無詠唱? キャンピングカーで大冒険。虐げられた少女を拾った俺は、規格外の力と文明の利器で彼女を全力で救う件

Gaku

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第12章:深淵からの手紙

第59話:共犯者たちの対話 〜『怪物』とは、共鳴を待つ孤独な星である〜

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「よし、行くぞ! 最下層まで競争だ!」

 ガーゴイルの群れを瞬殺した余韻もそこそこに、瞬(シュン)が子供のように駆け出した。  その背中は、強敵を倒した高揚感よりも、ただ新しいオモチャを見つけた時のような純粋なワクワク感に満ちている。

「ちょっと! 走らないで! 振動で落石があったらどうすんのよ!」

 アリスは文句を言いながら日傘をたたみ、慌ててその後を追った。  口では悪態をついているが、その足取りは驚くほど軽い。

(……バカね。本当に)

 アリスは、前を行く瞬の背中を見つめながら、緩みそうになる口元を必死に引き締めた。  先ほど彼が放った言葉――『お前がいてくれてよかった』。  その響きが、まだ胸の奥でじんわりと温かい熱を持っていた。

 彼女はずっと恐れていたのだ。  自分の「効率」や「計算」が、他者には「冷徹」で「機械的」だと受け取られることを。  けれど、この脳天気な男は違った。  私の力を「すごい」と認め、「助かる」と感謝し、あまつさえ「安心だ」と言ってのけた。

(効率よくやるのを、冷たいんじゃなくて『スマート』だって……。そんなふうに言ってくれる人が、まさかこの世界にいるなんてね)

 アリスの視界が、少しだけ滲む。  彼女はずっと探していたのだ。広すぎる世界の中で、自分の背中を預けられる対等な相手を。  自分の「賢さ」を疎まず、脅威とみなさず、ただ笑って隣に立ってくれるパートナーを。

 孤独だったのは、私だけじゃなかった。  彼もまた、強すぎる力を持て余し、理解されない孤独の中にいたのだ。

(ま、少しくらいなら付き合ってあげるわよ。……乗りかかった船だしね)

 アリスはフンと鼻を鳴らすと、少しペースを上げて瞬の隣に並んだ。  言葉にしなくても通じ合う、「同郷人(チーター)」同士の共犯関係。  アニメ脳の破壊神と、効率厨の演算魔女。正反対のようでいて、凸と凹のように完璧に噛み合う二つのピースが、そこにはあった。

          ***

 そんな二人の様子を、少し離れた後方からメイが見つめていた。  彼女は、自分の胸元をギュッと握りしめる。

 二人の間には、自分には入り込めない透明な壁がある気がした。  自分には理解できない言葉、感覚、そして空気感で繋がっている二人。  少しだけ、胸がチクリと痛む。  寂しい。  けれど、それ以上に。

(瞬、楽しそう……)

 メイは微笑んだ。  瞬が、あんなに心の底から「わかってもらえた」という顔で笑っている。  それが嬉しかった。  私が入れない場所があったとしても、彼が幸せなら、それでいい。  そう思えるくらいには、メイも強くなっていた。

 その後ろで、ゼイクとエリーゼが、やれやれと顔を見合わせていた。

「……化け物が二匹に増えたな」

 ゼイクが胃薬を取り出しながらぼやく。  その表情は呆れているが、どこか頼もしさを感じているようでもあった。

「ええ。破壊と創造……いえ、破壊と整地のスペシャリストですわね。これ以上ないほど頼もしいですが、私たちの出番がなくなりそうですわ」

 エリーゼが苦笑しながら杖を握り直す。  彼らは理解していた。前を行く二人が規格外であることは間違いないが、彼らだけでは足りないものがあることを。  ブレーキ役。精神的な支柱。そして、この世界の常識を知るガイド。  それが自分たちの役割だ。

「行くぞ。置いていかれる」 「はいはい。まったく、元気な人たちですこと」

          ***

 一行が進むにつれ、ダンジョンの様相が変わってきた。  苔むした石畳は、より古く、重厚な黒曜石のような材質へと変わり、空気中に漂う魔素の濃度が肌を刺すほどに濃くなっていく。

 騒がしかった瞬とアリスも、いつしか口を閉ざしていた。  ふざけている場合ではないと、本能が告げているのだ。

 カツン、カツン。  足音だけが、静寂の回廊に吸い込まれていく。

「……見えてきたぞ」

 先頭を歩いていた瞬が足を止めた。  長い通路の先。  闇の中に、ぼんやりと蒼白い光を放つ、巨大な両開きの扉が鎮座していた。

 高さは十メートル以上あるだろうか。  表面には、古代語と思われる緻密な彫刻と、禍々しくも神聖な雰囲気を漂わせるレリーフが刻まれている。  ここが終点。  かつて「最強」と呼ばれた勇者パーティが挑み、そして散った場所。

「この奥に……」

 アリスがゴクリと喉を鳴らす。  システムによる解析(スキャン)を試みるが、扉の向こう側は強力な結界で遮断されており、何も読み取れない。  未知の領域(ブラックボックス)。

「準備はいいか?」

 瞬が振り返る。  その顔には、もうヘラヘラした笑みはなかった。  英雄としての、覚悟を決めた男の顔。

 メイが頷く。  ゼイクが剣を構える。  エリーゼが防御術式を展開する。  アリスが杖を握りしめる。

「開けるぞ」

 瞬が、重厚な扉に手をかけた。  ギギギギギギ……。  錆びついた蝶番が、悲鳴のような音を上げて動き出す。

 重い扉がゆっくりと開かれ、その隙間から、数百年間封印されていた「真実」の空気が流れ出してくる。

 最強のパーティによる、過去の書き換え(上書き)。  その最後のピースが、今、埋まろうとしていた。
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