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第4話『笑顔という名の解けない数式』
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港町リヴァリアの喧騒が、水平線の彼方に溶けて消えてから、早くも三日が過ぎ去ろうとしていた。
カイトとノアが歩む道は、まるで大地の裂け目そのものだった。それは、悠久の時をかけて波に削り取られた断崖絶壁を、蛇のように縫いながら続いている。道の幅は狭く、馬車一台がようやく通れるかどうか。足元は硬い岩盤が剥き出しになったかと思えば、次の瞬間には波風に運ばれた砂利がじゃりじゃりと心許ない音を立て、踏み外せば奈落へと吸い込まれそうな錯覚を覚えた。
右手には、どこまでも、どこまでも続く紺碧の海が広がっていた。空の青を煮詰めたような深い色合いの海面は、昼下がりの太陽の光を浴びて、まるで無数のダイヤモンドを撒き散らしたかのように、目を眩ませるほどきらきらと輝いている。水平線は緩やかな弧を描き、この世界が丸いという事実を雄弁に物語っていた。時折、海面から飛び上がった銀色の魚が、一瞬だけ陽光を反射させて再び水中に姿を消すのが見えた。
対照的に、左手には、天を突くが如くそそり立つ、荒々しい岩壁が巨人のように鎮座していた。その岩肌は、塩分を含んだ風雨に長年晒されたせいで、白と黒と赤茶色が入り混じった複雑なまだら模様を描いている。植物らしい植物はほとんど見当たらず、岩の僅かな裂け目に、しがみつくようにして生きる、くすんだ緑色の苔や、背の低い強靭な海浜植物が点在しているだけだった。その威圧的な姿は、自然の厳しさと、生命を拒絶するかのような冷たさを感じさせた。
風は、この崖道における絶対的な支配者だった。一瞬たりとも止むことなく、唸りを上げて吹き荒れている。それは湿った潮の香りを絶え間なく運び、カイトの少し伸びた黒髪を容赦なくかき乱し、額や首筋に貼り付かせた。上着の裾は常に大きくはためき、風の強さを物語っている。耳元では、びゅう、びゅう、と風が岩の隙間を通り抜ける、口笛のような音が絶え間なく響いていた。
そして、世界の律動のように、崖下からは周期的に地響きにも似た轟音が響き渡ってきた。視線を落とせば、紺碧の海から生まれた白いレースのような波が、猛烈な勢いで黒い岩肌に叩きつけられ、雪崩のように砕け散る光景が広がっている。その度におびただしい量の水飛沫が霧となって舞い上がり、風に乗って崖の上まで運ばれ、二人の頬を微かに濡らした。
カイトの心は、この三日間、まるで鉛色の雲が垂れ込めた冬の空のようだった。決して晴れることのない、重苦しい曇天。歩きながら、彼は無意識のうちに、数歩先を一定のペースで歩く少女の背中を見つめていた。ノア。その名を心の中で呟くだけで、胸の奥がきゅう、と締め付けられるような、甘くも苦しい感覚に襲われる。
原因は、火のように鮮明に自覚してしまった恋心だった。リヴァリアの港を照らす月明かりの下で、彼女の分析対象に自分が含まれていると知ったあの夜。その瞬間に芽生えた感情は、今や彼の思考の大部分を支配する巨大な樹木のように育ってしまっていた。
意識すればするほど、彼女の一挙手一投足が、スローモーションのように目に焼き付いて離れない。風に揺れる銀色の髪。感情の起伏を一切感じさせない、静かな湖面のような紫色の瞳。影を落とす長い睫毛。すっと通った鼻筋。そして、時折、状況を分析するために紡ぎ出される、完璧に人間の感情を模倣した言葉と表情。その全てが、彼の心を掴んで離さなかった。彼女が何気なく石を蹴る音、風に乱れた髪を指で払う仕草、遠くの海鳥を目で追う横顔。その一つ一つが、カイトの胸を焦がす炎の燃料となった。
(どうすれば、あいつは、本当に笑うんだ…?)
それは、カイトにとって、もはやどんな古代遺跡に眠る謎よりも、どんな強大な魔物を打ち倒すことよりも、遥かに難解で、そしてこの上なく重要な問いとなっていた。彼はこれまで、自らが持つ規格外の力で、この世界のあらゆる理不尽や難題を、まるで子供の遊びのように解決してきた。国を傾ける陰謀も、人々を恐怖に陥れる災害も、彼の前では等しく無意味だった。その万能感にも似た自負が、彼を突き動かした。
ならば、これも同じはずだ。
自分の力で、彼女の「本当の笑顔」という、この世でただ一つの答えを導き出してみせる。それは、ほとんど傲慢に近い決意表明であり、同時に、どうしようもなく純粋な願いでもあった。
その決行は、三日目の夜が明ける、ほんの少し前に行われた。
空にはまだ、夜の支配者である月が淡い光を放ち、無数の星々が最後の輝きを競い合っていた。カイトは、岩陰で毛布にくるまって穏やかな寝息を立てているノアの肩を、そっと揺さぶった。
「おい、ノア。起きろ。見せてやりたいものがある」
彼の声は、吹き抜ける風の音にかき消されそうなほど低く、だが確かな意志を宿していた。
「……ん……カイト…? まだ、夜だよ…」
ゆっくりと瞼を持ち上げたノアは、珍しく眠気をごまかせないといった風に、小さく指で目をこすった。その仕草は、カイトの知るどんな少女よりも無防備で、年相応のあどけなさを感じさせた。だが、その直後、カイトの心に冷たい疑念がよぎる。これもまた、彼女の膨大なデータの中から「眠い時の人間の反応」として最適なものを抽出し、完璧に模倣しているだけなのではないか、と。その考えに至ってしまった自分自身に、彼は小さく、誰にも聞こえない溜息をついた。胸の奥が、ちくりと痛んだ。
カイトは、まだ半分眠っているような彼女の手を引くこともなく、ただ先導するように歩き出した。彼が目指したのは、この断崖絶壁の中でもひときわ高く、海に向かって鋭く突き出た岬の先端だった。足元はごつごつとした鋭利な岩場で、一歩一歩が不安定だ。夜の最後の闇が、まるで濃紺のベルベットのように世界を覆い尽くし、すぐ先の地面の起伏さえも見えにくくしていた。
「どこに行くの…? まだ月も出てる。行動するには非効率的だよ」
背後から、ノアの少し不満そうな、しかし感情の乗らない声が聞こえてくる。
「いいから、黙ってついてこい。すぐに分かる」
カイトは振り返らずに答えた。彼の声には、有無を言わせぬ響きがあった。
やがて二人は、岬の先端にたどり着いた。そこは、まるで世界の果て、船の舳先に立っているかのような錯覚を覚える場所だった。三方を、闇に沈んだ静かな海に囲まれ、背後には切り立った崖が壁のように聳え立っている。空を見上げれば、天の川が白く巨大な帯となって頭上を横切り、数え切れないほどの星が、まるで神が零したダイヤモンドダストのように、冷たく、しかし強烈な光を放って瞬いていた。眼下からは、夜の静寂を破る、寄せては返す波の音が、地の底から響く呼吸のように聞こえてくる。
「さあ、見てろ」
カイトが、静かに、しかし確信に満ちた声で言った、まさにその時だった。
奇跡は、東の空、水平線と夜空の境界線から始まった。
ほんの一点、墨汁を垂らした水が一瞬で滲んでいくように、深い藍色の闇が、ほんのりと白み始めたのだ。それは瞬く間に、柔らかなオレンジ色の光の帯へと姿を変え、水平線に沿って左右に長く伸びていく。闇の色が、まるで巨大な画家のパレットの上で混ぜ合わされる絵の具のように、その表情を刻一刻と変えていく。深い藍色が、荘厳な紫へ。そして、紫が、少女の頬のような薔薇色へと。空という広大なキャンバスに、光という筆で、壮大なグラデーションが描かれていく。
やがて、水平線が、まるで溶かした黄金を流し込んだかのように燃えるような金色に輝いたかと思うと、その中心から、圧倒的な生命力と熱量の塊である太陽が、ゆっくりとその姿を現した。
光が、世界に溢れ出す。
それは、音もなく、しかし何よりも雄弁に、新しい一日の始まりを告げる爆発だった。夜の間に冷え切っていた崖の空気が、太陽の慈愛に満ちた熱を浴びて、みるみるうちに暖められていくのが肌で感じられた。カイトたちの影が、背後の岩壁に向かって、まるで巨人になったかのように長く長く伸びていく。そして眼下の海面は、それまでの静かな闇を脱ぎ捨て、数多の宝石を惜しげもなく撒き散らしたかのように、きらきら、きらきらと、無限の輝きを放ち始めた。
それは、神話の一幕。天地創造の瞬間。誰が見ても、ただひたすらに荘厳で、神々しく、言葉を失うほどの美しさを湛えた、世界の始まりの光景だった。
「どうだ、ノア。すごいだろ…?」
カイトは、胸に込み上げてくる熱い感動を分かち合いたい一心で、隣に立つノアに問いかけた。彼の声は、興奮で少しだけ上ずっていた。きっと、こんな途方もなく雄大な、理屈を超えた美しさの前では、彼女の鉄壁の論理も、冷静な分析も、意味をなさないはずだ。人間ならば、いや、心を持つ生き物ならば、誰もが魂を揺さぶられる光景のはずだ。
ノアは、その美しい光景を、じっと見つめていた。彼女の銀色の髪が、昇り始めた朝日に照らされて金色に輝き、その白い横顔は、まるで精巧な彫刻のように、神々しいほどの美しさを放っていた。その紫色の瞳は、燃える太陽を真っ直ぐに見据えている。カイトは、彼女の唇から漏れるであろう、感嘆の言葉を息を殺して待った。
やがて、彼女は、ゆっくりと口を開いた。その声は、朝の澄んだ空気の中で、驚くほどクリアに響いた。
「なるほどね…」
「え?」
カイトの口から、間の抜けた声が漏れた。
「太陽と、この惑星の位置関係。恒星から放出される電磁波が、惑星の自転によって地表に到達する角度が変化していく。その際の、大気圏上層から地表に至るまでの各層における光の屈折率、そして塵や水蒸気によるレイリー散乱とミー散乱の複合的な作用。それらの物理法則が、極めて正確な計算式の上で組み合わさって、こういう視覚的現象が起きるんだね。光の波長が、観測者との角度によってどう見えるか…うん、データとして、すごく興味深いな」
彼女は、感動しているのではなかった。感嘆しているのでもなかった。
ただ、目の前で繰り広げられている壮大な天体ショーを、冷静に、正確に、一人の科学者が未知の現象を観察するように、分析していただけだった。その口調は、まるで教科書を読み上げるかのように淡々としていた。
カイトの胸に、ずしりとした、冷たくて重い石が、ゆっくりと沈み込んでいくような感覚がした。太陽の光が、あれほど暖かく世界を照らしているというのに、彼の心だけが、再び深い闇の中に取り残されたようだった。
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最初の試みは、日の出の圧倒的な光と共に、見事に砕け散った。
カイトは、朝日の眩しさに目を細めながら、内心の落胆を押し殺していた。隣でノアは、何事もなかったかのように、今見た現象に関する物理データを脳内で整理しているようだった。その横顔を見ていると、カイトはまるで分厚いガラスの壁を隔てて彼女と話しているような、途方もない距離を感じずにはいられなかった。
だが、彼はまだ諦めていなかった。気を取り直し、次の手を考える。
(自然が生み出した、物理法則で説明できる美がダメなら…人間が生み出した、もっと複雑で、不合理な芸術ならどうだ?)
そうだ、人間だけが持つ、計算では割り切れない情熱や、魂の叫び。矛盾や葛藤、喜びや悲しみといった、非効率的で、しかし強烈な感情の奔流。そういったものに直接触れれば、ノアの心にも、論理では説明できない何かが響くかもしれない。データ化できない「何か」が。
その計画を実行するため、二人が次に立ち寄ったのは、芸術の都として大陸中にその名を知られる、美しい城壁都市ファミリアだった。
街に一歩足を踏み入れた瞬間、空気が変わるのが分かった。道は、灰色の石畳が何百年もの間、無数の人々の足で磨き上げられた結果、まるで鈍い銀色のようにしっとりと輝いている。道の両脇には、蜂蜜色の石材で造られた三階建て、四階建ての建物が、寸分の隙間もなくびっしりと立ち並んでいた。その一つ一つの建物の窓枠や扉には、神話の英雄や、踊る妖精、あるいは奇怪な獣といった、驚くほど精緻な彫刻が施されており、街全体がまるで巨大な美術館のようだった。
街角のあちこちから、様々な音が聞こえてくる。広場に面した建物の二階の窓からは、誰かが練習しているのだろう、フルートの澄んだ音色が風に乗って流れてくる。路地裏からは、若い詩人が壁にもたれかかり、朗々と自作の詩を歌い上げる情熱的な声が響く。カフェのテラスでは、画家たちがイーゼルを立て、行き交う人々をスケッチしている。街全体が、一つの巨大なコンサートホールであり、アトリエであり、舞台であるかのような、創造的なエネルギーに満ち溢れていた。
カイトがノアを連れて向かったのは、そのファミリアの中心部に聳え立つ、街で一番大きなオペラハウスだった。白亜の壁と黄金のドームを持つその建物は、芸術の都の象徴として、王城にも劣らない威容を誇っていた。
今宵の演目は、伝説的な吟遊詩人、エリアスの独奏会。
彼の弾くリュートの音色は、人の心を慰め、時に涙させ、時に戦場へと向かう勇気を与える、魔法の力を持つとまで言われていた。彼の奏でる音楽は、単なる音の羅列ではなく、聴く者の記憶や感情を直接揺さぶる物語そのものなのだと、人々は噂していた。そのため、チケットは発売と同時に売り切れ、闇市では数ヶ月分の給金に相当する法外な値段で取引されるほどの人気だった。
カイトは、もちろん、そんな一般市民のルールを意に介さなかった。彼は劇場の裏口から支配人の部屋へと赴き、いくつかの金貨と、ほんの少しの「無言の圧力」をかけることで、最高の席――国王が観劇の際に使用するという、舞台を真正面から見下ろせる二階のロイヤルボックス――をいとも簡単に用意させた。
劇場の中は、外の喧騒とは打って変わって、静かで荘厳な空気に満ちていた。足元には、一歩踏み出すごとに足が沈み込むような、深紅のビロードの絨毯が敷き詰められている。壁には、金箔で彩られた天使や女神のレリーフが施され、高い、高いドーム型の天井からは、巨大なシャンデリアが吊るされていた。そのシャンデリアには、数え切れないほどの魔導クリスタルが埋め込まれており、それらが放つ柔らかな光が、場内をまるで昼間のように明るく、そして幻想的に照らし出していた。
開演を待つ観客たちの、期待に満ちたざわめきが、心地よいBGMのように響いている。皆、上等な服に身を包み、その表情は一様に高揚していた。カイトは、ふと隣のノアを見た。彼女は、周囲の華やかな雰囲気にも、人々の熱気にも全く動じることなく、ただ静かに、プログラムと思しき冊子に目を通していた。その瞳は、やはり静かなままだった。
やがて、客席の明かりがゆっくりと落ち、ブザーが鳴り響くと、あれほど満ちていたざわめきが、まるで水が引くようにすっと消え失せた。完全な静寂の中、舞台の中央に、ぽつりと一つのスポットライトが灯され、そこにエリアスが一人、静かに姿を現した。彼は年の頃なら六十代だろうか。白くなった髪と深い皺が、彼の生きてきた年月の長さを物語っていた。しかし、その背筋は驚くほど真っ直ぐに伸び、その佇まいには、揺るぎない自信と威厳が感じられた。
彼が、長年使い込まれて飴色になった古びたリュートを構え、その弦を、愛おしむように、そっと爪弾いた瞬間。
劇場の空気が、震えた。
たった一音。その一音だけで、劇場にいた全ての人間が、息をすることを忘れた。紡ぎ出されたのは、あまりにも切なく、そして、言葉を絶するほどに美しいメロディ。
それは、遥か遠い昔に、愛する恋人を理不尽な運命によって失った、一人の男の物語だった。エリアスは一言も歌わない。だが、彼の指が紡ぐ音色が、全てを物語っていた。
最初の数小節は、春の陽だまりのような暖かさと喜びに満ちていた。恋人と出会い、共に過ごした幸せな日々の記憶。次にメロディは少しだけ翳りを帯び、すれ違う心の痛みや、些細な喧嘩の後の気まずい静寂を描き出す。そして、運命の歯車が狂い始める。激しくかき鳴らされる弦は、抗えない悲劇の訪れを告げ、低く、悲痛な音色は、二度と彼女に会えないと知った時の、魂が引き裂かれるような深い絶望そのものだった。
その全ての感情が、単なる音の粒となって鼓膜を揺らすのではなく、聴く者の心の最も柔らかい部分に、直接流れ込んでくるようだった。
客席のあちこちから、衣擦れの音に混じって、静かに鼻をすする音が聞こえ始めた。美しいドレスを着た貴婦人が、レースのハンカチで目元を押さえている。歴戦の勇士のような厳つい顔の男が、固く拳を握りしめ、唇を噛み締めている。カイト自身も、胸が締め付けられるような、甘美でどうしようもない感傷に囚われていた。それは、自分のものではないはずの記憶と悲しみなのに、まるで自分が体験したかのように、胸が痛んだ。
(これなら、どうだ…! 論理や物理法則じゃない。人間の、魂の叫びだぞ!)
カイトは、祈るような気持ちで、隣に座るノアの様子を、そっと窺い見た。
ノアは、舞台を、身じろぎもせずにじっと見つめていた。
その表情は、真剣そのものだった。紫色の瞳は、エリアスの指の動き、弦の震え、その全てを捉えようとするかのように、一点に集中している。彼女も、この魔法のような音楽に、心を動かされているのだろうか。その真剣な横顔は、カイトに一縷の望みを抱かせた。
やがて最後の一音が、長く、長く尾を引いて、劇場の静寂の中に溶けて消えた。数秒の沈黙。それは、まるで観客全員が、物語の世界から現実へと戻るための時間を必要としているかのようだった。そして、誰からともなく始まった拍手は、次の瞬間、嵐のような大喝采へと変わり、劇場全体を揺るがした。スタンディングオベーションは、エリアスが何度も頭を下げて舞台袖に消えても、鳴り止む気配がなかった。
劇場の外へ出ると、ひんやりとした夜風が、興奮で火照った頬に心地よかった。街は夜の帳が下り、魔導クリスタルの街灯が石畳を柔らかく照らしている。
「…どうだった、ノア」
カイトは、少しばかり声が震えるのを自覚しながら、尋ねた。今度こそ、という期待が、彼の心臓を早鐘のように打っていた。
「うん。すごく、効率的なシステムだと思った」
「…システム?」
予想の斜め上を行く、あまりにも無機質な言葉に、カイトは思わず聞き返した。
「そう、システム。あの詩人は、人間の脳がどういう音の組み合わせ、つまり周波数の変化やリズムの揺らぎに、生理的な感情反応を示すかを完璧に理解しているみたい。長調から短調への移行、不協和音による不安感の醸成、そして解決によるカタルシスの提供。物語の類型論における『喪失と再生』のパターンを、歌詞を使わずに音だけで構成している。その全てが、聴衆の涙腺や共感といった感情を、特定の方向へ誘導するために、極めて精密に設計されていた。人の心を操る、すごく高度な情報技術だね。良いサンプルデータが取れたよ。勉強になった」
カイトは、天を仰ぎたくなった。ファミリアの夜空には、美しい三日月が浮かんでいた。
感動でもなければ、共感でもない。
彼女は、一人の人間が生涯をかけて紡ぎ出した魂の叫びすら、ただの「技術」と「システム」として、完璧に分析し、解体し、データベースに保存してしまったのだ。
もう、何をしても無駄なのではないか。
そんな、諦めに似た冷たい感情が、まるで夜の闇のように、じわじわとカイトの心を支配し始めていた。
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### 3
その夜、カイトとノアは、ファミリアの城壁から少し離れた、静かな森の中で野宿をしていた。
街の喧騒は遠く、聞こえてくるのは、風が楢やブナの木の葉を揺らす、さわさわという優しい音と、時折遠くで鳴く梟の声だけだった。焚き火の炎が、パチパチと心地よい音を立てて爆ぜ、揺らめく光が二人の顔と周囲の木々の幹を、暖かなオレンジ色に染め上げている。乾いた薪の燃える、少し甘い香りが漂っていた。
カイトは、諦めきれないでいた。いや、諦めたくなかった。日の出も、最高の芸術も、彼女の心には届かなかった。だが、彼はカイトだ。この世界の理すら捻じ曲げる力を持つ存在。自分の無敵の力は、たった一人の少女の笑顔を引き出すこともできずに、こんなところで役に立たないものとして終わるのか。
いや、まだだ。まだ、試していないことがある。
自然の美でもない。人間が生み出した芸術でもない。
この世界に、まだ存在しないもの。彼女の膨大なデータベースにも、決して記録されていない、自分だけが生み出せる、全く新しい「現象」。
それならば、彼女はそれを「分析」できないはずだ。既存の知識と照合しようにも、その元となるデータが存在しないのだから。未知との遭遇。それこそが、彼女の論理の壁を打ち破る、最後の鍵かもしれない。
「ノア、ちょっと、こっちへ来てみろ」
カイトは、焚き火のそばで分厚い専門書を読んでいたノアに、静かに声をかけた。ノアは不思議そうな顔をしたが、黙って本を閉じると、彼の後についてきた。
カイトは、焚き火の光もほとんど届かない、森の奥深くへと彼女を誘った。そこは、木々の枝葉が天蓋のように空を覆い尽くし、月明かりの一筋すら差し込まない、完全な闇に包まれた小さな広場だった。自分の手さえも見えないほどの、純粋な暗闇。聞こえるのは、お互いの衣擦れの音と、自分の心臓の鼓動だけだった。
「こんな暗い場所で、何をするの? 罠でも仕掛けるつもり?」
ノアの声は、暗闇の中でも冷静さを失っていなかった。
「いいから、見てろ」
カイトは、湿った腐葉土の感触がする地面に、そっと右の手のひらを触れた。そして、目を閉じ、意識を集中させる。彼の記憶の、その最も深い場所から、かつて彼がいた別の世界で見た、ある幻想的な光景を、詳細に、鮮明に呼び起こす。霧深い森の奥、朽ちた倒木を覆い尽くす、青白い幽玄の光。
(――光れ)
心の中で、ただ一言、静かに、しかし強く命じた。
次の瞬間、奇跡が起こった。
二人の足元、カイトの手が触れていた地面から、ぽつり、と小さな光が灯った。それは、まるで真夏の夜に舞う蛍のように淡く、儚い、青白い光だった。
一つ灯った光は、まるで呼び水になったかのように、周囲に伝播していく。ぽつり、また一つ。ぽつり、ぽつり。光は、あっという間にその数を増やし、波紋が広がるように広場全体へと広がっていった。そして、数秒後には、無数の光の点が、まるで夜空を逆さにして地面に敷き詰めたかのように、一面で明滅し始めたのだ。
それは、この世界には存在しないはずの、「ヒカリゴケ」という真菌に近い生物が放つ光だった。
カイトが、彼の世界の記憶と、この世界の生命の理を、その場で組み合わせて即興で創造した、一夜限りの幻の植物。
足元を埋め尽くす青白い光は、周囲の木々の幹を、苔むした岩を、そして下草の葉を、幻想的に照らし出した。光と影が織りなすコントラストは、この世のものとは思えないほど美しく、二人の周りに、どこまでも静かで、清らかで、夢のような空間を創り上げていた。空気中の微かな塵が、光の筋の中をきらきらと舞っているのが見えた。
「これは…」
隣に立つノアが、息を呑むのが、カイトにははっきりと分かった。
「綺麗だろ…? これは、この世のどこにもない。どんな書物にも載っていない。今、この瞬間のためだけに、俺が、お前のために創った光だ」
カイトは、これが最後の切り札だと、そう思っていた。彼の声は、自分でも驚くほど穏やかだった。全ての賭けに出たギャンブラーのような心境だった。
ノアは、ゆっくりと、その光る苔が絨毯のように広がる地面の前に、屈み込んだ。そして、その無数にある光の一つを、まるで極めて貴重で、壊れやすい宝物を扱うかのように、細い指でそっとつまみ上げた。
彼女は、それを、自分の目の高さまで持ち上げる。指先で淡く光る、小さな奇跡。彼女は、それを、じっと見つめている。その横顔が、足元の光に青白く照らし出され、現実感を失わせるほど美しかった。
カイトは、固唾を飲んで、彼女の反応を待った。心臓が、喉までせり上がってくるような感覚だった。
頼む、笑ってくれ。
驚きでもいい、喜びでもいい。たとえ、それがどんな形でもいいから。今度こそ、お前の本当の顔を、見せてくれ――。
その時、だった。
ノアの唇の端が、本当に、本当にゆっくりと、曲線を描いて吊り上がっていくのを、カイトは見た。
それは、リヴァリアの夜に見せた、あの人間を模倣した完璧な笑顔ではなかった。それは、吟遊詩人の演奏を聴いていた時の、真剣な分析者の顔でもなかった。
紛れもなく、彼女自身の、心の奥底から湧き上がってきた、本物の笑みだった。
(…! 笑った…!)
カイトの心臓が、大きく、痛いほどに跳ねた。全身の血が沸騰するような、歓喜の波が押し寄せる。
やった。
ついに、やったんだ。俺は、彼女を笑わせることができたんだ。
だが、その焼けつくような歓喜は、次の瞬間、まるで氷水を浴びせられたかのように、凍りつくような戦慄へと変わった。
彼女の笑みは、カイトが心のどこかで夢見ていたような、柔らかな喜びや、無邪気な感動のそれとは、全く、全く異なっていたからだ。
それは、誰も見たことのない新種の生物を、初めて発見した生物学者が浮かべる、純粋な歓喜の笑み。
何世紀もの間、誰も解くことのできなかった難解な数式を、ついに解き明かした数学者の、恍惚とした笑み。
それは、知的生命体が、己の飽くなき探求心と、燃えるような知的好奇心が、完全に、完璧に満たされた時にだけ見せる、どこか捕食的で、獲物を見つけた肉食獣のような獰猛さすら感じさせる、勝利の笑みだった。
「…すごい」
ノアは、恍惚とした表情で、手の中の光る苔を見つめながら、震える声で呟いた。
「すごい、すごい、すごい…! なにこれ、どうなってるの? この発光の仕組みは? 既存のどの生物のデータにも、ルシフェリン-ルシフェラーゼ反応の類型にも、当てはまらない…。新しい、全く新しい生命の理(ルール)だ…! ああ、なんて美しいの…! 解析したい、分解したい、この仕組みの全てを、原子レベルで解き明かしたい…!」
その紫色の瞳は、爛々と狂的なまでに輝き、その白い頬は、かつてないほどの興奮に、ほのかに紅潮していた。
彼女は、確かに「幸せ」そうだった。カイトが今まで見た、どんな彼女よりも、生き生きとして、生命力に満ち溢れていた。
だが、その幸せは、カイトの理解とは、あまりにもかけ離れた次元に、存在していた。
カイトは、その場に、立ち尽くすしかなかった。
目の前に広がる、自分が彼女のためだけに創り出した、世界で一番美しいはずの幻想的な光景が、今は、どこか色褪せて、空虚に見えた。
勝った、と思った。彼女を笑わせるという目的は、達成したのだから。
でも、完膚なきまでに、負けたのだ。
彼女の、あの美しい笑顔は、決して、カイト自身には向けられていなかった。彼女の興味と興奮は、自分という存在を素通りして、自分が創り出した「未知の現象」そのものにだけ、ただひたすらに注がれていた。
青白い、夢のような光に照らされた、ノアの、あの捕食者のような、無邪気で、そして残酷なほどの笑顔。
その笑顔が、これから先、何度も、何度も、カイトの夢に出てきては、彼の胸を締め付けることになるのを、彼はまだ、知らなかった。
港町リヴァリアの喧騒が、水平線の彼方に溶けて消えてから、早くも三日が過ぎ去ろうとしていた。
カイトとノアが歩む道は、まるで大地の裂け目そのものだった。それは、悠久の時をかけて波に削り取られた断崖絶壁を、蛇のように縫いながら続いている。道の幅は狭く、馬車一台がようやく通れるかどうか。足元は硬い岩盤が剥き出しになったかと思えば、次の瞬間には波風に運ばれた砂利がじゃりじゃりと心許ない音を立て、踏み外せば奈落へと吸い込まれそうな錯覚を覚えた。
右手には、どこまでも、どこまでも続く紺碧の海が広がっていた。空の青を煮詰めたような深い色合いの海面は、昼下がりの太陽の光を浴びて、まるで無数のダイヤモンドを撒き散らしたかのように、目を眩ませるほどきらきらと輝いている。水平線は緩やかな弧を描き、この世界が丸いという事実を雄弁に物語っていた。時折、海面から飛び上がった銀色の魚が、一瞬だけ陽光を反射させて再び水中に姿を消すのが見えた。
対照的に、左手には、天を突くが如くそそり立つ、荒々しい岩壁が巨人のように鎮座していた。その岩肌は、塩分を含んだ風雨に長年晒されたせいで、白と黒と赤茶色が入り混じった複雑なまだら模様を描いている。植物らしい植物はほとんど見当たらず、岩の僅かな裂け目に、しがみつくようにして生きる、くすんだ緑色の苔や、背の低い強靭な海浜植物が点在しているだけだった。その威圧的な姿は、自然の厳しさと、生命を拒絶するかのような冷たさを感じさせた。
風は、この崖道における絶対的な支配者だった。一瞬たりとも止むことなく、唸りを上げて吹き荒れている。それは湿った潮の香りを絶え間なく運び、カイトの少し伸びた黒髪を容赦なくかき乱し、額や首筋に貼り付かせた。上着の裾は常に大きくはためき、風の強さを物語っている。耳元では、びゅう、びゅう、と風が岩の隙間を通り抜ける、口笛のような音が絶え間なく響いていた。
そして、世界の律動のように、崖下からは周期的に地響きにも似た轟音が響き渡ってきた。視線を落とせば、紺碧の海から生まれた白いレースのような波が、猛烈な勢いで黒い岩肌に叩きつけられ、雪崩のように砕け散る光景が広がっている。その度におびただしい量の水飛沫が霧となって舞い上がり、風に乗って崖の上まで運ばれ、二人の頬を微かに濡らした。
カイトの心は、この三日間、まるで鉛色の雲が垂れ込めた冬の空のようだった。決して晴れることのない、重苦しい曇天。歩きながら、彼は無意識のうちに、数歩先を一定のペースで歩く少女の背中を見つめていた。ノア。その名を心の中で呟くだけで、胸の奥がきゅう、と締め付けられるような、甘くも苦しい感覚に襲われる。
原因は、火のように鮮明に自覚してしまった恋心だった。リヴァリアの港を照らす月明かりの下で、彼女の分析対象に自分が含まれていると知ったあの夜。その瞬間に芽生えた感情は、今や彼の思考の大部分を支配する巨大な樹木のように育ってしまっていた。
意識すればするほど、彼女の一挙手一投足が、スローモーションのように目に焼き付いて離れない。風に揺れる銀色の髪。感情の起伏を一切感じさせない、静かな湖面のような紫色の瞳。影を落とす長い睫毛。すっと通った鼻筋。そして、時折、状況を分析するために紡ぎ出される、完璧に人間の感情を模倣した言葉と表情。その全てが、彼の心を掴んで離さなかった。彼女が何気なく石を蹴る音、風に乱れた髪を指で払う仕草、遠くの海鳥を目で追う横顔。その一つ一つが、カイトの胸を焦がす炎の燃料となった。
(どうすれば、あいつは、本当に笑うんだ…?)
それは、カイトにとって、もはやどんな古代遺跡に眠る謎よりも、どんな強大な魔物を打ち倒すことよりも、遥かに難解で、そしてこの上なく重要な問いとなっていた。彼はこれまで、自らが持つ規格外の力で、この世界のあらゆる理不尽や難題を、まるで子供の遊びのように解決してきた。国を傾ける陰謀も、人々を恐怖に陥れる災害も、彼の前では等しく無意味だった。その万能感にも似た自負が、彼を突き動かした。
ならば、これも同じはずだ。
自分の力で、彼女の「本当の笑顔」という、この世でただ一つの答えを導き出してみせる。それは、ほとんど傲慢に近い決意表明であり、同時に、どうしようもなく純粋な願いでもあった。
その決行は、三日目の夜が明ける、ほんの少し前に行われた。
空にはまだ、夜の支配者である月が淡い光を放ち、無数の星々が最後の輝きを競い合っていた。カイトは、岩陰で毛布にくるまって穏やかな寝息を立てているノアの肩を、そっと揺さぶった。
「おい、ノア。起きろ。見せてやりたいものがある」
彼の声は、吹き抜ける風の音にかき消されそうなほど低く、だが確かな意志を宿していた。
「……ん……カイト…? まだ、夜だよ…」
ゆっくりと瞼を持ち上げたノアは、珍しく眠気をごまかせないといった風に、小さく指で目をこすった。その仕草は、カイトの知るどんな少女よりも無防備で、年相応のあどけなさを感じさせた。だが、その直後、カイトの心に冷たい疑念がよぎる。これもまた、彼女の膨大なデータの中から「眠い時の人間の反応」として最適なものを抽出し、完璧に模倣しているだけなのではないか、と。その考えに至ってしまった自分自身に、彼は小さく、誰にも聞こえない溜息をついた。胸の奥が、ちくりと痛んだ。
カイトは、まだ半分眠っているような彼女の手を引くこともなく、ただ先導するように歩き出した。彼が目指したのは、この断崖絶壁の中でもひときわ高く、海に向かって鋭く突き出た岬の先端だった。足元はごつごつとした鋭利な岩場で、一歩一歩が不安定だ。夜の最後の闇が、まるで濃紺のベルベットのように世界を覆い尽くし、すぐ先の地面の起伏さえも見えにくくしていた。
「どこに行くの…? まだ月も出てる。行動するには非効率的だよ」
背後から、ノアの少し不満そうな、しかし感情の乗らない声が聞こえてくる。
「いいから、黙ってついてこい。すぐに分かる」
カイトは振り返らずに答えた。彼の声には、有無を言わせぬ響きがあった。
やがて二人は、岬の先端にたどり着いた。そこは、まるで世界の果て、船の舳先に立っているかのような錯覚を覚える場所だった。三方を、闇に沈んだ静かな海に囲まれ、背後には切り立った崖が壁のように聳え立っている。空を見上げれば、天の川が白く巨大な帯となって頭上を横切り、数え切れないほどの星が、まるで神が零したダイヤモンドダストのように、冷たく、しかし強烈な光を放って瞬いていた。眼下からは、夜の静寂を破る、寄せては返す波の音が、地の底から響く呼吸のように聞こえてくる。
「さあ、見てろ」
カイトが、静かに、しかし確信に満ちた声で言った、まさにその時だった。
奇跡は、東の空、水平線と夜空の境界線から始まった。
ほんの一点、墨汁を垂らした水が一瞬で滲んでいくように、深い藍色の闇が、ほんのりと白み始めたのだ。それは瞬く間に、柔らかなオレンジ色の光の帯へと姿を変え、水平線に沿って左右に長く伸びていく。闇の色が、まるで巨大な画家のパレットの上で混ぜ合わされる絵の具のように、その表情を刻一刻と変えていく。深い藍色が、荘厳な紫へ。そして、紫が、少女の頬のような薔薇色へと。空という広大なキャンバスに、光という筆で、壮大なグラデーションが描かれていく。
やがて、水平線が、まるで溶かした黄金を流し込んだかのように燃えるような金色に輝いたかと思うと、その中心から、圧倒的な生命力と熱量の塊である太陽が、ゆっくりとその姿を現した。
光が、世界に溢れ出す。
それは、音もなく、しかし何よりも雄弁に、新しい一日の始まりを告げる爆発だった。夜の間に冷え切っていた崖の空気が、太陽の慈愛に満ちた熱を浴びて、みるみるうちに暖められていくのが肌で感じられた。カイトたちの影が、背後の岩壁に向かって、まるで巨人になったかのように長く長く伸びていく。そして眼下の海面は、それまでの静かな闇を脱ぎ捨て、数多の宝石を惜しげもなく撒き散らしたかのように、きらきら、きらきらと、無限の輝きを放ち始めた。
それは、神話の一幕。天地創造の瞬間。誰が見ても、ただひたすらに荘厳で、神々しく、言葉を失うほどの美しさを湛えた、世界の始まりの光景だった。
「どうだ、ノア。すごいだろ…?」
カイトは、胸に込み上げてくる熱い感動を分かち合いたい一心で、隣に立つノアに問いかけた。彼の声は、興奮で少しだけ上ずっていた。きっと、こんな途方もなく雄大な、理屈を超えた美しさの前では、彼女の鉄壁の論理も、冷静な分析も、意味をなさないはずだ。人間ならば、いや、心を持つ生き物ならば、誰もが魂を揺さぶられる光景のはずだ。
ノアは、その美しい光景を、じっと見つめていた。彼女の銀色の髪が、昇り始めた朝日に照らされて金色に輝き、その白い横顔は、まるで精巧な彫刻のように、神々しいほどの美しさを放っていた。その紫色の瞳は、燃える太陽を真っ直ぐに見据えている。カイトは、彼女の唇から漏れるであろう、感嘆の言葉を息を殺して待った。
やがて、彼女は、ゆっくりと口を開いた。その声は、朝の澄んだ空気の中で、驚くほどクリアに響いた。
「なるほどね…」
「え?」
カイトの口から、間の抜けた声が漏れた。
「太陽と、この惑星の位置関係。恒星から放出される電磁波が、惑星の自転によって地表に到達する角度が変化していく。その際の、大気圏上層から地表に至るまでの各層における光の屈折率、そして塵や水蒸気によるレイリー散乱とミー散乱の複合的な作用。それらの物理法則が、極めて正確な計算式の上で組み合わさって、こういう視覚的現象が起きるんだね。光の波長が、観測者との角度によってどう見えるか…うん、データとして、すごく興味深いな」
彼女は、感動しているのではなかった。感嘆しているのでもなかった。
ただ、目の前で繰り広げられている壮大な天体ショーを、冷静に、正確に、一人の科学者が未知の現象を観察するように、分析していただけだった。その口調は、まるで教科書を読み上げるかのように淡々としていた。
カイトの胸に、ずしりとした、冷たくて重い石が、ゆっくりと沈み込んでいくような感覚がした。太陽の光が、あれほど暖かく世界を照らしているというのに、彼の心だけが、再び深い闇の中に取り残されたようだった。
---
### 2
最初の試みは、日の出の圧倒的な光と共に、見事に砕け散った。
カイトは、朝日の眩しさに目を細めながら、内心の落胆を押し殺していた。隣でノアは、何事もなかったかのように、今見た現象に関する物理データを脳内で整理しているようだった。その横顔を見ていると、カイトはまるで分厚いガラスの壁を隔てて彼女と話しているような、途方もない距離を感じずにはいられなかった。
だが、彼はまだ諦めていなかった。気を取り直し、次の手を考える。
(自然が生み出した、物理法則で説明できる美がダメなら…人間が生み出した、もっと複雑で、不合理な芸術ならどうだ?)
そうだ、人間だけが持つ、計算では割り切れない情熱や、魂の叫び。矛盾や葛藤、喜びや悲しみといった、非効率的で、しかし強烈な感情の奔流。そういったものに直接触れれば、ノアの心にも、論理では説明できない何かが響くかもしれない。データ化できない「何か」が。
その計画を実行するため、二人が次に立ち寄ったのは、芸術の都として大陸中にその名を知られる、美しい城壁都市ファミリアだった。
街に一歩足を踏み入れた瞬間、空気が変わるのが分かった。道は、灰色の石畳が何百年もの間、無数の人々の足で磨き上げられた結果、まるで鈍い銀色のようにしっとりと輝いている。道の両脇には、蜂蜜色の石材で造られた三階建て、四階建ての建物が、寸分の隙間もなくびっしりと立ち並んでいた。その一つ一つの建物の窓枠や扉には、神話の英雄や、踊る妖精、あるいは奇怪な獣といった、驚くほど精緻な彫刻が施されており、街全体がまるで巨大な美術館のようだった。
街角のあちこちから、様々な音が聞こえてくる。広場に面した建物の二階の窓からは、誰かが練習しているのだろう、フルートの澄んだ音色が風に乗って流れてくる。路地裏からは、若い詩人が壁にもたれかかり、朗々と自作の詩を歌い上げる情熱的な声が響く。カフェのテラスでは、画家たちがイーゼルを立て、行き交う人々をスケッチしている。街全体が、一つの巨大なコンサートホールであり、アトリエであり、舞台であるかのような、創造的なエネルギーに満ち溢れていた。
カイトがノアを連れて向かったのは、そのファミリアの中心部に聳え立つ、街で一番大きなオペラハウスだった。白亜の壁と黄金のドームを持つその建物は、芸術の都の象徴として、王城にも劣らない威容を誇っていた。
今宵の演目は、伝説的な吟遊詩人、エリアスの独奏会。
彼の弾くリュートの音色は、人の心を慰め、時に涙させ、時に戦場へと向かう勇気を与える、魔法の力を持つとまで言われていた。彼の奏でる音楽は、単なる音の羅列ではなく、聴く者の記憶や感情を直接揺さぶる物語そのものなのだと、人々は噂していた。そのため、チケットは発売と同時に売り切れ、闇市では数ヶ月分の給金に相当する法外な値段で取引されるほどの人気だった。
カイトは、もちろん、そんな一般市民のルールを意に介さなかった。彼は劇場の裏口から支配人の部屋へと赴き、いくつかの金貨と、ほんの少しの「無言の圧力」をかけることで、最高の席――国王が観劇の際に使用するという、舞台を真正面から見下ろせる二階のロイヤルボックス――をいとも簡単に用意させた。
劇場の中は、外の喧騒とは打って変わって、静かで荘厳な空気に満ちていた。足元には、一歩踏み出すごとに足が沈み込むような、深紅のビロードの絨毯が敷き詰められている。壁には、金箔で彩られた天使や女神のレリーフが施され、高い、高いドーム型の天井からは、巨大なシャンデリアが吊るされていた。そのシャンデリアには、数え切れないほどの魔導クリスタルが埋め込まれており、それらが放つ柔らかな光が、場内をまるで昼間のように明るく、そして幻想的に照らし出していた。
開演を待つ観客たちの、期待に満ちたざわめきが、心地よいBGMのように響いている。皆、上等な服に身を包み、その表情は一様に高揚していた。カイトは、ふと隣のノアを見た。彼女は、周囲の華やかな雰囲気にも、人々の熱気にも全く動じることなく、ただ静かに、プログラムと思しき冊子に目を通していた。その瞳は、やはり静かなままだった。
やがて、客席の明かりがゆっくりと落ち、ブザーが鳴り響くと、あれほど満ちていたざわめきが、まるで水が引くようにすっと消え失せた。完全な静寂の中、舞台の中央に、ぽつりと一つのスポットライトが灯され、そこにエリアスが一人、静かに姿を現した。彼は年の頃なら六十代だろうか。白くなった髪と深い皺が、彼の生きてきた年月の長さを物語っていた。しかし、その背筋は驚くほど真っ直ぐに伸び、その佇まいには、揺るぎない自信と威厳が感じられた。
彼が、長年使い込まれて飴色になった古びたリュートを構え、その弦を、愛おしむように、そっと爪弾いた瞬間。
劇場の空気が、震えた。
たった一音。その一音だけで、劇場にいた全ての人間が、息をすることを忘れた。紡ぎ出されたのは、あまりにも切なく、そして、言葉を絶するほどに美しいメロディ。
それは、遥か遠い昔に、愛する恋人を理不尽な運命によって失った、一人の男の物語だった。エリアスは一言も歌わない。だが、彼の指が紡ぐ音色が、全てを物語っていた。
最初の数小節は、春の陽だまりのような暖かさと喜びに満ちていた。恋人と出会い、共に過ごした幸せな日々の記憶。次にメロディは少しだけ翳りを帯び、すれ違う心の痛みや、些細な喧嘩の後の気まずい静寂を描き出す。そして、運命の歯車が狂い始める。激しくかき鳴らされる弦は、抗えない悲劇の訪れを告げ、低く、悲痛な音色は、二度と彼女に会えないと知った時の、魂が引き裂かれるような深い絶望そのものだった。
その全ての感情が、単なる音の粒となって鼓膜を揺らすのではなく、聴く者の心の最も柔らかい部分に、直接流れ込んでくるようだった。
客席のあちこちから、衣擦れの音に混じって、静かに鼻をすする音が聞こえ始めた。美しいドレスを着た貴婦人が、レースのハンカチで目元を押さえている。歴戦の勇士のような厳つい顔の男が、固く拳を握りしめ、唇を噛み締めている。カイト自身も、胸が締め付けられるような、甘美でどうしようもない感傷に囚われていた。それは、自分のものではないはずの記憶と悲しみなのに、まるで自分が体験したかのように、胸が痛んだ。
(これなら、どうだ…! 論理や物理法則じゃない。人間の、魂の叫びだぞ!)
カイトは、祈るような気持ちで、隣に座るノアの様子を、そっと窺い見た。
ノアは、舞台を、身じろぎもせずにじっと見つめていた。
その表情は、真剣そのものだった。紫色の瞳は、エリアスの指の動き、弦の震え、その全てを捉えようとするかのように、一点に集中している。彼女も、この魔法のような音楽に、心を動かされているのだろうか。その真剣な横顔は、カイトに一縷の望みを抱かせた。
やがて最後の一音が、長く、長く尾を引いて、劇場の静寂の中に溶けて消えた。数秒の沈黙。それは、まるで観客全員が、物語の世界から現実へと戻るための時間を必要としているかのようだった。そして、誰からともなく始まった拍手は、次の瞬間、嵐のような大喝采へと変わり、劇場全体を揺るがした。スタンディングオベーションは、エリアスが何度も頭を下げて舞台袖に消えても、鳴り止む気配がなかった。
劇場の外へ出ると、ひんやりとした夜風が、興奮で火照った頬に心地よかった。街は夜の帳が下り、魔導クリスタルの街灯が石畳を柔らかく照らしている。
「…どうだった、ノア」
カイトは、少しばかり声が震えるのを自覚しながら、尋ねた。今度こそ、という期待が、彼の心臓を早鐘のように打っていた。
「うん。すごく、効率的なシステムだと思った」
「…システム?」
予想の斜め上を行く、あまりにも無機質な言葉に、カイトは思わず聞き返した。
「そう、システム。あの詩人は、人間の脳がどういう音の組み合わせ、つまり周波数の変化やリズムの揺らぎに、生理的な感情反応を示すかを完璧に理解しているみたい。長調から短調への移行、不協和音による不安感の醸成、そして解決によるカタルシスの提供。物語の類型論における『喪失と再生』のパターンを、歌詞を使わずに音だけで構成している。その全てが、聴衆の涙腺や共感といった感情を、特定の方向へ誘導するために、極めて精密に設計されていた。人の心を操る、すごく高度な情報技術だね。良いサンプルデータが取れたよ。勉強になった」
カイトは、天を仰ぎたくなった。ファミリアの夜空には、美しい三日月が浮かんでいた。
感動でもなければ、共感でもない。
彼女は、一人の人間が生涯をかけて紡ぎ出した魂の叫びすら、ただの「技術」と「システム」として、完璧に分析し、解体し、データベースに保存してしまったのだ。
もう、何をしても無駄なのではないか。
そんな、諦めに似た冷たい感情が、まるで夜の闇のように、じわじわとカイトの心を支配し始めていた。
---
### 3
その夜、カイトとノアは、ファミリアの城壁から少し離れた、静かな森の中で野宿をしていた。
街の喧騒は遠く、聞こえてくるのは、風が楢やブナの木の葉を揺らす、さわさわという優しい音と、時折遠くで鳴く梟の声だけだった。焚き火の炎が、パチパチと心地よい音を立てて爆ぜ、揺らめく光が二人の顔と周囲の木々の幹を、暖かなオレンジ色に染め上げている。乾いた薪の燃える、少し甘い香りが漂っていた。
カイトは、諦めきれないでいた。いや、諦めたくなかった。日の出も、最高の芸術も、彼女の心には届かなかった。だが、彼はカイトだ。この世界の理すら捻じ曲げる力を持つ存在。自分の無敵の力は、たった一人の少女の笑顔を引き出すこともできずに、こんなところで役に立たないものとして終わるのか。
いや、まだだ。まだ、試していないことがある。
自然の美でもない。人間が生み出した芸術でもない。
この世界に、まだ存在しないもの。彼女の膨大なデータベースにも、決して記録されていない、自分だけが生み出せる、全く新しい「現象」。
それならば、彼女はそれを「分析」できないはずだ。既存の知識と照合しようにも、その元となるデータが存在しないのだから。未知との遭遇。それこそが、彼女の論理の壁を打ち破る、最後の鍵かもしれない。
「ノア、ちょっと、こっちへ来てみろ」
カイトは、焚き火のそばで分厚い専門書を読んでいたノアに、静かに声をかけた。ノアは不思議そうな顔をしたが、黙って本を閉じると、彼の後についてきた。
カイトは、焚き火の光もほとんど届かない、森の奥深くへと彼女を誘った。そこは、木々の枝葉が天蓋のように空を覆い尽くし、月明かりの一筋すら差し込まない、完全な闇に包まれた小さな広場だった。自分の手さえも見えないほどの、純粋な暗闇。聞こえるのは、お互いの衣擦れの音と、自分の心臓の鼓動だけだった。
「こんな暗い場所で、何をするの? 罠でも仕掛けるつもり?」
ノアの声は、暗闇の中でも冷静さを失っていなかった。
「いいから、見てろ」
カイトは、湿った腐葉土の感触がする地面に、そっと右の手のひらを触れた。そして、目を閉じ、意識を集中させる。彼の記憶の、その最も深い場所から、かつて彼がいた別の世界で見た、ある幻想的な光景を、詳細に、鮮明に呼び起こす。霧深い森の奥、朽ちた倒木を覆い尽くす、青白い幽玄の光。
(――光れ)
心の中で、ただ一言、静かに、しかし強く命じた。
次の瞬間、奇跡が起こった。
二人の足元、カイトの手が触れていた地面から、ぽつり、と小さな光が灯った。それは、まるで真夏の夜に舞う蛍のように淡く、儚い、青白い光だった。
一つ灯った光は、まるで呼び水になったかのように、周囲に伝播していく。ぽつり、また一つ。ぽつり、ぽつり。光は、あっという間にその数を増やし、波紋が広がるように広場全体へと広がっていった。そして、数秒後には、無数の光の点が、まるで夜空を逆さにして地面に敷き詰めたかのように、一面で明滅し始めたのだ。
それは、この世界には存在しないはずの、「ヒカリゴケ」という真菌に近い生物が放つ光だった。
カイトが、彼の世界の記憶と、この世界の生命の理を、その場で組み合わせて即興で創造した、一夜限りの幻の植物。
足元を埋め尽くす青白い光は、周囲の木々の幹を、苔むした岩を、そして下草の葉を、幻想的に照らし出した。光と影が織りなすコントラストは、この世のものとは思えないほど美しく、二人の周りに、どこまでも静かで、清らかで、夢のような空間を創り上げていた。空気中の微かな塵が、光の筋の中をきらきらと舞っているのが見えた。
「これは…」
隣に立つノアが、息を呑むのが、カイトにははっきりと分かった。
「綺麗だろ…? これは、この世のどこにもない。どんな書物にも載っていない。今、この瞬間のためだけに、俺が、お前のために創った光だ」
カイトは、これが最後の切り札だと、そう思っていた。彼の声は、自分でも驚くほど穏やかだった。全ての賭けに出たギャンブラーのような心境だった。
ノアは、ゆっくりと、その光る苔が絨毯のように広がる地面の前に、屈み込んだ。そして、その無数にある光の一つを、まるで極めて貴重で、壊れやすい宝物を扱うかのように、細い指でそっとつまみ上げた。
彼女は、それを、自分の目の高さまで持ち上げる。指先で淡く光る、小さな奇跡。彼女は、それを、じっと見つめている。その横顔が、足元の光に青白く照らし出され、現実感を失わせるほど美しかった。
カイトは、固唾を飲んで、彼女の反応を待った。心臓が、喉までせり上がってくるような感覚だった。
頼む、笑ってくれ。
驚きでもいい、喜びでもいい。たとえ、それがどんな形でもいいから。今度こそ、お前の本当の顔を、見せてくれ――。
その時、だった。
ノアの唇の端が、本当に、本当にゆっくりと、曲線を描いて吊り上がっていくのを、カイトは見た。
それは、リヴァリアの夜に見せた、あの人間を模倣した完璧な笑顔ではなかった。それは、吟遊詩人の演奏を聴いていた時の、真剣な分析者の顔でもなかった。
紛れもなく、彼女自身の、心の奥底から湧き上がってきた、本物の笑みだった。
(…! 笑った…!)
カイトの心臓が、大きく、痛いほどに跳ねた。全身の血が沸騰するような、歓喜の波が押し寄せる。
やった。
ついに、やったんだ。俺は、彼女を笑わせることができたんだ。
だが、その焼けつくような歓喜は、次の瞬間、まるで氷水を浴びせられたかのように、凍りつくような戦慄へと変わった。
彼女の笑みは、カイトが心のどこかで夢見ていたような、柔らかな喜びや、無邪気な感動のそれとは、全く、全く異なっていたからだ。
それは、誰も見たことのない新種の生物を、初めて発見した生物学者が浮かべる、純粋な歓喜の笑み。
何世紀もの間、誰も解くことのできなかった難解な数式を、ついに解き明かした数学者の、恍惚とした笑み。
それは、知的生命体が、己の飽くなき探求心と、燃えるような知的好奇心が、完全に、完璧に満たされた時にだけ見せる、どこか捕食的で、獲物を見つけた肉食獣のような獰猛さすら感じさせる、勝利の笑みだった。
「…すごい」
ノアは、恍惚とした表情で、手の中の光る苔を見つめながら、震える声で呟いた。
「すごい、すごい、すごい…! なにこれ、どうなってるの? この発光の仕組みは? 既存のどの生物のデータにも、ルシフェリン-ルシフェラーゼ反応の類型にも、当てはまらない…。新しい、全く新しい生命の理(ルール)だ…! ああ、なんて美しいの…! 解析したい、分解したい、この仕組みの全てを、原子レベルで解き明かしたい…!」
その紫色の瞳は、爛々と狂的なまでに輝き、その白い頬は、かつてないほどの興奮に、ほのかに紅潮していた。
彼女は、確かに「幸せ」そうだった。カイトが今まで見た、どんな彼女よりも、生き生きとして、生命力に満ち溢れていた。
だが、その幸せは、カイトの理解とは、あまりにもかけ離れた次元に、存在していた。
カイトは、その場に、立ち尽くすしかなかった。
目の前に広がる、自分が彼女のためだけに創り出した、世界で一番美しいはずの幻想的な光景が、今は、どこか色褪せて、空虚に見えた。
勝った、と思った。彼女を笑わせるという目的は、達成したのだから。
でも、完膚なきまでに、負けたのだ。
彼女の、あの美しい笑顔は、決して、カイト自身には向けられていなかった。彼女の興味と興奮は、自分という存在を素通りして、自分が創り出した「未知の現象」そのものにだけ、ただひたすらに注がれていた。
青白い、夢のような光に照らされた、ノアの、あの捕食者のような、無邪気で、そして残酷なほどの笑顔。
その笑顔が、これから先、何度も、何度も、カイトの夢に出てきては、彼の胸を締め付けることになるのを、彼はまだ、知らなかった。
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