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第12章:深淵からの手紙
第58話:チート×チート ~アニメ脳 vs 効率厨~
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「深淵の霊廟」の内部は、その名の通り、世界の底へと続くような深い闇と静寂に包まれていた。
一歩足を踏み入れるたびに、足元の石畳が微かに鳴く。壁面には苔がびっしりと張り付き、空気中には通常のダンジョンとは比較にならないほど濃密な瘴気が漂っている。
普通の冒険者なら、この空気を吸っただけで精神を病み、発狂して引き返すレベルだ。
だが、このパーティに「普通」などという言葉は通用しない。
「うわー、暗いなぁ。雰囲気出すぎでしょ」
瞬(シュン)が、遠足気分で懐中電灯(アリス製魔導具)を振り回す。
「静粛に。足音が響く」
ゼイクが小声で注意するが、その鎧はカシャンカシャンと盛大な音を立てている。
「瘴気の濃度……致死レベルですね。解毒結界を強化しますわ」
エリーゼが淡々と杖を振るい、一行の周囲に清浄な空気を保つ。
メイは、瞬の背中にピッタリと張り付き、少し怯えながらも周囲を警戒していた。
そしてアリスは、最後尾で優雅に日傘(ダンジョン内では邪魔なだけだが)をたたみながら、ブツブツと文句を言っていた。
「湿気で髪が広がるわ。……ったく、なんでこんな汚い場所に来なきゃいけないのよ」
その時だった。
天井の闇の中から、ギギギ……という石が擦れ合う不快な音が響いた。
「……来るぞ」
ゼイクが剣を抜く。
バサバサバサッ!
頭上から無数の影が降ってきた。
石造りの翼、鋭い鉤爪、そして紅く光る眼球。
ガーゴイルだ。それも、通常の個体より二回りは大きい「重装ガーゴイル」の群れ。数は三十、いや五十はいるだろうか。
「ギャアアアアアッ!!」
先頭のガーゴイルが急降下してくる。
「下がってろ、ゼイク! ここは俺の出番だ!」
瞬が、嬉々として前に出た。
彼の脳内では、すでに壮大なBGMが再生されている。
狭い通路、迫りくる敵の大群。これぞファンタジー、これぞ冒険。
彼は、前世で見たアニメの主人公のように、右手をゆっくりと掲げた。
「ふっ……群れるしか能のない石ころ共が」
瞬はニヤリと笑い、親指と中指を重ねた。
いわゆる「指パッチン」の構えだ。
「冥府の炎に抱かれて……消えろッ!!」
**パチンッ!**
彼が指を鳴らした瞬間。
指先から、圧縮された魔力の塊が放たれた。
**ドッゴォォォォォォォォン!!!!!**
爆音。
閃光。
そして、暴風。
通路の前方一帯が、紅蓮の爆炎に包まれた。
ガーゴイルたちは悲鳴を上げる暇もなく、瞬時に蒸発し、ただの灰へと変わる。
圧倒的な火力。最強の殲滅力。
瞬は、立ち昇る煙の中で、髪をかき上げながらポーズを決めた。
「……ふ。少し熱くしすぎたか?」
完璧だ。
これぞ英雄。これぞチート。
メイからの「すごい!」という歓声と、仲間たちからの称賛が聞こえるはず――。
**スパーーーーンッ!!**
乾いた音が、爆音の余韻を切り裂いた。
瞬の後頭部に、強烈な衝撃が走る。
「いったぁぁっ!?」
瞬が涙目で振り返ると、そこには鬼の形相をしたアリスが立っていた。
手には、どこから取り出したのか、巨大なハリセン(魔導紙製)が握られている。
「あんた、バカなの!? 初心者なの!? 死にたいの!?」
「な、何すんだよ! 敵は全滅させたろ!」
「周りを見なさいよ、この脳筋!」
アリスが指差した先。
天井に、巨大な亀裂が走っていた。
パラパラと岩屑が落ちてくる。
瞬の「指パッチン爆破」の衝撃で、ダンジョンの構造自体が歪み、今にも崩落しそうになっていたのだ。
「狭い洞窟内で爆発魔法!? 生き埋めになりたいなら一人でやりなさいよ! 巻き込まれるこっちの身にもなって!」
「あ……」
瞬の顔が青ざめる。
「やべ。……アニメだと大丈夫だったのに」
「アニメは物理演算を無視してるからでしょうが! ここは現実(リアル)よ!」
その時、崩れかけた天井の隙間から、第二波のガーゴイルが雪崩れ込んできた。
さらに数は多い。百体近い大軍勢だ。
崩落寸前の通路で、これだけの数を相手にするのは自殺行為に近い。
「くっ! 瞬、防御結界を!」
ゼイクが叫ぶが、瞬はまだハリセンのダメージでフラついている。
「……どきなさい」
冷徹な声が響いた。
アリスが、瞬を押しのけて前に出た。
彼女は、杖も剣も構えていなかった。
ただ、優雅に右手を振っただけだ。指揮者がタクトを振るように。
「力っていうのはね、こうやって使うのよ」
彼女の瞳が、サファイアブルーに輝く。
その瞬間、アリスの周囲の空間に、無数の青白い幾何学模様――複雑な数式と魔法陣が展開された。
**『対象座標固定(ロックオン)』**
**『空間定義:切断(カット)』**
詠唱ではない。
それは、システムコマンドの入力に近かった。
アリスが、指先を横に薙ぐ。
シュッ。
音は、それだけだった。
爆発も、閃光もない。
ただ、空間に一本の「線」が走った。
次の瞬間。
襲いかかってきていた百体のガーゴイルたちの首が、一斉にずり落ちた。
ゴト、ゴト、ゴトゴトゴト……。
石の首が地面に転がる音だけが、静寂に戻った通路に響き渡る。
切断面は、鏡のように滑らかだった。
血も出ない(石だからだが)。粉塵も舞わない。天井にも傷一つついていない。
必要な部分だけを、必要なエネルギーだけで処理する。
究極の「効率的暴力」。
「……処理完了(クリア)」
アリスは、ふうと息を吐いて、展開していた数式を霧散させた。
その姿は、魔法使いというよりは、冷徹なプログラマーか、あるいは神の御業を見せる超越者のようだった。
シン……と静まり返る一行。
「な、なんだ今の……」
ゼイクが目を見開いて呻く。
「魔法の発動速度が理論値を超えている……。詠唱破棄どころか、構成プロセス自体が存在しないかのような……」
「美しい……」
エリーゼが、研究者として恍惚の表情を浮かべる。
「あんなに複雑な多重術式を、一瞬で演算して制御するなんて……。私の知る魔法理論とは次元が違いますわ」
アリス・ローゼンバーグ。
彼女もまた、転生者としての「チート(特典)」を持っていた。
『超高速演算処理』と『魔力効率最大化』。
世界を数値とデータとして認識し、最小の手順で最大の結果を引き出す能力。
それは、派手さはないが、ある意味で瞬の爆発魔法よりも恐ろしい力だった。
「……ふん。わかった? スマートにやるってのはこういうことよ」
アリスは髪を払い、ドヤ顔で瞬を振り返った。
だが、内心では心臓がバクバクしていた。
(やっちゃった……。また『化け物』って引かれるかな……。可愛げがないって言われるかな……)
前世でも、今世でも、彼女の頭の良さは周囲を遠ざける原因だった。
「冷たい」「機械みたい」「可愛くない」。
そう言われて、人は離れていく。
だから、彼女は身構えた。
瞬の、拒絶の言葉を待って。
しかし。
「すっげぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
瞬が、目を星にして飛びついてきた。
「お前、マジですごいな! 天才か!? いや天才だろ!」
「えっ……?」
アリスがたじろぐ。
「今の何!? 『シュッ』てやったら『ストン』って! 俺、あんな綺麗な魔法初めて見た! 芸術的すぎる!」
瞬は、アリスの両手を握りしめ、ブンブンと振った。
その顔には、嫉妬も恐怖もない。純粋な尊敬と、感動だけがあった。
「俺さ、力加減とか全然わかんなくてさ。いつも『やりすぎ』って怒られて、壊しちゃいけないものまで壊して……へこんでたんだよ」
瞬が、照れくさそうに頭をかく。
「でも、お前がいれば安心だ! 俺が暴走しても、お前が止めてくれるし、俺が雑に散らかしても、お前が綺麗に片付けてくれる!」
彼は、ニカっと笑った。
「いやぁ、これわかってくれる奴がいるって、マジで嬉しいわ。……ありがとうな、アリス」
その言葉を聞いた瞬間、アリスの胸の奥が、きゅっと締め付けられた。
わかってくれる。
私の「効率」を。私の「計算」を。
冷たい機械作業ではなく、仲間を守るための「力」として認めてくれた。
そして、私の力を必要としてくれている。
(……何よ、それ)
アリスの視界が、じわりと滲んだ。
彼女はずっと探していたのだ。
自分の背中を預けられる、対等な相手を。
自分の「賢さ」を疎まず、笑って隣に立ってくれるパートナーを。
(それは……こっちのセリフよ、バカ)
アリスは、涙がこぼれないように上を向いた。
そして、いつもの悪役令嬢の調子を取り戻して、瞬の手を振り払った。
「……バカね。勘違いしないでよ」
彼女は顔を背け、少し鼻声で言った。
「効率よくやらないと、早く帰れないでしょ。……私、あのお屋敷のふかふかのベッドじゃないと、眠れないんだから」
素直じゃない言葉。
けれど、その耳が真っ赤になっているのを、瞬は見逃さなかった。
「はいはい、わかったよお姫様。じゃあ、サクサク進もうぜ!」
瞬が歩き出す。
その背中を見ながら、アリスは小さく微笑んだ。
メイが、少し寂しそうに、けれど嬉しそうに二人を見ていた。
二人の間には、自分には入り込めない「同郷人」としての絆がある。
でも、瞬が楽しそうなら、それでいい。
ゼイクとエリーゼは、顔を見合わせてため息をついた。
「……化け物が二匹に増えたな」
「ええ。でも、これ以上ないほど頼もしいですわ」
アニメ脳の破壊神と、効率厨の演算魔女。
最強で最凶のコンビが、ダンジョンの闇を切り裂いて進んでいく。
最下層にある「真実」まで、あと少し。
一歩足を踏み入れるたびに、足元の石畳が微かに鳴く。壁面には苔がびっしりと張り付き、空気中には通常のダンジョンとは比較にならないほど濃密な瘴気が漂っている。
普通の冒険者なら、この空気を吸っただけで精神を病み、発狂して引き返すレベルだ。
だが、このパーティに「普通」などという言葉は通用しない。
「うわー、暗いなぁ。雰囲気出すぎでしょ」
瞬(シュン)が、遠足気分で懐中電灯(アリス製魔導具)を振り回す。
「静粛に。足音が響く」
ゼイクが小声で注意するが、その鎧はカシャンカシャンと盛大な音を立てている。
「瘴気の濃度……致死レベルですね。解毒結界を強化しますわ」
エリーゼが淡々と杖を振るい、一行の周囲に清浄な空気を保つ。
メイは、瞬の背中にピッタリと張り付き、少し怯えながらも周囲を警戒していた。
そしてアリスは、最後尾で優雅に日傘(ダンジョン内では邪魔なだけだが)をたたみながら、ブツブツと文句を言っていた。
「湿気で髪が広がるわ。……ったく、なんでこんな汚い場所に来なきゃいけないのよ」
その時だった。
天井の闇の中から、ギギギ……という石が擦れ合う不快な音が響いた。
「……来るぞ」
ゼイクが剣を抜く。
バサバサバサッ!
頭上から無数の影が降ってきた。
石造りの翼、鋭い鉤爪、そして紅く光る眼球。
ガーゴイルだ。それも、通常の個体より二回りは大きい「重装ガーゴイル」の群れ。数は三十、いや五十はいるだろうか。
「ギャアアアアアッ!!」
先頭のガーゴイルが急降下してくる。
「下がってろ、ゼイク! ここは俺の出番だ!」
瞬が、嬉々として前に出た。
彼の脳内では、すでに壮大なBGMが再生されている。
狭い通路、迫りくる敵の大群。これぞファンタジー、これぞ冒険。
彼は、前世で見たアニメの主人公のように、右手をゆっくりと掲げた。
「ふっ……群れるしか能のない石ころ共が」
瞬はニヤリと笑い、親指と中指を重ねた。
いわゆる「指パッチン」の構えだ。
「冥府の炎に抱かれて……消えろッ!!」
**パチンッ!**
彼が指を鳴らした瞬間。
指先から、圧縮された魔力の塊が放たれた。
**ドッゴォォォォォォォォン!!!!!**
爆音。
閃光。
そして、暴風。
通路の前方一帯が、紅蓮の爆炎に包まれた。
ガーゴイルたちは悲鳴を上げる暇もなく、瞬時に蒸発し、ただの灰へと変わる。
圧倒的な火力。最強の殲滅力。
瞬は、立ち昇る煙の中で、髪をかき上げながらポーズを決めた。
「……ふ。少し熱くしすぎたか?」
完璧だ。
これぞ英雄。これぞチート。
メイからの「すごい!」という歓声と、仲間たちからの称賛が聞こえるはず――。
**スパーーーーンッ!!**
乾いた音が、爆音の余韻を切り裂いた。
瞬の後頭部に、強烈な衝撃が走る。
「いったぁぁっ!?」
瞬が涙目で振り返ると、そこには鬼の形相をしたアリスが立っていた。
手には、どこから取り出したのか、巨大なハリセン(魔導紙製)が握られている。
「あんた、バカなの!? 初心者なの!? 死にたいの!?」
「な、何すんだよ! 敵は全滅させたろ!」
「周りを見なさいよ、この脳筋!」
アリスが指差した先。
天井に、巨大な亀裂が走っていた。
パラパラと岩屑が落ちてくる。
瞬の「指パッチン爆破」の衝撃で、ダンジョンの構造自体が歪み、今にも崩落しそうになっていたのだ。
「狭い洞窟内で爆発魔法!? 生き埋めになりたいなら一人でやりなさいよ! 巻き込まれるこっちの身にもなって!」
「あ……」
瞬の顔が青ざめる。
「やべ。……アニメだと大丈夫だったのに」
「アニメは物理演算を無視してるからでしょうが! ここは現実(リアル)よ!」
その時、崩れかけた天井の隙間から、第二波のガーゴイルが雪崩れ込んできた。
さらに数は多い。百体近い大軍勢だ。
崩落寸前の通路で、これだけの数を相手にするのは自殺行為に近い。
「くっ! 瞬、防御結界を!」
ゼイクが叫ぶが、瞬はまだハリセンのダメージでフラついている。
「……どきなさい」
冷徹な声が響いた。
アリスが、瞬を押しのけて前に出た。
彼女は、杖も剣も構えていなかった。
ただ、優雅に右手を振っただけだ。指揮者がタクトを振るように。
「力っていうのはね、こうやって使うのよ」
彼女の瞳が、サファイアブルーに輝く。
その瞬間、アリスの周囲の空間に、無数の青白い幾何学模様――複雑な数式と魔法陣が展開された。
**『対象座標固定(ロックオン)』**
**『空間定義:切断(カット)』**
詠唱ではない。
それは、システムコマンドの入力に近かった。
アリスが、指先を横に薙ぐ。
シュッ。
音は、それだけだった。
爆発も、閃光もない。
ただ、空間に一本の「線」が走った。
次の瞬間。
襲いかかってきていた百体のガーゴイルたちの首が、一斉にずり落ちた。
ゴト、ゴト、ゴトゴトゴト……。
石の首が地面に転がる音だけが、静寂に戻った通路に響き渡る。
切断面は、鏡のように滑らかだった。
血も出ない(石だからだが)。粉塵も舞わない。天井にも傷一つついていない。
必要な部分だけを、必要なエネルギーだけで処理する。
究極の「効率的暴力」。
「……処理完了(クリア)」
アリスは、ふうと息を吐いて、展開していた数式を霧散させた。
その姿は、魔法使いというよりは、冷徹なプログラマーか、あるいは神の御業を見せる超越者のようだった。
シン……と静まり返る一行。
「な、なんだ今の……」
ゼイクが目を見開いて呻く。
「魔法の発動速度が理論値を超えている……。詠唱破棄どころか、構成プロセス自体が存在しないかのような……」
「美しい……」
エリーゼが、研究者として恍惚の表情を浮かべる。
「あんなに複雑な多重術式を、一瞬で演算して制御するなんて……。私の知る魔法理論とは次元が違いますわ」
アリス・ローゼンバーグ。
彼女もまた、転生者としての「チート(特典)」を持っていた。
『超高速演算処理』と『魔力効率最大化』。
世界を数値とデータとして認識し、最小の手順で最大の結果を引き出す能力。
それは、派手さはないが、ある意味で瞬の爆発魔法よりも恐ろしい力だった。
「……ふん。わかった? スマートにやるってのはこういうことよ」
アリスは髪を払い、ドヤ顔で瞬を振り返った。
だが、内心では心臓がバクバクしていた。
(やっちゃった……。また『化け物』って引かれるかな……。可愛げがないって言われるかな……)
前世でも、今世でも、彼女の頭の良さは周囲を遠ざける原因だった。
「冷たい」「機械みたい」「可愛くない」。
そう言われて、人は離れていく。
だから、彼女は身構えた。
瞬の、拒絶の言葉を待って。
しかし。
「すっげぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
瞬が、目を星にして飛びついてきた。
「お前、マジですごいな! 天才か!? いや天才だろ!」
「えっ……?」
アリスがたじろぐ。
「今の何!? 『シュッ』てやったら『ストン』って! 俺、あんな綺麗な魔法初めて見た! 芸術的すぎる!」
瞬は、アリスの両手を握りしめ、ブンブンと振った。
その顔には、嫉妬も恐怖もない。純粋な尊敬と、感動だけがあった。
「俺さ、力加減とか全然わかんなくてさ。いつも『やりすぎ』って怒られて、壊しちゃいけないものまで壊して……へこんでたんだよ」
瞬が、照れくさそうに頭をかく。
「でも、お前がいれば安心だ! 俺が暴走しても、お前が止めてくれるし、俺が雑に散らかしても、お前が綺麗に片付けてくれる!」
彼は、ニカっと笑った。
「いやぁ、これわかってくれる奴がいるって、マジで嬉しいわ。……ありがとうな、アリス」
その言葉を聞いた瞬間、アリスの胸の奥が、きゅっと締め付けられた。
わかってくれる。
私の「効率」を。私の「計算」を。
冷たい機械作業ではなく、仲間を守るための「力」として認めてくれた。
そして、私の力を必要としてくれている。
(……何よ、それ)
アリスの視界が、じわりと滲んだ。
彼女はずっと探していたのだ。
自分の背中を預けられる、対等な相手を。
自分の「賢さ」を疎まず、笑って隣に立ってくれるパートナーを。
(それは……こっちのセリフよ、バカ)
アリスは、涙がこぼれないように上を向いた。
そして、いつもの悪役令嬢の調子を取り戻して、瞬の手を振り払った。
「……バカね。勘違いしないでよ」
彼女は顔を背け、少し鼻声で言った。
「効率よくやらないと、早く帰れないでしょ。……私、あのお屋敷のふかふかのベッドじゃないと、眠れないんだから」
素直じゃない言葉。
けれど、その耳が真っ赤になっているのを、瞬は見逃さなかった。
「はいはい、わかったよお姫様。じゃあ、サクサク進もうぜ!」
瞬が歩き出す。
その背中を見ながら、アリスは小さく微笑んだ。
メイが、少し寂しそうに、けれど嬉しそうに二人を見ていた。
二人の間には、自分には入り込めない「同郷人」としての絆がある。
でも、瞬が楽しそうなら、それでいい。
ゼイクとエリーゼは、顔を見合わせてため息をついた。
「……化け物が二匹に増えたな」
「ええ。でも、これ以上ないほど頼もしいですわ」
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