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第2部:王都への道
第11話:決意の瞳は真っ直ぐであり、主人公の瞳は泳ぎまくっている
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季節は初夏を迎えていたが、その日のアカデミーを包んでいたのは、肌を刺すような冬の寒気にも似た緊張感だった。 西の空から差し込む夕日は、校舎の古いレンガを血のような赤に染め上げ、長く伸びた影が廊下を黒く塗りつぶしていく。窓の外では、季節外れの強い風が木々を揺らし、葉擦れの音がまるで何千もの人々が囁き合っているかのような不穏なざわめきを生んでいた。
その赤と黒のコントラストが支配する教室で、ルーシャン・アークライト(中身八十六歳・現在六歳)は、人生で何度目かの「絶望」を味わっていた。 それは、前世で愛用の湯呑みを割った時のような静かな悲しみではない。もっと動的で、理不尽で、胃のあたりがキリキリと締め上げられるような、逃げ場のない感覚だ。
「私は、王都へ行きます」
教室の中央、夕日を背に受けて立ち上がった少女、アウレリアの声は、澄んだ鐘の音のように響いた。 彼女の黄金色の髪が、窓から吹き込んだ風にふわりと舞う。その瞳には一点の曇りもない。迷いも、恐怖も、打算もない。ただ真っ直ぐに、彼方の王都を見据えている。それは「正しい見方」そのものの具現化であり、世界をありのままに見つめ、なすべきことをなそうとする強者の視線だった。
対して、ルーシャンの目は、生まれたての小鹿のように泳ぎまくっていた。
(勘弁してくれ……頼むから、嘘だと言ってくれ)
ルーシャンの心の中の平穏な湖――彼が何よりも大切にしている、凪いだ水面のような精神状態――には今、巨大な隕石が落下し、大津波を引き起こしていた。 王都の大障壁が破られ、魔族が出現したという急報。それはつまり、この世界のバランスが崩壊したことを意味する。教師たちは校門を閉ざし、籠城を決定した。 賢明な判断だ、とルーシャンは思った。 外の世界は、複雑怪奇な因果の糸が絡まり合い、いつ誰が死んでもおかしくない混沌の渦だ。そんな場所に、わざわざ飛び込む必要はない。ここでじっと膝を抱え、嵐が過ぎ去るのを待つ。それこそが、苦しみを避けるための最適解ではないか。
だが、この場の空気はそれを許さない熱を帯び始めていた。
「僕も行くよ。アウレリアさんを一人で行かせるわけにはいかない」
手を挙げたのは、かつてのエリート、ヴァレリウスだ。以前の彼ならば「平民ごときが」と鼻で笑っていただろう。だが、「黒い本の呪い」の一件以来、彼の憑き物は完全に落ちていた。その表情は、まるで長年の便秘が解消したかのように晴れやかで、余計なプライドという重荷を下ろした者の清々しさがある。 だが、ルーシャンに言わせれば、それは「清々しいまでの自殺志願」に見えた。
「アタシも行くに決まってんだろ。この学園(ハコ)に閉じこもってるなんざ、性に合わねぇ」
机に足を投げ出し、ガムのような木の実を噛んでいるのはセラフィーナだ。彼女の周りには常に、目に見えない何かが漂っているが、今日は特にその「何か」が騒がしい気がする。彼女は直感で生きている。理屈ではなく、動物的な勘が「動け」と命じているのだ。
「ぼ、僕も……研究の続きが、あるかもしれませんし……!」 「わ、私も……皆さんのお手伝いを……!」
気弱なアルフォンスと、ドジっ子のクロエまでもが、震える声で賛同した。アルフォンスの眼鏡は曇り、クロエはすでに何もないところで躓きかけているが、その意志の核にあるものは「連帯」だ。一人では折れてしまう小枝も、束ねれば強くなる。彼らは無意識のうちに、自分という存在が単独で成立しているのではなく、仲間との関係性の中で生かされていることを理解し始めていた。
そして。 五人の視線が、一斉にルーシャンへと集中する。
期待。信頼。尊敬。 それらは一般的に、ポジティブな感情とされる。だが、今のルーシャンにとっては、五体を引き裂かんばかりの圧力(プレッシャー)でしかなかった。それはまるで、「お前がリーダーだろ?」「当然行くよな?」「さあ、号令を!」と書かれた看板で、頭をぶん殴られているような感覚だ。
(違う。違うんだ。僕はただ、静かに暮らしたいだけなんだ!)
ルーシャンは心の中で絶叫した。 そもそも、人生とは「思い通りにならない」のが基本設定だ。それは分かっている。スマホの充電が切れるように、天気が急変するように、トラブルは勝手にやってくる。 だが、これは限度を超えている。魔族? 戦争? そんなものは、物語の中だけでやってくれ。僕はエキストラAでいい。いや、背景の木Bでもいい。
彼は深呼吸をした。吸って、吐いて。乱れる心を整える。 ここで流されてはいけない。自分の心に正直になるのだ。嫌なことは嫌だと言う。それが、自分を守るための「正しい行い」だはずだ。
ルーシャンはゆっくりと口を開き、震える唇で、精一杯の拒絶を言葉にした。
「……いやだ」
教室が静まり返る。風の音さえ止まった気がした。
「僕は、絶対に行かない。死にたくない。なんで僕が行かなきゃならないんだ。僕はここで、静かに本を読んで、お茶を飲んで暮らしたいんだ……!」
それは、六歳児としての本音であり、八十六歳としての渇望でもあった。 彼は「平穏」という名の甘い果実に執着していた。その執着こそが苦しみを生むのだと頭では分かっていても、心がそれを手放せない。王都へ行く苦しみより、ここにしがみつく苦しみのほうがまだマシだという計算が、瞬時に脳内を駆け巡ったのだ。
言い切った。言ってやった。 これで彼らは失望するだろう。「なんだ、腰抜けか」と軽蔑し、置いていってくれるはずだ。それでいい。孤独こそが至高の安らぎなのだから。
ルーシャンは恐る恐る顔を上げ、仲間たちの反応を窺った。
「っ……!!」
そこにあったのは、軽蔑ではなかった。 ヴァレリウスが、感動に打ち震え、目頭を押さえていた。 アウレリアが、痛ましいものを見るような、それでいて慈愛に満ちた瞳で彼を見つめていた。 セラフィーナまでもが、「……チッ、甘ちゃんが」と言いながら、どこか嬉しそうに口角を上げている。
(……はい?)
ルーシャンの脳内処理がエラーを起こす。
「……さすがだ、ルーシャン」 ヴァレリウスが、重々しく頷いた。 「君は、僕たちを行かせないために……あえて泥を被ろうというのか」
(は?)
「分かっています、ルーシャンくん」 アルフォンスが、曇った眼鏡を直しながら熱弁を振るう。 「王都は地獄です。君は、その危険な場所に、僕たちのような未熟者を連れて行くわけにはいかないと考えた。だから、『行きたくない』と子供のように振る舞うことで、僕たちの足を止めようとした……。自分一人で、全ての重荷を背負うつもりなんですね」
(待て待て待て。論理の飛躍がすごいぞ。どこのパラレルワールドの解釈だそれは)
「アンタって奴は、本当に損な性格してんな」 セラフィーナがポンとルーシャンの肩を叩いた。その手は強烈に痛かった。 「『死にたくない』なんて演技、六歳児にしちゃ上手かったぜ。でもな、アタシらの目は誤魔化せねぇよ。その震える手は、恐怖じゃなくて、友を思う葛藤の震えだろ?」
(恐怖だよ! 純度100パーセントの恐怖によるバイブレーションだよ!)
誤解の連鎖(アルゴリズム)は止まらない。 彼らは、ルーシャンの「執着による拒絶」を、「自己犠牲による慈悲」へと勝手に脳内変換していた。 人間は、自分の見たいものを見る生き物だ。彼らにとってルーシャンは「英雄」というフィルタを通して観測される存在であり、その行動のすべては「英雄的」な理由付けで補完されてしまうのだ。
「ルーシャン」 アウレリアが一歩踏み出し、ルーシャンの両手をぎゅっと握りしめた。彼女の手は温かく、そして痛いほど力が込められていた。 「あなたの優しさは、痛いほど分かります。でも、私たちも連れて行ってください。あなた一人を、死地に行かせはしません」
彼女の瞳に映る自分は、確かに悲劇のヒーローの顔をしていた。 反論しようとしたが、喉が張り付いて声が出ない。ここで「いや、本当に怖いだけなんだ」と言ったところで、「まだそんな嘘を!」とさらに感動される未来しか見えない。 詰んだ。 完全に詰んだ。
「……今夜、準備を整えよう」 ヴァレリウスが勝手に仕切り始めた。 「教師たちに見つからないよう、深夜零時に中庭集合だ。いいかい、ルーシャン。君の覚悟、僕たちが支えるから」
ルーシャンは、魂の抜けた顔で、コクンと頷くことしかできなかった。
* * *
深夜のアカデミーは、昼間の喧騒が嘘のように静まり返っていた。 上弦の月が、中庭の噴水を青白く照らし出している。時折、夜風が渡り廊下を吹き抜け、ヒュウという寂しげな音を立てる。草むらからは虫の声が聞こえるが、それさえもどこか怯えているように小さく、途切れがちだった。
ルーシャンは、寮の自室で荷物をまとめていた。 ただし、「王都へ行くため」の準備ではない。「夜逃げ」のためだ。
(誰が行くものか。深夜零時? 知るか。僕はその時間、反対方向の森へ消える)
彼はリュックサックに、最低限の食料と、着替えと、そして愛用の枕を詰め込んだ。 この枕だけは手放せない。これがないと眠れないのだ。 人は「私」という確固たる存在があると思っているが、実際は記憶や習慣、愛着といった要素の集合体にすぎない。ルーシャンにとって、この枕こそが「平穏な日常」というアイデンティティを構成する重要なパーツ(五蘊の一部)だった。
窓を開けると、ひんやりとした夜気が頬を撫でる。 土の匂い。遠くに咲く夜行性の花の甘い香り。そして、どこか焦げ臭いような、不穏な気配。 彼は音もなく窓枠を跨いだ。忍び足のスキルだけは、前世からの逃避生活で無駄に洗練されている。
目指すは裏門。そこから森を抜け、隣国へ亡命する。英雄? 知ったことか。自分の命あっての物種だ。
校舎の影に身を潜めながら、中庭を迂回する。 心臓が早鐘を打っていた。見つかったら終わりだ。教師に見つかれば連れ戻され、仲間に見つかれば王都へ連行される。前門の虎、後門の狼。 だが、彼の「不幸を引き寄せる磁石」のような運命は、ここで最も厄介な人物を引き合わせた。
ザッ、ザッ、ザッ。
規則正しい、箒で地面を掃く音が聞こえた。 こんな真夜中に? ルーシャンが足を止め、角からそっと覗き込むと、そこには一人の老人がいた。 用務員兼任の、初老の教師だ。名前は誰も知らない。いつも背中を丸め、無言で校内を掃除している、空気のような存在。
老人は、月明かりの下、黙々と落ち葉を掃いていた。 その動きには一切の無駄がない。 右へ、左へ。 ただ箒を動かすことだけに集中し、周囲の静寂と完全に一体化している。まるで「掃く」という行為そのものが彼自身であるかのような、深い集中の領域(ゾーン)にいるように見えた。
ルーシャンは息を潜め、後ずさりしようとした。 その時。 老人の手が止まった。
「……荷物が、大きすぎるのう」
背を向けたまま、老人が呟いた。 心臓が跳ね上がった。バレている。完全に気配を消していたはずなのに。
老人はゆっくりと振り返った。月光に照らされたその瞳は、深く、暗く、それでいて全てを見透かすような鋭さを秘めていた。 ルーシャンは凍りついた。言い訳を考えようと脳をフル回転させる。散歩です。枕の天日干しです。夢遊病です。
「逃げるのかね」
老人の問いは、非難の色を含んでいなかった。ただ事実を確認するだけの、乾いた響き。 ルーシャンは観念して、小さく頷いた。 「……怖くて」 今度は、嘘のない本音が出た。この老人になら、なぜか嘘が通じない気がしたからだ。
「そうか」 老人は短く答えると、再び箒を動かし始めた。 止めないのか? ルーシャンは拍子抜けした。 「……止めてくれないんですか?」 「流れる水は、止められんよ」 老人は淡々と言った。 「お前さんが逃げたいと願うのも、それまでの縁(流れ)の結果。無理に止めれば、水は溢れて濁るだけだ」
それは、ルーシャンが愛する哲学に近い言葉だった。 そう、無理に抗うから苦しいのだ。流れに身を任せ、逃げることもまた、一つの自然なあり方ではないか。
老人はふと、箒の手を休め、星のない北の空を指差した。
「南門は、警備が厳しいぞ」
「え?」
「教頭たちが、生徒の脱走を防ぐために結界を張っておる。ネズミ一匹通れんじゃろうな」 老人はニヤリと、シワだらけの顔で笑った。それは教育者というより、悪戯好きな子供のような笑みだった。 「だが、『北門』は鍵が錆びついていてな。私が修理のために外しておいたのを、うっかり忘れておったかもしれん」
(……このジジイ、まさか)
北門。それは王都とは正反対の、山岳地帯へ続く裏門だ。そこから出れば、誰にも見つからずに山へ入れる。 老人は、逃亡を幇助(ほうじょ)しようとしているのだ。
「……ありがとうございます!」 ルーシャンは深々と頭を下げた。なんて話の分かる老人だ。世の中、捨てたもんじゃない。 「このご恩は忘れません!」
「行け。夜明けは近いぞ」
ルーシャンはリュックを背負い直し、北門へと走り出した。 背中で、ザッ、ザッ、という箒の音が再開される。そのリズムは、焦るルーシャンの心臓の鼓動とは対照的に、どこまでも一定で、穏やかだった。
彼は知らなかった。 物事には表と裏があるように、言葉にも裏があることを。 「北門」が、単なる逃げ道ではなく、運命という名の巨大なシステムの、次なる分岐点(スイッチ)であることを。
* * *
北門は、老人の言葉通り、驚くほど簡単に開いた。 重い鉄扉が、軋んだ音を立てて闇に口を開ける。その先には、鬱蒼とした森と、古びた街道が続いている。 自由だ。 冷たい夜風が、今度こそ本当の解放感を運んでくる。
(さらば、勘違いの日々よ。さらば、英雄なんていう重荷よ)
ルーシャンは思わずスキップしそうになるのを堪え、街道へと足を踏み出した。 月が雲に隠れ、辺りは完全な闇に包まれる。だが怖くはない。人間関係のしがらみより、暗闇のほうがよほど親切だ。
街道を数分ほど進んだところだった。 道端の木陰に、いくつかの人影が見えた。
(……え?)
ルーシャンは立ち止まった。 幽霊か? 魔族か? いや、それにしてはシルエットに見覚えがありすぎる。
「あ、来た!」 アウレリアの声だ。 「よかった、先生の言った通りだわ!」
松明の火がパッと灯された。 暗闇に浮かび上がったのは、旅装に身を包んだアウレリア、ヴァレリウス、セラフィーナ、アルフォンス、クロエの五人だった。 彼らは全員、満面の笑みでルーシャンを迎えた。
「る、ルーシャン……?」 ルーシャンの声が裏返る。 「な、なんで……ここに……?」
ここは北門だ。王都へ向かう南門とは真逆だ。なぜ彼らがここにいる?
「いやあ、さすがルーシャンだ!」 ヴァレリウスが感心したように歩み寄ってくる。 「僕たちは南門で待っていたんだが、例の用務員の先生が来てね。伝言を預かったと言われたんだ」
「で、伝言……?」
「『英雄は、裏をかく。南は敵の目が光っているゆえ、あえて遠回りの北から山を越え、敵の背後を突いて王都へ向かうつもりだ。お前たちも北へ回れ』ってな!」
(あ の ク ソ ジ ジ イ ィ ィ ィ !!!)
ルーシャンの脳内で、穏やかだった老人の笑顔が悪魔のそれに書き換えられた。 あいつ、最初から全部計算してやがったな! 「逃げ道」を教えたフリをして、実際には仲間たちと合流させるための「合流地点」へと誘導したのだ。 「流れる水は止められん」? 嘘をつけ! 治水工事もいいところだ! 僕という水流を、無理やり激流の本流に合流させやがった!
「すごい策だよ、ルーシャンくん」 アルフォンスが地図を広げる。 「確かに北の山道は険しいですが、魔族の監視網からは外れています。急がば回れ。まさに兵法の理(ことわり)ですね」
「……」 ルーシャンは天を仰いだ。 雲の切れ間から覗いた月が、「無駄な抵抗はやめとけ」と言わんばかりに冷ややかに輝いている。
因果応報。自業自得。 逃げようとすればするほど、網はきつく絡まっていく。 これはもう、宇宙の法則レベルでの「いじめ」ではないか。
「さあ、行こうか! ルーシャン!」 アウレリアが眩しい笑顔で手を差し伸べる。 その手を取らなければ、ここで「いや、僕は逃げるつもりだった」と白状しなければならない。だが、そんなことを言えば、これまでの全ての信頼が崩壊するだけでなく、彼らに対する裏切りになる。 葛藤。 しかし、状況(縁起)はすでに彼を逃さない形に組み上がっていた。
ルーシャンは、引きつった笑みを浮かべ、震える手でアウレリアの手を握り返した。
「……うん。行こう、みんな」 声が死んでいた。
「へへッ、そうこなくちゃな!」 セラフィーナが背中を叩く。 こうして、ルーシャン・アークライトの「静かなる逃避行」は、開始五分で「栄光(という名の地獄)への進軍」へと強制変更されたのだった。
「とはいえ、この人数で王都まで山道を行くのは骨が折れるぜ」 セラフィーナが街道の先、闇に沈む森を見やった。 「まずは足の確保だ。この先に古い廃村がある。そこに昔、軍が使ってた厩舎が残ってるって噂だ。運が良けりゃ、馬の一頭でも見つかるかもしれねぇ」
「名案です!」 クロエが手を打つ。「徒歩よりも断然速いですし、荷物も運べます!」
(速いのは困る……荷物は枕だけでいい……)
ルーシャンは心の中で抵抗したが、すでに流れは決まっていた。 一行は、希望に満ちた足取りで(ルーシャンだけはドナドナされる牛のような足取りで)、闇の中へと歩き出した。
風が強く吹き抜けた。 木々がざわめき、夜の匂いが変わる。 それは、物語が次の章(ステージ)へと進む合図であり、ルーシャンの平穏が粉々に砕け散る音でもあった。
王都まで、あと数百キロ。 彼の「思い通りにならない旅」は、まだ始まったばかりである。
その赤と黒のコントラストが支配する教室で、ルーシャン・アークライト(中身八十六歳・現在六歳)は、人生で何度目かの「絶望」を味わっていた。 それは、前世で愛用の湯呑みを割った時のような静かな悲しみではない。もっと動的で、理不尽で、胃のあたりがキリキリと締め上げられるような、逃げ場のない感覚だ。
「私は、王都へ行きます」
教室の中央、夕日を背に受けて立ち上がった少女、アウレリアの声は、澄んだ鐘の音のように響いた。 彼女の黄金色の髪が、窓から吹き込んだ風にふわりと舞う。その瞳には一点の曇りもない。迷いも、恐怖も、打算もない。ただ真っ直ぐに、彼方の王都を見据えている。それは「正しい見方」そのものの具現化であり、世界をありのままに見つめ、なすべきことをなそうとする強者の視線だった。
対して、ルーシャンの目は、生まれたての小鹿のように泳ぎまくっていた。
(勘弁してくれ……頼むから、嘘だと言ってくれ)
ルーシャンの心の中の平穏な湖――彼が何よりも大切にしている、凪いだ水面のような精神状態――には今、巨大な隕石が落下し、大津波を引き起こしていた。 王都の大障壁が破られ、魔族が出現したという急報。それはつまり、この世界のバランスが崩壊したことを意味する。教師たちは校門を閉ざし、籠城を決定した。 賢明な判断だ、とルーシャンは思った。 外の世界は、複雑怪奇な因果の糸が絡まり合い、いつ誰が死んでもおかしくない混沌の渦だ。そんな場所に、わざわざ飛び込む必要はない。ここでじっと膝を抱え、嵐が過ぎ去るのを待つ。それこそが、苦しみを避けるための最適解ではないか。
だが、この場の空気はそれを許さない熱を帯び始めていた。
「僕も行くよ。アウレリアさんを一人で行かせるわけにはいかない」
手を挙げたのは、かつてのエリート、ヴァレリウスだ。以前の彼ならば「平民ごときが」と鼻で笑っていただろう。だが、「黒い本の呪い」の一件以来、彼の憑き物は完全に落ちていた。その表情は、まるで長年の便秘が解消したかのように晴れやかで、余計なプライドという重荷を下ろした者の清々しさがある。 だが、ルーシャンに言わせれば、それは「清々しいまでの自殺志願」に見えた。
「アタシも行くに決まってんだろ。この学園(ハコ)に閉じこもってるなんざ、性に合わねぇ」
机に足を投げ出し、ガムのような木の実を噛んでいるのはセラフィーナだ。彼女の周りには常に、目に見えない何かが漂っているが、今日は特にその「何か」が騒がしい気がする。彼女は直感で生きている。理屈ではなく、動物的な勘が「動け」と命じているのだ。
「ぼ、僕も……研究の続きが、あるかもしれませんし……!」 「わ、私も……皆さんのお手伝いを……!」
気弱なアルフォンスと、ドジっ子のクロエまでもが、震える声で賛同した。アルフォンスの眼鏡は曇り、クロエはすでに何もないところで躓きかけているが、その意志の核にあるものは「連帯」だ。一人では折れてしまう小枝も、束ねれば強くなる。彼らは無意識のうちに、自分という存在が単独で成立しているのではなく、仲間との関係性の中で生かされていることを理解し始めていた。
そして。 五人の視線が、一斉にルーシャンへと集中する。
期待。信頼。尊敬。 それらは一般的に、ポジティブな感情とされる。だが、今のルーシャンにとっては、五体を引き裂かんばかりの圧力(プレッシャー)でしかなかった。それはまるで、「お前がリーダーだろ?」「当然行くよな?」「さあ、号令を!」と書かれた看板で、頭をぶん殴られているような感覚だ。
(違う。違うんだ。僕はただ、静かに暮らしたいだけなんだ!)
ルーシャンは心の中で絶叫した。 そもそも、人生とは「思い通りにならない」のが基本設定だ。それは分かっている。スマホの充電が切れるように、天気が急変するように、トラブルは勝手にやってくる。 だが、これは限度を超えている。魔族? 戦争? そんなものは、物語の中だけでやってくれ。僕はエキストラAでいい。いや、背景の木Bでもいい。
彼は深呼吸をした。吸って、吐いて。乱れる心を整える。 ここで流されてはいけない。自分の心に正直になるのだ。嫌なことは嫌だと言う。それが、自分を守るための「正しい行い」だはずだ。
ルーシャンはゆっくりと口を開き、震える唇で、精一杯の拒絶を言葉にした。
「……いやだ」
教室が静まり返る。風の音さえ止まった気がした。
「僕は、絶対に行かない。死にたくない。なんで僕が行かなきゃならないんだ。僕はここで、静かに本を読んで、お茶を飲んで暮らしたいんだ……!」
それは、六歳児としての本音であり、八十六歳としての渇望でもあった。 彼は「平穏」という名の甘い果実に執着していた。その執着こそが苦しみを生むのだと頭では分かっていても、心がそれを手放せない。王都へ行く苦しみより、ここにしがみつく苦しみのほうがまだマシだという計算が、瞬時に脳内を駆け巡ったのだ。
言い切った。言ってやった。 これで彼らは失望するだろう。「なんだ、腰抜けか」と軽蔑し、置いていってくれるはずだ。それでいい。孤独こそが至高の安らぎなのだから。
ルーシャンは恐る恐る顔を上げ、仲間たちの反応を窺った。
「っ……!!」
そこにあったのは、軽蔑ではなかった。 ヴァレリウスが、感動に打ち震え、目頭を押さえていた。 アウレリアが、痛ましいものを見るような、それでいて慈愛に満ちた瞳で彼を見つめていた。 セラフィーナまでもが、「……チッ、甘ちゃんが」と言いながら、どこか嬉しそうに口角を上げている。
(……はい?)
ルーシャンの脳内処理がエラーを起こす。
「……さすがだ、ルーシャン」 ヴァレリウスが、重々しく頷いた。 「君は、僕たちを行かせないために……あえて泥を被ろうというのか」
(は?)
「分かっています、ルーシャンくん」 アルフォンスが、曇った眼鏡を直しながら熱弁を振るう。 「王都は地獄です。君は、その危険な場所に、僕たちのような未熟者を連れて行くわけにはいかないと考えた。だから、『行きたくない』と子供のように振る舞うことで、僕たちの足を止めようとした……。自分一人で、全ての重荷を背負うつもりなんですね」
(待て待て待て。論理の飛躍がすごいぞ。どこのパラレルワールドの解釈だそれは)
「アンタって奴は、本当に損な性格してんな」 セラフィーナがポンとルーシャンの肩を叩いた。その手は強烈に痛かった。 「『死にたくない』なんて演技、六歳児にしちゃ上手かったぜ。でもな、アタシらの目は誤魔化せねぇよ。その震える手は、恐怖じゃなくて、友を思う葛藤の震えだろ?」
(恐怖だよ! 純度100パーセントの恐怖によるバイブレーションだよ!)
誤解の連鎖(アルゴリズム)は止まらない。 彼らは、ルーシャンの「執着による拒絶」を、「自己犠牲による慈悲」へと勝手に脳内変換していた。 人間は、自分の見たいものを見る生き物だ。彼らにとってルーシャンは「英雄」というフィルタを通して観測される存在であり、その行動のすべては「英雄的」な理由付けで補完されてしまうのだ。
「ルーシャン」 アウレリアが一歩踏み出し、ルーシャンの両手をぎゅっと握りしめた。彼女の手は温かく、そして痛いほど力が込められていた。 「あなたの優しさは、痛いほど分かります。でも、私たちも連れて行ってください。あなた一人を、死地に行かせはしません」
彼女の瞳に映る自分は、確かに悲劇のヒーローの顔をしていた。 反論しようとしたが、喉が張り付いて声が出ない。ここで「いや、本当に怖いだけなんだ」と言ったところで、「まだそんな嘘を!」とさらに感動される未来しか見えない。 詰んだ。 完全に詰んだ。
「……今夜、準備を整えよう」 ヴァレリウスが勝手に仕切り始めた。 「教師たちに見つからないよう、深夜零時に中庭集合だ。いいかい、ルーシャン。君の覚悟、僕たちが支えるから」
ルーシャンは、魂の抜けた顔で、コクンと頷くことしかできなかった。
* * *
深夜のアカデミーは、昼間の喧騒が嘘のように静まり返っていた。 上弦の月が、中庭の噴水を青白く照らし出している。時折、夜風が渡り廊下を吹き抜け、ヒュウという寂しげな音を立てる。草むらからは虫の声が聞こえるが、それさえもどこか怯えているように小さく、途切れがちだった。
ルーシャンは、寮の自室で荷物をまとめていた。 ただし、「王都へ行くため」の準備ではない。「夜逃げ」のためだ。
(誰が行くものか。深夜零時? 知るか。僕はその時間、反対方向の森へ消える)
彼はリュックサックに、最低限の食料と、着替えと、そして愛用の枕を詰め込んだ。 この枕だけは手放せない。これがないと眠れないのだ。 人は「私」という確固たる存在があると思っているが、実際は記憶や習慣、愛着といった要素の集合体にすぎない。ルーシャンにとって、この枕こそが「平穏な日常」というアイデンティティを構成する重要なパーツ(五蘊の一部)だった。
窓を開けると、ひんやりとした夜気が頬を撫でる。 土の匂い。遠くに咲く夜行性の花の甘い香り。そして、どこか焦げ臭いような、不穏な気配。 彼は音もなく窓枠を跨いだ。忍び足のスキルだけは、前世からの逃避生活で無駄に洗練されている。
目指すは裏門。そこから森を抜け、隣国へ亡命する。英雄? 知ったことか。自分の命あっての物種だ。
校舎の影に身を潜めながら、中庭を迂回する。 心臓が早鐘を打っていた。見つかったら終わりだ。教師に見つかれば連れ戻され、仲間に見つかれば王都へ連行される。前門の虎、後門の狼。 だが、彼の「不幸を引き寄せる磁石」のような運命は、ここで最も厄介な人物を引き合わせた。
ザッ、ザッ、ザッ。
規則正しい、箒で地面を掃く音が聞こえた。 こんな真夜中に? ルーシャンが足を止め、角からそっと覗き込むと、そこには一人の老人がいた。 用務員兼任の、初老の教師だ。名前は誰も知らない。いつも背中を丸め、無言で校内を掃除している、空気のような存在。
老人は、月明かりの下、黙々と落ち葉を掃いていた。 その動きには一切の無駄がない。 右へ、左へ。 ただ箒を動かすことだけに集中し、周囲の静寂と完全に一体化している。まるで「掃く」という行為そのものが彼自身であるかのような、深い集中の領域(ゾーン)にいるように見えた。
ルーシャンは息を潜め、後ずさりしようとした。 その時。 老人の手が止まった。
「……荷物が、大きすぎるのう」
背を向けたまま、老人が呟いた。 心臓が跳ね上がった。バレている。完全に気配を消していたはずなのに。
老人はゆっくりと振り返った。月光に照らされたその瞳は、深く、暗く、それでいて全てを見透かすような鋭さを秘めていた。 ルーシャンは凍りついた。言い訳を考えようと脳をフル回転させる。散歩です。枕の天日干しです。夢遊病です。
「逃げるのかね」
老人の問いは、非難の色を含んでいなかった。ただ事実を確認するだけの、乾いた響き。 ルーシャンは観念して、小さく頷いた。 「……怖くて」 今度は、嘘のない本音が出た。この老人になら、なぜか嘘が通じない気がしたからだ。
「そうか」 老人は短く答えると、再び箒を動かし始めた。 止めないのか? ルーシャンは拍子抜けした。 「……止めてくれないんですか?」 「流れる水は、止められんよ」 老人は淡々と言った。 「お前さんが逃げたいと願うのも、それまでの縁(流れ)の結果。無理に止めれば、水は溢れて濁るだけだ」
それは、ルーシャンが愛する哲学に近い言葉だった。 そう、無理に抗うから苦しいのだ。流れに身を任せ、逃げることもまた、一つの自然なあり方ではないか。
老人はふと、箒の手を休め、星のない北の空を指差した。
「南門は、警備が厳しいぞ」
「え?」
「教頭たちが、生徒の脱走を防ぐために結界を張っておる。ネズミ一匹通れんじゃろうな」 老人はニヤリと、シワだらけの顔で笑った。それは教育者というより、悪戯好きな子供のような笑みだった。 「だが、『北門』は鍵が錆びついていてな。私が修理のために外しておいたのを、うっかり忘れておったかもしれん」
(……このジジイ、まさか)
北門。それは王都とは正反対の、山岳地帯へ続く裏門だ。そこから出れば、誰にも見つからずに山へ入れる。 老人は、逃亡を幇助(ほうじょ)しようとしているのだ。
「……ありがとうございます!」 ルーシャンは深々と頭を下げた。なんて話の分かる老人だ。世の中、捨てたもんじゃない。 「このご恩は忘れません!」
「行け。夜明けは近いぞ」
ルーシャンはリュックを背負い直し、北門へと走り出した。 背中で、ザッ、ザッ、という箒の音が再開される。そのリズムは、焦るルーシャンの心臓の鼓動とは対照的に、どこまでも一定で、穏やかだった。
彼は知らなかった。 物事には表と裏があるように、言葉にも裏があることを。 「北門」が、単なる逃げ道ではなく、運命という名の巨大なシステムの、次なる分岐点(スイッチ)であることを。
* * *
北門は、老人の言葉通り、驚くほど簡単に開いた。 重い鉄扉が、軋んだ音を立てて闇に口を開ける。その先には、鬱蒼とした森と、古びた街道が続いている。 自由だ。 冷たい夜風が、今度こそ本当の解放感を運んでくる。
(さらば、勘違いの日々よ。さらば、英雄なんていう重荷よ)
ルーシャンは思わずスキップしそうになるのを堪え、街道へと足を踏み出した。 月が雲に隠れ、辺りは完全な闇に包まれる。だが怖くはない。人間関係のしがらみより、暗闇のほうがよほど親切だ。
街道を数分ほど進んだところだった。 道端の木陰に、いくつかの人影が見えた。
(……え?)
ルーシャンは立ち止まった。 幽霊か? 魔族か? いや、それにしてはシルエットに見覚えがありすぎる。
「あ、来た!」 アウレリアの声だ。 「よかった、先生の言った通りだわ!」
松明の火がパッと灯された。 暗闇に浮かび上がったのは、旅装に身を包んだアウレリア、ヴァレリウス、セラフィーナ、アルフォンス、クロエの五人だった。 彼らは全員、満面の笑みでルーシャンを迎えた。
「る、ルーシャン……?」 ルーシャンの声が裏返る。 「な、なんで……ここに……?」
ここは北門だ。王都へ向かう南門とは真逆だ。なぜ彼らがここにいる?
「いやあ、さすがルーシャンだ!」 ヴァレリウスが感心したように歩み寄ってくる。 「僕たちは南門で待っていたんだが、例の用務員の先生が来てね。伝言を預かったと言われたんだ」
「で、伝言……?」
「『英雄は、裏をかく。南は敵の目が光っているゆえ、あえて遠回りの北から山を越え、敵の背後を突いて王都へ向かうつもりだ。お前たちも北へ回れ』ってな!」
(あ の ク ソ ジ ジ イ ィ ィ ィ !!!)
ルーシャンの脳内で、穏やかだった老人の笑顔が悪魔のそれに書き換えられた。 あいつ、最初から全部計算してやがったな! 「逃げ道」を教えたフリをして、実際には仲間たちと合流させるための「合流地点」へと誘導したのだ。 「流れる水は止められん」? 嘘をつけ! 治水工事もいいところだ! 僕という水流を、無理やり激流の本流に合流させやがった!
「すごい策だよ、ルーシャンくん」 アルフォンスが地図を広げる。 「確かに北の山道は険しいですが、魔族の監視網からは外れています。急がば回れ。まさに兵法の理(ことわり)ですね」
「……」 ルーシャンは天を仰いだ。 雲の切れ間から覗いた月が、「無駄な抵抗はやめとけ」と言わんばかりに冷ややかに輝いている。
因果応報。自業自得。 逃げようとすればするほど、網はきつく絡まっていく。 これはもう、宇宙の法則レベルでの「いじめ」ではないか。
「さあ、行こうか! ルーシャン!」 アウレリアが眩しい笑顔で手を差し伸べる。 その手を取らなければ、ここで「いや、僕は逃げるつもりだった」と白状しなければならない。だが、そんなことを言えば、これまでの全ての信頼が崩壊するだけでなく、彼らに対する裏切りになる。 葛藤。 しかし、状況(縁起)はすでに彼を逃さない形に組み上がっていた。
ルーシャンは、引きつった笑みを浮かべ、震える手でアウレリアの手を握り返した。
「……うん。行こう、みんな」 声が死んでいた。
「へへッ、そうこなくちゃな!」 セラフィーナが背中を叩く。 こうして、ルーシャン・アークライトの「静かなる逃避行」は、開始五分で「栄光(という名の地獄)への進軍」へと強制変更されたのだった。
「とはいえ、この人数で王都まで山道を行くのは骨が折れるぜ」 セラフィーナが街道の先、闇に沈む森を見やった。 「まずは足の確保だ。この先に古い廃村がある。そこに昔、軍が使ってた厩舎が残ってるって噂だ。運が良けりゃ、馬の一頭でも見つかるかもしれねぇ」
「名案です!」 クロエが手を打つ。「徒歩よりも断然速いですし、荷物も運べます!」
(速いのは困る……荷物は枕だけでいい……)
ルーシャンは心の中で抵抗したが、すでに流れは決まっていた。 一行は、希望に満ちた足取りで(ルーシャンだけはドナドナされる牛のような足取りで)、闇の中へと歩き出した。
風が強く吹き抜けた。 木々がざわめき、夜の匂いが変わる。 それは、物語が次の章(ステージ)へと進む合図であり、ルーシャンの平穏が粉々に砕け散る音でもあった。
王都まで、あと数百キロ。 彼の「思い通りにならない旅」は、まだ始まったばかりである。
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