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とある施設にて
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小さな老人施設に就職した。
就職してすぐに、開設から働いている先輩からポツリと注意を受けた。
「ここの……認知症フロアあるでしょ。ドアの前で一礼してから入ってね。出来ない時は、心の中で失礼します!って唱えなさいね。」
(認知症のお年寄りで挨拶に厳しい人がいらっしゃるのかな?……心の中で唱えるって、相手に見えないのに良いんだ……不思議な事を言うものだな)
と、疑問に思いながらも先輩職員の真似をして軽く会釈しつつ心の中で(失礼します)と唱えながら入室した。
一般フロアとの境目にドアがあるのだが、基本的にはいつも開放されていて行き来も自由。
フロアのイスで腰掛けている人、歩き回る人、思い思いに自由に過ごしているお年寄り達。
一礼しない職員も居たが、特に怒ったり、怒鳴ったり、不安定な行動をするお年寄りは居なかった。
『一礼する』意味の理解が出来なかったが、軽く一礼して入るように心掛けていた。
仕事に慣れて来た頃、その日はあまりの忙しさに一礼と心の中で唱えるのを忘れ、ドアをくぐってしまった。
背筋にゾワリとするモノを感じた。鳥肌が全身に立つ感覚がある。フロアの雰囲気が急にひんやりして重苦しさを感じる……
(なんだろう?イヤな感じ……)
嫌な感じに、さっとお年寄りを席に案内し、今日の担当にお風呂から案内した事を伝えると急いで認知症フロアを後にする。
すると、不思議な事にあんなにゾワゾワしていた鳥肌が止まり、重苦しく寒気を感じていた感覚から解き放たれる。
(お風呂場とフロアを行き来したから、気温差かな?ちょっとそれとも違うか……)
と、仕事をしながら考えていた。
一緒に業務に当たっていた先輩スタッフが、考え込んでいる事に気づき話しかけてきた。
「どうしたの?心配事?話聴くよ?」
優しい先輩だった。仕事中の為、帰宅時に相談する事を約束した。なんだか、施設内では話してはいけない気分だったからだ。
仕事終わりの帰り道、先輩スタッフに相談してみた
「あの……先輩、認知症フロアって昔何かあったんですか?一礼しないとどうなるんです?先輩知ってますか?」
ずっと気になっていた事を尋ねてみた。
「……聴いてなかったの?驚かずに聴いてね。あの認知症棟ねざっくり言うなら昔~々の墓場だったところに建ってるのね……ん~墓場っていうか、焼却?するところ?詳しくは知らないんだけど、土葬した人を焼く所?で、神社さんみたいな?場所があったんだけど、火葬が流行してそれを壊して更地にした場所に今の施設が建っている場所なのよ。」
ゴクリ、と生唾を飲み込む。先輩が続ける。
「神社さんみたいな場所って言ったでしょ?だからなのかあの場所では一礼した方が良いってなったみたい。特に一礼しなくても害は無いらしいんだけど、たま~に感が強い人とか?感の良いお年寄りとかは見るらしいよ~コレ。ふふふっ。」
手を前にぶらぶらと幽霊のポーズをする。
「ヤダ~。先輩!……謎が解けたような、まだの様な気がします。あの、今日忙しすぎて一礼せずに入ったら酷い怖気がして……場所を離れたら治まったんです。どう思います?」
真剣に聴いてみる。
「う~ん。あんまり聞いたことないのよね。住んでるお年寄りの方達もそんな話しないし、職員もそんな風に話さないからな~。たまにゾクゾクするけど……気になるなら、お塩持ち歩いたら?あなた多分感が強いのね。永住権持ってる人?に気に入られたんじゃない?ふふ。」
なんだか、はぐらかされたような気もするけれど、お塩は良い対策かもなと思った。
その日から、職場に行くといつも通り心の中で挨拶をする。お塩をポケットに忍ばせて。
数ヶ月が経ったある日、職場の雰囲気がザワザワしていると感じていると送迎車の事故。
2日後には、スタッフが通勤時、相手方のミスでもらい事故に遭ったが命に別状は無かった。
その次の日は、病院への受診で送迎していたワゴン車に対向車のダンプカーのタイヤが外れて事故。衝撃のせいか、乗っていたお年寄りが急変し病院へ搬送後、死亡が確認される。因果関係は不明だったが、ご家族へ謝罪するなど、車に関する事故が相次いだ。
それだけに留まらず、若いスタッフが頭痛を訴え救急搬送。脳出血で、職場復帰は不可能となった。
スタッフの間では
『この施設呪われてるんじゃない?』
と、次は自分の番では?と冗談を言う人やびくびくする人、仕事に少なからず支障が出てきた。
事態を重くみた施設長は、お祓いを依頼。
偉いお坊さんが来て、施設内くまなくお祓いして回った。
雰囲気が、ガラッと変わったがお坊さんが言うには
「ここの建物……地下の角に箱の中に入った頭蓋骨が見えました。それが悪さをしています。定期的に祓わないと障りがあります。御守りの塩をスタッフに一つずつ配って下さい。各部屋にも一つずつ置いて下さい。」
スタッフには、あまり外には言わないように注意喚起された。
お祓い後、事故は不思議なほどピタっと無くなった。
それから、数十年その施設で働いているが、相変わらず数年に一度スタッフが職場復帰できない程の病気になる。まだ地下に埋まっている頭蓋骨……その上の階は、あの認知症棟。
……関係があるのか無いのかは分からないが、また誰かが再起不能になっている。
就職してすぐに、開設から働いている先輩からポツリと注意を受けた。
「ここの……認知症フロアあるでしょ。ドアの前で一礼してから入ってね。出来ない時は、心の中で失礼します!って唱えなさいね。」
(認知症のお年寄りで挨拶に厳しい人がいらっしゃるのかな?……心の中で唱えるって、相手に見えないのに良いんだ……不思議な事を言うものだな)
と、疑問に思いながらも先輩職員の真似をして軽く会釈しつつ心の中で(失礼します)と唱えながら入室した。
一般フロアとの境目にドアがあるのだが、基本的にはいつも開放されていて行き来も自由。
フロアのイスで腰掛けている人、歩き回る人、思い思いに自由に過ごしているお年寄り達。
一礼しない職員も居たが、特に怒ったり、怒鳴ったり、不安定な行動をするお年寄りは居なかった。
『一礼する』意味の理解が出来なかったが、軽く一礼して入るように心掛けていた。
仕事に慣れて来た頃、その日はあまりの忙しさに一礼と心の中で唱えるのを忘れ、ドアをくぐってしまった。
背筋にゾワリとするモノを感じた。鳥肌が全身に立つ感覚がある。フロアの雰囲気が急にひんやりして重苦しさを感じる……
(なんだろう?イヤな感じ……)
嫌な感じに、さっとお年寄りを席に案内し、今日の担当にお風呂から案内した事を伝えると急いで認知症フロアを後にする。
すると、不思議な事にあんなにゾワゾワしていた鳥肌が止まり、重苦しく寒気を感じていた感覚から解き放たれる。
(お風呂場とフロアを行き来したから、気温差かな?ちょっとそれとも違うか……)
と、仕事をしながら考えていた。
一緒に業務に当たっていた先輩スタッフが、考え込んでいる事に気づき話しかけてきた。
「どうしたの?心配事?話聴くよ?」
優しい先輩だった。仕事中の為、帰宅時に相談する事を約束した。なんだか、施設内では話してはいけない気分だったからだ。
仕事終わりの帰り道、先輩スタッフに相談してみた
「あの……先輩、認知症フロアって昔何かあったんですか?一礼しないとどうなるんです?先輩知ってますか?」
ずっと気になっていた事を尋ねてみた。
「……聴いてなかったの?驚かずに聴いてね。あの認知症棟ねざっくり言うなら昔~々の墓場だったところに建ってるのね……ん~墓場っていうか、焼却?するところ?詳しくは知らないんだけど、土葬した人を焼く所?で、神社さんみたいな?場所があったんだけど、火葬が流行してそれを壊して更地にした場所に今の施設が建っている場所なのよ。」
ゴクリ、と生唾を飲み込む。先輩が続ける。
「神社さんみたいな場所って言ったでしょ?だからなのかあの場所では一礼した方が良いってなったみたい。特に一礼しなくても害は無いらしいんだけど、たま~に感が強い人とか?感の良いお年寄りとかは見るらしいよ~コレ。ふふふっ。」
手を前にぶらぶらと幽霊のポーズをする。
「ヤダ~。先輩!……謎が解けたような、まだの様な気がします。あの、今日忙しすぎて一礼せずに入ったら酷い怖気がして……場所を離れたら治まったんです。どう思います?」
真剣に聴いてみる。
「う~ん。あんまり聞いたことないのよね。住んでるお年寄りの方達もそんな話しないし、職員もそんな風に話さないからな~。たまにゾクゾクするけど……気になるなら、お塩持ち歩いたら?あなた多分感が強いのね。永住権持ってる人?に気に入られたんじゃない?ふふ。」
なんだか、はぐらかされたような気もするけれど、お塩は良い対策かもなと思った。
その日から、職場に行くといつも通り心の中で挨拶をする。お塩をポケットに忍ばせて。
数ヶ月が経ったある日、職場の雰囲気がザワザワしていると感じていると送迎車の事故。
2日後には、スタッフが通勤時、相手方のミスでもらい事故に遭ったが命に別状は無かった。
その次の日は、病院への受診で送迎していたワゴン車に対向車のダンプカーのタイヤが外れて事故。衝撃のせいか、乗っていたお年寄りが急変し病院へ搬送後、死亡が確認される。因果関係は不明だったが、ご家族へ謝罪するなど、車に関する事故が相次いだ。
それだけに留まらず、若いスタッフが頭痛を訴え救急搬送。脳出血で、職場復帰は不可能となった。
スタッフの間では
『この施設呪われてるんじゃない?』
と、次は自分の番では?と冗談を言う人やびくびくする人、仕事に少なからず支障が出てきた。
事態を重くみた施設長は、お祓いを依頼。
偉いお坊さんが来て、施設内くまなくお祓いして回った。
雰囲気が、ガラッと変わったがお坊さんが言うには
「ここの建物……地下の角に箱の中に入った頭蓋骨が見えました。それが悪さをしています。定期的に祓わないと障りがあります。御守りの塩をスタッフに一つずつ配って下さい。各部屋にも一つずつ置いて下さい。」
スタッフには、あまり外には言わないように注意喚起された。
お祓い後、事故は不思議なほどピタっと無くなった。
それから、数十年その施設で働いているが、相変わらず数年に一度スタッフが職場復帰できない程の病気になる。まだ地下に埋まっている頭蓋骨……その上の階は、あの認知症棟。
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