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第2話 踊るスパゲッティと天才ハッカー
しおりを挟む俺が乗っているのは、トヨタのハイエース。のはずだ。外見は、街の電気屋さんや工務店が使っている、ごくありふれた白いバンだった。しかし、その内装は、NASAの火星探査ローバーの管制室と、秘密結社の移動アジトを足して、悪魔合体させたかのような空間だった。
俺は、硬い座席に体を押し付けられながら、窓の外を流れていく風景を呆然と眺めていた。まだ、頭に装着した【スペクターV7】は外していない。いや、外せない。外したら、このイカれた状況が夢だったということにならないか、という淡い期待と、もはやこの非日常の光景に脳が慣れ始めてしまったという、恐ろしい順応性がせめぎ合っていた。
時刻は午後六時を回ったところ。六月下旬の日は長く、空はまだ明るさを保っているが、その色は日中の暴力的な青から、燃えるようなオレンジと、どこか物悲しい紫が混じり合った複雑なグラデーションへと移り変わっていた。さっきまで降っていた夕立の名残で、アスファルトは黒く濡れそぼり、街のネオンや車のヘッドライトを鏡のように反射している。その反射光が、ゴーグルのレンズを通すと、まるで虹色の粒子となって砕け散り、幻想的な光のシャワーとなって俺の網膜に降り注いだ。綺麗だ。綺麗だが、情報量が多すぎて脳が疲れる。
「周防、状況を整理しろ」
運転席に座る鬼頭さんが、低い声で言った。その横顔は、さっきまでの人の良さそうな熊のそれではなく、歴戦の傭兵の顔つきだった。
『了解しました』
俺の耳に装着されたインカムから、周防さんの冷静な声が直接響く。どうやら事務所と繋がっているらしい。ハイテクすぎるだろ、この会社。
『先ほどアラートのあった緑町廃工場の案件、コード:レッドは、汚染レベルが上昇傾向にありますが、まだ危険領域には達していません。鬼頭さん、犬飼さん、姫川さんの三人で対応可能と判断します。ですが、佐藤さんは本日入社の新人です。初任務でコード:レッドは負荷が高すぎます』
「だろうな。こいつ、さっきシゲさんに腰抜かしてたからな」
助手席の姫川さんが、バックミラー越しに俺を見て鼻で笑う。うるせえ、いきなり半透明のクラゲ見せられて平然としてる方がどうかしてるんだよ。
『つきましては、佐藤さんの研修を兼ね、別件の軽微な依頼に優先して向かっていただきます。現在、佐藤さんたちを乗せた車両が向かっているのは、川口市栄町にあるIT企業『サイバー・クレイドル』です。三十分ほど前に、緊急の駆除依頼が入りました』
「IT企業? なんだ、そっちは幽霊屋敷じゃないのか?」
鬼頭さんの問いに、周防さんが淡々と答える。
『エクトは、古い場所にのみ出現するわけではありません。彼らは、エネルギーの淀みや、特殊な周波数の発生源に引き寄せられる性質があります。特に、大量の電力が消費され、膨大な情報が行き交うデータセンターやサーバールームは、現代における新たな『エクトの巣』となりやすいのです。今回の依頼は、その典型的なケースかと』
サーバールームの幽霊。ハイテクとオカルトの悪魔合体、第二弾だ。
俺は、隣の席に座る犬飼さんを盗み見た。彼は、相変わらず窓の外の、俺には見えない何かをじっと見つめている。その長い前髪が、車の振動に合わせて静かに揺れていた。スペクターゴーグル越しに見ると、彼の体から放たれるオーラは、他のメンバーとは違い、常に微かにノイズが混じっているように見えた。まるで、壊れかけのラジオみたいに。彼だけが、この狂った世界と、常にチューニングを合わせ続けているのかもしれない。
ハイエースは、やがて真新しいオフィスビルが立ち並ぶ一角で、静かに速度を落とした。ガラス張りの、いかにも「意識高い系」のベンチャー企業が入ってそうなビルだ。その最上階に、『Cyber Cradle』というクールなロゴが青く輝いていた。
***
ビルのエントランスは、大理石の床が磨き上げられ、観葉植物がセンス良く配置された、無駄にオシャレな空間だった。俺たちのような、どう見てもガテン系の(俺は元無職だが)集団は、場違い感が半端ない。受付の綺麗なお姉さんの「こいつら、何の業者だ?」という訝しげな視線が、俺の背中に突き刺さる。
「アポイントをいただいております、アストラル・チューニング・ソリューションズの鬼頭と申します。神代様にお取次ぎを」
鬼頭さんが、堂々とした態度で言うと、受付のお姉さんは一瞬きょとんとした顔をしたが、すぐに内線を取り上げた。
「あ、はい…少々お待ちくださいませ…」
やがて、エレベーターホールから、一人の青年がカツカツと足音を立てて現れた。
年は二十代半ばだろうか。高そうなブランドのパーカーに、ダメージジーンズ。プラチナブロンドに染めた髪を無造作にかき上げ、その瞳は、獲物を探す猛禽類のように鋭く、そして知性に満ちていた。手にしたスマートフォンを、神業のようなスピードで操作しながら、彼は俺たちを値踏みするように一瞥した。
「あんたらか。ATSとかいう、ふざけた名前の業者は」
開口一番、喧嘩腰だった。
「僕が神代だ。ここのCEOをやってる。時間は無い。さっさと案内するから、ついてきて」
彼は、俺たちの返事を待つこともなく、踵を返してエレベーターへと向かった。その自信に満ち溢れた、しかし他者への配慮が完全に欠落した態度。俺は、こういうタイプが心底苦手だ。こいつも、周防さんと同じ人種、すなわち「俺の常識の外から高出力ビームで殴ってくる系」の人間だ。
最上階の社長室に通されるかと思いきや、案内されたのはビルの地下にある、巨大なサーバールームだった。
重い防音扉を開けた瞬間、ゴォォォ…という地鳴りのようなサーバーの動作音と、肌を刺すような冷たい空気が俺たちを包んだ。整然と並んだ黒いサーバーラック。その表面では、無数のLEDランプが緑やオレンジに点滅し、まるで巨大な生命体の脈動のようだ。床下や天井を、おびただしい数のLANケーブルが、まるで人工の血管のように這い回っている。ケーブルの被覆材と、オゾンが混じったような、独特の無機質な匂いがした。
「ここだ。三時間前から、特定のサーバーラックで、原因不明のデータ損失と通信ラグが頻発してる。物理的な故障じゃない。システムにも異常はない。だが、確実に『何か』が情報を食ってるか、ノイズを撒き散らしてる」
神代は、腕を組んで言った。
「で? あんたらの言う『科学的な除霊』とやらで、これを解決できるってわけだ? 僕には、どう見ても最新鋭の機材を担いだ、ただの怪しい清掃業者にしか見えないけどね」
その言葉に、姫川さんの眉がピクリと動いた。
「口の利き方に気をつけな、クソガキ。お前が泣きついてきたから、こっちは休日返上で来てやってんだ」
「ほう。威勢がいいね、お姉さん。でも、口だけじゃなくて、実力を見せてもらわないと、一円も払う気はないよ?」
一触即発。鬼頭さんが、まあまあと二人をなだめる。
「神代さん、でしたかな。まあ、見ていてください。うちの仕事は、百の言葉より、一の結果ですので」
鬼頭さんはそう言うと、俺に向かって顎をしゃくった。
「佐藤、ゴーグルを着けろ。そして、見たままを報告しろ」
「え、俺がですか!?」
「当たり前だ。お前のための研修なんだからな」
俺は、神代の「こいつで大丈夫か?」という視線を感じながら、おっかなびっくり、再び【スペクターV7】を装着した。
一瞬の暗転の後、目の前に広がる光景に、俺は息を呑んだ。
「うわ……なんだ、こりゃ……」
無機質だったはずのサーバールームは、凄まじいエネルギーの奔流と化していた。
サーバーラックの一つ一つが、青白いプラズマのようなオーラを放ち、その間を、光の粒子となったデータが、まるで高速道路を走る車のように猛スピードで行き交っている。天井や床下を這うケーブルは、もはやただの線ではない。それは、様々な色の光を明滅させながら脈動する、巨大な光ファイバーの神経網だ。
そして、問題のサーバーラックには、『それ』がいた。
「スパゲッティ…だ…」
俺は、思わず呟いた。
そう、それは、まさしくスパゲッティだった。茹で上がったパスタのように、白く、半透明で、細長いミミズのようなエクトが、おびただしい数、サーバーラックとその周辺のケーブルに、びっしりと絡みついていたのだ。全長は一本あたり三十センチから、長いものでは一メートル以上。それらが、サーバーの熱で心地よいのか、うにょうにょと、実に気色悪く蠢いている。
よく見ると、彼らはケーブルにその細長い体を巻き付け、口のような部分から、データの光の粒子を、ちゅーちゅーとストローで吸うように吸い取っていた。そして、吸い取った後には、代わりに黒いノイズのような粒子を排泄している。データ損失と通信ラグの原因は、間違いなくこいつらだ。
「スパゲッティ…?」神代が怪訝な顔で聞き返した。「何を言ってるんだ、あんたは」
「報告しろ、佐藤!」鬼頭さんの檄が飛ぶ。
「は、はい! えーと、問題のサーバーラックに、細長くて白い、ミミズみたいなエクトが大量に絡みついてます! 数は…多すぎて分かりません! そいつらが、ケーブルからデータを吸って、代わりに黒いゴミみたいなのを出してます!」
俺の報告を聞いた神代は、鼻で笑った。
「ミミズ? データ? 馬鹿馬鹿しい。あんたら、やっぱりただの詐欺師か」
「まあ、そう思うのも無理はねえ」鬼頭さんは言うと、アタッシェケースから、もう一つのゴーグルを取り出した。「神代さん、これを。クライアントにも、現状を共有しませんとね」
神代は、胡散臭そうな顔をしながらも、好奇心には勝てなかったらしい。俺と同じように、スペクターゴーグルを装着した。
そして、数秒の沈黙の後。
「……What the FUCK!?」
彼の口から、実に流暢な英語の罵り言葉が飛び出した。さっきまでの自信に満ちた態度はどこへやら、彼は目の前の光景に完全に言葉を失い、生まれたての小鹿のように足をぷるぷると震わせている。
「な、なんなんだ、これは…!? 僕の、僕の美しいサーバールームが、なんだこの…ナポリタン!? いや、ペペロンチーノか!?」
どうやら、彼の目には、俺が見たものと少し違う色のパスタが見えているらしい。
「見えたかい、若いの」姫川さんが、ニヤリと笑った。「これが、あんたの常識の外側にある世界だ。で、このナポリタン、どうする? 茹で上がったところを、美味しくいただくかい?」
「や、やる! やってくれ! 金はいくらでも払う! だから、そいつらを俺のベイビーたちから今すぐ引き剥がしてくれ!」
神代は、すっかり半泣きになっていた。うん、人のプライドが木っ端微塵に砕け散る様を見るのは、実に愉快だ。
***
「よし、作業開始!」
鬼頭さんの号令一下、ATSの面々が動き出す。
犬飼さんが、腰のポーチから円盤状の装置を数個取り出し、部屋の四隅に設置していく。
「空間周波数、固定します。エクトの外部への拡散を防止」
彼が腕時計型の端末を操作すると、装置から「キィィン」という高周波音が鳴り響き、部屋全体が淡い光の結界のようなもので包まれた。
一方、姫川さんは、背中に背負っていた長方形のケースから、一つのツールを取り出した。それは、まるでダイソンの最新型コードレスクリーナーを、悪魔的に改造したかのような形状をしていた。メタリックなボディに、青いラインが走り、先端には複雑な構造のノズルがついている。
「ほら、新人。今日のあんたの商売道具だ」
姫川さんは、その掃除機もどきを俺に突きつけた。
「『周波数キャプチャー MarkⅡ』。通称『エクト・スイーパー』。見ての通り、エクトを吸い込んで、内部のストレージに封印するツールだ。トリガーを引けば起動。先端のダイヤルで、吸引するエクトの周波数帯を合わせる。今回は単一の種類だから、設定はそのままでいい。分かったな?」
「は、はあ…」
俺は、おそるおそるエクト・スイーパーを受け取った。ずしりと重い。こんなもので、本当にあのスパゲッティどもを吸い込めるのか?
「姫川さん、俺がメインで?」
「当たり前だろ。お前の研修なんだから。私たちはサポートに回る。さっさとやれ、グズ」
鬼に睨まれたカエルのように縮こまりながら、俺は問題のサーバーラックへと近づいた。うにょうにょと蠢くスパゲッティの群れ。その光景は、控えめに言っても、地獄の釜で茹でられている素麺のようだった。
俺は、意を決してトリガーを引いた。
「きゅいいいいいいん!」
スイーパーが、甲高い起動音を上げた。先端のノズルが青白い光を放ち、周囲の空気を吸い込み始める。
「よ、よし…いくぞ…!」
俺は、一番手前にいたスパゲッティに、スイーパーの先端を向けた。
その瞬間、スパゲッティは、まるで掃除機に驚いたゴキブリのように、ピャッと身を翻し、猛烈な勢いでケーブルの隙間に逃げ込もうとした。
「うおっ、逃げんな!」
俺は、慌ててそれを追いかける。だが、相手はニョロニョロと変幻自在だ。なかなか捉えることができない。まるで、UFOキャッチャーで、絶対取れそうにない位置にある景品を狙っているかのような、もどかしさ。
「何やってんだ、ヘタクソ!」姫川さんの罵声が飛ぶ。「もっと腰を入れろ! 掃除機かけるのと一緒だ!」
「掃除機でミミズ吸ったことねえよ!」
俺がスパゲッティと格闘している間に、鬼頭さんと姫川さんは、すでに作業を進めていた。鬼頭さんは、俺の持つスイーパーよりも一回り大きい、バズーカのようなキャプチャーガンを構え、広範囲のエクトをまとめて吸引していく。姫川さんは、両腕のガントレットから特殊な周波数の衝撃波を放ち、ケーブルの奥に隠れたエクトを燻り出している。まさに、プロの連携プレイだ。
「佐藤! 右だ、右!」
「うわっ!」
鬼頭さんの声に反応すると、燻り出されたスパゲッティの一匹が、俺の顔めがけて飛びかかってきた。俺は思わずのけぞり、足を滑らせて体勢を崩す。
「ぴぎゃあああっ!」
俺のスイーパーの先端が、あらぬ方向を向いた。そして、吸引の射線上にいた、別のスパゲッティが、悲鳴のような甲高い音を立てて吸い込まれていった。
「お、おお…吸えた…」
手元のディスプレイに「1 Ecto Captured」という表示が出た。やった。俺、やったぞ。
感動も束の間、俺に飛びかかってきたスパゲッティが、俺のゴーグルにべちゃりと張り付いた。
「ぎゃあああ! 前が見えねえ!」
視界が、うにょうにょと動く半透明の何かで覆われる。まるで、顔面にナタデココをぶちまけられたようだ。
俺はパニックになり、スイーパーを振り回した。
「うおおおおお!」
「危ねえな、このド素人が!」
姫川さんが、俺の頭からスパゲッティをひっぺがし、床に叩きつける。それを、すかさず犬飼さんがスイーパーで吸い取った。ナイスコンビネーション。だが、俺の尊厳はゼロだ。
. . . 時給五十万。時給五十万。
俺は、心の中で念仏のように唱えながら、再びスイーパーを構えた。もはや、恐怖もプライドもかなぐり捨てた。俺は掃除屋だ。この電子の海に巣食う、忌まわしき生パスタを、一匹残らず吸引してくれるわ!
そこからは、もはや戦争だった。
「右よし!」「左、逃げた!」「下だ、下!」「うおおおお、こいつら、合体しやがった! きしめんになったぞ!」「落ち着け、それはただの群体だ!」
鬼頭さんの指揮のもと、俺たちはスパゲッティの群れを次々と吸引していく。俺も、だんだんコツを掴んできた。敵の動きを予測し、回り込んで、吸う。この単調な作業が、なぜかだんだん楽しくなってきた。これが、狩猟本能というやつか? いや、清掃本能か。
「よし、ラスボスだ!」
最後に残ったのは、ひときわ巨大な、親玉らしきスパゲッティだった。そいつは、サーバーラックの最上部で、まるで王様のようにふんぞり返り、他のスパゲッティよりも三倍速でデータをちゅーちゅーと吸っている。
「俺がやる!」
俺は、ヒーロー気取りで前に出た。
だが、親玉は、俺のスイーパーの吸引力に、必死に抵抗する。
「ぐぐぐ…こいつ、つええ!」
「馬鹿野郎! パワーを上げろ! ダイヤルを右に回せ!」
姫川さんの指示通り、俺はスイーパーのパワーダイヤルを最大にした。
「きゅいいいいいいいいいいんんん!!」
スイーパーが、今にも壊れそうなほどの轟音を上げる。そして、親玉スパゲッティは、ついに抵抗を諦め、断末魔の悲鳴と共に、ノズルの中へと吸い込まれていった。
「ぴぎゃああああああああああああっ!」
しーん。
サーバールームに、静寂が戻った。
スペクターゴーグル越しの視界から、うごめくスパゲッティの群れは完全に消え、サーバーラックの間を行き交うデータの光が、さっきまでの淀みが嘘のように、スムーズに、そして力強く流れているのが見えた。
***
「…信じられない…」
ゴーグルを外した神代が、呆然と呟いた。彼の目の前では、サーバーの監視モニターが、すべての項目で「正常」を示す緑色のランプを灯している。
「本当に…消えちまった…あのデジタル・ナポリタンが…」
「ええ。正確には、捕獲して、安定した周波数のストレージに封印した、ですが」
周防さんの声が、インカムから聞こえた。どうやら、一部始終をモニターしていたらしい。
神代は、興奮した様子で俺たちに駆け寄ってきた。特に、俺が持っているエクト・スイーパーに興味津々のようだ。
「すごい…すごすぎる! このテクノロジーは何なんだ!? どういう原理で、あの非物理的な存在に干渉しているんだ!? 量子トンネル効果か? それとも、ブレーンワールド理論の応用か!?」
「企業秘密だ」鬼頭さんが、にべもなく答えた。
「頼む! 教えてくれ! 僕も、ずっと研究してるんだ! デジタルデータの中に巣食う、ゴーストのような存在を! ログにも残らない、正体不明の情報欠損! それは、ネットワーク上に生まれた、新しい『エクト』なんじゃないかって!」
熱弁する神代の目は、もはや商売人のそれではなく、未知の真理を探求する、純粋な研究者の目をしていた。
こうして、俺の初任務は、クライアントにめちゃくちゃ懐かれるという、予想外の結末を迎えた。
事務所への帰り道。ハイエースの車窓から、すっかり暗くなった夜の街を眺める。街灯が、雨上がりの路面に長い光の尾を引いていた。俺は、全身の筋肉痛と、心地よい疲労感に包まれていた。
「…まあ、初陣にしちゃ、上出来だったんじゃねえか」
運転席の鬼頭さんが、ぽつりと言った。
「ありがとうございます」
俺は、素直に頭を下げた。
こうして、俺のスペクトル・レンジャーとしての、奇妙で、騒がしくて、そしてとんでもなく疲れる一日が終わった。
得たものは、全身の筋肉痛と、この世界の真実の、ほんの小さな一端。
そして、月給五十万円への、確かな手応え。
…これ、割に合ってるのか?
まあ、いいか。無職よりは、百倍マシだ。たぶん。
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