1 / 1
花
しおりを挟む
花は綺麗だ。
色鮮やかで儚くて、それでいて力強くて。
雨に濡れて少し俯いているのもなんだか可愛らしい。
都会の喧騒も、たった一輪の花で少しだけ… 少しだけ…遠のいていくような気がする。
思い返すと、僕は昔から花が好きだった。
元々病弱だった僕は学校にも殆ど行けず、仲の良い友人と呼べる者は誰一人としていなかったと思う。
ある朝、僕の机に花瓶が置かれていた。
周りを見渡すとみんなが僕を見つめていて、口元は笑っていたけど、目はとても冷たくて、これがいじめというものなのだと一目で理解した。
僕は目の前の菊の花を真っ直ぐ見据えた。
その花だけは僕に微笑みかけているような気がした。
僕はそっと花に手を添え、微笑みかけた。
周りからは暴言が飛んでくる。
でも僕は、ずっと微笑みかけた。
ツーっと…涙が溢れた。
花を家に持って帰ると、押し入れに閉まってあった花瓶にさし、そっと水を注いだ。
言葉は離さないけど、僕には嬉しそうに見えた。
翌年の春。
僕の机に菊の花を置いたクラスメイトは僕の次にターゲットになり、ストレスからおかしくなって自ら命を絶った。
本当は問い詰めたかったんだ。
でも最後まで聞けなかった。
何故あの時僕を選んだのか。
そして伝えたかった。
もう怒ってなんてないよって。
一緒に花でも見に行こうよって。
もう何年経ったかな。
桜の咲くこの季節に、君とあの菊の花を今でも思い出すんだ。
多分、これからもずっと…ずっと…。
色鮮やかで儚くて、それでいて力強くて。
雨に濡れて少し俯いているのもなんだか可愛らしい。
都会の喧騒も、たった一輪の花で少しだけ… 少しだけ…遠のいていくような気がする。
思い返すと、僕は昔から花が好きだった。
元々病弱だった僕は学校にも殆ど行けず、仲の良い友人と呼べる者は誰一人としていなかったと思う。
ある朝、僕の机に花瓶が置かれていた。
周りを見渡すとみんなが僕を見つめていて、口元は笑っていたけど、目はとても冷たくて、これがいじめというものなのだと一目で理解した。
僕は目の前の菊の花を真っ直ぐ見据えた。
その花だけは僕に微笑みかけているような気がした。
僕はそっと花に手を添え、微笑みかけた。
周りからは暴言が飛んでくる。
でも僕は、ずっと微笑みかけた。
ツーっと…涙が溢れた。
花を家に持って帰ると、押し入れに閉まってあった花瓶にさし、そっと水を注いだ。
言葉は離さないけど、僕には嬉しそうに見えた。
翌年の春。
僕の机に菊の花を置いたクラスメイトは僕の次にターゲットになり、ストレスからおかしくなって自ら命を絶った。
本当は問い詰めたかったんだ。
でも最後まで聞けなかった。
何故あの時僕を選んだのか。
そして伝えたかった。
もう怒ってなんてないよって。
一緒に花でも見に行こうよって。
もう何年経ったかな。
桜の咲くこの季節に、君とあの菊の花を今でも思い出すんだ。
多分、これからもずっと…ずっと…。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった
海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····?
友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))
貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後
空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。
魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。
そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。
すると、キースの態度が豹変して……?
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
巻き戻される運命 ~私は王太子妃になり誰かに突き落とされ死んだ、そうしたら何故か三歳の子どもに戻っていた~
アキナヌカ
恋愛
私(わたくし)レティ・アマンド・アルメニアはこの国の第一王子と結婚した、でも彼は私のことを愛さずに仕事だけを押しつけた。そうして私は形だけの王太子妃になり、やがて側室の誰かにバルコニーから突き落とされて死んだ。でも、気がついたら私は三歳の子どもに戻っていた。
私が消えたその後で(完結)
ありがとうございました。さようなら
恋愛
シビルは、代々聖女を輩出しているヘンウッド家の娘だ。
シビルは生まれながらに不吉な外見をしていたために、幼少期は辺境で生活することになる。
皇太子との婚約のために家族から呼び戻されることになる。
シビルの王都での生活は地獄そのものだった。
なぜなら、ヘンウッド家の血縁そのものの外見をした異母妹のルシンダが、家族としてそこに溶け込んでいたから。
家族はルシンダ可愛さに、シビルを身代わりにしたのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる