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足元2
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外で犬の無線機が入るのを待っていると、真っ暗闇の中コツンと足元に何かがぶつかる。
小さなライトで自分の足元を照らすと、木の実が1つ転がっている。
上を見上げて
(あそこ(上)から風に吹かれて落ちてきたのね)
怖さを紛らわせる為、その様に思う事にした。
実は『足元』と言っても、足の甲の部分に上の木から風に吹かれて落ちてきた木の実ではなく《誰か》が転がさないと当たらない角度で靴のかかとに木の実が当たったのである。
知らんぷりして一歩前へ。
無線機からはピッピッピッと犬が近くに居る反応がする。
少し山を下った所からほら貝の鳴る音が聴こえる。
「プーップッ」
ザザーッザワザワ……サワサワサワー
クフークフー……ゲーコゲコゲコ……キュロキュロキュロキュロ……
色々な山の音に混ざって強い風が吹き抜ける。と同時に体が冷える。
「寒っ!」
車に戻ると上着を着け、暫く車内で留まる。
《寒い》だけでなく、少し恐怖も感じていたからだった。
虫やカエル、クフの声は聴き慣れている。
だが、おかしな方向から転がってくる『木の実』だけは真っ暗な闇の中で恐怖を掻き立てるには十分であった。
闇の中……ましてや山の中。
気を確かに持たないと、夜の山は「彼ら」のテリトリーである。
気分を落ち着かせる為に、ひと先ず車に避難した嫁。
無線が鳴り夫の声が入る。
「ザザーッ犬は……のあたり……?くる……まの中か?」
電波が飛び飛びである。
急いで車から降り電波が入りやすい所を探しながら応答する。
「ザッ……左の方向から聴こえてきたよ。」
暫くすると返事が返ってくるもののお怒りである。
「ψ✮β✟∝……車の中だら、聴こえんだろ!?外の聴こえる処で居らんのは何でよ!!分かるとこに………!」
山あいに入るのか、時々何を言っているのか分からない事もあるが、怒っているのは理解できた。
「了解……。」
一言そう答えると、外で待つ事にした。
寒いのは仕方がないし我慢出来たのだが……それよりも恐怖が勝ってしまっていた。
(はぁ……早く見つからないかしら?暗い中1人は心細い……何か居るみたいだし……視線を感じるわ……)
そんな風に考えながら暗闇の中1人ポツンと立っている。
車から数メートル離れ山の縁。
一歩踏み出せば山の斜面。慣れた人でないと転がり落ちるかもしれない場所。
危険を感じて、車の近くに急いで戻ると車の側面に寄りかかって無線を聴いている。
近づいてきたので少し車の前に歩く。
すると、かかとに「コツン」と何かが当たる。
小さなライトで足元を照らすも心もとない明かり。足元には石ばかり。
何が当たったのか理解出来なかった。
とりあえず、半歩前に進むとまたかかとの同じ部分に『コツン』と何かが当たる。
(!!何かしら?また人のかかとに!!)
少し怒り気味にまた半歩前に。
するとまた、コツン!かかとに何かが当たる。足元照らしても分からないし、周りを照らしても遠くまで照らせない。
寒さと、外で待たされワケの解らないものにイライラしながら今度は横方向に半歩ずれてみる。
何となく後ろの方向を照らすと、足元に転がってくる小石。
まるで意思を持っているようだった。
鳥肌が全身にぶわりと立つ。
恐怖に負けないように、知らんぷりを決め込み横に半歩ズレる。
かかとの毎回全く同じ場所にに狙ったように小石がコツン!
流石にキレる嫁。
「いぎーーー!!ぬがっちよ!はぐっさ!」
(キー!何でよ!【ムカつく】歯がゆいなどの意味)
足踏みをして怒る。
本当のところは、相手をしてしまっては石を転がしている《ヤツ》の思うツボなのだがつい振り返り、転がってきたであろう側溝の辺りまで歩いてみようとする。
が、途中で止めた。
もし、見てしまったら……?
くるりと向き返り、元の場所へ。
暗い木々の生い茂る山の中を見つめる。
コツン……コツン……コツン……
かかとに何かが当たっても無視する事にしたが、段々物が大きくなってきているようだった。
小石、ドングリ、松ぼっくり……
『自分にかまえ』と言わんばかり。
怖くて怖くて堪らないが、振り返らずに無視する。
(震えているのは寒いから……)
そんな風に自分に言い聞かせ、小刻みに体を揺すりながら外で待つ。
少し大きめの石をかかとにゴツンとぶつけられる。
痛みはないが、確実に大きくなっている。
それに、真後ろに気配を感じる……
呼吸まで感じる程に近い……
嫁の息は恐怖で荒くなる。
(車に一旦戻ろうか?)
そんな風に考えるも、足が進まない。
そんな時、草むらからガサガサッと物音がする。
小さな灯りで音の鳴る方を見ると、疲れ切った家の犬と夫であった。
ホッとする嫁。
早く早くと急かす。
何となく理解した夫は急いで犬をトラックの荷台に繋ぐと車を発進させる。
家に着くと、愛犬を部屋へ繋ぎ食事を与えワシワシと撫で夫は家に戻る。
山ダニが怖かったのですぐに入浴する。
嫁の様子が何だかおかしかったので
「……もしかして※ムンに何かされたわけ?」
※ムン=ケンムン
と聴いてみた。
嫁は頷くと、夫を激怒する。
「あーんな山奥の真っ暗な所に置いて行って!ムンに石ころ転がされたのよ!!怖かったんだから!!もう少し遅かったらどうにかなってたかもよ?!せめて車でまってて良いよって言ってくれたら良かったのに!!」
嫁の怒りに弱い夫は平謝りに謝った。
夫の言う事は絶対だが、嫁の怒りには夫は毎回タジタジになる。
その後は嫁を暗闇に置いて行く事はしなくなった。
もし、夫の帰りがもう少し遅くなっていたら嫁はどうなっていたのだろうか……
小さなライトで自分の足元を照らすと、木の実が1つ転がっている。
上を見上げて
(あそこ(上)から風に吹かれて落ちてきたのね)
怖さを紛らわせる為、その様に思う事にした。
実は『足元』と言っても、足の甲の部分に上の木から風に吹かれて落ちてきた木の実ではなく《誰か》が転がさないと当たらない角度で靴のかかとに木の実が当たったのである。
知らんぷりして一歩前へ。
無線機からはピッピッピッと犬が近くに居る反応がする。
少し山を下った所からほら貝の鳴る音が聴こえる。
「プーップッ」
ザザーッザワザワ……サワサワサワー
クフークフー……ゲーコゲコゲコ……キュロキュロキュロキュロ……
色々な山の音に混ざって強い風が吹き抜ける。と同時に体が冷える。
「寒っ!」
車に戻ると上着を着け、暫く車内で留まる。
《寒い》だけでなく、少し恐怖も感じていたからだった。
虫やカエル、クフの声は聴き慣れている。
だが、おかしな方向から転がってくる『木の実』だけは真っ暗な闇の中で恐怖を掻き立てるには十分であった。
闇の中……ましてや山の中。
気を確かに持たないと、夜の山は「彼ら」のテリトリーである。
気分を落ち着かせる為に、ひと先ず車に避難した嫁。
無線が鳴り夫の声が入る。
「ザザーッ犬は……のあたり……?くる……まの中か?」
電波が飛び飛びである。
急いで車から降り電波が入りやすい所を探しながら応答する。
「ザッ……左の方向から聴こえてきたよ。」
暫くすると返事が返ってくるもののお怒りである。
「ψ✮β✟∝……車の中だら、聴こえんだろ!?外の聴こえる処で居らんのは何でよ!!分かるとこに………!」
山あいに入るのか、時々何を言っているのか分からない事もあるが、怒っているのは理解できた。
「了解……。」
一言そう答えると、外で待つ事にした。
寒いのは仕方がないし我慢出来たのだが……それよりも恐怖が勝ってしまっていた。
(はぁ……早く見つからないかしら?暗い中1人は心細い……何か居るみたいだし……視線を感じるわ……)
そんな風に考えながら暗闇の中1人ポツンと立っている。
車から数メートル離れ山の縁。
一歩踏み出せば山の斜面。慣れた人でないと転がり落ちるかもしれない場所。
危険を感じて、車の近くに急いで戻ると車の側面に寄りかかって無線を聴いている。
近づいてきたので少し車の前に歩く。
すると、かかとに「コツン」と何かが当たる。
小さなライトで足元を照らすも心もとない明かり。足元には石ばかり。
何が当たったのか理解出来なかった。
とりあえず、半歩前に進むとまたかかとの同じ部分に『コツン』と何かが当たる。
(!!何かしら?また人のかかとに!!)
少し怒り気味にまた半歩前に。
するとまた、コツン!かかとに何かが当たる。足元照らしても分からないし、周りを照らしても遠くまで照らせない。
寒さと、外で待たされワケの解らないものにイライラしながら今度は横方向に半歩ずれてみる。
何となく後ろの方向を照らすと、足元に転がってくる小石。
まるで意思を持っているようだった。
鳥肌が全身にぶわりと立つ。
恐怖に負けないように、知らんぷりを決め込み横に半歩ズレる。
かかとの毎回全く同じ場所にに狙ったように小石がコツン!
流石にキレる嫁。
「いぎーーー!!ぬがっちよ!はぐっさ!」
(キー!何でよ!【ムカつく】歯がゆいなどの意味)
足踏みをして怒る。
本当のところは、相手をしてしまっては石を転がしている《ヤツ》の思うツボなのだがつい振り返り、転がってきたであろう側溝の辺りまで歩いてみようとする。
が、途中で止めた。
もし、見てしまったら……?
くるりと向き返り、元の場所へ。
暗い木々の生い茂る山の中を見つめる。
コツン……コツン……コツン……
かかとに何かが当たっても無視する事にしたが、段々物が大きくなってきているようだった。
小石、ドングリ、松ぼっくり……
『自分にかまえ』と言わんばかり。
怖くて怖くて堪らないが、振り返らずに無視する。
(震えているのは寒いから……)
そんな風に自分に言い聞かせ、小刻みに体を揺すりながら外で待つ。
少し大きめの石をかかとにゴツンとぶつけられる。
痛みはないが、確実に大きくなっている。
それに、真後ろに気配を感じる……
呼吸まで感じる程に近い……
嫁の息は恐怖で荒くなる。
(車に一旦戻ろうか?)
そんな風に考えるも、足が進まない。
そんな時、草むらからガサガサッと物音がする。
小さな灯りで音の鳴る方を見ると、疲れ切った家の犬と夫であった。
ホッとする嫁。
早く早くと急かす。
何となく理解した夫は急いで犬をトラックの荷台に繋ぐと車を発進させる。
家に着くと、愛犬を部屋へ繋ぎ食事を与えワシワシと撫で夫は家に戻る。
山ダニが怖かったのですぐに入浴する。
嫁の様子が何だかおかしかったので
「……もしかして※ムンに何かされたわけ?」
※ムン=ケンムン
と聴いてみた。
嫁は頷くと、夫を激怒する。
「あーんな山奥の真っ暗な所に置いて行って!ムンに石ころ転がされたのよ!!怖かったんだから!!もう少し遅かったらどうにかなってたかもよ?!せめて車でまってて良いよって言ってくれたら良かったのに!!」
嫁の怒りに弱い夫は平謝りに謝った。
夫の言う事は絶対だが、嫁の怒りには夫は毎回タジタジになる。
その後は嫁を暗闇に置いて行く事はしなくなった。
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