小麦アレルギーで絶望してたら、隣の女王様に「ひよこ豆!」と叱咤され、米粉スイーツで人生逆転します」シーズン2

Gaku

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第三話 仕事と夢と『片手で食べる米粉のキッシュ』

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八月の終わり。暦の上では、もうとうに秋の始まりを告げているはずなのに、地上は未だ、夏という名の巨大な獣の、熱い吐息に支配されていた。
空は高く、どこまでも澄み渡っている。浮かぶ雲は、もくもくと湧き上がる入道雲ではなく、刷毛でさっと掃いたような、軽やかな秋の雲。だというのに、太陽の光は、その勢いを少しも緩めようとはせず、アスファルトをじりじりと焼き、あらゆる影を、地面に黒々と濃く、縫い付けていた。

私の戦場は、そんな灼熱の外界とは、壁一枚隔てた、別世界にあった。
東京、丸の内。ガラスと鉄骨でできた、近代的なオフィスビルの十七階。私が所属する、企画開発二課。
そこは、人工的に管理された、完璧な、無機質の箱庭だった。
窓は、はめ殺し。外の、生ぬるい空気も、喧騒も、風の匂いも、完全に遮断されている。代わりに、天井のダクトから、ごう、という低い音と共に、冷えすぎなくらいの空気が、絶えず、吐き出されていた。そのせいで、私の席の周りでは、いつも、ひざ掛けと、温かいお茶が、手放せない。
部屋を支配する光は、太陽光ではない。天井に、等間隔で埋め込まれた、蛍光灯が放つ、青白い、均一な光。その光が、グレーのスチールデスクや、パソコンのモニターに反射して、冷たい光沢を放っている。
音も、そうだ。鳥の声も、虫の音も、ここにはない。あるのは、パソコンのファンが回転する、ウィーンという低い唸り。誰かが、キーボードを叩く、カタカタカタ、という乾いた音。コピー機が、書類を吐き出す、ウィーン、ガチャン、という周期的なリズム。そして、時折、誰かが、椅子を引きずる、ギ、という、床と摩擦する音。
その、すべてが、この、閉ざされた空間の、無機質なBGMとなっていた。

そして今、私、花巻こむぎは、この無機質な戦場で、かつてないほどの、激戦の真っ只中にいた。
社運を賭けた、とまでは言わないが、少なくとも、我が部の、向こう半年の命運がかかっている、新商品の、一大プロジェクト。その、リーダーを、なぜか、この私が、務めることになっていたのだ。
課長に、昇進して、まだ、数ヶ月。私には、あまりにも、重すぎる、大役だった。
私のデスクの上は、もはや、戦場の塹壕と化していた。積み上げられた、資料の山。付箋だらけの、企画書。参考のために、取り寄せた、競合他社の、商品の数々。その、紙の山の隙間に、かろうじて、ノートパソコンの、画面が、覗いている。
「花巻課長、例の、B案の件ですが、先方から、修正依頼が来ています」
「こむぎさん、明日の、プレゼンの資料、最終確認、お願いします」
ひっきりなしに、部下たちが、声をかけてくる。その度に、私は、思考を中断され、意識を、あちこちへと、飛ばさなければならない。
もう、何日、まともに、家に帰っていないだろうか。
ランチは、もちろん、デスクの上だ。席を立つ、時間すら惜しい。コンビニで買った、おにぎりを、パソコンの画面から、目を離さないまま、口に押し込む。味なんて、しない。ただ、空腹という、生理現象を、満たすための、作業。時には、ゼリー状の、栄養補助食品だけで、済ませてしまうこともある。その、人工的な、甘味料の味が、舌の上に、いつまでも、嫌な感じで、残った。

そんな、殺伐とした日々の中で、私の、数少ない、心の慰め。それは、上司である、田中部長の姿を、盗み見ることだった。
彼は、このプロジェクトの、総責任者。私よりも、さらに、重いプレッシャーと、戦っているはずだった。
普段の彼は、いつも、クールで、冷静沈着。感情を、あまり、表に出すことはない。
だが、この数日、彼の様子は、明らかに、違っていた。
ふとした瞬間に、眉間に、深い、皺が刻まれている。
パソコンのモニターを、見つめる目が、わずかに、充血している。
一日に、飲む、缶コーヒーの本数が、三本から、五本に、増えている。
そして、誰も見ていないと、思っているのだろう。時折、ふぅ、と、重い、重い、ため息をつくのを、私は、知っていた。
その、疲れ切った、広い背中を見ていると、私の胸が、きゅぅ、と、痛んだ。
(なにか、私に、できることは、ないだろうか)
(なにか、部長の、力に、なれることは)
そうだ。お菓子だ。
私が、今、持っている、唯一の、魔法。
甘い、優しい、お菓子で、少しでも、彼の心を、癒してあげられないだろうか。
そう、考えた、その時、ふと、思いとどまった。
確かに、甘いものは、疲れた脳には、効果的かもしれない。だが、今の、あの、疲れ切った、身体には、もしかしたら、ただの砂糖の塊は、かえって、負担に、なってしまうのではないか。
そうじゃない。
私が、今、彼のために、作るべきなのは、甘い、夢のような、お菓子じゃない。
もっと、こう、身体の、芯から、元気になるような。栄養があって、心も、身体も、満たされるような、そんな、「食事」になる、なにか。
その、思いが、私の心に、一つの、確かな、光を、灯した。

その夜。時計の針が、とうに、十時を回った頃。
私は、吸い寄せられるように、女王陛下の、部屋のドアを、叩いていた。
「まあ、ひよこ豆。ずいぶんと、現世の、垢に、まみれた、顔をしていますわね」
ドアを開けた女王陛下は、深い、森のような、緑色の、ドレスを身にまとっていた。彼女は、私の、疲れ切った顔を見るなり、すべてを、察したようだった。
キッチンへと、導かれ、温かい、カモミールティーを、差し出される。その、優しい香りが、張り詰めていた、私の神経を、少しずつ、解きほぐしていく。
私は、ぽつり、ぽつりと、仕事の、大変さと、田中部長への、心配を、打ち明けた。
「甘いものではなく、なにか、食事になるようなものを、差し入れしたいんです」
私の、その言葉を聞いて、女王陛下は、初めて、ほう、と、感心したように、目を細めた。
「汝、ついに、気づきましたのね」
「え?」
「お菓子作りとは、必ずしも、甘いものである、必要はない、ということに。甘味だけが、人を癒すのでは、ありません。塩味、すなわち、『セイボリー』。それこそが、日々の、暮らしに寄り添い、疲れた魂を、根底から、支える、真の、魔法なのですわ」
彼女は、立ち上がると、一つの、焼き物の皿を、取り出した。それは、マフィンを焼くための、小さなくぼみが、いくつも並んだ、型だった。
「今宵、汝に、授けるのは、『キッシュ』。それは、甘くない、食事のための、タルト。サクサクの、生地の器の中に、卵と、野菜と、肉の、旨味を、閉じ込めた、栄養の、宝石箱。そして、汝の、その、いじらしい、恋心を、形にするに、これほど、ふさわしい、お菓子は、ありませんわ」
彼女は、私を、まっすぐに、見据えた。
「しかも、今回は、特別に、ミニサイズ。これなら、忙しい、汝の、愛しい殿方も、その、大きな手で、つまんで、片手で、気軽に、食べることができる。どうです? 気遣いのできる、女、というわけです」
女王陛下は、片目をつぶって、悪戯っぽく、笑った。
その言葉に、私の顔が、かあっと、熱くなる。
そうだ。それだ。それこそが、私が、作りたかったものだ。
私の心は、すっかり、決まっていた。

まずは、器となる、タルト生地作りから。第二話で、タルトの脆さに、さんざん、泣かされた、私だったが、今回は、少し、違っていた。
「これは、パート・シュクレ(甘い生地)にあらず。パート・ブリゼ(塩味の生地)。砂糖の代わりに、塩を、ひとつまみ。バターも、少し、控えめに。目指すは、甘く、繊細な、貴婦人ではない。もっと、素朴で、力強く、ザクザクとした、食感の、たくましい、農婦ですわ」
女王陛下の、相変わらず、独特な、解説を聞きながらも、私の手は、スムーズに、動いた。
フードプロセッサーで、冷たいバターと、米粉、そして、アーモンドプードルを、混ぜ合わせる。サブラージュ法。冷たい水を加えて、ひとまとめにする。ラップをして、冷蔵庫で、休ませる。
その、一連の流れが、もう、私の身体には、染み付いていた。

生地を、休ませている間に、中身の、準備を始める。
フライパンに、オリーブオイルを熱し、みじん切りにした、玉ねぎを、炒めていく。最初は、強火で、水分を飛ばす。しんなりとしてきたら、弱火にして、じっくり、じっくりと、キャラメル色になるまで、炒めていく。十分、十五分。玉ねぎが、その、辛味を、甘みへと、変えていく、魔法の時間。キッチンに、甘く、香ばしい、匂いが、立ち込める。
隣のコンロでは、細切りにした、ベーコンを、カリカリになるまで、炒める。ベーコンから、旨味の、脂が、じゅわ、と、染み出してくる。
ほうれん草は、さっと、塩茹でして、冷水に取り、ぎゅっ、と、これでもかというくらい、水気を、絞っておく。
「この、一つ一つの、丁寧な、下ごしらえ。それこそが、出来上がりの、味の、深みを、決定づけるのです。愛とは、手間ひまを、かけること。覚えておきなさい、ひよこ豆」

最後に、アパレイユ、すなわち、卵液を作る。
ボウルに、卵を割り入れ、豆乳を、加える。塩、胡椒。そして、女王陛下が、小さな、小瓶から、振り入れたのは、ナツメグの、パウダーだった。
「この、ほんの、ひとつまみの、スパイスが、卵の、生臭さを消し、全体の、味わいを、ぐっと、本格的に、引き締める、影の、立役者ですわ」
その、エキゾチックで、甘く、スパイシーな香りが、私の、鼻孔を、くすぐった。

全ての、準備が、整った。
冷蔵庫から、休ませておいた、生地を、取り出す。
薄く、伸ばし、小さな、丸い型で、抜いていく。そして、それを、ミニマフィン型の、一つ一つの、くぼみに、指で、丁寧に、敷き込んでいく。小さいからこその、難しさ。だが、その、愛らしい、器が出来上がっていく様は、見ていて、飽きなかった。
フォークで、底に、穴を開け、オーブンで、軽く、空焼きする。
サクサクの、小さな、器が、焼きあがった。
その中に、炒めた、玉ねぎ、ベーコン、ほうれん草を、彩りよく、詰めていく。
上から、卵液を、そっと、流し込む。器の、八分目まで。
最後に、とどめとばかりに、シュレッドチーズを、たっぷりと、乗せた。
「さあ、最後の、焼成です。汝の、愛と、栄養と、カロリーを、この、小さな、器に、閉じ込めるのです!」
百八十度のオーブンへ。
二十五分。
オーブンの中では、卵液が、ぷっくりと、膨らみ、チーズが、ぐつぐつと、気泡を立てて、溶けていく。
キッチンに、満ちていくのは、甘い香りではない。
ベーコンと、玉ねぎの、香ばしい、匂い。チーズが、焼ける、濃厚で、食欲を、どこまでも、刺激する、罪な、香り。
私の、お腹が、ぐぅ、と、情けない音を立てた。

チーン!
焼き上がり。
オーブンの扉を開けると、そこには、完璧な、黄金色に輝く、小さな、宝石たちが、並んでいた。
ぷっくりと、膨らんだ、キッシュ。香ばしい、焼き色のついた、タルト生地。そして、とろりと、溶けた、チーズ。
それは、あまりにも、愛らしく、そして、美味しそうだった。
粗熱を取り、一つ、味見をしてみる。
サクッ!
小気味よい、歯ごたえの、生地。中は、ふわふわの、卵。ベーコンの、塩気と、旨味。玉ねぎの、甘み。ほうれん草の、優しい、風味。そして、チーズの、濃厚な、コク。
その、すべてが、この、小さな、一口の中に、凝縮されていた。
美味しい。
これは、絶対に、部長も、喜んでくれるはずだ。
私は、確かな、手応えを、感じていた。

翌日の、夜。
オフィスには、もう、私と、田中部長の、二人しか、残っていなかった。
蛍光灯の光が、やけに、白々しく、静まり返ったフロアに、響くのは、私達二人の、キーボードを叩く音だけ。
私の心臓は、朝から、ずっと、ありえないくらい、速いリズムで、鼓動を、刻んでいた。
いつ、渡そう。
どんな、言葉で、渡そう。
カバンの中には、可愛らしい、箱に詰めた、ミニキッシュが、その時を、待っている。
時計の針が、十時を、回った、その時だった。
「花巻さん、今日は、もう、そろそろ、上がったらどうだ。疲れてるだろ」
不意に、田中部長が、そう、声をかけてきた。
「いえ、部長こそ。まだ、終わらないんですか?」
「ああ。もう少し、かかりそうだな」
そう言って、彼は、また、缶コーヒーを、一口、飲んだ。
今だ。
今しかない。
私は、心臓が、口から、飛び出しそうになるのを、必死で、こらえながら、立ち上がった。
そして、彼のデスクへと、向かった。
「あ、あの、部長」
私の、声は、自分でも、驚くほど、上ずっていた。
「ん? どうした?」
彼は、パソコンの画面から、目を離し、私を、見た。その、優しい目に、射抜かれて、私は、一瞬、言葉を、失う。
「その、もし、よかったら、なんですけど」
私は、カバンから、キッシュの入った箱を、取り出した。
「これ、よかったら、食べてください。夜食、みたいなものですけど」
そう言って、箱を、彼の、デスクの上に、そっと、置いた。
田中部長は、一瞬、驚いたように、目を見開いた。そして、箱と、私の顔を、交互に、見た。
「え、いいのか? これ」
「はい。その、米粉で、作ってあるので、小麦粉、入ってないですし。たいしたものでは、ないんですけど」
彼は、少し、戸惑ったように、笑った。
「いや、でも、悪いよ。大変だったろ、プロジェクトで」
「私が、作りたかっただけなので。気にしないでください」
私の、必死の、言葉に、彼は、観念したように、「じゃあ」と、箱を、受け取ってくれた。
そして、その場で、蓋を、開けた。
箱の中に、綺麗に並んだ、黄金色の、ミニキッシュ。
「すごいな、これ。手作りなのか」
「はい」
「美味そうだ」
そう言って、彼は、一つ、指で、つまみ上げた。そして、ためらうことなく、ぱくり、と、一口で、それを、口に、入れた。
私は、固唾をのんで、彼の、反応を、見守った。
彼は、数回、もぐもぐと、口を動かし、そして、ごくり、と、飲み込んだ。
そして、一言。

「うまい」

その、たった、一言。
低い、落ち着いた、いつもの、彼の声で、発せられた、その、たった一言が、私の、この数日間の、苦労と、寝不足と、疲れを、すべて、吹き飛ばしてしまった。
「すごく、うまい。なんだ、これ。店で、売ってるやつより、うまいぞ」
彼は、そう言って、少し、照れたように、笑った。その、少年のような笑顔に、私の心臓は、また、大きく、跳ねた。
「ありがとうございます」
そう、言うのが、精一杯だった。
その夜、私と部長は、残りのキッシュを、分け合って、食べた。
仕事の話、少しだけ、プライベートな話。キッシュが、私達の間に、温かい、優しい、時間を、作ってくれた。
帰り道。もう、すっかり、冷たくなった、夜風が、火照った私の頬に、心地よかった。
空には、綺麗な、半月が、浮かんでいる。
私の、作ったものが、誰かを、元気づけられる。笑顔に、できる。
自分のためだけに、作っていた、お菓子が、私と、誰かを繋ぐ、温かい、架け橋に、なっている。
仕事は、まだ、大変だ。でも、明日も、頑張れる。
私には、この、魔法があるのだから。
秋の虫の声が、まるで、私の、新たな、決意を、祝福してくれているかのように、どこまでも、澄んだ音色で、響き渡っていた。

---
### **女王陛下直伝『仕事と夢と恋に効く米粉のミニキッシュ』**

**【材料】(ミニマフィン型 約12個分)**

* **パート・ブリゼ(甘くないタルト生地)**
    * 米粉(製菓用)  100g
    * アーモンドプードル  20g
    * 塩  小さじ1/4
    * 冷たい無塩バター  40g(1cm角に切っておく)
    * 冷水  大さじ2~3
* **具材**
    * ベーコン  2枚
    * 玉ねぎ  1/4個
    * ほうれん草  2株
    * オリーブオイル  少々
    * ピザ用チーズ  適量
* **アパレイユ(卵液)**
    * 卵  1個
    * 豆乳(または牛乳)  100ml
    * 塩、こしょう  各少々
    * ナツメグパウダー  少々

**【作り方】**

1.  **生地を作る**:フードプロセッサーに米粉、アーモンドプードル、塩、冷たいバターを入れ、サラサラの砂状になるまで攪拌する。冷水を加え、ひとまとまりになったら取り出し、ラップに包んで冷蔵庫で1時間以上休ませる。
2.  **具材を準備する**:
    * 玉ねぎはみじん切り、ベーコンは5mm幅に切る。ほうれん草は塩茹でし、冷水にとって水気を固く絞り、2cm長さに切る。
    * フライパンにオリーブオイルを熱し、玉ねぎを弱火でじっくりと、飴色になるまで炒める。ベーコンも加えて、カリッとするまで炒め、粗熱をとっておく。
3.  **生地を型に敷く**:休ませた生地を3mm厚に伸ばし、型より一回り大きく抜く。ミニマフィン型に、指で丁寧に敷き込み、フォークで底に数カ所穴を開ける。
4.  180℃に予熱したオーブンで、10分ほど空焼きし、粗熱をとっておく。
5.  **アパレイユを作る**:ボウルにアパレイユの材料をすべて入れ、泡立て器でよく混ぜ合わせる。
6.  **組み立てて焼く**:空焼きした生地の中に、準備した具材を均等に入れ、アパレイユを8分目まで注ぎ入れる。最後に、ピザ用チーズをたっぷりと乗せる。
7.  180℃のオーブンで20~25分、表面にこんがりと美味しそうな焼き色がつくまで焼いて、完成。

**【女王陛下からのワンポイント・アドバイス】**
* 「汝の殿方が、もし、きのこ好きであるならば、具材に、ソテーしたマッシュルームや、しめじを加えてごらんなさい。きのこの、芳醇な香りが、キッシュの物語に、さらなる、深みと、森の吐息を、与えてくれることでしょう。愛とは、相手を、知ることから、始まるのですわ」
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