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師弟編
第43話 魔族襲撃事件の考察。
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「魔王・・・。」
俺はその言葉を呟く。
その存在は以前にティアドラから聞いていた。
勇者と同じく、前の世界ではゲームや本でしか見たことのない存在。
「・・・そいつは何であの時に襲ってきたんだ?」
魔王が襲撃してきたのは俺が加護を得ようとした瞬間であった。
意図してあの時を狙ってきたのは明白だ。
「勇者の誕生の阻止・・・じゃろうな。」
ティアドラは迷うことなく即答した。
「勇者の、誕生の阻止・・・。」
その言葉を指す意味。
それは・・・。
「あの時俺が加護を貰っていたら・・・俺が勇者になっていた、ということか?」
俺の言葉にティアドラは頷く。
「その通り、じゃな。これまで誕生してきた勇者はそのほとんどが女神の加護を所持しておる。加えて・・・その多くが前の世界の記憶を持っておった。・・・お主と同様にな。」
俺と同じ・・・。
「『転生者』・・・。」
ティアドラは以前、この世界の歴史にも転生者は偶に存在しているといっていた。
そう、この世界の歴史、だ。
転生者は歴史に名を残すことをしていたのだ。・・・勇者として。
「なんで・・・ティアドラが知っているんだ?魔王が女神を襲撃したことを。」
「あくまで状況証拠にしか過ぎんが・・・。」
そう言ってティアドラは語りだす。
「今から15年ほど前じゃろうか・・・魔王がワシの家に来たのじゃ。それも鬼気迫った顔で、な。そやつは自身をウルストの首都ルギウスに連れて行ってほしいと頼んできおった。理由を聞いたのじゃが・・・『女神の企みを潰しに』としか言わなかった。」
「連れて行ったのか?」
ティアドラは頷く。
「断りたかったのじゃが・・・昔から奴は口数は少ない癖に一度言い出したら絶対に意見を曲げないほどの頑固者でのぅ。魔王自身が行かないといけないと覚悟したこと、単身であの国境を越えてきたことを顧みると世迷い事とも思えなかった。連れて行ったよ・・・もう2度と帰ることは出来ないかもしれぬとは言ったが・・・奴の覚悟はそれ以上だった。奴には幼い子もおったというのに・・・。」
彼女の顔はどこか悲しそうだった。
「ルギウスに連れていくとワシに礼を言って瞬く間に消えていきおった。・・・それから時折ウルギスに向かい奴の噂なんかを聞いておったが・・・その行方はさっぱりじゃった。」
なるほど。
この時の宿としてトキハの宿を利用していたわけだ。
無銭飲食に無銭宿泊を繰り返していたのだろう。
「そうして数年が経ち、お主と出会ったわけじゃ。」
ティアドラは俺を指さす。
魔王が言った『女神の企みを潰しに』という言葉は・・・勇者の誕生の阻止だったということか。
俺が魔力をなくして生まれたことからひとまずはその目論見は成功したといえる。
「なるほど。俺の転生の時の話を聞いてその魔族が魔王だと気づいたわけだ。それからは・・・?」
その後の魔王はどうなったのだろう。
話の様子から魔族の世界に帰ってめでたしめでたしという訳ではなさそうだ。
「全くわからん、じゃな。・・・女神に殺されたか、囚われたか・・・あるいはどこかでのうのうと生きておるか。」
話を聞くと魔王が襲ったのは夢幻教の総本山である教会都市『セイファート』と考えられる。
だが、都市内でそのような魔族が襲撃したという話は噂にもなっていないらしい。
教会の上部が隠匿しているのだろうか。
任務を達成したと思ってのんびり人の世界を満喫しているとは思えない。
・・・恐らく殺されているのだろう。
「魔王についてワシの知っていることはこんなものじゃな。魔王の女神襲撃は成功し・・・お主が生まれたというのがワシの考えじゃ。」
俺は通して話を聞いていたが、どうしても納得のいかないことがあった。
「じゃあ・・・なんで勇者は誕生したんだ?それも4人も。加護って誰でも簡単に与えることが出来るものなのか?」
彼女の口ぶりからして勇者というものは数年に1人誕生するといったものではないはずだ。
数十年に1人、あるいは数百年。
そんな周期でしか誕生しえない勇者が4人も同時に誕生したことが奇妙にしか思えなかった。
ティアドラは苦々し気に首を傾げた。
「そこがよく分からぬのじゃ・・・。加護を与えることは奴にとっても相当に力を消費するはず・・・。女神はどのようにして4人に加護を与えれたのか・・・先ほどからそれについて考えておるが一向に思い浮かばぬ。」
腕を組んで目を瞑る。少しだが眉間にしわが寄る。
彼女がいつも悩むときにする癖だ。
「おそらくじゃが・・・4人という数字にも何か意味があると思う。4人という人数が奴が同時に加護を与えれる上限なのかもしれぬな・・・。それほどまでにあやつの力が上がっておるということか・・・全く。」
最後のつぶやきは小さくて聞こえなかった。
「まぁ考えても仕方あるまい。とうとうあの女神が動き出したということじゃ。・・・これから戦争になるかもしれぬ、な。」
彼女は立ち上がると伸びをし、両手を頭の後ろにやる。
俺は思っていたことを口にした。
「さっきから気になってたんだが・・・ティアドラは女神と知り合いなのか?アイツは・・・一体何者なんだ?」
俺はその言葉を呟く。
その存在は以前にティアドラから聞いていた。
勇者と同じく、前の世界ではゲームや本でしか見たことのない存在。
「・・・そいつは何であの時に襲ってきたんだ?」
魔王が襲撃してきたのは俺が加護を得ようとした瞬間であった。
意図してあの時を狙ってきたのは明白だ。
「勇者の誕生の阻止・・・じゃろうな。」
ティアドラは迷うことなく即答した。
「勇者の、誕生の阻止・・・。」
その言葉を指す意味。
それは・・・。
「あの時俺が加護を貰っていたら・・・俺が勇者になっていた、ということか?」
俺の言葉にティアドラは頷く。
「その通り、じゃな。これまで誕生してきた勇者はそのほとんどが女神の加護を所持しておる。加えて・・・その多くが前の世界の記憶を持っておった。・・・お主と同様にな。」
俺と同じ・・・。
「『転生者』・・・。」
ティアドラは以前、この世界の歴史にも転生者は偶に存在しているといっていた。
そう、この世界の歴史、だ。
転生者は歴史に名を残すことをしていたのだ。・・・勇者として。
「なんで・・・ティアドラが知っているんだ?魔王が女神を襲撃したことを。」
「あくまで状況証拠にしか過ぎんが・・・。」
そう言ってティアドラは語りだす。
「今から15年ほど前じゃろうか・・・魔王がワシの家に来たのじゃ。それも鬼気迫った顔で、な。そやつは自身をウルストの首都ルギウスに連れて行ってほしいと頼んできおった。理由を聞いたのじゃが・・・『女神の企みを潰しに』としか言わなかった。」
「連れて行ったのか?」
ティアドラは頷く。
「断りたかったのじゃが・・・昔から奴は口数は少ない癖に一度言い出したら絶対に意見を曲げないほどの頑固者でのぅ。魔王自身が行かないといけないと覚悟したこと、単身であの国境を越えてきたことを顧みると世迷い事とも思えなかった。連れて行ったよ・・・もう2度と帰ることは出来ないかもしれぬとは言ったが・・・奴の覚悟はそれ以上だった。奴には幼い子もおったというのに・・・。」
彼女の顔はどこか悲しそうだった。
「ルギウスに連れていくとワシに礼を言って瞬く間に消えていきおった。・・・それから時折ウルギスに向かい奴の噂なんかを聞いておったが・・・その行方はさっぱりじゃった。」
なるほど。
この時の宿としてトキハの宿を利用していたわけだ。
無銭飲食に無銭宿泊を繰り返していたのだろう。
「そうして数年が経ち、お主と出会ったわけじゃ。」
ティアドラは俺を指さす。
魔王が言った『女神の企みを潰しに』という言葉は・・・勇者の誕生の阻止だったということか。
俺が魔力をなくして生まれたことからひとまずはその目論見は成功したといえる。
「なるほど。俺の転生の時の話を聞いてその魔族が魔王だと気づいたわけだ。それからは・・・?」
その後の魔王はどうなったのだろう。
話の様子から魔族の世界に帰ってめでたしめでたしという訳ではなさそうだ。
「全くわからん、じゃな。・・・女神に殺されたか、囚われたか・・・あるいはどこかでのうのうと生きておるか。」
話を聞くと魔王が襲ったのは夢幻教の総本山である教会都市『セイファート』と考えられる。
だが、都市内でそのような魔族が襲撃したという話は噂にもなっていないらしい。
教会の上部が隠匿しているのだろうか。
任務を達成したと思ってのんびり人の世界を満喫しているとは思えない。
・・・恐らく殺されているのだろう。
「魔王についてワシの知っていることはこんなものじゃな。魔王の女神襲撃は成功し・・・お主が生まれたというのがワシの考えじゃ。」
俺は通して話を聞いていたが、どうしても納得のいかないことがあった。
「じゃあ・・・なんで勇者は誕生したんだ?それも4人も。加護って誰でも簡単に与えることが出来るものなのか?」
彼女の口ぶりからして勇者というものは数年に1人誕生するといったものではないはずだ。
数十年に1人、あるいは数百年。
そんな周期でしか誕生しえない勇者が4人も同時に誕生したことが奇妙にしか思えなかった。
ティアドラは苦々し気に首を傾げた。
「そこがよく分からぬのじゃ・・・。加護を与えることは奴にとっても相当に力を消費するはず・・・。女神はどのようにして4人に加護を与えれたのか・・・先ほどからそれについて考えておるが一向に思い浮かばぬ。」
腕を組んで目を瞑る。少しだが眉間にしわが寄る。
彼女がいつも悩むときにする癖だ。
「おそらくじゃが・・・4人という数字にも何か意味があると思う。4人という人数が奴が同時に加護を与えれる上限なのかもしれぬな・・・。それほどまでにあやつの力が上がっておるということか・・・全く。」
最後のつぶやきは小さくて聞こえなかった。
「まぁ考えても仕方あるまい。とうとうあの女神が動き出したということじゃ。・・・これから戦争になるかもしれぬ、な。」
彼女は立ち上がると伸びをし、両手を頭の後ろにやる。
俺は思っていたことを口にした。
「さっきから気になってたんだが・・・ティアドラは女神と知り合いなのか?アイツは・・・一体何者なんだ?」
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