チートスキルより女神様に告白したら、僕のステータスは最弱Fランクだけど、女神様の無限の祝福で最強になりました

Gaku

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シーズン1 F級の祝福者と、恋する女神の英雄譚

第1話:『女神様、俺と付き合ってください!』

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カチカチ、カチカチ。

静寂が支配する安アパートの一室に、
まるで時を刻む振り子のように無機質なマウスのクリック音が響き渡る。

時折、その単調なリズムを破るように「ッターン!」という、
部屋の主の渾身の想いが込められたエンターキーの打鍵音が轟く。

ここは、佐藤悠樹(さとうゆうき)、二十五歳。
夢も希望も見出せぬまま日雇い労働で口を糊する、しがないフリーターの城である。
このワンルームには、それ以外の生活音というものがほとんど存在していなかった。

窓の外では、長く続いた梅雨がようやく明けたことを祝うかのように、
けたたましいほどの蝉時雨が容赦なく降り注いでいる。

まるで世界中の蝉が一斉に鳴き始めたかのようなその大合唱は、
薄い壁をいとも容易く透過し、俺の鼓膜を執拗に揺さぶっていた。

傾き始めた太陽が投げかける西陽は、
カーテンの隙間からオレンジ色の光線を室内に伸ばし、
空気中に舞う無数の埃をキラキラと照らし出している。

その光景は幻想的とも言えるかもしれないが、
俺の濁った目にはただの汚部屋としか映らなかった。

室温と湿度計の針はとっくに危険水域を振り切り、
この部屋はさながら熱帯雨林のジャングルのような蒸し暑さに満ちていた。

床に無造作に転がっている数本のペットボトルは、
その劣悪な環境を証明するかのように、その表面にびっしりと玉のような汗を掻いている。

「あと一周……。お願いだから、あと一周だけ……!
これさえ終われば、イベント限定SSRが、俺の、俺だけのものになるんだ……!」

虚ろな目でディスプレイを睨みつけながら、ほとんど無意識にそう呟いていた。

俺は人生の輝きという輝きのすべてを、この光り輝く長方形の箱、
ディスプレイの中に求め、来る日も来る日もソーシャルゲームのイベント周回に勤しむ、
現代社会が生んだごく一般的な青年、と言えなくもなかった。

最後の気力を振り絞り、汗でぬめりを帯びたマウスを必死に動かす。
もう一体、何時間この椅子に座り続けているのだろうか。
体内時計はとうの昔に壊れ、時間の感覚など失われて久しい。
腹は背中とくっつきそうなほど減っているし、喉は砂漠のように渇いている。

しかし、ここで席を立つわけにはいかない。
立ち上がって冷蔵庫に向かうその数十秒、いや数秒のロスが、
イベント終了時間という非情なタイムリリミットに間に合わない可能性を生む。

この数週間を費やした俺の努力が水泡に帰すこと――
それは、俺にとって『死』も同然だった。

ピロン♪

突如、スピーカーから軽やかで、しかし神の啓示にも等しい電子音が鳴り響いた。
ついに、ついにイベントアイテムが必要数に到達したのだ。

俺は「うおおおっ!」と自分でも驚くほどの歓声を上げ、
全身を駆け巡るアドレナリンを感じながら、
震える指で画面上の『交換』ボタンをクリックしようとした。

その、まさに刹那。

「あ」

喉が、焼けるように熱い。
そうだ、水分補給。
人間として、生物としてあまりにも当然の生理現象を、俺は極限の興奮の中でようやく思い出した。

視線を彷徨わせると、床に転がる最後の命綱、
まだ中身が残っているはずの麦茶のペットボトルが目に入る。

俺はそれを掴むため、椅子に座ったまま無理な体勢で手を伸ばした。
しかし、長時間のデスクワーク、いや、長時間の一点集中周回作業によってコンクリートのように凝り固まった体は、
俺の意思に反して悲鳴を上げるようにぐらりとバランスを崩した。

ガンッ!

鈍く、それでいて頭蓋の奥まで響き渡るような派手な音がした。
俺の側頭部が、愛用のパソコンデスクの角に寸分の狂いもなくクリーンヒットしたのだ。
一瞬、視界が真っ白になり、次いで激しい揺れが襲う。

手から滑り落ちたペットボトルは、まるで意志を持っているかのように床を転がり、
その途中でキャップが外れ、中身の麦茶がまるで断末魔の叫びのようにブチまけられた。

そして、その茶色い液体は、まるで運命に導かれるかのように、
足元に無造作に置かれていた電源タップへと、スルスルと吸い込まれていったのである。

バチチチチチッ!

目の前で強烈な閃光が弾けた。
凄まじい衝撃と共に、鼻腔を突き刺す焦げ臭い匂いが部屋中に充満する。

薄れゆく意識の中で、俺が見た最後の光景。

それは、ショートしてブラックアウトする寸前のPCモニターに一瞬だけ映し出された、
『アイテム交換完了!』という祝福のメッセージと、
その隣で満面の笑みを浮かべる、イベント限定SSR水着美少女の艶やかな姿だった。

(あ……俺の……女神……やっと、会えた……)

それが、佐藤悠樹、二十五年間の生涯における、
あまりにも情けなく、そしてあまりにも現代的な、人生の最期であった。



ふと、意識が穏やかに浮上した。
まるで水底から水面へとゆっくりと昇っていくような、不思議な感覚。
死んだはずの俺は、雲の上にでもいるかのように柔らかな何かに横たわっていた。
重力から解放されたような身の軽さに戸惑いながら、ゆっくりと瞼を開ける。

そして、そこに広がっていた光景に、俺は完全に言葉を失った。

見渡す限りの、白。
だが、それは病院の壁のような無機質な白ではない。
朝の陽光を一身に浴びて黄金色に輝く雄大な雲海のような、
あるいは、生まれたての赤子を包む産着のような、どこまでも優しく、そして温かい白だった。

天井という概念は存在せず、遥か上空からは、七色の光が巨大なオーロラのように絶えず揺らめいており、
そこからキラキラと輝く光の粒子が、まるで祝福の雪のように静かに降り注いでいた。

足元に広がるのは、一点の曇りもなく磨き上げられた純白の大理石の床。
しかし、不思議なことに、それは冷たい石の感触ではなかった。
まるで最高級のビロードの上を歩いているかのように柔らかく、
一歩踏み出すたびに、ポロン、と心地よい竪琴のような音が微かに鳴った。

鼻腔をくすぐるのは、これまで嗅いだことのない、気品に満ちた花の香り。
甘く、しかし決してしつこくなく、ただそこにいるだけで心が安らぎ、浄化されていくような清らかな芳香が、そよ風に乗って空間全体を満たしている。
その風が頬を撫でるたびに、遠い昔に忘れてしまった母親の優しい手のような、懐かしく温かい感触がした。

ここは一体どこだ?
天国、というありふれた言葉では到底表現しきれない。
あまりにも完璧で、あまりにも神聖な場所だった。

「目が覚めましたか、佐藤悠樹さん」

鈴を転がすような、などという陳腐な表現では万死に値するだろう。
それは、聞くだけで魂が震え、浄化され、犯してきた罪がすべて許されるような、
清らかで澄みきった声だった。

声がした方に、恐る恐る顔を向ける。
そして、俺は息を呑んだ。
呼吸の仕方を、忘れた。

そこに、一人の女性が立っていた。

彼女が身にまとっている純白のドレスは、
月の光を丹念に織り込んだ絹のように滑らかで、
彼女の僅かな身じろぎに合わせて、優雅な波紋を描いている。

腰まで届くほど長く緩やかにウェーブのかかったプラチナブロンドの髪は、
降り注ぐ光の粒子を乱反射させ、それ自体が淡い光を放っているかのようだった。

透き通るような肌は、人間国宝の陶芸家が畢生の大作として作り上げた最高級の陶磁器のように白く滑らかで、
文字通り非の打ち所がない。
そして、その顔立ちは。

ああ、駄目だ。
俺の貧相な語彙力では、この美しさを表現できない。
綺麗、美しい、そんなありふれた言葉のすべてが、彼女の前では色褪せてゴミになる。
これは、神に対する冒涜だ。

アーモンドの形をした大きな瞳は、
夏の終わりの澄み切った湖面のように、どこまでも深く、そして静謐な青色を湛えている。

すっと天に向かって伸びる気高い鼻筋。
桜の花びらをそのまま写し取ったかのような、ふっくらとした瑞々しい唇。

そのすべてが、黄金比という言葉すら陳腐に聞こえるほど、
宇宙の法則とも言うべき絶対的な調和をもって完璧な位置に配置されていた。

彼女は、俺が死ぬ間際に我が身と引き換えに手に入れたSSR水着美少女など、
その存在自体が霞んで消えてしまうほどの、まさしく『女神』そのものだった。

女神は、その完璧な唇に、慈愛に満ちた微笑みを浮かべると、
ポロン、ポロンと心地よい音を響かせながら、ゆっくりと俺に近づいてきた。

「はじめまして。
私は、この世界で魂を管理する役目を担っている女神、ソフィアと申します」

「あ……えっと……あの……」

あまりの美しさと神々しさに、声帯が機能を停止した。
俺はただ、金魚のように口をパクパクとさせることしかできなかった。

「単刀直入に申し上げます。佐藤悠樹さん。
貴方の人生は、先ほど、終わりを告げました。
原因は、電源タップへの漏水による感電死。
誠に残念ながら、あまりにもあっけない最期でした」

慈愛に満ちた声で、容赦なく俺の情けない死に様を告知する女神ソフィア。
しかし、その美しい声色には、一片の同情も、嘲笑もなく、
ただ事実を事実として述べるだけの、平坦で神聖な響きがあった。

「え、あ、やっぱり……死んだんですね、俺」

かろうじて絞り出した声は、自分でも情けないほどにか細く、震えていた。

「はい、完璧に。一片の疑いの余地もなく、完全に死亡が確認されております」

一片の慈悲も、躊躇もない、あまりにも清々しいほどの即答だった。

「まあ、なんとなくそんな気はしてましたけど……。
じゃあ、ここは天国とか、そういう場所なんですか?」

「天国、という人間の概念とは少し異なりますね。
ここは、次の生へと旅立つ魂が、その輪廻の過程で一時的に留まるための場所。
いわば、魂の中継地点です」

ソフィアはそう言うと、ふわりと宙に指を浮かべた。
すると、何もないはずの空間から、きらびやかな宝石が散りばめられた豪華な装丁の分厚い本が、
光の粒子をまといながら出現した。

「本来の摂理に従えば、貴方の魂はこの後、ここで完全に浄化され、
生前の記憶をすべて失い、また新たな生命として、いずれかの世界に生まれ変わることになります。
しかし、佐藤悠樹さん。貴方には、もう一つの特別な選択肢が与えられています」

彼女がその荘厳な本をめくると、ページから眩い光が溢れ出し、
俺の目の前の空間にスクリーンが広がるように、様々な映像が次々と浮かび上がった。

銀の鎧をまとって聖剣を振るう騎士。
天を衝くほどの巨大な炎の魔法を放つ魔導士。
空を舞う雄大なドラゴンに、森の奥で竪琴を奏でるエルフ、そして屈強なドワーフたち。

それは、俺が生前の世界で愛してやまなかったゲームやアニメの中で、
何度も見てきたファンタジーの世界そのものだった。

「異世界への転生。それが、貴方に与えられた特別な恩恵です」

「い、異世界転生!?」

思わず、素っ頓狂な大声を上げていた。
まさか、世の定番であるトラックに轢かれるわけでもなく、
神様のうっかりミスがあったわけでもなく、
あんな情けない死に方をした俺に、そんな王道中の王道イベントが発生するとは夢にも思わなかった。

「ええ。貴方は生前、多くの徳を積んだわけではありません。
正直に申し上げて、むしろ自堕落な日々を送っていたと言えるでしょう。
しかし、かといって他者を害するような大きな罪を犯したわけでもありません。
あまりにも平凡で、そしてあまりにもあっけない最期でした。
その最期があまりに不憫であると、神々の間で少しだけ同情の声が集まりまして、
今回の特例措置が決定されたのです」

「へ、へぇ……」

平凡も極めれば武器になるらしい。
まさか人生で初めて、この自堕落な生活に感謝する日が来るとは。

「そして、転生するにあたり、ささやかながら餞別をご用意しました。
貴方の望む能力(チートスキル)を一つ、授けましょう。
このリストの中から、お好きなものを一つ、お選びください」

ソフィアが優雅に指し示す先には、
目も眩むような強力なスキルの名前が、無数に羅列されていた。

『無限収納(インフィニット・ストレージ)』
『鑑定・極』
『物理攻撃完全無効』
『言語理解(全言語対応)』
『絶対神眼』――。

「す、すげぇ……」

俺は興奮のあまり、身を乗り出していた。
どれもこれも、喉から手が出るほど欲しい、垂涎の能力ばかりだ。
これさえあれば、異世界で無双し、美しい嫁を何人も娶ってハーレムを築き、
王となり、悠々自適なスローライフを送ることだって夢じゃない!

俺はリストに食らいついた。
どのスキルが一番汎用性が高いか。
どう組み合わせれば最強になれるのか。
貧弱な俺の脳が、煙を吹きそうな勢いで回転を始める。

だが、その時だった。

「……例えば、こちらの『大賢者』はいかがでしょう。
この世界に存在するあらゆる知識を瞬時に引き出すことができ、
複雑な魔法の詠唱も一切不要になります。
初心者の方には特におすすめの、非常に強力なスキルですよ」

スキルを説明するソフィアの横顔が、ふと俺の視界の端に入った。
プラチナブロンドの美しい髪が、彼女の動きに合わせてさらりと揺れる。
深く澄んだ湖面のような青い瞳が、真剣な光を宿してリストを見つめている。
淡々と、しかしどこまでも優しく響く、魂を浄化するような声。

ドクン。

俺の心臓が、今まで経験したことのないほど大きく、そして力強く跳ねた。

なんだ? この感覚は。

イベント限定SSRの水着美少女を手に入れた時の、
あの脳が焼けるような達成感や興奮とは全く違う。
もっと、こう、人間としての根源的な部分を揺さぶるような、抗いがたい強烈な衝動。

「……あるいは、こちらの『聖剣召喚』も人気ですね。
いかなる敵も一刀両断にできる、伝説級の聖剣をいつでもどこでも呼び出すことができます。
物理的な強さを求めるのであれば、これに勝るものはありません」

説明を続ける彼女の、桜色の唇の動きから、どうしても目が離せない。

チートスキル?
ハーレム?
スローライフ?

そんなものは、どうでもいい。
今、俺の目に映っているのは、この世のどんな眩い宝物よりも、
どんな息を呑む絶景よりも美しい、女神ソフィア、ただ一人だった。

俺は、気づいてしまった。
いや、悟ってしまったのだ。

俺が本当に欲しいものは、この輝かしいスキルのリストの中には、どこにもない。
俺が本当に、心の底から欲しいものは、今、俺の目の前にいる、この存在なのだと。

「……あの」

俺は、もはや何の価値も感じなくなったリストから完全に目を離し、
彼女の深く青い瞳をまっすぐに見つめて言った。

「はい、何でしょう?」

ソフィアは、完璧な慈愛の微笑みを浮かべて小首を傾げる。
ああ、もう駄目だ。
その仕草一つで、俺のけちな理性など簡単に焼き切れてしまう。
可愛すぎる。

「決まりましたか?
貴方の新たな人生の礎となる、大切なスキルです。
後悔のないように、じっくりとお選びください」

「はい、決まりました」

俺はゆっくりと立ち上がり、天国の、いや、この神聖な空間の空気を、
肺がはち切れんばかりに大きく吸い込んだ。

人生で、こんなにも真剣になったことがあっただろうか。
いや、ない。断言できる。

これは、俺の魂の、偽らざる叫びだ。

「女神様、俺と付き合ってください!」

「…………はい?」

時が、止まった。

いや、正確に言うならば、女神ソフィアの完璧な造形の顔から、
あの慈愛に満ちた微笑みが綺麗さっぱりと消え去り、
ただただ純粋な「?」という感情が浮かび上がっていた。

美しいアーモンド形の瞳が、信じられないものを見るように、ぱちくりと瞬きを繰り返している。
半開きになった桜色の唇が、そのままの形で固まっている。

いわゆる、キョトン顔というやつだ。
その表情ですら、ルーブル美術館に飾られてもおかしくないほどの芸術性を帯びていた。

「え、えっと……。大変申し訳ありません、私の聞き間違いでしょうか。
もう一度、お願いできますか?」

「だから! 俺はあんたと一緒にいたいんです!
スキルなんて一つもいらないから、貴方と一緒に異世界へ行きたい!
これが俺の願いです!」

俺は、自分の持てる情熱のすべてを、ありったけの声量に乗せて、もう一度絶叫した。

シン、と神聖な空間に、気まずいほどの静寂が訪れる。
あれほど心地よかったポロン、という音も、
心を落ち着かせてくれた花の香りも、なぜか今はまったく感じなくなった。

ただ、目の前の女神様の、驚きに見開かれた青い瞳だけが、俺の世界のすべてだった。

どれほどの時間が流れただろうか。
永遠にも感じられた沈黙の後、ソフィアはこほん、と一つ小さな咳払いをして、
無理やり完璧な微笑みをその顔に取り繕った。
しかし、その美しい口元は、明らかに微かに引きつっている。

「……佐藤悠樹さん。貴方は、少し、いえ、かなり混乱されているようですね。
私が申し上げたのは、貴方が異世界で有利に生きていくための『能力』の話です。
私自身は、残念ながらスキルリストには含まれておりません」

「分かってます! 分かってますとも!
でも、俺の唯一の望みはそれなんです!
他のどんな強力なチート能力よりも、あんたが隣にいてくれる方が、
俺は絶対に、絶対に強くなる!
そう確信してるんです!」

俺の常軌を逸した熱弁に、ソフィアは本気で困ったように美しい眉を寄せた。
その表情すら、一枚の宗教画のように神々しく、そして美しい。

「……実に、珍しいお望みですね。
過去、数えきれないほどの転生者を見てきましたが、
そのようなことをおっしゃった方は、貴方が初めてです」

彼女は、少し考えるように、白魚のような指をそっと顎に当てた。
その仕草一つで、俺の心拍数が無意味に跳ね上がる。

「本当に、よろしいのですか?
これから貴方が転生する世界には、森に住む神秘的なエルフの美少女も、
活発で愛らしい獣人の女の子も、気品あふれる人間の王女様も、
それはもう、星の数ほどの美しい女性たちがいますよ。
私がそばにいては、はっきり言って、貴方のハーレムライフの邪魔になると思いますが」

「全然いいっす! まったく問題ありません!」

俺は食い気味に、即答した。

「俺はソフィアさんがいいんです!
エルフでも獣人でも王女様でもない、他の誰でもない、貴方がいいんです!
だから、お願いします!
俺と一緒に旅をしてください!」

俺は、その場で勢いよく土下座をした。
社会不適合者の俺が、人生で初めて捧げる、本気の土下座だった。

頭上から、ふぅ、と小さく、しかし色々な感情が込められたようなため息が聞こえてきた。

恐る恐る顔を上げると、そこには、呆れと、困惑と、
そしてほんの少しの面白さが混じったような、
非常に人間味あふれる複雑な表情を浮かべたソフィアがいた。

そして、次の瞬間。

彼女は、くすくすと、まるで銀の鈴が軽やかに鳴るように笑い始めた。
それは、今までの完璧で儀礼的な微笑みとはまったく違う、もっと自然で、心からの笑い声だった。

「ふふっ……あははは!
分かりました、分かりましたとも!
そこまで熱烈に言われてしまっては、仕方がありませんね」

彼女はひとしきり笑った後、その青い瞳に楽しそうな光を宿して、俺を見下ろした。

「よろしいでしょう、佐藤悠樹さん。
それが貴方の、たった一つの、そして唯一の望みであるならば、
この私、女神ソフィアが、その奇妙な願い、叶えて差し上げましょう」

「ほ、本当ですか!? 本当に!?」

「ええ。女神は嘘をつきません。
それに、私も永い時をこの場所で過ごし、少々退屈しておりました。
貴方のような面白い人間に付き合うのも、良い退屈しのぎにはなるかもしれませんしね」

やった! やったぞ!

俺は心の中で、いや、実際に拳を天に突き上げてガッツポーズをした。
最高のチートスキルを手に入れた!
いや、スキルじゃない、最高のパートナーだ!

「ただし」

と、ソフィアは悪戯っぽく微笑みながら、細く美しい人差し指を立てた。

「勘違いしないでくださいね。
貴方自身に、特別な力を与えるわけではありません。
貴方の身体能力も、魔力も、スキルも、そのすべてが異世界の一般人レベルです。
それも、かなり低い方の」

「え、じゃあ、どうやって戦うんですか? 魔物とか出るんですよね?」

「私が側にいるだけで、貴方には森羅万象からの『祝福』が常に与えられます。
例えば、貴方が剣を振れば、風がその刃を後押しし、
敵の鎧の僅かな隙間へと正確に導いてくれるでしょう。
貴方が崖から足を踏み外しそうになれば、都合よく小石が勝手に避けていき、
地面が少しだけ盛り上がって貴方を支えてくれるでしょう。
あるいは、凶悪な魔物の目の前で転んだとしても、
その拍子に蹴り上げた石ころが、偶然にも魔物の弱点に命中するかもしれませんね。
幸運、加護、奇跡。
人々がそう呼ぶものが、常に貴方と共にあります。
私が、側にいる限りは」

ソフィアは悪戯が成功した子供のように、にこりと微笑んだ。

「つまり、貴方自身は全くの無力ですが、
私と一緒にいる限り、結果的に誰よりもチートな存在になる、ということです。
よろしいですね?」

「最高です! それ以上の答えはありません!」

俺の満面の笑みでの即答に満足したように頷くと、
ソフィアは俺に向かって、その白く美しい手を差し伸べた。

「では、参りましょうか。
新たな世界へ。
私の、面白くて少し変わったパートナーさん」

その言葉が響き渡った瞬間、世界が真っ白な、温かい光に包まれた。



「……ん……」

頬を優しく撫でていく、心地よい風。
鼻孔をくすぐる、青々とした草の匂い。
燦々と降り注ぐ、温かく柔らかな日の光。
俺はゆっくりと目を開けた。

目の前に広がっていたのは、見渡す限りの広大な大草原だった。
空はどこまでも澄み渡るような青色で、
日本では見たことのない、少しだけ大きな太陽と、
その隣に寄り添うようにして浮かぶ小さな太陽が、仲良く世界を明るく照らしていた。

「ここが、異世界……」

感慨にふけっていると、すぐ隣から、あの聞き慣れた美しい声がした。

「ええ。ここが始まりの地、名もなき丘です。
そして、遠くに見えるのが、私たちが最初に向かうべき街『アルカディア』ですよ」

声のした方を見ると、そこにはソフィアが立っていた。
神殿で見たような神々しい純白のドレス姿ではなく、
動きやすそうな、しかしどこか気品を感じさせる上質な白い旅装束を身にまとっている。

その圧倒的な美しさは、服装が変わっても些かも衰えることはなく、
むしろ、より親しみやすさが加わって、俺の心臓にはさらに悪かった。

「さあ、まずはあの街へ向かい、冒険者としてギルドに登録するのが定石です。
行きましょう、ユウキ」

「はい! ソフィアさん!」

呼び方が「佐藤悠樹さん」から「ユウキ」に変わっていることに密かに胸をときめかせながら、
俺は元気よく返事をし、意気揚々と新たな世界への第一歩を踏み出した。
その瞬間。

「おわっ!?」

慣れない地面の感触と、浮かれた気分が災いし、俺は見事に自分の足をもつれさせた。
ああ、顔から地面に突っ込む! と覚悟した瞬間、
足元の小石がまるで生きているかのようにツルンと滑ってどこかへ消え、
ふわりと柔らかな草がクッションのように盛り上がって、俺の体を優しく受け止めてくれた。

「……これが、女神様の祝福……」

「ええ。ですが、あまり頼りすぎないようにしてくださいね。
私の祝福も、常に完璧に発動するとは限りませんから」

悪戯っぽく微笑むソフィア。
俺は、これからの旅が最高に楽しく、そして刺激的なものになることを確信した。



数時間後、俺たちはついにアルカディアの街の門をくぐった。

石畳で舗装された道、温かみのあるレンガ造りの家々、そして行き交う、信じられないほど多様な人種。
頑丈な鎧を身につけた屈強なドワーフ、
森の賢者のような雰囲気を漂わせる優雅なエルフ、
そして犬や猫の耳と尻尾を生やした、愛らしい獣人たち。
活気と喧騒に満ちたその光景は、まさしく俺が夢にまで見たファンタジーの世界そのものだった。

俺たちが目指したのは、街の中でも一際大きく、多くの人々が出入りしている建物、冒険者ギルドだ。

ギシ、と年季の入った音を立てる重い木の扉を開けると、
むわりとした酒と汗と、そして冒険者たちの熱気が混じり合った独特の匂いが鼻をついた。

中では、いかにもといった風情の荒くれ者の男たちが昼間から酒を酌み交わし、
武具の手入れに余念のない者、壁に貼られた依頼書を真剣な表情で眺める者でごった返している。

「うわー、すごいな……。本物だ」

その圧倒的な雰囲気に完全に気圧されている俺の隣で、ソフィアは一人、涼しい顔をしている。
まるで彼女の周りだけ、神聖で清浄な空気が流れているかのようだ。
その浮世離れした美しさに、ギルド中の荒くれ者たちの視線が釘付けになっていることに、
俺はまだ気づいていなかった。

俺たちは人の波をかき分け、まっすぐ受付カウンターへと向かった。

「すみません、冒険者登録をお願いしたいのですが」

「はい、こちらへどうぞ」

対応してくれたのは、銀縁の眼鏡をかけた、いかにも仕事ができそうな雰囲気の受付嬢だった。
胸元のネームプレートには「ミリア」と書かれている。
彼女は手慣れた様子で書類を用意すると、台座に乗った水晶玉をこちらに差し出した。

「では、こちらの魔力水晶に手を触れてください。貴方のステータスを測定します」

「はい!」

俺は言われるがままに、そのひんやりとした水晶に手を置いた。
すると、水晶はぼんやりと、実に頼りなく、今にも消え入りそうなか細い光を、心ばかりに発した。

ミリアは、チラリと水晶の光を一瞥すると、何の感情も浮かべない無表情のまま、淡々と告げた。

「筋力、F。
体力、F。
魔力、F。
敏捷性、F。
幸運、F……以上です」

「……えふ?」

「はい、オールFランクです。
Fが測定可能な最低ランクですので、おめでとうございます。
見事なまでに、一般人以下ですね。
むしろ、ここまで綺麗にFが揃うのは珍しいかもしれません」

ミリアの言葉には、隠しきれない棘があった。
眼鏡の奥の切れ長の目が、まるで値踏みでもするかのように、俺を上から下までじろりと見ている。

「あのう、これでも、冒険者には、なれますかね?」

「……はっきり申し上げますと、絶望的に向いていません。
そのステータスでは、最弱の魔物であるスライムにすら勝てないでしょう。
薬草採取の依頼を受けたとしても、道中の崖から落ちてお陀仏になるのが関の山です。
街で地道に働くことを、強く、強くお勧めします」

彼女の容赦ない言葉に、周りで聞き耳を立てていた冒険者たちから、ドッと大きな笑いが起きた。

「おいおい聞いたかよ! オールFだってよ!」
「生まれたての赤ん坊の方がまだ強いんじゃねえか?」
「隣の姉ちゃんは、とんでもねえ極上の美人なのになあ。もったいねえ」

下品な嘲笑が、容赦なく俺の全身に突き刺さる。
普通なら、心が折れてその場で泣き崩れてもおかしくない状況だ。

だが、俺は違った。

「やったー! Fランク! これで俺も今日から冒険者だ!」

俺は、心の底から、満面の笑みで喜んでいた。
だってそうだろう?
ランクが何であろうと、冒険者にはなれたのだ。
これから、憧れの、そして世界で一番美しいソフィアさんと一緒に、
この広大な世界を旅することができるのだ。
これ以上の幸せが、この世のどこにあるというのだろうか!

俺の予想外の反応に、あれほど嘲笑していた冒険者たちはピタリと黙り込み、
中には飲んでいたエールを「ブッ!」と盛大に吹き出す者までいる。
辛辣な言葉を投げかけた受付嬢のミリアも、ポカンと口を開けて固まってしまった。

そんな異様な空気の中、ただ一人。

パチパチパチ、と優雅で、それでいてよく響く拍手が聞こえた。

「やりましたね、ユウキ。
記念すべき、栄光の第一歩です。素晴らしい結果ですよ」

隣で微笑むソフィア。
その背後から後光が差しているかのような神々しい美しさに、
ギルド内のすべての人間が、時が止まったかのように見とれていた。
受付嬢のミリアでさえ、頬をわずかに赤らめ、はっと我に返ったように一つ咳払いをした。

「……と、とにかく!
これが貴方のギルドカードです!
依頼は当然、Fランクのものしか受けられませんから、
絶対に、絶対に無茶はしないようにしてくださいね!」

半ばヤケクソ気味に、ミリアは一枚の銅製のプレートを、
カウンターに叩きつけるようにして俺に渡した。

こうして俺は、晴れて異世界で最も弱い、最低ランクのF級冒険者となったのである。

胸に輝く(ように俺には見える)Fランクのプレートを誇らしげに掲げる俺と、
その隣で「本当におめでとうございます」と、心から優しく微笑む世界一美しい女神様。

どこからどう見てもちぐはぐで、奇妙で、
だけど最高に幸せな二人の冒険が、今、確かに始まった。
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「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
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ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜

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 2XXX年、X月。  俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。  そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。  その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。  俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。  これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。

ゲームの悪役貴族に転生した俺、断罪されて処刑される未来を回避するため死ぬ気で努力したら、いつの間にか“救国の聖人”と呼ばれてたんだが

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過労死した俺が転生したのは、大好きな乙女ゲームの悪役貴族アレン。待つのはヒロインたちからの断罪と処刑エンド!?冗談じゃない! 絶対に生き延びて平穏な老後を送るため、俺はゲーム知識を総動員して破滅フラグ回避に奔走する。領地を改革し、民を救い、来るべき災厄に備えて血の滲むような努力を重ねた。 ただ死にたくない一心だったのに、その行動はなぜか周囲に「深謀遠慮の聖人」と勘違いされ、評価はうなぎ登り。 おまけに、俺を断罪するはずの聖女や王女、天才魔導師といったヒロインたちが「運命の人だわ!」「結婚してください!」と次々に迫ってきて……!? これは、破滅を回避したいだけの悪役貴族が、いつの間にか国を救う英雄に祭り上げられ、ヒロインたちに溺愛される勘違い救国ファンタジー!

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

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現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

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 学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。  そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。 「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」  なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。  これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。

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主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~

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幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。 彼はその日から探索者――シーカーを目指した。 そして遂に訪れた覚醒の日。 「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」 スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。 「幸運の強化って……」 幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。 そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。 そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。 だが彼は知らない。 ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。 しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。 これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。

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