小さな町の不思議・怖い話

みつか

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夜道

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祖母から聞いたお話。

祖母が若かった頃の話。
祖母はその日仕事がとても忙しく、子供達に構ってやれなかった。

長女が14歳。次女が9歳、長男が7歳、三女が4歳だった。

夫が畑に一緒に連れて行ったり、※リアカーに乗せて集落内や浜等で遊ばせていた。

※リアカー:人が引いたり、自転車に連結させて物を運ぶ2輪の荷車のこと。

夕方になり、夕食の支度をしながら長女に

「料理を作るの手伝って!」

とお願いしたところ、長女は

「昼間妹や弟の世話をしたし、お父さんに畑の草とりも手伝わされた……長女だからって何でもさせようっちしないで!!」

機嫌が悪かったらしく文句を言いだした。
6人分の料理。1人では中々に大変である。

機嫌が悪い子は放っておくことにした。
代わりに次女が手伝いを買って出たが、あまり役には立たない。
仕方がないので、それなりに危なくない事を手伝ってもらうことにした。

すると、それを見ていた長女がさらに不貞腐れ始め

「どうせ自分なんか……!!」

そんな事を言い始めていたが、忙しく構ってやれなかったし気付かなかった。

夫はテレビを観ながら晩酌中。
長男と三女も夫の近くで遊んでいる。

日も暮れかかった頃。
玄関の引き戸のガラガラ……ピシャンッ!!
玄関から誰か来たのかと、台所からチラリと覗くも誰も居ないし、呼ぶ声もしない。
不思議に思って、夫に声をかける。

「玄関の戸の音がしたけど、誰か来たの?」

すると夫は

「イヤ……誰も来てないが。戸の音がしたや~?……ん?長女が居らんが!?まさか夕方なってから外に出たのか!?」

既に酔っている様で少し呂律が回っていない夫。

驚いた妻は、調理の手を止め夫に子供達を預けると長女を探しに夜の集落へ走り出た。

街灯は自宅の前に1個。その他は数メートルに1個ずつあるのみ。

辺りは段々と暗くなってきている。
怒った子供が何処に走ったのか全く見当がつかない。

友達の家かとも思ったが、山や川、海に行かれては日暮れに危ない。

検討がつかないまま、山側のバス停留所の建物がある方角へ名前を呼びながら走った。

バス停留所は隠れるのにもってこいだし、家からも近い。

家から約50メートル程北の山側へ急いで細い道の区画を通り抜けて走る。

細い道を抜けて大通りへ。
車の通りは少なく街頭も少ない道。長女を探して歩く。

すると、山側の家と家の間の細い通り道から灯りがチラチラ……

人が数人歩いているのかと思った瞬間!

(人じゃない!!あれは※ムンが松明(たいまつ)持って歩いてる!!)

息を殺して、民家の影に隠れると別の道から家に大急ぎで走り帰る。

妻は酷く驚き、長女どころではない!っと家に飛び帰ってきたのだった。

たまたま、どのケンムンにも見つかる事なく逃げ帰る事が出来た。


ガラガラ……ピシャッ!!
妻は息を切らして戻って来た。
夫は何があったか尋ねると

「※ムンが松明(たいまつ)持って、ハァハァ……沢山歩いてたハァハァ……長女を探せなかった……。」  ※ムン=ケンムンのこと

悲しむ妻と

「自分で出て行ったのだからそのうち帰ってくるだろう」

と呑気な夫。

夫の言う通りそっと長女は帰ってきた。
妻は怒ることなく長女の無事を喜んだ。

夜の道。昔の田舎ではよくあった事。
ケンムンの松明行脚。

うっかり遭遇すると、山に連れて行かれるかイタズラされる。

娘が遭遇せずに無事に帰って来た事に酷く感謝し喜んだ。

今では街灯が多くなって見かけなくなったが昔のケンムンは恐ろしい存在だった。

夜はムンの世界。家は人の世界。


田舎の夜道を歩く時はそれを頭に入れながら歩かないと……
いつの間にか知らない場所にケンムンに連れて行かれてしまうかもしれませんよ。


闇に潜むナニモノかに目を付けられる事の無いようにくれぐれも夜道はお気をつけ下さいませ。

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