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第2章:学園生活と仲間との絆
第19話:卒業の日
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期末試験における、あの天を揺るがし地を裂いたとさえ形容されるべき壮絶な大爆発。それは物理的な意味において、学園の長い歴史に燦然(あるいは惨憺)と輝く未曾有の大惨事であったことは疑いようのない事実であるが、同時に、混沌と熱狂に満ちた僕たちの学園生活がその頂点を迎えた、一つのクライマックスでもあった。そして、燃えるような夕焼けに世界が染め上げられたあの丘の上で、僕たち三人がそれぞれの未来への揺るぎない誓いを交わしてから、季節の歯車は静かに、しかし確実に回転し、数ヶ月という決して短くはない時が流れた。
長く、そして骨身に染みるほどに厳しかった冬が、ようやくその重いコートを脱ぎ捨て、支配者の座を明け渡そうとしている。世界が再び色と音、そして生命の息吹を取り戻し始める、そんな春の訪れ。僕たちの学び舎であるアステリア魔法学園の敷地内に植えられた数多の木々もまた、冬の間、来るべき時に備えて固く、固く閉ざしていた蕾を、まるで眠りから覚めた赤子が小さなこぶしを開くかのように、ゆっくりと、ためらいがちにほころばせ始めていた。その生命力に満ちた枝々の根元、その足元へと視線を落とせば、タンポポやスミレといった、春の到来を告げる小さな使者たちが、まるで長い冬の圧政からの解放を祝う民衆のように、健気に、そして誇らしげにその顔を覗かせている。一冬を越えて凍てつき、鉄のように硬直していた大地は、天から降り注ぐ温かな陽光と、山々から流れ来る清らかな雪解け水をその身にたっぷりと含み、踏みしめれば僅かに足が沈むほど、ふかふかと柔らかい感触を取り戻していた。
湿り気を帯びた土の匂いが、春という季節だけが持つ特有の、甘酸っぱくも青臭い花の香りと繊細に混じり合いながら、柔らかな風に乗って運ばれてくる。それは僕たちの鼻腔を優しく、しかし確かな存在感をもってくすぐり、意識せずとも深く息を吸い込むことを促した。見上げた空は、どこまでも、どこまでも高く澄み渡り、一点の曇りもないそのキャンバスには、突き抜けるような鮮烈な青が広がっている。その一点の染みもない天空から降り注ぐ、濾過された蜂蜜のように柔らかく、そして温かい日差しは、卒業という人生における大きな節目を間近に控えた僕たちの肩を、これまでの苦労を労わるように、そしてこれからの門出を祝福するように、優しく、ただ優しく包み込んでいた。
そう、今日この日は、僕たち三年生にとって、決して忘れることのできない一日となる。アステリア魔法学園の卒業式、その当日なのだ。
式典が厳粛に執り行われる大講堂は、その空間に足を踏み入れた者の背筋を自然と伸ばさせるような、荘厳で張り詰めた雰囲気に満ち満ちていた。見上げるほどに高い天井には、緻密で複雑な幾何学模様の装飾が、寸分の狂いもなく施されており、それはこの学園が積み重ねてきた長大な歴史と、魔法という学問の深遠さを無言のうちに物語っている。壁に等間隔で嵌め込まれた、人の背丈を優に超える巨大なステンドグラスからは、春の柔らかな光が透過することで色とりどりの光線と化し、寸分の塵もなく磨き上げられた床の冷たい石畳の上に、まるで神々の遊びを思わせるような幻想的な模様を描き出していた。その歴史と権威、そして魔法の神秘性が結晶化したかのような空間で、僕の左隣の席に腰を下ろすアンナが、周囲の厳粛な雰囲気を意にも介さず、隠す気など毛頭ないといった風情の、大きな、大きなあくびをしながら、その唇から不満をぽつりと漏らした。
「ふわあああ……。ねむい……。ほんっと、なんで卒業式なんて、こんな朝っぱらからやるのかしらね。もっとこう、お昼寝をたっぷりした後に、のんびり始めればいいのに」
彼女の何よりのトレードマークである、まるで燃え盛る炎そのものを束ねたかのような鮮烈な赤い髪も、今日ばかりは式典という場にふさわしく、白いうなじのあたりで寸分の乱れもなく綺麗に結い上げられている。普段の、嵐のように周囲を巻き込んでいく快活な印象とは少し趣を異にし、どこか淑やかで大人びて見えるその横顔。しかし、その整った唇から飛び出してくる言葉との著しいギャップが、やはり彼女はいつものアンナなのだと、僕の胸に安堵にも似た温かい感情を灯した。
「厳粛な儀式だからに決まっているだろう。少しはその脳天気な頭を、この神聖な式典にふさわしいモードに切り替えたらどうだ?まったく、君というやつは本当に、最後までしまりがないな」
アンナの反対隣、僕の右側に座るレオが、まるで彼自身の引き締まった精神を物理的に体現するかのように、ぴしりと糊のきいた新品の制服の襟を、白く長い指先で神経質そうに正しながら、周囲に響かぬよう抑制された、しかし確かな咎める響きを持った小声でアンナを窘める。彼の知性の象徴である銀縁の眼鏡、その奥にある怜悧で知的な瞳も、いつもよりどこかそわそわと、微細な焦点の揺らぎを見せているのは、決して僕の気のせいではないだろう。彼とて、この特別な一日の、特別な場の雰囲気に、少なからず心を揺さぶられているのだ。冷静沈着を装うその仮面の下で、彼の心臓もまた、僕と同じように少しだけ速いリズムを刻んでいるに違いなかった。
僕はそんな二人の、入学してから今日この日に至るまで、一体何度耳にしたか数えるのも億劫になるほど聞き慣れた、そして今となってはどうしようもなく愛おしいやり取りを、すぐ隣の席で聞きながら、自分の口元に自然と柔らかな笑みがこぼれるのを感じていた。そうだ、これが僕たちの日常だった。入学してから今日までの三年間、数え切れないほど、それこそ太陽が昇り沈むのと同じくらい当たり前に繰り返されてきた光景。だが、今日で、この当たり前すぎた日常も、本当に、本当に見納めなのか。そう思った瞬間、胸の奥深くが、きゅっと、まるで冷たい指で摘ままれたかのように、少しだけ痛んだ。寂しさ、という名前の感情が、インクが純白の紙に染み込んでいくように、じわり、じわりと心を侵食してくるのを感じた。
やがて、講堂の最も奥、一段高くなった壇上に、この学園の長たる権威と尊厳を象徴するかの如く荘厳なローブをまとった学園長が、静かな、しかし確かな足取りで立った。その姿を合図にしたかのように、それまで卒業生たちの期待と不安、そして保護者たちの感慨が入り混じって生まれていた微かなざわめきが、まるで魔法で断ち切られたかのように一瞬にして静まり返る。卒業証書の授与が、いよいよ始まるのだ。講堂の二階席に設置された巨大なパイプオルガンが、地を這うような重低音から始まる厳かなメロディを奏で始め、その音の波が僕たちの体を内側から震わせる。そして、卒業生の名前が、一人、また一人と、厳かで、しかしどこか温かみのある声で呼ばれていく。名前を呼ばれた者は、一様に緊張と誇らしさが複雑に混じり合った表情で、ぎこちなく立ち上がり、壇上へと向かって歩き出す。その少しだけ硬くなった背中を、在校生や保護者、そして僕たち仲間が、惜しみない、温かい拍手で見送った。
「――レオナルド・ヘーゼンバーグ」
やがて、凛と響く声が、レオの名前を告げた。彼は、この学年において最も優秀な成績を修めた首席卒業生であり、後ほど卒業生総代として、壇上から挨拶も務めることになっている。隣に座る彼の体が、一瞬、ぴくりと硬直したのが分かった。ごくり、と息を呑む微かな音さえ、静まり返った講堂では僕の耳に届いた。しかし、次の瞬間には、彼はすっと背筋を天に向かって伸ばし、一切の揺らぎも、ためらいも見せない、堂々とした足取りで壇上へと向かっていった。その一歩一歩は、彼のこれまでの血の滲むような努力と、それによって勝ち得た揺るぎない自信、そして輝かしい成果を、何よりも雄弁に物語っていた。同じ友人として、僕の胸は誇らしい気持ちでいっぱいになった。まるで自分のことのように、胸が熱くなる。
「――アンナ・フォン・シュバルツ」
次に、アンナの名前が呼ばれた。彼女は「へーい」と、まるで授業中に教師から不意に指名された際に答えるかのような、実に気安く、間の抜けた返事をしながら、勢いよく立ち上がった。そのいつもと寸分違わぬ彼女らしい態度に、厳粛な雰囲気に包まれていたはずの会場のあちこちから、堪えきれないといった風情の、くすくすという小さな笑い声が漏れた。しかし、壇上へと向かう彼女の横顔は、僕の角度から見ると、どこか誇りに満ち溢れ、きりりと引き締まっているように見えた。きっと彼女の中にも、この波乱万丈だった三年間で培ってきたものへの、確かな自負と感慨があるのだろう。その背中もまた、レオとは違う種類の輝きを放っていた。
そして、ついに僕の番が来た。僕の心臓が、これまでとは比較にならないほど大きく、強く、どくん、と脈打った。
「――ガク・フォン・アルベイン」
僕、ガク・フォン・アルベインの名前が、水を打ったように静まり返った大講堂の隅々にまで、くっきりと響き渡る。僕がゆっくりと、椅子が床を擦る音を立てないように注意しながら立ち上がると、講堂内の、特に後方にずらりと並んで座っている教師陣の席から、どよめきとも、長いため息とも、あるいは厄介払いができたという安堵の吐息ともつかない、なんとも形容しがたい複雑な空気が、まるで物理的な圧力のように流れてきたのを、僕は肌で、全身で感じ取っていた。それもそのはずだ。僕がこのアステリア魔法学園で過ごした三年間という月日は、良くも悪くも、後世まで語り継がれるであろう「伝説」として、教員たちの記憶に深く、深く刻み込まれているであろう出来事の連続だったのだから。
僕は内心で、誰にも気づかれぬよう、乾いた苦笑を浮かべながら、壇上へと向かう。一歩、また一歩と、冷たく硬い石畳の床を踏みしめるたびに、これまでの様々な出来事が、まるで走馬灯のように脳裏を鮮やかに駆け巡った。レオと初めて出会った、あの静寂に満ちた図書館での白熱した魔法理論に関する議論。アンナとの、どちらかが倒れるまで終わらなかった訓練場での無茶苦茶な模擬戦。そして、三人で暖炉の火を囲みながら、夜が白々と明けるまで互いの夢や他愛もないことを語り明かした、あの談話室の温もり。そのすべてが、一つとして欠けることなく、今の僕という存在を形作っている、かけがえのない構成要素なのだ。
学園長から、重厚な革製の筒に丁寧に収められた卒業証書を、厳かに受け取る、まさにその時だった。学園長は、周囲の誰にも聞こえないよう、僕にだけ届く、ひそやかな、しかし明瞭な小さな声で、こう囁いた。
「アルベイン君。君のおかげで、我が学園の備品購入費と施設修繕費の予算は、この数年間、過去の記録を全て塗り替える最高額を更新し続けることになった。頑丈であるはずの壁、床、天井は言うに及ばず、訓練用の最新鋭ゴーレムから、この図書館が誇る二度と手に入らない貴重な古書に至るまで、君が関わらなかった破壊と再生の歴史はない。ある意味において、君は学園の経済を、かつてないほどに活性化させてくれた最高の功労者じゃよ。心から、心から、ありがとう。そして、さようなら。……できれば、もう二度と、この学園の敷居を跨がないでくれたまえ」
それは、耳がちりちりと痛くなるほどの痛烈な皮肉のようでもあり、同時に、僕という存在が学園に与えたインパクトの大きさを認める、最大限の賛辞のようでもあった。そして何よりも、その言葉の最後の部分には、老教育者の切実な、心の底からの願いが込められているのが、ひしひしと、痛いほどに伝わってくる。実に、実に味わい深い、はなむけの言葉だった。僕はただ、「多大なる、そして計り知れないご迷惑を、心よりお詫び申し上げます」と心の中で深く、深く、地球の核に届くほどに頭を下げるしかなかったのだった。
***
厳粛な雰囲気の中にも、どこか卒業生を送り出す温かい愛情に包まれた卒業式が、滞りなく終わった。僕たちが学び、笑い、そして時には泣いた大講堂の外は、式典の緊張から解放された安堵感と、もう二度と戻らない学園生活への名残を惜しむ気持ちが複雑に交じり合った、独特の熱気に満ちていた。卒業生たちは、あちこちで自然発生的に小さな輪を作り、共に困難を乗り越えた友人たちと力強く肩を叩き合って互いの健闘を称え合ったり、共に過ごしたかけがえのない日々を懐かしむように語り合ったり、あるいは魔法の光が被写体を記録する不思議なカメラで、この最後の一瞬を永遠に切り取るための記念の写真を撮ったりしていた。その誰もが、未来への希望に満ちた晴れやかな笑顔の中に、拭い去ることのできない一抹の寂しさを、春の淡い光の中に滲ませている。
僕たち三人もまた、この愛すべき学園で過ごす最後の時間を、三人だけで分かち合うために、思い出の染みついた場所を巡ることにした。誰が最初に言い出すでもなく、ごく自然に、僕たちの足は、僕たちの物語がその産声を上げた、あの場所へと向かっていた。
最初に向かったのは、あの巨大な図書館だった。一歩足を踏み入れれば、そこは音という概念が支配権を失った静寂の聖域。天井まで届くほどの高さを持つ巨大な本棚が、まるで知の巨人のように迷路のごとく立ち並び、古びた羊皮紙と乾燥したインクが持つ独特の、甘くも埃っぽい匂いが空間の隅々にまで満ちている。僕とレオ、そしてアンナが、運命的に初めて出会った場所である。
「ああ、懐かしいわねえ。ここで、あんたたちが二人して、何やら小難しい顔して、眉間に深ーいシワを寄せながら、意味不明な魔導書を広げてるところに、この私が颯爽と殴り込みをかけたのが、全ての始まりだったわね」
アンナが、天を突くような高い本棚を見上げながら、まるで昨日のことのように楽しそうに当時を振り返る。彼女の言葉に、あの日の光景が、色鮮やかな記憶として僕の脳裏に蘇った。解読不能とさえ言われた難解な古代魔法の文献に、僕とレオが二人して没頭していた、あの静かな午後。そこに、実践魔法の分かりやすい参考書を探しに来たアンナが、図書館の静寂をまるでハンマーで叩き割るかのように、けたたましい足音と共に現れたのだ。
「殴り込み、とは実に人聞きの悪い表現だな。あれは、我々が行っていた極めて高尚で知的な探究の場に、君という名の、思考よりも先に手足が出ることを信条とする野蛮人が、土足で乱入してきたというだけの話だろう。おかげで僕の繊細な集中力は無残にも途切れ、どれだけ貴重な研究時間が無駄になったことか……」
レオが、いつものように、しかしその声色には明らかな親愛の情を滲ませて、軽口で返す。彼の口元には、普段の皮肉めいた笑みとは違う、柔らかな、慈しむような笑みが浮かんでいた。彼もまた、この場所での奇妙で、そして運命的な出会いを、彼の人生における最も大切な思い出の一つとして、心に深く刻んでいるのだ。僕たちはしばらく、言葉を交わすこともなく、書架の間に広がる薄暗い迷宮をゆっくりと歩いた。あの時、レオが熱心に読み耽っていた難解な魔導書が収められていた棚。アンナが血眼になって探していた実践魔法の入門書があった場所。そして、僕がうっかり小さな爆発魔法を暴発させてしまい、鬼の形相をした司書の先生に大目玉を食らった、今も少しだけ焦げ跡が残る一角。一つ一つが、決して色褪せることのない、僕たちの記憶の欠片だった。
次に僕たちが向かったのは、幾千幾万の生徒たちが流したであろう汗と、乾いた土の匂いが深く染みついた、あの広大な訓練場だ。ここでは、文字通り数え切れないほどの時間を過ごした。僕が制御不能に陥った魔法で頑丈なはずの壁をいとも容易く吹き飛ばしたり、訓練用に配備されていた高価なゴーレムを派手に自爆させたりと、数々の輝かしい伝説、あるいは二度と思い出したくもない黒歴史を打ち立てた、実に因縁深い場所でもある。
「うわあ……。ここでガクの、あの数々の、言葉にするのも憚られる『芸術作品』が生まれたのよねえ」
アンナが、今もなお壁や地面のあちこちにくっきりと残る修復の跡を、楽しそうに指さしながら言う。その目は、まるで偉大な芸術家の作品群を鑑賞しているかのようだった。
「ああ。彼の、あの全く予測不能な破壊の奔流は、僕の研究者としての魂を、いつも激しく、根底から揺さぶってくれたよ。既存の、ありとあらゆる魔法理論では到底説明がつかない不可解な現象の連続。おかげで僕の研究ノートは、君のその規格外の魔法に関する考察で、何冊も、何冊も埋まっている」
「二人とも、頼むからもうその話は勘弁してくれ……」
僕は、耳まで真っ赤に染まっているのを自覚しながら、二人を制止した。僕にとっては思い出すだけで身悶えするほど恥ずかしい失敗の数々も、この二人にとっては、僕という人間を構成する、面白おかしくて愛すべき一部分でしかないのだろう。そんな二人の反応が、少しだけ、いや、正直に言えば、かなり嬉しかった。
大勢の生徒でいつもごった返していた食堂。僕たちが決まって頼んだ、安くて量が多くて、そして時々不思議な味がした日替わりランチの味。教室の、僕がいつも座っていた窓際の席から見える、季節ごとに色を変える中庭の景色。放課後、三人で他愛もない、中身のない話をしながら、いつも腰掛けていた中庭の古いベンチの、ひんやりとした感触。一つ一つの場所に、僕たちの、取り留めのない、しかし、何物にも代えがたい、かけがえのない思い出が、一枚一枚の写真フィルムのように、鮮明に焼き付いていた。
ドタバタで、やかましくて、いつも何かしらのトラブルばかりが舞い込んでくる、そんな毎日だったけれど。今こうして、卒業という一つの区切りを前にして静かに振り返ってみれば、その全ての瞬間が、どうしようもなく愛おしく、そして、きらきらと眩い光を放つ宝物のような時間だったのだと、僕は改めて、心の底から実感するのだった。
そして、僕たちは最後に、あの丘へとやってきた。期末試験の後、三人でそれぞれの未来への、まだ漠然としていたけれど、確かな熱量を帯びた決意を語り合った、あの夕暮れの丘だ。眼下には、僕たちが三年間を過ごした王都の壮麗な街並みが、春の柔らかな日差しをその身に浴びて、穏やかに、静かに広がっている。遥か遠くに見える、この国の象徴である王城の、天を突くような尖塔が、西の空に傾き始めた太陽の光を受けて、金色から徐々に燃えるような茜色へと、その色彩を刻一刻と変え始めていた。
僕たちは、三人並んで、冬の間に栄養を蓄えて青々と茂り始めた、ふかふかの芝生の上に、ゆっくりと腰を下ろした。しばらくの間、誰も、何も喋らなかった。ただ、頬を優しく撫でていく風の音と、遠くで微かに聞こえる、人々の生活が織りなす街の喧騒だけが、僕たちの間の静寂を、心地よく通り過ぎていく。この沈黙が、不思議なほどに心地よかった。言葉になどしなくても、お互いの胸のうちにある感情が、まるでテレパシーのように伝わってくるような気がした。感謝と、寂しさと、そして未来への微かな不安と、大きな希望。
やがて、その均衡を破るように、最初に口を開いたのは、アンナだった。
「……なんか、変な感じね」
その声は、いつもの嵐のような威勢の良さが嘘のように、僅かに、しかし確かに震えていた。彼女の視線は、僕たちと同じように、眼下に広がる雄大な街並みに、ただじっと向けられている。
「明日から、もう、この景色を三人で一緒に見ることもないなんて……。そう思うと、なんだか、胸にぽっかりと、大きな穴が開いたみたい」
「……ああ」
レオも、その銀縁の眼鏡の奥にある、いつもは理知的な光を宿す瞳を静かに伏せ、短く、しかし万感の思いを込めて相槌を打った。
「少しだけ、いや、正直に言えば、まだ全く実感が湧かないな。明日になれば、またいつものように、君たちが僕の研究室に、何の断りもなく押しかけてくるような気さえしている」
寂しい。その、たった一言が、喉の奥まで込み上げてきた。熱い塊となって、そこにある。でも、僕たちは誰も、その言葉を声にして口にはしなかった。それは、僕たちの間に存在する、言葉にはされない暗黙の約束だったからだ。僕たちは、笑って別れると、心に決めていたのだから。この別れは、終わりではない。それぞれの夢を叶えるための、新しい始まりなのだと、互いに信じていたから。
僕は、ゆっくりと、芝生を掴むようにして立ち上がった。そして、まだ座っている二人に、右手を差し伸べた。
「ほら、立てよ。いつまでもそんな湿っぽい顔をするな。僕たちらしくないだろう」
アンナとレオも、一瞬だけ躊躇うように僕の顔を見上げたが、やがて僕の手を取り、力強く立ち上がった。僕たちは、誰に言われるでもなく、ごく自然に肩を寄せ合い、三人で互いの顔が見えるようにして円陣を組んだ。夕日が僕たちの輪郭を、黄金色に縁取っていた。
「絶対に、また会おう」
僕が、二人の瞳を、その奥にある魂を真っ直ぐに見つめて言うと、二人は力強く、深く頷いた。
「当たり前でしょ!次に会う時は、私、この王国で最強の騎士になってるんだから。あんたたち、その時になって腰抜かすんじゃないわよ!」
アンナが、その大きな瞳にいっぱいに浮かんだ涙を、ぐっと、持ち前の意地で堪え、無理やりいつもの強気な笑顔を作って言い放った。その笑顔は、少しだけ歪んでいたけれど、僕が見たどんな彼女の笑顔よりも、最高に輝いて見えた。
「僕もだよ。次に会う時は、古代魔法の全ての謎を、この手で解き明かしてみせる。そして、君のその無茶苦茶な魔法の、完璧な理論解説書をプレゼントしてやろう、ガク君。君の魔法は、僕にとって最高の研究対象だからね」
レオも、眼鏡の奥の瞳を潤ませながら、それでも精一杯の優しい笑顔を見せた。その言葉には、彼らしい不器用で、しかし何よりも誠実な友情が、溢れんばかりに詰まっていた。
「ああ。楽しみにしてる。二人とも、絶対に、夢を叶えろよ」
僕は、二人の顔を、この表情を、この一瞬を、永遠に忘れることがないように、網膜に、そして魂に焼き付けた。
「どんなに、どんなに遠く、離れても」
僕が、絞り出すように言う。
「進む道が、全く違っても」
アンナが、震える声で続ける。
「僕たちは、ずっと、ずっと、仲間だ」
レオが、万感の思いを込めて、締めくくった。
僕たちの手が、中央で固く、固く、もう二度と離れないと誓うように結ばれた。それは、どんな言葉よりも雄弁な、決して壊れることのない僕たちの絆の証だった。
その日、僕たちは、たくさん笑って、そして、ほんの少しだけ泣いて、それぞれの未来へと続く道へと歩き出した。それは、決して永遠の別れじゃない。未来の、今よりもっと輝かしい場所での再会を誓い合うための、希望に満ち満ちた、始まりの儀式だった。
***
その日の夕暮れ。卒業生たちが皆、未来への希望と、過去への一抹の寂しさをその胸に抱いて学園を去り、学び舎に穏やかで優しい静寂が戻ってきた頃。普段は喧騒に満ちている職員室では、マグナス教授とシモン教授が、二人きりで窓の外を静かに眺めながら、年代物の、芳醇な香りを放つ葡萄酒を、ゆっくりと酌み交わしていた。西の空を焦がす夕日が室内へと斜めに差し込み、部屋全体を、郷愁を誘うノスタルジックな茜色に染め上げている。
「……とうとう、あいつらが卒業していきましたな」
マグナス教授が、年季の入ったクリスタルのグラスをゆっくりと傾けながら、ぽつりと、まるで独り言のように呟いた。その声には、厄介な問題児たちをようやく送り出せたという安堵と、しかしそれ以上に深く、まるで手塩にかけた我が子を社会へと送り出したかのような、寂寥の念が滲んでいた。
「うむ。まさに、嵐のような、疾風怒濤の数年間じゃったわい」
シモン教授が、その長い人生の年輪を物語る、深く刻まれた目元の皺をさらに寄せ、穏やかに、そして慈しむように笑った。その皺だらけの手にあるグラスの中で、ルビーのように美しい赤い葡萄酒が、夕日の光を受けてきらきらと揺れている。
「特に、あのアルベイン家の三男坊。ガク君は、間違いなく、我がアステリア魔法学園が創立されて以来の、最高の才能であり、そして、最大の問題児じゃったな。彼の放つ魔法は、我々が知る既存のどの体系にも属さない、まさに規格外の、神の気まぐれとしか思えん代物じゃった」
「全くです。儂の胃は、あいつのせいで、もう穴だらけですよ。この数年で書かされた始末書の作成枚数ならば、この学園のどの教授にも負けん、絶対の自信がありますわ」
マグナス教授は、そう言って心底うんざりしたというように、大げさに頭を抱えてみせた。だが、その口元は、どこか誇らしげに、そして楽しそうに綻んでいるのを、長年の付き合いであるシモン教授は見逃さなかった。
「じゃが、不思議と、退屈はしませんでしたな。むしろ、あいつらがこの学園に来てからというもの、この年老いた学園が、少しだけ、本当に少しだけ若返ったような、そんな気すらしますわい。何より、生徒たちの目に、儂らが若い頃に見たような、かつてないほどの活気が宿っておりましたからな」
マグナス教授の感慨深げな言葉に、シモン教授は深く、ゆっくりと頷いた。
「ふぉっふぉっふぉ。全くだ。あの三人が揃えば、どんな不可能でさえも可能に変わるのではないか。そんな馬鹿げた期待を抱かせてくれる、不思議な魅力が、あの子らにはあった。まさに、語り継がれるべき、伝説じゃな」
「ええ。まさに、伝説、ですよ」
二人の老教授は、顔を見合わせ、静かに、そして満ち足りたように笑った。その優しく、温かい笑い声は、夕暮れの赤い光の中に、ゆっくりと、ゆっくりと溶けていった。
一人の、規格外の少年と、そのかけがえのない仲間たちが、全力で、ただひたすらに全力で駆け抜けていった青春の伝説。それは、きっとこれから先も、このアステリア魔法学園で、教師たちの酒の肴として、そして未来の生徒たちの憧れの物語として、末永く、語り継がれていくことになるのだろう。彼らがこの地に残した輝かしい軌跡は、この歴史ある学び舎の記録に、決して消えることのない鮮やかな一ページとして、確かに、永遠に刻まれたのだから。
長く、そして骨身に染みるほどに厳しかった冬が、ようやくその重いコートを脱ぎ捨て、支配者の座を明け渡そうとしている。世界が再び色と音、そして生命の息吹を取り戻し始める、そんな春の訪れ。僕たちの学び舎であるアステリア魔法学園の敷地内に植えられた数多の木々もまた、冬の間、来るべき時に備えて固く、固く閉ざしていた蕾を、まるで眠りから覚めた赤子が小さなこぶしを開くかのように、ゆっくりと、ためらいがちにほころばせ始めていた。その生命力に満ちた枝々の根元、その足元へと視線を落とせば、タンポポやスミレといった、春の到来を告げる小さな使者たちが、まるで長い冬の圧政からの解放を祝う民衆のように、健気に、そして誇らしげにその顔を覗かせている。一冬を越えて凍てつき、鉄のように硬直していた大地は、天から降り注ぐ温かな陽光と、山々から流れ来る清らかな雪解け水をその身にたっぷりと含み、踏みしめれば僅かに足が沈むほど、ふかふかと柔らかい感触を取り戻していた。
湿り気を帯びた土の匂いが、春という季節だけが持つ特有の、甘酸っぱくも青臭い花の香りと繊細に混じり合いながら、柔らかな風に乗って運ばれてくる。それは僕たちの鼻腔を優しく、しかし確かな存在感をもってくすぐり、意識せずとも深く息を吸い込むことを促した。見上げた空は、どこまでも、どこまでも高く澄み渡り、一点の曇りもないそのキャンバスには、突き抜けるような鮮烈な青が広がっている。その一点の染みもない天空から降り注ぐ、濾過された蜂蜜のように柔らかく、そして温かい日差しは、卒業という人生における大きな節目を間近に控えた僕たちの肩を、これまでの苦労を労わるように、そしてこれからの門出を祝福するように、優しく、ただ優しく包み込んでいた。
そう、今日この日は、僕たち三年生にとって、決して忘れることのできない一日となる。アステリア魔法学園の卒業式、その当日なのだ。
式典が厳粛に執り行われる大講堂は、その空間に足を踏み入れた者の背筋を自然と伸ばさせるような、荘厳で張り詰めた雰囲気に満ち満ちていた。見上げるほどに高い天井には、緻密で複雑な幾何学模様の装飾が、寸分の狂いもなく施されており、それはこの学園が積み重ねてきた長大な歴史と、魔法という学問の深遠さを無言のうちに物語っている。壁に等間隔で嵌め込まれた、人の背丈を優に超える巨大なステンドグラスからは、春の柔らかな光が透過することで色とりどりの光線と化し、寸分の塵もなく磨き上げられた床の冷たい石畳の上に、まるで神々の遊びを思わせるような幻想的な模様を描き出していた。その歴史と権威、そして魔法の神秘性が結晶化したかのような空間で、僕の左隣の席に腰を下ろすアンナが、周囲の厳粛な雰囲気を意にも介さず、隠す気など毛頭ないといった風情の、大きな、大きなあくびをしながら、その唇から不満をぽつりと漏らした。
「ふわあああ……。ねむい……。ほんっと、なんで卒業式なんて、こんな朝っぱらからやるのかしらね。もっとこう、お昼寝をたっぷりした後に、のんびり始めればいいのに」
彼女の何よりのトレードマークである、まるで燃え盛る炎そのものを束ねたかのような鮮烈な赤い髪も、今日ばかりは式典という場にふさわしく、白いうなじのあたりで寸分の乱れもなく綺麗に結い上げられている。普段の、嵐のように周囲を巻き込んでいく快活な印象とは少し趣を異にし、どこか淑やかで大人びて見えるその横顔。しかし、その整った唇から飛び出してくる言葉との著しいギャップが、やはり彼女はいつものアンナなのだと、僕の胸に安堵にも似た温かい感情を灯した。
「厳粛な儀式だからに決まっているだろう。少しはその脳天気な頭を、この神聖な式典にふさわしいモードに切り替えたらどうだ?まったく、君というやつは本当に、最後までしまりがないな」
アンナの反対隣、僕の右側に座るレオが、まるで彼自身の引き締まった精神を物理的に体現するかのように、ぴしりと糊のきいた新品の制服の襟を、白く長い指先で神経質そうに正しながら、周囲に響かぬよう抑制された、しかし確かな咎める響きを持った小声でアンナを窘める。彼の知性の象徴である銀縁の眼鏡、その奥にある怜悧で知的な瞳も、いつもよりどこかそわそわと、微細な焦点の揺らぎを見せているのは、決して僕の気のせいではないだろう。彼とて、この特別な一日の、特別な場の雰囲気に、少なからず心を揺さぶられているのだ。冷静沈着を装うその仮面の下で、彼の心臓もまた、僕と同じように少しだけ速いリズムを刻んでいるに違いなかった。
僕はそんな二人の、入学してから今日この日に至るまで、一体何度耳にしたか数えるのも億劫になるほど聞き慣れた、そして今となってはどうしようもなく愛おしいやり取りを、すぐ隣の席で聞きながら、自分の口元に自然と柔らかな笑みがこぼれるのを感じていた。そうだ、これが僕たちの日常だった。入学してから今日までの三年間、数え切れないほど、それこそ太陽が昇り沈むのと同じくらい当たり前に繰り返されてきた光景。だが、今日で、この当たり前すぎた日常も、本当に、本当に見納めなのか。そう思った瞬間、胸の奥深くが、きゅっと、まるで冷たい指で摘ままれたかのように、少しだけ痛んだ。寂しさ、という名前の感情が、インクが純白の紙に染み込んでいくように、じわり、じわりと心を侵食してくるのを感じた。
やがて、講堂の最も奥、一段高くなった壇上に、この学園の長たる権威と尊厳を象徴するかの如く荘厳なローブをまとった学園長が、静かな、しかし確かな足取りで立った。その姿を合図にしたかのように、それまで卒業生たちの期待と不安、そして保護者たちの感慨が入り混じって生まれていた微かなざわめきが、まるで魔法で断ち切られたかのように一瞬にして静まり返る。卒業証書の授与が、いよいよ始まるのだ。講堂の二階席に設置された巨大なパイプオルガンが、地を這うような重低音から始まる厳かなメロディを奏で始め、その音の波が僕たちの体を内側から震わせる。そして、卒業生の名前が、一人、また一人と、厳かで、しかしどこか温かみのある声で呼ばれていく。名前を呼ばれた者は、一様に緊張と誇らしさが複雑に混じり合った表情で、ぎこちなく立ち上がり、壇上へと向かって歩き出す。その少しだけ硬くなった背中を、在校生や保護者、そして僕たち仲間が、惜しみない、温かい拍手で見送った。
「――レオナルド・ヘーゼンバーグ」
やがて、凛と響く声が、レオの名前を告げた。彼は、この学年において最も優秀な成績を修めた首席卒業生であり、後ほど卒業生総代として、壇上から挨拶も務めることになっている。隣に座る彼の体が、一瞬、ぴくりと硬直したのが分かった。ごくり、と息を呑む微かな音さえ、静まり返った講堂では僕の耳に届いた。しかし、次の瞬間には、彼はすっと背筋を天に向かって伸ばし、一切の揺らぎも、ためらいも見せない、堂々とした足取りで壇上へと向かっていった。その一歩一歩は、彼のこれまでの血の滲むような努力と、それによって勝ち得た揺るぎない自信、そして輝かしい成果を、何よりも雄弁に物語っていた。同じ友人として、僕の胸は誇らしい気持ちでいっぱいになった。まるで自分のことのように、胸が熱くなる。
「――アンナ・フォン・シュバルツ」
次に、アンナの名前が呼ばれた。彼女は「へーい」と、まるで授業中に教師から不意に指名された際に答えるかのような、実に気安く、間の抜けた返事をしながら、勢いよく立ち上がった。そのいつもと寸分違わぬ彼女らしい態度に、厳粛な雰囲気に包まれていたはずの会場のあちこちから、堪えきれないといった風情の、くすくすという小さな笑い声が漏れた。しかし、壇上へと向かう彼女の横顔は、僕の角度から見ると、どこか誇りに満ち溢れ、きりりと引き締まっているように見えた。きっと彼女の中にも、この波乱万丈だった三年間で培ってきたものへの、確かな自負と感慨があるのだろう。その背中もまた、レオとは違う種類の輝きを放っていた。
そして、ついに僕の番が来た。僕の心臓が、これまでとは比較にならないほど大きく、強く、どくん、と脈打った。
「――ガク・フォン・アルベイン」
僕、ガク・フォン・アルベインの名前が、水を打ったように静まり返った大講堂の隅々にまで、くっきりと響き渡る。僕がゆっくりと、椅子が床を擦る音を立てないように注意しながら立ち上がると、講堂内の、特に後方にずらりと並んで座っている教師陣の席から、どよめきとも、長いため息とも、あるいは厄介払いができたという安堵の吐息ともつかない、なんとも形容しがたい複雑な空気が、まるで物理的な圧力のように流れてきたのを、僕は肌で、全身で感じ取っていた。それもそのはずだ。僕がこのアステリア魔法学園で過ごした三年間という月日は、良くも悪くも、後世まで語り継がれるであろう「伝説」として、教員たちの記憶に深く、深く刻み込まれているであろう出来事の連続だったのだから。
僕は内心で、誰にも気づかれぬよう、乾いた苦笑を浮かべながら、壇上へと向かう。一歩、また一歩と、冷たく硬い石畳の床を踏みしめるたびに、これまでの様々な出来事が、まるで走馬灯のように脳裏を鮮やかに駆け巡った。レオと初めて出会った、あの静寂に満ちた図書館での白熱した魔法理論に関する議論。アンナとの、どちらかが倒れるまで終わらなかった訓練場での無茶苦茶な模擬戦。そして、三人で暖炉の火を囲みながら、夜が白々と明けるまで互いの夢や他愛もないことを語り明かした、あの談話室の温もり。そのすべてが、一つとして欠けることなく、今の僕という存在を形作っている、かけがえのない構成要素なのだ。
学園長から、重厚な革製の筒に丁寧に収められた卒業証書を、厳かに受け取る、まさにその時だった。学園長は、周囲の誰にも聞こえないよう、僕にだけ届く、ひそやかな、しかし明瞭な小さな声で、こう囁いた。
「アルベイン君。君のおかげで、我が学園の備品購入費と施設修繕費の予算は、この数年間、過去の記録を全て塗り替える最高額を更新し続けることになった。頑丈であるはずの壁、床、天井は言うに及ばず、訓練用の最新鋭ゴーレムから、この図書館が誇る二度と手に入らない貴重な古書に至るまで、君が関わらなかった破壊と再生の歴史はない。ある意味において、君は学園の経済を、かつてないほどに活性化させてくれた最高の功労者じゃよ。心から、心から、ありがとう。そして、さようなら。……できれば、もう二度と、この学園の敷居を跨がないでくれたまえ」
それは、耳がちりちりと痛くなるほどの痛烈な皮肉のようでもあり、同時に、僕という存在が学園に与えたインパクトの大きさを認める、最大限の賛辞のようでもあった。そして何よりも、その言葉の最後の部分には、老教育者の切実な、心の底からの願いが込められているのが、ひしひしと、痛いほどに伝わってくる。実に、実に味わい深い、はなむけの言葉だった。僕はただ、「多大なる、そして計り知れないご迷惑を、心よりお詫び申し上げます」と心の中で深く、深く、地球の核に届くほどに頭を下げるしかなかったのだった。
***
厳粛な雰囲気の中にも、どこか卒業生を送り出す温かい愛情に包まれた卒業式が、滞りなく終わった。僕たちが学び、笑い、そして時には泣いた大講堂の外は、式典の緊張から解放された安堵感と、もう二度と戻らない学園生活への名残を惜しむ気持ちが複雑に交じり合った、独特の熱気に満ちていた。卒業生たちは、あちこちで自然発生的に小さな輪を作り、共に困難を乗り越えた友人たちと力強く肩を叩き合って互いの健闘を称え合ったり、共に過ごしたかけがえのない日々を懐かしむように語り合ったり、あるいは魔法の光が被写体を記録する不思議なカメラで、この最後の一瞬を永遠に切り取るための記念の写真を撮ったりしていた。その誰もが、未来への希望に満ちた晴れやかな笑顔の中に、拭い去ることのできない一抹の寂しさを、春の淡い光の中に滲ませている。
僕たち三人もまた、この愛すべき学園で過ごす最後の時間を、三人だけで分かち合うために、思い出の染みついた場所を巡ることにした。誰が最初に言い出すでもなく、ごく自然に、僕たちの足は、僕たちの物語がその産声を上げた、あの場所へと向かっていた。
最初に向かったのは、あの巨大な図書館だった。一歩足を踏み入れれば、そこは音という概念が支配権を失った静寂の聖域。天井まで届くほどの高さを持つ巨大な本棚が、まるで知の巨人のように迷路のごとく立ち並び、古びた羊皮紙と乾燥したインクが持つ独特の、甘くも埃っぽい匂いが空間の隅々にまで満ちている。僕とレオ、そしてアンナが、運命的に初めて出会った場所である。
「ああ、懐かしいわねえ。ここで、あんたたちが二人して、何やら小難しい顔して、眉間に深ーいシワを寄せながら、意味不明な魔導書を広げてるところに、この私が颯爽と殴り込みをかけたのが、全ての始まりだったわね」
アンナが、天を突くような高い本棚を見上げながら、まるで昨日のことのように楽しそうに当時を振り返る。彼女の言葉に、あの日の光景が、色鮮やかな記憶として僕の脳裏に蘇った。解読不能とさえ言われた難解な古代魔法の文献に、僕とレオが二人して没頭していた、あの静かな午後。そこに、実践魔法の分かりやすい参考書を探しに来たアンナが、図書館の静寂をまるでハンマーで叩き割るかのように、けたたましい足音と共に現れたのだ。
「殴り込み、とは実に人聞きの悪い表現だな。あれは、我々が行っていた極めて高尚で知的な探究の場に、君という名の、思考よりも先に手足が出ることを信条とする野蛮人が、土足で乱入してきたというだけの話だろう。おかげで僕の繊細な集中力は無残にも途切れ、どれだけ貴重な研究時間が無駄になったことか……」
レオが、いつものように、しかしその声色には明らかな親愛の情を滲ませて、軽口で返す。彼の口元には、普段の皮肉めいた笑みとは違う、柔らかな、慈しむような笑みが浮かんでいた。彼もまた、この場所での奇妙で、そして運命的な出会いを、彼の人生における最も大切な思い出の一つとして、心に深く刻んでいるのだ。僕たちはしばらく、言葉を交わすこともなく、書架の間に広がる薄暗い迷宮をゆっくりと歩いた。あの時、レオが熱心に読み耽っていた難解な魔導書が収められていた棚。アンナが血眼になって探していた実践魔法の入門書があった場所。そして、僕がうっかり小さな爆発魔法を暴発させてしまい、鬼の形相をした司書の先生に大目玉を食らった、今も少しだけ焦げ跡が残る一角。一つ一つが、決して色褪せることのない、僕たちの記憶の欠片だった。
次に僕たちが向かったのは、幾千幾万の生徒たちが流したであろう汗と、乾いた土の匂いが深く染みついた、あの広大な訓練場だ。ここでは、文字通り数え切れないほどの時間を過ごした。僕が制御不能に陥った魔法で頑丈なはずの壁をいとも容易く吹き飛ばしたり、訓練用に配備されていた高価なゴーレムを派手に自爆させたりと、数々の輝かしい伝説、あるいは二度と思い出したくもない黒歴史を打ち立てた、実に因縁深い場所でもある。
「うわあ……。ここでガクの、あの数々の、言葉にするのも憚られる『芸術作品』が生まれたのよねえ」
アンナが、今もなお壁や地面のあちこちにくっきりと残る修復の跡を、楽しそうに指さしながら言う。その目は、まるで偉大な芸術家の作品群を鑑賞しているかのようだった。
「ああ。彼の、あの全く予測不能な破壊の奔流は、僕の研究者としての魂を、いつも激しく、根底から揺さぶってくれたよ。既存の、ありとあらゆる魔法理論では到底説明がつかない不可解な現象の連続。おかげで僕の研究ノートは、君のその規格外の魔法に関する考察で、何冊も、何冊も埋まっている」
「二人とも、頼むからもうその話は勘弁してくれ……」
僕は、耳まで真っ赤に染まっているのを自覚しながら、二人を制止した。僕にとっては思い出すだけで身悶えするほど恥ずかしい失敗の数々も、この二人にとっては、僕という人間を構成する、面白おかしくて愛すべき一部分でしかないのだろう。そんな二人の反応が、少しだけ、いや、正直に言えば、かなり嬉しかった。
大勢の生徒でいつもごった返していた食堂。僕たちが決まって頼んだ、安くて量が多くて、そして時々不思議な味がした日替わりランチの味。教室の、僕がいつも座っていた窓際の席から見える、季節ごとに色を変える中庭の景色。放課後、三人で他愛もない、中身のない話をしながら、いつも腰掛けていた中庭の古いベンチの、ひんやりとした感触。一つ一つの場所に、僕たちの、取り留めのない、しかし、何物にも代えがたい、かけがえのない思い出が、一枚一枚の写真フィルムのように、鮮明に焼き付いていた。
ドタバタで、やかましくて、いつも何かしらのトラブルばかりが舞い込んでくる、そんな毎日だったけれど。今こうして、卒業という一つの区切りを前にして静かに振り返ってみれば、その全ての瞬間が、どうしようもなく愛おしく、そして、きらきらと眩い光を放つ宝物のような時間だったのだと、僕は改めて、心の底から実感するのだった。
そして、僕たちは最後に、あの丘へとやってきた。期末試験の後、三人でそれぞれの未来への、まだ漠然としていたけれど、確かな熱量を帯びた決意を語り合った、あの夕暮れの丘だ。眼下には、僕たちが三年間を過ごした王都の壮麗な街並みが、春の柔らかな日差しをその身に浴びて、穏やかに、静かに広がっている。遥か遠くに見える、この国の象徴である王城の、天を突くような尖塔が、西の空に傾き始めた太陽の光を受けて、金色から徐々に燃えるような茜色へと、その色彩を刻一刻と変え始めていた。
僕たちは、三人並んで、冬の間に栄養を蓄えて青々と茂り始めた、ふかふかの芝生の上に、ゆっくりと腰を下ろした。しばらくの間、誰も、何も喋らなかった。ただ、頬を優しく撫でていく風の音と、遠くで微かに聞こえる、人々の生活が織りなす街の喧騒だけが、僕たちの間の静寂を、心地よく通り過ぎていく。この沈黙が、不思議なほどに心地よかった。言葉になどしなくても、お互いの胸のうちにある感情が、まるでテレパシーのように伝わってくるような気がした。感謝と、寂しさと、そして未来への微かな不安と、大きな希望。
やがて、その均衡を破るように、最初に口を開いたのは、アンナだった。
「……なんか、変な感じね」
その声は、いつもの嵐のような威勢の良さが嘘のように、僅かに、しかし確かに震えていた。彼女の視線は、僕たちと同じように、眼下に広がる雄大な街並みに、ただじっと向けられている。
「明日から、もう、この景色を三人で一緒に見ることもないなんて……。そう思うと、なんだか、胸にぽっかりと、大きな穴が開いたみたい」
「……ああ」
レオも、その銀縁の眼鏡の奥にある、いつもは理知的な光を宿す瞳を静かに伏せ、短く、しかし万感の思いを込めて相槌を打った。
「少しだけ、いや、正直に言えば、まだ全く実感が湧かないな。明日になれば、またいつものように、君たちが僕の研究室に、何の断りもなく押しかけてくるような気さえしている」
寂しい。その、たった一言が、喉の奥まで込み上げてきた。熱い塊となって、そこにある。でも、僕たちは誰も、その言葉を声にして口にはしなかった。それは、僕たちの間に存在する、言葉にはされない暗黙の約束だったからだ。僕たちは、笑って別れると、心に決めていたのだから。この別れは、終わりではない。それぞれの夢を叶えるための、新しい始まりなのだと、互いに信じていたから。
僕は、ゆっくりと、芝生を掴むようにして立ち上がった。そして、まだ座っている二人に、右手を差し伸べた。
「ほら、立てよ。いつまでもそんな湿っぽい顔をするな。僕たちらしくないだろう」
アンナとレオも、一瞬だけ躊躇うように僕の顔を見上げたが、やがて僕の手を取り、力強く立ち上がった。僕たちは、誰に言われるでもなく、ごく自然に肩を寄せ合い、三人で互いの顔が見えるようにして円陣を組んだ。夕日が僕たちの輪郭を、黄金色に縁取っていた。
「絶対に、また会おう」
僕が、二人の瞳を、その奥にある魂を真っ直ぐに見つめて言うと、二人は力強く、深く頷いた。
「当たり前でしょ!次に会う時は、私、この王国で最強の騎士になってるんだから。あんたたち、その時になって腰抜かすんじゃないわよ!」
アンナが、その大きな瞳にいっぱいに浮かんだ涙を、ぐっと、持ち前の意地で堪え、無理やりいつもの強気な笑顔を作って言い放った。その笑顔は、少しだけ歪んでいたけれど、僕が見たどんな彼女の笑顔よりも、最高に輝いて見えた。
「僕もだよ。次に会う時は、古代魔法の全ての謎を、この手で解き明かしてみせる。そして、君のその無茶苦茶な魔法の、完璧な理論解説書をプレゼントしてやろう、ガク君。君の魔法は、僕にとって最高の研究対象だからね」
レオも、眼鏡の奥の瞳を潤ませながら、それでも精一杯の優しい笑顔を見せた。その言葉には、彼らしい不器用で、しかし何よりも誠実な友情が、溢れんばかりに詰まっていた。
「ああ。楽しみにしてる。二人とも、絶対に、夢を叶えろよ」
僕は、二人の顔を、この表情を、この一瞬を、永遠に忘れることがないように、網膜に、そして魂に焼き付けた。
「どんなに、どんなに遠く、離れても」
僕が、絞り出すように言う。
「進む道が、全く違っても」
アンナが、震える声で続ける。
「僕たちは、ずっと、ずっと、仲間だ」
レオが、万感の思いを込めて、締めくくった。
僕たちの手が、中央で固く、固く、もう二度と離れないと誓うように結ばれた。それは、どんな言葉よりも雄弁な、決して壊れることのない僕たちの絆の証だった。
その日、僕たちは、たくさん笑って、そして、ほんの少しだけ泣いて、それぞれの未来へと続く道へと歩き出した。それは、決して永遠の別れじゃない。未来の、今よりもっと輝かしい場所での再会を誓い合うための、希望に満ち満ちた、始まりの儀式だった。
***
その日の夕暮れ。卒業生たちが皆、未来への希望と、過去への一抹の寂しさをその胸に抱いて学園を去り、学び舎に穏やかで優しい静寂が戻ってきた頃。普段は喧騒に満ちている職員室では、マグナス教授とシモン教授が、二人きりで窓の外を静かに眺めながら、年代物の、芳醇な香りを放つ葡萄酒を、ゆっくりと酌み交わしていた。西の空を焦がす夕日が室内へと斜めに差し込み、部屋全体を、郷愁を誘うノスタルジックな茜色に染め上げている。
「……とうとう、あいつらが卒業していきましたな」
マグナス教授が、年季の入ったクリスタルのグラスをゆっくりと傾けながら、ぽつりと、まるで独り言のように呟いた。その声には、厄介な問題児たちをようやく送り出せたという安堵と、しかしそれ以上に深く、まるで手塩にかけた我が子を社会へと送り出したかのような、寂寥の念が滲んでいた。
「うむ。まさに、嵐のような、疾風怒濤の数年間じゃったわい」
シモン教授が、その長い人生の年輪を物語る、深く刻まれた目元の皺をさらに寄せ、穏やかに、そして慈しむように笑った。その皺だらけの手にあるグラスの中で、ルビーのように美しい赤い葡萄酒が、夕日の光を受けてきらきらと揺れている。
「特に、あのアルベイン家の三男坊。ガク君は、間違いなく、我がアステリア魔法学園が創立されて以来の、最高の才能であり、そして、最大の問題児じゃったな。彼の放つ魔法は、我々が知る既存のどの体系にも属さない、まさに規格外の、神の気まぐれとしか思えん代物じゃった」
「全くです。儂の胃は、あいつのせいで、もう穴だらけですよ。この数年で書かされた始末書の作成枚数ならば、この学園のどの教授にも負けん、絶対の自信がありますわ」
マグナス教授は、そう言って心底うんざりしたというように、大げさに頭を抱えてみせた。だが、その口元は、どこか誇らしげに、そして楽しそうに綻んでいるのを、長年の付き合いであるシモン教授は見逃さなかった。
「じゃが、不思議と、退屈はしませんでしたな。むしろ、あいつらがこの学園に来てからというもの、この年老いた学園が、少しだけ、本当に少しだけ若返ったような、そんな気すらしますわい。何より、生徒たちの目に、儂らが若い頃に見たような、かつてないほどの活気が宿っておりましたからな」
マグナス教授の感慨深げな言葉に、シモン教授は深く、ゆっくりと頷いた。
「ふぉっふぉっふぉ。全くだ。あの三人が揃えば、どんな不可能でさえも可能に変わるのではないか。そんな馬鹿げた期待を抱かせてくれる、不思議な魅力が、あの子らにはあった。まさに、語り継がれるべき、伝説じゃな」
「ええ。まさに、伝説、ですよ」
二人の老教授は、顔を見合わせ、静かに、そして満ち足りたように笑った。その優しく、温かい笑い声は、夕暮れの赤い光の中に、ゆっくりと、ゆっくりと溶けていった。
一人の、規格外の少年と、そのかけがえのない仲間たちが、全力で、ただひたすらに全力で駆け抜けていった青春の伝説。それは、きっとこれから先も、このアステリア魔法学園で、教師たちの酒の肴として、そして未来の生徒たちの憧れの物語として、末永く、語り継がれていくことになるのだろう。彼らがこの地に残した輝かしい軌跡は、この歴史ある学び舎の記録に、決して消えることのない鮮やかな一ページとして、確かに、永遠に刻まれたのだから。
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