ています。強い思いを持った女性が気付いてもらえない事に対して呪っているようです。もし、思い当たる事があれば、元の場所へ返してあげてください。そしたら、きっと良くなるでしょう。元々は呪物ではないのですが、元の場所から離れたことにより、貴方がたを強く怨む様になった様です。軽く祓っておくので、出来るだけお急ぎ下さいね。」

頭を下げて、じっと聴き入る旦那。
(何かあったかな?何だか忘れているような気がする……思い出さなければこのまま……)

「もし?大丈夫ですか?……思い当たるフシがございませんか?……何か海?の様な香りのする物、もしくは海に関連するモノかもしれません。」

住職さんが憑き物について、旦那の背中を見ながら探っている。
ハッ!!とする旦那。

「あります!!奥さんがパワースポットから持ってきた石があります!」

そう叫んで振り返ろうとすると、制止される。

「振り返らないでください。すぐそこに居ます。強い怨みであなたを狙っています。暫くの猶予、石からの念を弱めます。その間は、石も干渉できないでしょう。3日の間に元の場所へ返して下さい。その間体調も回復するでしょう。必ず守って下さいね。それ以上は保証できません。どうなるのかは私にも分かりませんので必ず……必ず。」

そう話すと、何やら呪文を唱えた。
不思議な位身体が軽くなった。

「ありがとうございます!ありがとうございます!!」

涙を流しながら、感謝を述べると急いで家へ帰宅した。
奥さんも少し良くなったようで、ベットに腰掛けていた。
お寺で言われたことを奥さんに話すと

「……やっぱりそうだったんだ……あの女性は《帰りたい》って願っていた。夫の元へ帰してって、熱にうなされている時に泣きながら石の化身の女性にお願いされていたの……意味が解らなかったけれど、今なら解る気がするわ。私も、あなたと離れるの辛いもの……帰してあげましょう。身勝手に悪い事をしてしまったわ……」

奥さんの頬に涙が伝う。
ぎゅっと抱きしめて

「そうしよう。……でもどうしよう。現地に行くわけにもいかないし……知り合いも居ないしなぁ。」

旦那は頭をかかえた。奥さんはジッと石を眺めていた。そして夫婦は考え込んだ。
しばし考えて、奥さんが閃いた様に声を上げた。

「あなた!!名刺!ほら、タクシー運転手さんの!!やたら強引に渡してきたあの人!頼りになるんじゃない?頼ってって言ってたじゃない!?」

2人は顔を見合わせた。

「名刺……どこに入れたかな?……財布だ!!」

旦那は気づいて、急いで財布を探した。
石からは微かに潮の香りがする。
奥さんは、石を手のひらに乗せ撫でている。また、魅了されそうになっている。
女性が現れ、一歩前にゆっくりと進んで

「ねぇ、帰してお願い。でないと私……あなたのか……ら…………よ……こ……せ!」

悲しそうな表情から一変鬼の様な表情に変わり、両手を前に伸ばして奥さんの首元へ手をかけようとゆっくりにじり寄ってくる。
奥さんは石をぎゅっと握り、恐怖で固まり動けずにいた。
名刺を見つけた旦那がベットルームの扉を開ける。

「あったよ!!」
「!?何してる!!ちゃんと返すから!」

旦那は驚いて、妻をベットの端からベットの上へ引きずり、妻を庇う様に前に立ちはだかる。
後一歩で妻の首に手がかかるところであった。
女性は、ほろほろと泣きながら哀しみの表情で薄く消えていった。

「はぁ~」

っと、大きく息を吐くと妻の方に振り返る。
妻は涙を流しながらぐったりしている。

「大丈夫か!!ケガない?んっ?良かった。また熱が上がってる。石を離して、君には良くない。」

石をそっと受け取ると、布に優しく包んでリビングのテーブルへそっと置く。
奥さんを抱え上げると、リビングのソファーへと横たわせる。

「辛いだろうけど、見えるところに居て。またモヤモヤして魅入られて、今度こそ君を連れて行かれかねない……準備して出かけてくるけど……一緒に手紙の文言を考えてくれないか?ちょっと苦手でハハ。」

旦那は、小さな箱に布で包んだ石をそっと入れると、住職から頂いた護符も一緒に入れる。運ばれる際に障りがこないように対処したものだった。
内容を2人で考え、それを旦那が手紙に書いて一緒に箱の中へ入れ込んだ。旦那は奥さんに声をかけると急いでタクシー運転手へ送ったのだった。

数日後、受け取ったタクシー運転手は

「やはりな……あの時持って帰ってたんだなぁ~。様子が少しおかしかったんだよな……こういうことは勘弁してほしいよな~。まぁ、頼れって言ったの俺だからな……。」

ぶつぶつと呟きながら、石の鳴る浜に向かい

「長旅お疲れ様でした。おかえりなさい。あなたのつがいの元へどうかおかえり下さい。願わくば、誰も傷つかないように……どうかどうか。」

石へ話しかけると、そっと海の方へ投げ入れる。
お酒と塩も撒き、手を叩き礼を尽くす。

夫婦は、元気を取り戻していた。
その頃タクシー運転手からも手紙が届いた。

『無事に石は元の場所へお返しいたしました。災い等その後どうですか?何事もない事が1番良いです。きちんと、注意書きは守って下さいね。また、お越しの際はご指名お願いします(笑)では、お元気で。』

少しのお説教付きのお手紙だった。無理やりにでも貰った名刺に助けられた事を大いに夫婦は感謝した。


《夫婦石(めおといし)》
諸説ありますが、石には意思があるという云われがあります。夫婦番(ふうふつがい)の石は、1つが持ち去られると返して欲しいと懇願するそうです。(実話)

皆様も、注意書きがある場所やパワースポット等々むやみやたらに傷つけたり、持ち帰るのは辞めましょう。祟り、障りがあるかもしれません。
それはもう自己責任で……

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