【完結】時忘れの森

桜雨ゆか

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第十章 心

02

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「グレティア……」

 唇が離れて、名前を呼ばれる。
 涙の膜が張った目でシャルヴァを見上げると、もう一度唇が降ってきた。
 そのままシャルヴァの手が服の上から胸に触れてきて、グレティアはびくりと身体を跳ねさせた。

「ひゃ、んっ……」

 やわやわと胸を揉みしだかれてグレティアは身をよじらせた。

「――嫌か?」

 そんな問いにグレティアは小さく首を横に振った。

「いや、じゃない……けど……」
「けど……?」
「ここだと、兄さんが起きてくるかも……」

 グレティアは小さく呟いて、ちらりとリゼオンの部屋がある方向に視線を向けた。
 物音もしないし、出てくる気配はなかったけれど気が気でない。

「部屋に、行かない……?」

 小さな訴えに、シャルヴァはくすりと笑みをこぼした。

「したくないとは言わないんだな?」
「――! ……だって、シャルヴァが好きって言ってくれたから」
「――そんな煽るような台詞、どこで覚えてきたんだ?」

 シャルヴァが困った様子で嘆息して、グレティアはぱちぱちと目をまたたかせた。

「え……?」
「無自覚か」

 ため息をこぼしながら、シャルヴァが首筋に顔をうずめてきた。ちゅっと音を立てて首筋や胸元に唇が触れていく。
 それがくすぐったくてグレティアは小さく身を捩らせた。


   ◆


 シャルヴァに抱き上げられて部屋まで来ると、ゆっくりとベッドに下ろされた。
 ぎしりとベッドが軋む音がやけに大きく聞こえてグレティアは身をすくめた。
 その間にシャルヴァがなにかの呪文を唱えて右手を一度振った。

「……?」

 不思議そうに見つめたグレティアに気づいたのだろう、シャルヴァがああと頷く。

「この部屋を隔離させた。外から誰も入ってこれないし、中でなにが起きてるか外から知ることはできない」

 にやりと不敵に笑ったシャルヴァにグレティアはほんの一瞬見惚れてしまったが、すぐに言葉の意味を理解して真っ赤になってうつむいた。

「どんなに声を上げてもリゼオンには聞こえないから安心しろ?」

 シャルヴァが顔を覗き込んできて、そのまま口づけてきた。

「んっ……」
「服を少し緩めてもいいか?」
「う、ん……」

 シャルヴァの問いかけに頷いて返すと、片手が背中に回され、もう片方の手が襟の留め具を外していった。流れるような動作で袖から腕を抜いて服が脱がされる。
 シャルヴァは自分も上着を脱ぎ捨ててから、グレティアを優しく押し倒した。
 背中からベッドに沈んだグレティアは隠すものがなくなった胸元を両腕で覆い身を固くしていた。
 シャルヴァの視線が注がれているのを意識すると恥ずかしくてたまらなくなる。
 初めて肌を合わせた夜より緊張している気がした。

「あまり見ないで……」
「俺に見られるのは嫌なのか?」
「そ、そういうわけじゃないけど、その……、恥ずかしいから……」
「……そうか。なら、これくらいは気にならなくなるように、もっと恥ずかしくなることをしなくてはな」
「んんっ……♡」

 シャルヴァの手が伸びてきて乳房に触れてきた。やんわりと揉み込まれる感覚にグレティアは甘く鼻を鳴らした。
 強すぎない力で乳房に触れるシャルヴァの手は熱くて少し汗ばんでいるのがわかった。
 胸をゆっくりと揉まれてグレティアはぴくりと身体を震わせた。その反応を楽しむようにシャルヴァは片方の胸の突起に舌を這わせてきた。

 ちゅ♡ ちゅく♡

「あっ……♡ んっ……♡」

 生暖かい感触にグレティアは小さく声を上げて、それを恥じるように口元を押さえた。
 シャルヴァの舌が突起を舐め上げていくと、ぞわぞわとした感覚が込み上げてくる。そのままシャルヴァの舌先が先端をつつき回すように触れてきて、グレティアはたまらずぎゅっと目をつむった。

「気持ちいいか?」

 シャルヴァの問いに、グレティアは首を横に振った。

「わから、ない……」

 そう言っている間にもシャルヴァの指先が乳首をつまみ上げる。親指と中指できゅっ♡ と抓まれた先端を人差し指の腹で撫でられると、腰の後ろあたりをくすぐられるようなピリピリとした快感が走った。

 ちゅる♡ ちゅっ♡ 
 くりくりくりくり♡ すりすりすりすり♡

「んぅ♡ んっ♡ んぁっ……♡」
「尖ってきた。ここは気持ちいいって言っているな」

 シャルヴァがわざとらしく舌を突き出し、淡い色づきをチロチロ♡ と舐った。
 からかうような口調と視界に飛び込んだいやらしい光景に、グレティアは顔が一気に熱くなるのを感じた。同時に後ろめたい興奮も覚えて腹の奥が疼く。

「んっ♡ ふっ♡ んんっ〰️〰️♡」
「声は外に漏れないと言っただろ? 聞かせろ」
「で、もっ……、あっ♡ んあ♡」

 シャルヴァは掌全体を使って乳房全体を揉みこんだり、指の間に頂を挟んで弄んだりして快楽を与えてくる。
 グレティアはその執拗な愛撫に意識がぼんやりとしてきた頃——唐突にシャルヴァの指が頂きを強く抓った。その途端、頭のてっぺんからつま先まで、強烈な快感が突き抜ける。

「あぁ――ッ♡♡♡」

 自分でも意識しないまま甲高い嬌声が口をついて出ていた。

「あ……♡ っ、はぁ……♡」

 全身が痺れてるみたいになって――けれど気持ちよくて、グレティアははくはくと唇を震わせた。
 シャルヴァは一度手を止めてグレティアの顔を見下ろし、満足げに笑みを浮かべた。そして、ゆっくりとした動作で顔を近づけてくる。口づけをされると思って目を閉じたグレティアだったが、予想に反して唇が触れたのは首筋だった。
 ちゅぅ♡ ちゅっ♡ と強く吸い付かれて、グレティアはくすぐったさに首をすくめた。

「んっ……♡」
「俺のものだっていう印だ」

 最初のときみたいにシャルヴァはそう言って、もう一度同じ場所に唇を触れさせた。そして、また強く吸い付く。その繰り返しで首筋から鎖骨の辺りまで赤い痕が散らされていった。

「んっ……♡ んぅ……♡」

 シャルヴァが動くたびに身体が反応して声が漏れる。そのたびにシャルヴァが嬉しそうに笑うものだからグレティアもなんだか嬉しくなってしまって、自然と笑みがこぼれていた。

「もっと、つけて……?」

 ねだるようにシャルヴァの首に腕を回すと、シャルヴァが驚いた様子で目をみはった。

「――……煽ったのはおまえだからな」

 少し低い声でささやいてから、シャルヴァが胸元に顔を寄せてきた。そして、先ほどと同じように強く吸い付いてくる。

「あっ……んっ……♡」

 ぴりっとした痛みが走ったけれど、それもすぐに快楽に変わっていく。
 ちゅっ♡ ちゅう♡ ちゅううぅ♡
 シャルヴァは執拗に同じ場所に吸い付いてきて、グレティアの白い肌に赤い痕がいくつも散らされた。

「んっ……♡ あぁっ……♡」

 そんな小さな刺激にも反応してしまって、グレティアは腰をくねらせた。
 シャルヴァはそんなグレティアの反応を楽しむように何度も同じ場所を吸い続けた。
 そのたびにグレティアの身体には甘い痺れが広がっていき、腹の奥が切なく疼いていく。
 シャルヴァは器用に肌に吸い付きながら、両の乳首をくりくり♡ と捏ね回した。

「あ……っ♡ んぁっ♡ あ、あっ♡」

 恥ずかしくてあれほど堪らえようとしていた甘い喘ぎも、もはや我慢なんて言葉を忘れてしまったみたいに半開きになった唇からこぼれ続けてしまう。
 やがてシャルヴァが満足するころには、グレティアの身体に無数の赤い痕が散らされていた。
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