チートスキルより女神様に告白したら、僕のステータスは最弱Fランクだけど、女神様の無限の祝福で最強になりました

Gaku

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シーズン3 天界の執行者と、偽りの聖勇者

第3話:剣の故郷と錆びついた過去

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天界からの追跡(サーチ)を逃れるための旅路は、世界の崩壊を肌で感じる過酷なものだった。

一行は主要な街道を避け、地図にも載っていない獣道に近い山岳地帯を進んでいた。馬車の車輪が、不自然に隆起した大地や、捻じれた巨木の根に乗り上げるたびに、激しい衝撃が車内を襲う。

季節の境界線も曖昧になっていた。ある区画では夏の湿気が肌にまとわりつくが、数メートル進めば吐く息が白くなるほどの冷気に包まれる。時折、空間そのものが不協和音のような唸りを上げ、色彩が反転するような幻覚を見せる。世界という織物が、至る所でほつれ始めている証左だった。

「うっ……ぐぅ……」

馬車の奥で、セレスティアが脂汗を浮かべて呻いた。その顔色は蒼白で、呼吸は浅く速い。天才魔導士としての威厳は見る影もなく、生命力の灯火が揺らいでいるように見えた。

「セレスティア、しっかりしろ。水だ」

リナが心配そうに水筒を差し出すが、セレスティアはそれを受け取る力すらないようだった。

「……魔力の流れ(ライン)が……狂っています……。大気中のマナが、まるで嵐のように渦巻いて……私の回路を、直接乱してくるのです……」

「これが『魔力酔い』か……。世界の理が壊れた影響を、魔導士である彼女が一番強く受けてしまっているのね」

ソフィアが痛ましげにセレスティアの額を拭う。ただの悪路による疲労ではない。世界を満たす因果律のノイズが、高感度なアンテナを持つ彼女の精神と肉体を、内側から摩耗させているのだ。

「すまねえな、セレスティア。もう少しの辛抱だ」

御者台のユウキが声をかけるが、その表情は険しい。このまま無秩序な荒野を進み続ければ、彼女の命に関わるかもしれない。休息と、安定した結界のある場所が必要だった。

「……おい、ユウキ。見えてきたぞ」

隣に座るジンの声は、低く、どこか硬かった。視線の先、鬱蒼と茂っていた歪な森が途切れ、眼下に広がる巨大な盆地に、堅牢な石造りの都市が姿を現した。

灰色の高い城壁が街を円形に囲み、その中心には天を突くような鋭利な塔がそびえ立っている。街の至る所で風に翻るのは、二振りの剣を交差させた紋章の旗。質実剛健。装飾を削ぎ落とした、戦うための機能美に満ちた都市。

「あれは武術都市ケンブレイブ……。まさか、この獣道がここに繋がっていたとは」

馬車の中からその光景を認めたサラが、息を呑んだ。

「知っているのか?」

「はい。大陸中の剣士や武術家が集い、日々己の技を磨く武人の聖地。規律と実力主義が支配する、最も厳格な都市と聞いております」

サラの声には、武人としての純粋な敬意が含まれていた。だが対照的に、ジンの背中は石像のように強張っていた。

「……ここで補給と休息を取ろう。セレスティアの状態も限界だ」

ジンはそれだけ言うと、深く帽子を目深にかぶり直した。いつもなら、新しい街に着けば真っ先に「酒と女だ!」と軽口を叩く彼が、今は逃亡者のように視線を伏せている。その横顔に浮かぶ陰りは、単なる旅の疲れでは説明がつかなかった。



ケンブレイブの街は、鉄と油、そして乾いた土の匂いに満ちていた。

行き交う人々は皆、鍛え上げられた肉体を持ち、その歩き方ひとつにも隙がない。街のあちこちにある道場からは、木剣が打ち合う鋭い音や、裂帛の気合いが響いてくる。ここでは「強さ」こそが唯一の通貨であり、秩序であるかのようだった。

一行は、街の中央広場に近い宿屋に部屋を取った。セレスティアをベッドに寝かせ、安静にさせる。結界の張られた都市内は、外の荒野よりも魔力の流れが安定しており、彼女の顔色も少しずつ戻り始めていた。

「私は、少し街を見てきます。……この街で一番とされる『天心流』の道場、一度この目で見ておきたいのです」

サラが、抑えきれない好奇心と緊張を滲ませて言った。ユウキが許可を出すと、彼女は礼をして部屋を出て行った。

「ジン、お前はどうする? 久しぶりの大きな街だぞ」

ユウキが振り返ると、ジンは既に部屋の隅にある椅子に座り込み、手持ちのスキットルから強い酒を煽っていた。

「俺はパスだ。……外の空気が肌に合わねえ。ここで寝てる」

「そうか。……無理はするなよ」

ユウキはそれ以上何も聞かなかった。誰にだって、触れられたくない傷跡の一つや二つはある。だが、その傷が膿み始めていることには、ユウキもソフィアも気づいていた。

「ジンさん……。まるで、何かに怯えているようでした」

ソフィアが心配そうに呟く。

「ああ。この街の空気が、あいつを追い詰めてる。……過去からは逃げられないってことか」
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