無能と蔑まれた僕だけが知る世界の嘘。敵であるはずの怪物の少女に恋したので、人類を裏切り世界を滅ぼす。

Gaku

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第1部:養成所編

第7話:仮面の下の寂寥

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食堂での一件以来、譲と颯太、そして陽葵の間に漂う空気は、梅雨明けの、アスファルトから立ち上る陽炎のように粘り気を帯び、不快な熱を持っていた。それは単なる気まずさという言葉では片付けられない、もっと根源的な断絶の予感だった。言葉を交わすたび、その響きは虚しく宙を舞い、お互いの間に存在する透明で分厚い壁に吸い込まれて消えていく。だから、誰もが当たり障りのない天気の話題や、当たり障りのない授業の愚痴を選び、そして堰を切ったように口を閉ざした。まるで、罅の入ったガラス細工に触れるように、壊れかけた関係の核心に触れることを、誰もが心の底から怖れていたのだ。颯太の背中は以前よりも大きく、そして遠く見え、陽葵の俯いた横顔には、譲の知らない翳が差していた。

さらに追い打ちをかけるように、皮肉と自嘲を込めて名付けられた「チームJ」――譲、伊吹、玲奈、陽葵の四人、通称「地獄のカルテット」――の初合同訓練は、養成所創設以来という、不名誉極まりない枕詞付きの歴代最低評価という燦然と輝く(あるいは腐りきった)金字塔を打ち立てた。

訓練開始の合図と同時に、作戦説明を遮って「俺一人で十分だ!」と雄叫びを上げ、単騎で敵陣に突っ込んでいった猪武者、伊吹。その結果は、開始わずか三十秒で敵の集中砲火を浴び、名誉の(?)ペンキまみれでの戦線離脱だった。それを、少し離れた高台から腕を組んで眺め、氷のように冷たい笑みを浮かべていた女王様、神楽院玲奈。彼女は伊吹が脱落したのを見届けると、まるで邪魔者が消えたとでも言うように、単独で行動を開始し、その圧倒的な戦闘能力で敵を数体屠ったが、一切の連携を拒否したため、チームとしての評価には繋がらなかった。後方支援を任されていたはずの陽葵は、訓練用の怪物が放った威嚇の咆哮を聞いただけで真っ青になり、開始五分で「ご、ごめんなさい……っ」という蚊の鳴くような声を残して気を失った。そして、自分。作戦を伝えようにも猪は突進し、女王は無視を決め込み、小動物は気絶する。右往左往するばかりで何もできず、ただ混乱の渦中で立ち尽くしているうちに、背後から回り込んできた敵兵の放ったペンキ弾を後頭部に受け、視界が真っ青に染まった。

「歴代最低だ。チームとして機能していないどころか、個々の資質さえ疑うレベルだ。話にならん」

訓練後の教官の冷酷な言葉が、耳の奥で木霊する。暴走する猪武者、それを冷笑する女王様、開始五分で気絶する小動物、そして何もできずにペンキまみれになった自分。思い出すだけで、胃の腑から酸っぱいものがせり上がってくる感覚に襲われる。

人間関係の軋轢。埋めようのない才能の壁。どうしようもない自分の無力さ。それら全てが、巨大な鉛の塊となって彼の肩にのしかかる。放課後を告げるチャイムの音が、解放の合図ではなく、逃亡の合図のように聞こえた。譲は、教室に残る颯太や陽葵に一瞥もくれず、まるで何かに追われるように席を立つと、誰にも声をかけず、養成所の最も奥まった場所にある巨大な図書室へと足を向けた。

そこは、譲にとって唯一の聖域であり、同時に最も心地よい逃避場所だった。
重厚なマホガニーの観音開きの扉を、全身で押し開ける。軋むような低い音とともに、外の喧騒とは隔絶された、静謐な空間が彼を迎え入れた。高い、高いドーム型の天井は、まるで夜空を模したかのように深い青で塗られ、そこまで続く巨大な書架が、古代の森の賢者のような威厳をもって立ち並んでいる。その静寂は、幾重にも折り重ねられたビロードのように、深く、そして優しかった。

古い紙が持つ、甘く乾いた匂い。微かに漂う、知性を刺激するインクの香り。そして、革の装丁が長い年月を経て放つ、芳醇な香気。それらが混じり合い、彼のささくれだった神経を、まるで熟練の調律師が楽器を整えるかのように、ゆっくりと鎮めていく。
西陽が、壁一面にはめ込まれた巨大なステンドグラスを通り抜けていた。そこには、神話の時代に怪物を打ち倒したとされる伝説の英雄たちの姿が、色鮮やかに描かれている。赤、青、緑、黄金の光が、床に壮麗な光のモザイクを描き出し、その中を、古い書物から舞い上がった微細な塵が、まるで金色の妖精のようにキラキラと乱舞していた。
自分の規則正しい足音と、どこか遠くで誰かがページをめくる、乾いた音だけが響く空間。ここでは、戦闘能力の優劣も、家柄も、アースも一般人も関係ない。ただ、知識という普遍の真理を求める者だけが存在を許される、完璧に平等で、静謐な世界だった。譲は大きく息を吸い込み、肺に溜まった澱んだ空気を全て吐き出した。

「さて、と」

譲は気を取り直し、今日の本来の目的を思い出す。午前中に行われた「怪物解剖学」の授業。その中で、初老の教官が、自身の研究の余談としてちらりと口にした、「一部のS級怪物に見られる、脳からの神経伝達を介さない、自己完結型の超高速細胞再生能力」についての仮説。それは、個々の細胞がまるで独立した生命体のように振る舞い、周囲の状況を自己判断して再生を行うという、にわかには信じがたい現象だった。既存の生物学の常識を覆すその仮説は、教科書には一行も載っていない、最先端の研究分野だ。もし、そのメカニズムを解明し、制御、あるいは阻害する方法を見つけ出すことができれば、怪物の不死身とも思える再生能力の弱点を突く、全く新しい戦術を構築できるかもしれない。それは、直接的な戦闘能力で劣る自分が、チームに貢献できる唯一の道であるように思えた。

彼は、フロアの中央に静かに佇む司書ロボットに、キーワードを伝えて蔵書の場所を問い合わせる。滑らかな合成音声が、目的の文献が存在する棚の番号を告げた。最も奥まった、「高度生物学・未踏領域」と分類された棚へと向かう。そこは利用者が極端に少ないのか、他の棚よりも一層、空気が冷たく、静寂が深かった。まるで、時間の流れそのものが停滞しているかのようだった。

目当ての本は、一番上の、それも手を伸ばしても届かない、天井に届きそうな高さの棚に鎮座していた。
『超個体再生の原理と分子構造――アストラル体共振仮説に基づく細胞単位での時間逆行現象について』
タイトルだけでご飯三杯はいけそうな、マニアック極まりない専門書だ。背表紙の金文字は所々が擦り切れ、その難解さと、この書物が辿ってきた長い年月を物語っていた。

「よっと……」

備え付けの、年季の入ったオーク材の脚立に、軋む音を気にしながら登る。一歩、また一歩と、慎重に足を運び、一番上の段に立った。深く息を吸い、ゆっくりと手を伸ばす。指先が、ざらりとした分厚い本の背表紙に触れた。しかし、その本は、見た目から想像するよりも遥かに、ずっしりと重かった。まるで、この一冊に詰め込まれた人類の叡智の重みが、そのまま質量に変換されたかのような、鉛のインゴットのような感触。

「う、ぐぐ……っ」

歯を食いしばり、腕だけでなく、背筋、腹筋、足の指先に至るまで、全身の筋肉を総動員して、なんとか本を棚から引きずり出す。その本が完全に棚から離れた瞬間、彼の華奢な体は、完全にバランスを崩した。

「うおぉっ!?」

静寂の聖域に、己の情けない声が響き渡った。
脚立がガタリと大きく揺れ、彼の体はスローモーションのようにゆっくりと後方へ傾いていく。視界の端で、ステンドグラスの光が歪んで流れた。眼下には、通路を挟んだ向こう側の机に向かって、静かに本を読んでいる誰かの、艶やかな黒髪が見えた。
(や、やばい! 激突する! この本で殴りつける形になる! いや、それ以前に僕の短い人生もここまでか! 死因、専門書による圧殺! なんて知的な最期! いや、ちっとも嬉しくない! それより、あの子を巻き込んじゃう!)
譲が固く、固く目をつぶった、その瞬間だった。

ふわり、と体が軽くなった。
落下するはずの体にかかっていた重力が、まるでスイッチを切られたかのように、ふっと消え失せた。見えない巨大な手に優しく、しかし確かな力で支えられたかのように、傾きかけた脚立が元の位置にすっと戻り、彼の体は完璧な安定を取り戻した。何が起きたのか全く分からず、恐る恐る目を開ける。手の中には、あの鉛のように重かった専門書が、なぜか一瞬、羽のように軽く感じられ、しかし今は再びずっしりとした重みを取り戻して、しっかりと握られていた。
そして、ついさっきまで真下にいたはずの人物が、いつの間にか、音もなく隣の通路にすっくと立っていた。まるで、最初からそこにいたかのように。

「気をつけなさい。ここの本は、あなたの筋力にとっては凶器になりうるわ」

静かで、少し冷たい、けれど澄み切った鈴の音のような声。
そこにいたのは、神楽院玲奈だった。
雪のように白い肌。腰まで届く、濡れた黒曜石のような艶やかな髪は、ステンドグラスの光を受けて、七色の光沢を放っている。コンピューターグラフィックスで生成されたかのように完璧に整った顔立ち。彼女は、譲が落としそうになった本をちらりと一瞥すると、まるで何もなかったかのように、興味なさそうに自分の席へと戻っていく。その一連の動きは、水の上を滑るような、あるいは重力を感じさせない猫のような滑らかさで、彼女の常人離れした身体能力をいやでも感じさせた。

譲は、今起きた現象を理解できないまま、呆然としながら脚立を降りる。今の不可解な現象は、彼女の特殊能力なのだろうか。それとも、あまりの恐怖に見た幻覚か、ただの気のせいか。思考がまとまらない。
そっと玲奈の机の上を窺うと、そこには譲が今手にしている専門書以上に難解そうな、びっしりと数式が書き込まれた『量子色力学におけるクォーク・グルーオン・プラズマの相転移』と、古代ギリシャ語で書かれたプラトンの『国家』の原書が広げられていた。とても同級生が、それも戦闘訓練に明け暮れるエリートアースが好んで読むとは思えないラインナップに、譲は改めて、彼女が自分とは違う、遥か高みの世界の人間なのだと思い知らされた。

気まずい沈黙が、二人の間に重く流れる。何か礼を言うべきだろう。しかし、彼女の全身から放たれる「私に話しかけるな」という絶対零度のオーラが、彼の口を縫い付けてしまう。どうしたものかと思考を巡らせていると、不意に、玲奈の方が口を開いた。ページをめくる指を止めることなく。

「あなた、いつも一人ね」

それは、質問というより、ただ事実を観察し、無感情に述べただけのような響きだった。何の感情も込められていない、ガラスの破片のように冷たく無機質な言葉。
虚を突かれた譲は、一瞬言葉に詰まったが、なんとか頭を回転させ、棘を含んだささやかな反撃を試みる。
「……君こそ。誰かと一緒にいるところ、見たことがない」
玲奈は、本から目を離さないまま、小さく、まるでせせら笑うかのように鼻で笑った。
「馴れ合いは嫌いなの。時間の無駄だわ。目的のない会話、感情の垂れ流し、慰め合い……その全てが、私にとっては理解不能な行為」
その言葉は、いかにも彼女らしかった。孤高で、他者を寄せ付けない、完璧な女王。だが、譲はなぜか、そこで引き下がれなかった。食堂で颯太が、誰に言うでもなく呟いていた純粋な疑問が、まるで自分の言葉であるかのように、彼の口から滑り出た。
「じゃあ、なんでこんな場所にいるんだ? 君ほどの人なら、世界有数の大財閥、神楽院グループの令嬢で、特別指定アース。もっと楽で、安全な生き方が、いくらでもあったはずだ。望めば、何だって手に入っただろうに」

その問いに、玲奈の指が、ピタリと止まった。
彼女はゆっくりと顔を上げ、初めて、譲の目をまっすぐに見た。その瞳は、ステンドグラスを通り抜けた夕暮れの光を全て吸い込んで、底なしの湖のように深く、暗く、そして、どこか耐えがたいほどに寂しげに見えた。まるで、世界の全ての悲しみをその双眸に閉じ込めてしまったかのように。

「……あなたには、分からないわ」
「分からないから、聞いてるんだ」

譲は、自分でも驚くほど、食い下がっていた。彼女の瞳の奥に、ほんの一瞬だけ見えた寂寥の色が、彼にそうさせたのかもしれない。それは、自分と同じ種類の孤独の匂いがしたからかもしれない。
玲奈はふっと視線を逸らし、ステンドグラスの向こうに広がる、燃えるような夕焼けに目をやった。その横顔は、まるで精巧に作られたガラス細工のように、儚く、脆く、そして息をのむほどに美しかった。

「満たされることなんて、ないのよ」

ぽつりと、彼女が呟いた。
その声は、普段の彼女からは想像もつかないほど、か弱く、切実で、まるで魂の奥底から絞り出したような響きを持っていた。

「どんなに高価なドレスを着ても、どんなに素晴らしい芸術品を手に入れても、どんなに知識を詰め込んでも、どんなに人から羨望の目で見られても……心の、真ん中に、ぽっかりと大きな穴が空いているみたいで。何も、満たしてくれない。まるで、呪いみたいに。喉が渇いて、渇いて、仕方がないの。砂漠の真ん中で塩水を飲んでいるように、求めれば求めるほど、渇きは増していく」

彼女の言葉は、静まり返った図書室に、まるでインクを垂らした水のように、ゆっくりと、しかし確実に広がっていった。譲は、息をすることさえ忘れて、その痛切な告白に聞き入っていた。
富も、美貌も、才能も、この世の全てを手に入れたはずの彼女。その完璧な氷の仮面の下に、こんなにも深く、そして癒しようのない渇きが隠されていたとは。

「戦場に身を置いている間だけよ」
彼女は、再び譲に視線を戻した。その瞳は、夕焼けの赤を映して、微かに潤んでいるように見えた。
「銃声が耳元で鳴り響いて、鉄と血の匂いが鼻をついて、いつ殺されるか分からない……その、生と死の瀬戸際にいる、ほんの短い瞬間だけ。私は、自分が『生きてる』って、ほんの少しだけ感じられる。心臓が喉から飛び出しそうになって、全身の細胞が悲鳴を上げて、思考がクリアになっていく、その極限の状態でだけ。この、どうしようもない渇きを、忘れられるの」

それは、あまりにも痛々しい告白だった。譲は、かけるべき言葉を、何一つ見つけられなかった。
彼女もまた、自分とは全く違う形で、この「思い通りにならない世界」に苦しんでいたのだ。何かを埋めるために、喉が渇いた人が必死で水を求めるように、彼女は戦いという名の、最も強烈で、最も危険な刺激を求め続けている。それは、仏教で言うところの、決して満たされることのない根源的な渇望、『渇愛(かつあい)』そのものだった。彼女が持つ全てのものでは、その渇きを潤すことは決してできなかったのだ。

やがて、閉館を告げる、古風で、少し物悲しいチャイムの音が鳴り響いた。それは、まるで二人の間に生まれた束の間の理解を、強制的に終わらせる合図のように聞こえた。
その音に我に返ったように、玲奈は何も言わずに本を閉じ、静かに立ち上がる。そして、譲の横を通り過ぎる、その去り際に、彼女は彼にだけ聞こえるような、本当に小さな声で呟いた。

「あなたも、同じ目をしているわ。何かに、焦がれている目」

そう言い残して、彼女は夕暮れの光の中へと、まるで溶け込むように消えていった。後には、彼女が使っていた席から微かに漂う、リリーのような甘くも冷たい香水の香りと、先ほどよりも一層深くなった、圧倒的な静寂だけが残された。

譲は、借り出した重い専門書を抱え、一人、図書室を出る。
空は、燃え盛る炎のように、鮮やかな茜色に染まっていた。
玲奈の最後の言葉が、頭の中で何度も、何度も反響する。
『あなたも、同じ目をしているわ』
自分と彼女は、住む世界が全く違う。そう思っていた。だが、心の奥底で抱える、埋めようのない欠落感と、何かを手に入れたいと願う焦がれるような渇きだけは、もしかしたら、同じなのかもしれない。
完璧な氷の仮面の下に隠された彼女の寂寥に触れたことで、譲の心に、これまで感じたことのない、奇妙な親近感と、そして胸の奥がちくりと痛むような、微かな疼きが生まれていた。それは憐憫や同情とは違う、もっと根源的な魂の共鳴に近い感覚だった。
抱えている本の重みが、先ほどとは違う意味を持ち始めていた。それはもはや、単なる知識の塊ではない。玲奈という少女が抱える渇きの重さであり、自分自身がこれから向き合わなければならない、孤独と焦燥の重さそのもののように感じられた。
彼女が投げ込んだ小さな言葉という石は、彼の孤独な心の水面に、静かに、しかし確実に、消えることのない波紋を広げ始めていた。
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