小麦アレルギーで絶望してたら、隣の女王様に「ひよこ豆!」と叱咤され、米粉スイーツで人生逆転します」シーズン2

Gaku

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第八話 衝撃の結果発表と『未来を描くためのオペラ』

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夏の終わりを告げるツクツクボウシの鳴き声が、いつの間にか、秋の訪れを知らせる涼やかな虫の音へと変わっていた。あれほど、空を覆い尽くしていた入道雲は姿を消し、代わりに、高く、澄み渡った空に、鰯雲が、うろこ状の美しい模様を描いている。
日中の日差しは、まだ、肌を刺すような強さを残しているものの、その光は、真夏のそれとは違い、どこか、柔らかく、金色を帯びていた。そして、一度、陽が傾けば、驚くほど、涼しい風が吹き抜けていく。その風は、乾いた土の匂いと、どこかから運ばれてくる、金木犀の、まだ若い、青い香りを、かすかに含んでいた。
季節は、確かに、移ろいでいた。

そして、今日。私の、運命が、移ろう、その日でもあった。
グルテンフリー・スイーツ・アワードの結果発表の日だ。
私は、自分の部屋で、ノートパソコンの前に、正座していた。時刻は、午後三時五十八分。発表は、午後四時きっかり。心臓が、まるで、暴れ馬のように、胸の中で、どくどくと、激しく脈打っている。指先は、氷のように冷たいのに、手のひらには、じっとりと、汗が滲んでいた。
部屋の中は、シン、と静まり返っている。聞こえるのは、壁の時計が、カチ、カチ、と、時を刻む、無機質な音と、私の、荒い呼吸音だけ。窓の外では、秋の、穏やかな光が、フローリングの上に、静かな影を落としていた。

午後三時五十九分。
私は、コンテストの、特設ページを開いたまま、マウスを握る手に、ぐっと、力を込めた。ページには、まだ、『結果発表は、午後四時を予定しております。今しばらく、お待ちください』という、冷たい文字が、表示されているだけだ。
あと、三十秒。
あの、シュークリームとの、死闘の日々が、脳裏をよぎる。膨らまなかった、無残な生地。しぼんでしまった、儚い夢。女王陛下の、科学的な講義。そして、たくさんの人からの、温かい応援。
その、すべてが、この、数分後には、何らかの、形となって、私に、突きつけられるのだ。
(大丈夫。結果が、どうであれ、私は、やりきったんだから)
そう、自分に言い聞かせても、心臓の鼓動は、一向に、収まる気配がない。
そして、ついに、時計の長針が、てっぺんの『12』を、指した。

午後四時。

私は、震える指で、ウェブページの、更新ボタンをクリックした。
画面が、一瞬、白くなる。その、コンマ数秒が、永遠のように感じられた。
そして、新しいページが、表示された。
目に、飛び込んできたのは、きらびやかな、金色の文字だった。

『第五回 グルテンフリー・スイーツ・アワード 結果発表』

息を、のむ。スクロールする指が、重い。
まず、目に飛び込んできたのは、グランプリ、すなわち、優勝者の欄だった。
そこには、一枚の、息をのむほど、美しい写真が、掲載されていた。
完璧な、球体。表面は、鏡のように、滑らかで、真っ赤な、ベリーのソースが、まるで、惑星の軌道のように、芸術的な曲線を描いている。その下には、受賞者の名前。

『グランプリ:橘圭一様 作品名:Le Cœur(ル・クール)』

ああ、やっぱり。
そう思った。落胆、というよりは、むしろ、納得、という感情が、先に立った。
彼の作るものは、いつだって、完璧だ。寸分の狂いもない、芸術品。私の、あの、不格好な、シュークリームが、敵うはずもない。
すごいな。おめでとうございます、橘さん。
素直に、そう思った。
だが、その、賞賛の気持ちの、奥の、奥の、ほんの片隅で、ちり、と、小さな悔しさが、火花を散らしたのも、また、事実だった。

自分の、挑戦は、終わった。
私は、そっと、ページを閉じようとした。その時だった。
グランプリの、その下に、『特別賞』という、小さな欄があることに、気づいた。
そして、そこに、私の目を、疑うような、文字が、並んでいたのだ。

『特別賞:花巻こむぎ様 作品名:希望のシュークリーム』

「え」
声が、漏れた。
自分の、名前。私の、作品の名前。
何度も、目を、こすって、確認する。間違いない。
私の、シュークリームが、賞を、取った。
その、事実を、脳が、認識した瞬間、ぶわっ、と、鳥肌が立った。そして、次の瞬間には、訳も分からず、涙が、溢れてきた。
嬉しい。ただ、ひたすらに、嬉しい。
涙で、ぼやける画面を、さらに、スクロールすると、審査員からの、短い、講評が、添えられていた。
『素朴な、見た目とは、裏腹に、驚くほど、軽く、そして、優しい味わいのシュー生地。豆乳カスタードとの、相性も、素晴らしい。作り手の、温かい人柄が、伝わってくるような、まさに、「希望」という名にふさわしい、独創性に満ちた作品。ただし、プロの商品として、世に出すには、生地の、大きさの均一性や、焼き色の安定性など、技術的な、課題も、散見される。今後の、更なる、飛躍に、期待したい』

的確で、厳しく、そして、どこまでも、温かい、言葉たち。
独創性。温かい人柄。それは、私にとって、最高の、褒め言葉だった。
だが、同時に、突きつけられた、厳しい現実。
プロの商品としては、安定性に欠ける。
その一文が、私の胸に、ずしり、と重く、突き刺さった。
プロ。
その、二文字を、私は、この時、初めて、自分自身の、問題として、意識したのかもしれない。

喜びと、悔しさと、そして、新たな、問い。その、すべてを、ぐちゃぐちゃに抱えたまま、私は、女王陛下の、城門を叩いた。
「見ましたわ、ひよこ豆。当然の、結果ですわね」
ドアを開けた彼女は、まるで、すべてを、予見していたかのように、静かに、微笑んだ。
今日のドレスは、秋の夜空のような、深い、深い、紺色だ。
私が、特別賞を受賞したこと、そして、審査員の講評を、報告すると、彼女は、深く、頷いた。
「汝の『希望』は、確かに、人の心を動かす、魔法を持っていた。だが、プロの世界とは、魔法だけでは、渡っていけぬ、戦場なのです。そこでは、再現性、安定性、そして、完璧なまでの、美しさ、そのすべてが、求められる」
彼女は、キッチンへと、向かうと、一枚の、美しい、写真集を、私に見せた。
そこには、宝石のように、きらめく、フランス菓子の数々が、並んでいた。
その中でも、ひときわ、私の目を、引いたのが、一つの、四角い、チョコレートケーキだった。
何層にも、重なった、美しい、地層。表面は、鏡のように、輝いている。
「オペラ、ですわ」
女王陛下が、静かに、言った。
「パリの、オペラ座を、模したとされる、フランス菓子の、王様。コーヒー風味の、アーモンド生地。コーヒーの、バタークリーム。濃厚な、チョコレートガナッシュ。そして、それらを、一つにまとめ上げる、艶やかな、グラサージュ。寸分の狂いも、許されぬ、構成。複雑にして、完璧な、味の、調和。それは、もはや、お菓子ではない。建築であり、音楽であり、総合芸術なのです」
彼女は、私を、まっすぐに、見据えた。
「汝が、もし、プロという、頂きを、目指すのなら、これを作るのです。この、完璧な、設計図を、汝自身の手で、描き上げなさい。それは、汝の、未来の、設計図を描くことに、他ならないのですから」

その日から、私の、人生で、最も、複雑で、そして、過酷な、挑戦が、始まった。
オペラは、あまりにも、多くの、パーツから、成り立っていた。その、一つ一つが、主役級の、難易度を誇る。

まず、**『ビスキュイ・ジョコンド』**。アーモンドと、米粉を使った、薄い、スポンジ生地。卵を、共立てではなく、別立てにする。メレンゲの、完璧な泡を、潰さないように、さっくりと混ぜ合わせ、天板に、薄く、均一に、伸ばして、焼き上げる。少しでも、焼きすぎれば、パサパサの、ただの板に。焼きが、甘ければ、後の、シロップの重みに、耐えきれない。

次に、**『クレーム・オ・ブール・ア・ラ・クレーム・アングレーズ』**。コーヒー風味の、バタークリームだ。まず、アングレーズソース(卵黄、牛乳、砂糖で作る、カスタードソースの素)を作る。温度管理が、命。少しでも、火を入れすぎれば、卵黄が、固まって、ただの、炒り卵になる。それを、冷ましながら、ポマード状にした、大量のバターと、混ぜ合わせていく。乳化の、妙技。分離させないよう、少しずつ、少しずつ。最後に、濃く煮出した、エスプレッソを加え、香りを、閉じ込める。

そして、**『ガナッシュ・ショコラ』**。濃厚な、チョコレートクリーム。湯煎で、丁寧に溶かした、カカオ70%のチョコレートに、温めた生クリームを加え、中心から、ゆっくりと、艶が出るまで、混ぜ合わせる。乳化。その、艶やかな、黒い輝きは、まるで、夜の、湖面のようだった。

さらに、**『シロップ・ア・アンビベ』**。ビスキュイに、染み込ませるための、コーヒーシロップ。濃い、コーヒーと、砂糖を、煮詰めるだけだが、この、ほろ苦い、シロップがなければ、オペラは、ただの、甘ったるい、ケーキに、なってしまう。

すべての、パーツが、揃った時、すでに、二日が、経過していた。
そして、いよいよ、建築の、時間。モンタージュ、組み立てだ。
焼きあがった、ビスキュイを、三枚の、同じ大きさに、切り分ける。
一枚目の、ビスキュイに、コーヒーシロップを、刷毛で、たっぷりと、打つ。
その上に、コーヒーバタークリームを、パレットナイフで、薄く、均一に、塗り広げる。数ミリの、世界。定規で、測りながら。
二枚目の、ビスキュイを、重ねる。再び、シロップを、打つ。
その上に、今度は、チョコレートガナッシュを、塗り広げる。
三枚目の、ビスキュイ。シロップ。そして、残りの、バタークリーム。
一層、一層、重ねるたびに、冷凍庫で、数分、冷やし固める。気が、遠くなるような、作業だった。
私は、ただ、無心で、手を動かした。
この、層を、重ねていく、作業。それは、なんだか、私の、人生そのものの、ようだった。
絶望、という、最初の層。女王陛下との、出会い。マグカップケーキの、小さな、成功。シュークリームの、大きな、失敗。そして、特別賞という、喜びと、悔しさ。
その、すべてが、重なり合って、今の、私が、いる。
私の、未来も、きっと、こうやって、色々な、味の、層を、重ねていくのだろうか。

すべての層を、重ね終え、完全に、冷やし固めた、ケーキ。
最後の、儀式。
**『グラサージュ・ショコラ』**。ケーキの表面を、鏡のように、覆う、艶出しチョコレート。
これもまた、温度管理が、命。熱すぎても、冷たすぎても、美しい、輝きは、生まれない。
人肌に、調整した、グラサージュを、ケーキの上に、一気に、かけ流す。
躊躇は、許されない。
だらり、と、黒く、艶やかな、液体が、ケーキの、側面を、伝って、流れ落ちていく。
それは、あまりにも、官能的で、美しい、光景だった。

再び、冷蔵庫で、完全に、固める。
そして、温めたナイフで、四方の、端を、切り落とす。
その、瞬間。

「ああ」

思わず、声が、漏れた。
そこに、現れたのは、完璧な、地層だった。
茶色の、ビスキュイ。白に近い、バタークリーム。黒の、ガナッシュ。その、何層にも、重なった、幾何学的な、断面。それは、私が、今まで、作り上げてきた、どんなお菓子とも違う、圧倒的なまでの、構築的な、美を、湛えていた。
最後に、金箔を、ピンセットで、そっと、飾る。

ついに、完成したのだ。
私の、オペラが。

女王陛下と、二人、向かい合って、その、小さな、芸術品を、前にする。
フォークを入れると、すっ、と、抵抗なく、すべての層が、一体となって、切れた。
そして、一口。

複雑。
しかし、完璧に、調和している。
コーヒーの、香ばしい、苦み。バタークリームの、滑らかな、コクと、甘み。ガナッシュの、濃厚な、カカオの風味。シロップを、吸った、ビスキュイの、しっとりとした、食感。
その、すべてが、口の中で、一つの、壮大な、音楽となって、響き渡る。
美味しい。
ただ、美味しい、だけじゃない。これは、物語だ。
私は、この、一口のために、この数日間、生きてきたのだ、と、思った。

「見事ですわ」
女王陛下が、静かに、拍手をした。
「汝は、ついに、自らの、手で、未来の、設計図を、描き上げた。あとは、その、設計図通りに、人生という名の、建築物を、築き上げていくだけ」
私は、フォークを置き、女王陛下を、まっすぐに、見た。
もう、私の心に、迷いはなかった。
「私、プロに、なりたいです」
それは、私の、魂からの、声だった。
女王陛下は、その言葉を、待っていたかのように、優しく、そして、誇らしげに、微笑んだ。
「ならば、汝の、人生という名の、オペラは、今、その、第一幕の、幕が、上がったばかり、ですわね」
秋の、夜は、長い。
私は、自分の、手の中にある、小さな、しかし、確かな、未来の設計図を、何度も、何度も、見つめていた。

---
### **女王陛下直伝『未来を描くための米粉オペラ』**

**【材料】(約18cm×12cmの長方形1台分)**
* **ビスキュイ・ジョコンド(米粉)**
    * 卵  2個
    * アーモンドプードル  50g
    * 粉糖  50g
    * 米粉  15g
    * 卵白  2個分
    * グラニュー糖  15g
* **コーヒーバタークリーム**
    * 卵黄  1個分
    * 牛乳  50ml
    * グラニュー糖  20g
    * 無塩バター  100g
    * インスタントコーヒー  大さじ1(少量のお湯で溶いておく)
* **チョコレートガナッシュ**
    * 製菓用チョコレート(カカオ70%)  70g
    * 生クリーム  70ml
* **コーヒーシロップ**
    * 水  50ml
    * グラニュー糖  25g
    * インスタントコーヒー  大さじ1.5
* **グラサージュ・ショコラ**
    * 水  25ml
    * グラニュー糖  35g
    * 生クリーム  25ml
    * ココアパウダー  12g
    * ゼラチン  2g(水大さじ1でふやかしておく)

**【作り方】**
※非常に、工程が、多いので、覚悟して、取り掛かるように。これは、お菓子作りではなく、建築です。

1.  **ビスキュイを焼く**:アーモンドプードル、粉糖、米粉をふるう。全卵を加え、白くもったりするまで泡立てる。別のボウルで卵白とグラニュー糖でメレンゲを作り、さっくりと合わせる。天板に薄く伸ばし、200℃のオーブンで7~8分焼く。冷めたら3等分にカット。
2.  **バタークリームを作る**:鍋に牛乳とグラニュー糖を入れ、温める。卵黄を溶きほぐし、温めた牛乳を少しずつ加え混ぜる。鍋に戻し、弱火でとろみがつくまで加熱(アングレーズソース)。これを冷まし、常温に戻したバターと、溶かしたコーヒーを加え、滑らかになるまで混ぜる。
3.  **ガナッシュを作る**:生クリームを温め、刻んだチョコレートに加えて、艶が出るまで混ぜる。
4.  **シロップを作る**:全ての材料を鍋に入れ、煮溶かす。
5.  **組み立て(モンタージュ)**:ビスキュイにシロップを打ち、バタークリームの半量を塗る。次のビスキュイを重ね、シロップを打ち、ガナッシュを塗る。最後のビスキュイを重ね、シロップを打ち、残りのバタークリームを塗る。一層ごとに、冷凍庫で冷やし固めながら、作業を進めること。
6.  **グラサージュを作り、仕上げる**:水、グラニュー糖、生クリーム、ココアを鍋で温め、ふやかしたゼラチンを加えて溶かす。人肌に冷めたら、完全に冷え固まったケーキの上に、一気に、かけ流す。
7.  冷蔵庫で、完全に固め、温めたナイフで、四辺を切り落として、完成。お好みで、金箔を飾れば、汝だけの、オペラ座の、完成ですわ。

**【女王陛下からの最終通告】**
* 「これは、レシピにあらず。汝が、歩むべき、未来への、道標。一歩、一歩、焦らず、しかし、着実に、歩みを進めなさい。その先に、汝だけの、輝かしい、舞台が、待っていますわ」
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