転生しようとしたら魔族に邪魔されて加護が受けられませんでした。おかげで魔力がありません。

ライゼノ

文字の大きさ
9 / 72
師弟編

第8話 知りたいけど我慢。

しおりを挟む
「……え?」


俺は思わず聞き返す?この人今なんていった?


「だから毒じゃ……本当になんともないいのか?」


腹の当たりを押さえる。そういえば腹の当たりが苦しいような……。
ティアドラは俺の顔を覗き込むと腕を組み、不思議そうに首を傾げる。


「この毒は少量なら大丈夫なのじゃが、食べ過ぎるとその毒性により顔が緑色になって泡を噴いて失神するのじゃが……どうやら大丈夫なようじゃな」


少量って……4つ程食べたんですが……。
そのことを伝えるとますます不思議そうな顔つきとなった。


「時間的にも発症しておらんとおかしいな。……まさか魔力がないことと関係が?」


なんかブツブツと呟く。


「まぁ……これだけ時間が経って発症しておらんのじゃから大丈夫なのじゃろう。……よかったな、魔力はないかわりに毒耐性はありそうじゃな」


ティアドラは自分の出した結論に無理やり納得したようだった。
俺は納得がいかない……。魔力がないのに毒耐性なんてあったって悲しいだけだろ!


「あ……さっきから腹が苦しいんだけど……これってもしかして毒のせいなんじゃ……」


「そんな症状はない、ただの食いすぎじゃ!」


あ、やっぱりそうでしたか。
……薄々そんな気はしてました。






「さて、ワシはワシで何か食うとするか」


ティアドラは伸びをしながらジャガリンが入っている鍋へ向かう。


「……あれ?」


ティアドラは俺が火をおこした釜戸から焼け焦げた布切れを見つける。
火を起こす際に火種に使った布だ。


「これはもしかして……?」


彼女は焦げた布を握りながらプルプルと震えている。
なんでだろ。


「ん?……あぁ、ゴミとして捨てようかとも思ったんだけど、せっかくだから火種として使ったんだ。もったいないだろ?」


「これはワシが毎日寝るときに使ってた布団でな……そりゃあ大切に、大切に使ってた布団なのじゃ……」


あ、これはやばい……。
ティアドラの背後からオーラのようなものが見える。
に、逃げないと……足がすくんで動きません。



彼女は俺の頭をむんずと掴み、持ち上げる。


「怒りのお師匠アイアンクロー!!!」


頭が締め上げられ、メリメリと音がする。


「痛い痛い痛い痛い!!ごめんなさい!!!」


俺はしばらくの間、痛みに悶絶するのだった。







「先ほどはすまなかったのぅ。お気に入りじゃったが、もうボロボロじゃったし捨てられても文句は言えんわい。掃除を頼んだのはワシ自身なわけじゃし」


朝食を摂った後自身の行動を振り返ったのか、先ほどのお布団焼却事件を謝罪してくる。
ちなみに彼女の朝食は果物だった。台所の床に保管庫があったらしく、そこには果物やパンといった食料がたくさんあった。


「いや、勝手に処分した俺が悪い。本当にごめんなさい」


俺は床に手をつき、頭を地にこすりつける。
元の世界でいう、土下座スタイルだ。


「ふふふ、なんじゃその恰好は。頭を上げよ……もうこの話はしまいにしようか」


俺の必殺の土下座が効いたのかティアドラは笑う。
どうやら許してくれたらしい。



「さて、腹も膨れたし……何をしようかの」



俺はリビングの椅子に座っている。
ティアドラはどこからか黒板を持ってきていた。
この世界にも黒板ってあるんだな。


「せっかくワシの弟子になったのじゃ。まず、お主のことを教えてくれんか?……これまでの7年間、どのように生きて来たか。魔力なしとなった原因の心当たり……そして」


ティアドラの目つきが変わる。





「7歳にして何故、そのように精神が円熟しておるのか、その理由を」


全て、見透かされているようであった。
この人に隠し事はどうやらできないらしい。


「俺には……前世の記憶があるんだ」


突拍子もない俺の発現にティアドラは目を見開く。


「前世の記憶、じゃと?」


「あぁ、ただこの世界じゃない。国も文化も言語も……全く違う世界から俺はこの世界にやってきたんだ。ある人が、前の世界で死んだ俺をこの世界に連れて来たんだ」


彼女は壁にもたれかかり腕を組み、深く考えている。少しだけ、俺のことを警戒しているようだ。
しばらく時間が経った後ようやく口を開く。


「……まさかとは思ったが……お主、『異世界からの転生者』であったか……」


……


「どういうことだ!?この世界には俺以外にも転生者が沢山いるのか!?」


俺からの問いに彼女は首を横に振る。


「沢山はおらん。ただこれまでのこの世界の歴史には偶に存在する。……知っておるのは極限られた人のみじゃがな」


俺以外にもこの世界に転生した奴がいるのか……。
何故か少しだけ、安心する。


「なるほど、前世の記憶があるから精神が円熟しておるのか。合点がいった。……しかし納得できぬところがある。転生者の特徴じゃ。ワシが知る転生者は皆」


「『身体能力、魔力が非常に高い』……か?」


ティアドラの言葉を遮る。


「……その通りじゃ。何故知っておる。お主をここへ呼んだ者がそう言ったか?その者は自身のことを何と名乗った?」


「『女神』……」


彼女の目が更に険しくなる。


「『女神』……か。ならば何故お主はその力を得ていない?おそらく女神から『加護』の話をされたのではないか?」


彼女の雰囲気に気圧されながら俺は口を開く。


「あぁ、俺は加護をもらおうとした。……だが邪魔されたんだ……女神は魔族と言っていた。多分女神を襲ったんだ。その襲撃で俺は加護をもらえず、気づけば転生していた」


俺の言葉にティアドラは驚愕していた。


「7歳の転生者、女神、それを襲った魔族……あぁ、なんということじゃ……」


彼女の険しい目つきは収まり、脱力する。


「これが……運命なのか?あぁ……おそらくそうなのじゃろうな」


彼女は得心がいったようだ。
だが俺は納得いかない。


「どういうことだ!?何か知っているなら教えてくれ!!」


だが、ティアドラは首を横に振るだけだった。


「すまない。……今は言えぬ。お主が強くなり、先へ進みたいと考えたとき、話すことのできるすべてを話そう。その時まで、その時のために力を蓄えておくれ……地に伏する龍のように」


今までに見たことがない、つらそうな顔であった。



言いたいことは沢山あったし、俺が強く望めば教えてくれたかもしれない。
だが、俺はこの世界に産まれて初めて、俺に手を伸ばしてくれた彼女を裏切る気になれなかった。
彼女の気持ちに応えること、それが今の俺に出来る最善なのだろう。


俺は言いたいことを飲み込み、黙ってうなずくのであった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

才能に打ち砕かれた日から、僕の最強は始まった

雷覇
ファンタジー
ワノクニ、蒼神流・蒼月道場。 天城蒼真は幼き頃から剣を学び、努力を重ねてきた。 だがある日、異世界から来た「勇者」瀬名隼人との出会いが、すべてを変える。 鍛錬も経験もない隼人は、生まれながらの天才。 一目見ただけで蒼真と幼馴染の朱音の剣筋を見切り、打ち破った。 朱音は琴音の命で、隼人の旅に同行することを決意する。 悔しさを抱えた蒼真は、道場を後にする。 目指すは“修羅の山”――魔族が封印され、誰も生きて戻らぬ死地へと旅立つ。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

1つだけ何でも望んで良いと言われたので、即答で答えました

竹桜
ファンタジー
 誰にでもある憧れを抱いていた男は最後にただ見捨てられないというだけで人助けをした。  その結果、男は神らしき存在に何でも1つだけ望んでから異世界に転生することになったのだ。  男は即答で答え、異世界で竜騎兵となる。   自らの憧れを叶える為に。

処理中です...