コミュ障ぼっちの私の目標は「石」。なのに新学期初日、隣の陽キャ王子に「お前、面白いな!」と絡まれ計画が完全崩壊。

Gaku

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第3話:体育祭前夜、決壊する堤防

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五月も終わりに近づくと、空気は目に見えない粘性を帯び始める。 太陽の光はまだ真夏のそれのように肌を焼くわけではないが、その内側に、じっとりとした湿度の塊を隠し持っている。

風が吹いても、頬を撫でるそれは爽やかさよりも、まとわりつくような生温かさを運んでくる。 梅雨という、日本列島を覆う巨大なため息の、その予兆のようなものが、空の隅々にまで満ちていた。

そして、このじっとりとした季節に、学校という組織は、なぜか生徒たちに大量の汗をかくことを強要する。 そう、体育祭だ。

教室の黒板に、担任の山田先生が気の抜けた文字で「体育祭まであと二週間! 燃えろ、二年三組!」と書いた瞬間、私は心の中で静かに死んだ。 一度ならず、三度くらい死んだ。

体育祭。 それは、私のような人間にとって、百害あって一利なしの、地獄の祭典である。

まず、「クラス一丸となって」という、この世で最も恐ろしいスローガンが掲げられる。 これにより、「」でいることは許されず、強制的に「」という名の溶鉱炉に放り込まれる。

次に、競技のほとんどが、あからさまなコミュニケーション能力と身体能力の優劣を可視化する残酷な装置として機能する。 そして何より、応援合戦という名の、巨大な羞恥《しゅうち》プレイが待ち受けている。

つまり、体育祭とは、学校生活におけるカースト制度を、白日の下に再確認させるための、極めて高度で悪趣味な儀式なのだ。

この地獄を、いかにして最小限のダメージで生き延びるか。 『対・朝陽輝《あさひひかる》(暫定)戦略白書』のページは、今や『体育祭サバイバル・マニュアル』へとその名を変え、私の緻密な分析と戦略で埋め尽くされていた。

【対・綱引き戦略】 最後尾を確保。綱を握っているふりをしつつ、一切の力を込めない「ゼロ・テンション釣法」を駆使。勝利にも敗北にも貢献せず、ただ「そこにいた」という事実だけを残す。

【対・玉入れ戦略】 カゴから最も遠い位置に陣取る。玉を拾うふり、投げるふりをしつつ、一球もカゴに届かせない「エア・シュート」に徹する。貢献度ゼロ、責任もゼロを目指す。

【対・騎馬戦戦略】 これは危険すぎる。騎馬を組むという時点で、濃厚な身体的接触とコミュニケーションが発生する。何としても回避。当日、腹痛を訴えて医務室に駆け込むシミュレーションを、すでに脳内で十八回は繰り返した。

完璧だ。 この計画さえあれば、私は今年もまた、誰の記憶にも残らない、背景の一部としてこの祭りを終えることができる。

問題は、ただ一つ。 隣の席で、やたらとキラキラした目を輝かせている、あの男の存在だけだった。

「なあなあ水無月《みなづき》! 体育祭、マジ楽しみじゃね? 俺、クラス対抗リレーのアンカーに選ばれちった!」

「…………」

オペレーション・イグノア・パーフェクション、継続中。 私は窓の外の、緑が一層濃くなった桜の木を眺める。葉桜の緑は、目に優しい。

「お前、何に出るか決めた? 足、速そうだよな。なんとなく」

「…………」

なぜ、私の足が速そうだと? この一ヶ月、私が移動した最長距離は、この席からトイレまでの往復だけだぞ。彼の「なんとなく」は、あまりにも根拠が希薄すぎる。

「無視か! いいぜ、その徹底っぷり! 嫌いじゃねえ!」

「…………っ」

まただ。 私の完全無視が、なぜか彼の中では「好ましい個性」として処理されている。この男のポジティブ変換回路は、もはや国家機密レベルの謎だ。

          ◇

そして、運命の日がやってきた。 五時間目、ロングホームルーム。体育祭の種目エントリーの時間だ。

山田先生が、「はーい、じゃあ、二人三脚のペアを自由に組んでくださーい」と、まるでコンビニで肉まんを注文するかのような気軽さで、無慈悲な宣告を下した。

来た。最大の難関、『ペアリング・ヘル』が。 教室中が、一斉に活気づく。

「ねえ、一緒に組もうよ!」 「わり、もう決まっちった」

椅子を引く音、笑い声、断りの言葉。 様々な周波数の音が、教室という閉鎖空間で乱反射し、私の鼓膜を不快に揺らす。

私は、これまで培ってきた全てのスキルを発動させた。

まず、視線を斜め四十五度の虚空に固定する『虚無僧《こむそう》モード』。これにより、誰とも目が合う確率を極限まで下げる。

次に、全身の力を抜き、気配を完全に消す『幽体離脱メソッド』。そこに私がいることを、誰にも悟られてはならない。

そして、心の中で般若心経《はんにゃしんぎょう》を唱える(雰囲気だけ)。 『色即是空《しきそくぜくう》、空即是色《くうそくぜしき》』。そう、私という存在は空であり、空は私なのだ。私に実体はない。故に、ペアを組むことも不可能である。Q.E.D. 証明完了 。

完璧な防御態勢。誰も私には近づけない。

クラスのペアが、次々と成立していく。仲良し女子グループ、サッカー部のコンビ、意外な男女の組み合わせ。 その光景を、私は、まるで遠い異国のドキュメンタリー映像でも見るかのように、ただ、ぼんやりと眺めていた。 それでいい。それがいい。私は、この世界の観察者であり、当事者ではないのだから。

「はい、じゃあ、だいたい決まったかなー?」

山田先生の間の抜けた声が響く。 ふと気づくと、教室の中で、椅子に座ったまま動かない人間は、二人だけになっていた。

私と、そして――なぜか、朝陽輝。

彼は、友人たちと「誰が一番面白い顔できるか選手権」という、知性の欠片も感じられない遊びに夢中になっているうちに、完全にペア決めの波に乗り遅れたようだった。

(よし……!)

私は心の中でガッツポーズをした。 これは、むしろ好都合だ。男女一人ずつが余る。これほど自然な形で「不成立」を演出できる状況はない。先生も、無理強いはしないだろう。

私は、すっと右手を挙げようとした。

「先生、私、見学で――」

その言葉が、私の口から発せられる、まさにその寸前だった。

「おーっと! ヤベ! 俺、余っちまった!」

輝《ひかる》が、わざとらしいほどの大声で叫んだ。 そして、きょろきょろと教室を見渡すと、その視線を、壁際で完璧な石と化していた私に、ピタリと合わせた。

やめろ。来るな。私を見るな。 私の心の叫びは、もちろん彼には届かない。

彼は、クラス中の視線が自分に集まっていることを全く意に介さず、まるでレッドカーペットの上を歩くハリウッドスターのように、堂々とした足取りで、私の席へとまっすぐに向かってきた。

一歩、また一歩。 彼の足音が、私の心臓の鼓動と、不吉なリズムで重なる。

スローモーションのように、彼の姿が近づいてくる。満面の笑み。白い歯。太陽の光を反射する、色素の薄い髪。

そして、彼は、私の目の前でぴたりと止ると、一年前にクラス委員を絶望の淵に叩き落とした時と全く同じ、純粋で、善意に満ち溢れた、そして何より残酷な笑顔で、こう言ったのだ。

「水無月! ちょうどよかった! じゃあ、俺と組もうぜ!」

差し出された、大きな手。 その瞬間、私の頭の中で、何かが、ぷつりと切れた。 それは、かろうじて私を社会に繋ぎ止めていた、最後の、細い細い糸だったのかもしれない。

――なんで?

なんで、あなたはいつもそうなの? 私がどれだけ静かにしていたいか、あなたは知らないでしょう。 私が、どれだけ人と関わるのが怖いか、あなたは知らないでしょう。 私が、どれだけの失敗を繰り返して、もう二度と傷つきたくないと、心を殺して、石になることを選んだか、あなたは知らないでしょう。

私は、ただ、平穏が欲しかった。 誰にも注目されず、誰にも期待されず、誰にも干渉されない、静かな世界。 それが、私の望む、たった一つのことだったのに。

私の計画。私の決意。私の静寂。 その全てを、あなたは、いとも簡単に、その悪意のない笑顔で、粉々に打ち砕いていく。

良かれと思って、やってくれているのはわかる。 余り者同士、助けようとしてくれているのも、わかる。 でも、その善意が、私にとっては、一番つらい。

私の望む世界と、あなたの存在する世界は、決して交わらない。 私の「こうあってほしい」という願いは、あなたの前では、いつも、いつも、無力だ。

コントロールできない。わかっている。他人は、世界は、自分の思い通りになんてならない。 頭では、わかっているのに。 どうして、こんなに苦しいんだろう。どうして、こんなに、腹が立つのだろう。

ああ、そうか。 これが、私の「苦しみ」の正体。 これが、私の「怒り」の正体なんだ。

変えられない現実を、それでも無理やり「こうあるべきだ」とねじ伏せようとする、無駄で、愚かで、そして、あまりにも苦しい、心の働き。 その矛先が、今、目の前のあなたに向いている。

「…………なんで」

私の口から、か細い声が漏れた。 自分でも驚くほど、震えていた。

「え?」

輝が、不思議そうに首を傾げる。

「なんで! なんで放っておいてくれないの!」

気づいた時には、叫んでいた。 椅子を蹴立てるように立ち上がり、涙がぼろぼろと溢れてくるのが、自分でもわかった。

教室中の空気が、一瞬で凍りつく。さっきまでの喧騒が、嘘のように消え失せ、しん、と静まり返る。全ての視線が、私と輝に突き刺さる。

「せっかく……せっかく、一人で静かに生きていくって、決めたのに……っ!」

もう、言葉にならなかった。ただ、嗚咽が漏れる。 化粧なんてしていないから、涙で顔がぐちゃぐちゃになっているだろう。鼻水も出ているかもしれない。みっともない。恥ずかしい。でも、もう止められなかった。

「全部、全部、あなたのせいよ……!」

輝は、何も言わなかった。 ただ、その太陽のような瞳を、少しだけ、本当に少しだけ、悲しそうに揺らして、私を、じっと見つめていた。

その顔を見て、私は、はっと我に返った。

――ああ、私は、また、やってしまった。

一番やってはいけないことを。 一番避けたかったことを。 私は、この教室で、最も巨大で、最も厄介な「騒音」を、自ら生み出してしまったのだ。

もう、ここにはいられない。

私は、突き刺さるような視線から逃げるように、鞄も持たず、教室を飛び出した。 廊下を走り、階段を駆け下りる。

夕暮れの光が差し込む昇降口を抜け、まだ練習を続けている運動部の声が響くグラウンドを横切った。 土埃と、汗の匂いと、じっとりとした草いきれの匂いが混じり合って、私の肺を満たす。

私は、校舎裏の、誰もいない体育倉庫の陰で、ようやく足を止めた。 ぜえ、ぜえ、と肩で息をする。 背中を壁に預け、ずるずるとその場に座り込んだ。 ひんやりとしたコンクリートの感触が、スカート越しに伝わってくる。

夕暮れの空が、皮肉なほどに美しい。 さっきまでいた教室での出来事が、まるで嘘のようだ。

でも、私の喉の奥に残る、叫んだ後のひりつくような痛みと、頬を伝う涙の跡だけが、それが紛れもない現実だったと、告げていた。

自分の叫び声が、頭の中で何度もこだまする。 静寂を求めていたはずなのに。 どうして、私は、世界で一番、うるさい人間になってしまったんだろう。
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