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【おまけ話】0.5話 出会いのその後
――ロマルト街道沿い、地下魔導路のひとつ。
地下路の奥に、ぬめりのある濁った気配が漂っていた。
「……この濁り。間違いない、ここにいる!」
ミルティ=クラウゼは慎重に息を整え、足元を踏みしめるように進む。
不穏な誘拐事件が続く中、白輝会に寄せられた情報のひとつに、この地下ルートに通じる目撃証言があった。
そして先ほど――確かに彼女は、件の怪人を見たのだ。
粘着性の“黒い糸”を操り、標的を絡め取る異能を持つ怪人。
「スパイン・グルー……」
肉眼では見えないほど薄く、空間を揺らす瘴気。
ミルティの手の中で、杖がかすかに震えた。
「ようこそ、ようこそ……白輝の花」
ぬるりと音を立てて姿を現したのは、怪人――《スパイン・グルー》。
細身の背の高い男の指先からはぬるぬると糸のような黒いものが垂れていた。
「最近、ボクのこと調べてたよね? ご苦労さま」
「あなたが失踪事件の犯人。怪人スパイン・グルーですね」
「いやいや、攫ったんじゃない。可愛い子たちを、手元に置いておきたかっただけ」
「今すぐその粘糸を断ち切ります――覚悟しなさい!」
ミルティは迷いなく杖を構えた。
杖先が光る。放たれた浄化弾が、空間を裂いた――その瞬間、
背後から、別の声が降ってきた。
「――おっと、それはマズいな」
「……え⁉」
ミルティが振り向くより早く、その場に“彼”が降り立つ。
漆黒をまとった長身の青年。顔の上半分を覆う仮面。その仮面の奥、碧い瞳がふわりと笑っていた。
「……ノクス⁉」
「や♡ 覚えていてくれて嬉しいね。君の顔が見れただけで、今日はいい日になりそうだ」
ミルティの指先が一瞬、わずかに揺れる。
(どうして、ノクスまで……。これでは――分が悪すぎる)
警戒と混乱で、ほんの一瞬、反応が遅れた。
「ノクス様。白輝の花もボクのコレクションにしていいですよね?」
「――は?」
ノクスの返事を待たず、スパインの指先が跳ねた。
そして――。
「――ッ⁉」
黒い粘糸が、空間を覆うように放たれた。
逃げ場のない網が、天井から、地面から、ミルティを飲み込もうとする。
「くっ――!」
とっさに跳んだ。けれど、もう遅かった。
粘糸は、彼女の背中に迫り――。
「くそ……ッ! この、バカスパイン!」
誰かの腕が、ミルティの腰を引き寄せた。
そのまま――ばちん、と音がして、世界が一変する。
冷たい粘液の感触。
息がかかるほど近い距離。
見上げた先にいたのは、
「ノ……クス⁉」
冷たい粘液に包まれながら、ミルティはきつくノクスの胸元に抱き寄せられていた。
腰、背中、太ももに絡みつく粘糸は、容赦なくふたりの身体をぴったりと固定する。
まるで逃げられないように、結びつけるために編まれた網。
「スパイン! 君を逃がしてやるために僕は来たんだ。誰がミルティを捕らえろって言った⁉」
「ヒッ……!」
「さっさとこの糸を――」
「も、も、申し訳ございません! い、今から逃げますっ!」
「あ! おいっ!」
スパイン・グルーは蜘蛛のような動きで素早く後退すると、背後の壁をすり抜けるようにして影の中へと姿を消してしまった。
残されたのは、黒い粘糸に絡まったまま、密着して立ち尽くすミルティとノクスのふたり。
「……はあ、あいつ、ほんと馬鹿だな」
ノクスは肩でため息をつきながら、どこか諦めきったように笑った。
視線を下ろした彼の目に、胸元に張りつくように押しつけられた、赤くなったミルティの顔が映った。
「――ま、役得ってことで許してあげようかな」
「な、なんで、助けようとしたんですか⁉」
「うーん……身体が勝手に?」
「そ、そういうことじゃなくて……っ!」
「まあまあ。……でも、こうしてくっついてみると、改めて思うよ」
「……?」
「君、あったかいんだね」
「~~っ!」
ミルティの顔が見る間に真っ赤に染まる。
糸から垂れる粘液まみれな上、ノクスの体温がじんわり伝わってきてしまうのが余計に腹立たしい。
彼の胸の鼓動さえも、耳元で微かに聞こえて――
「ひとまず動けないね。うん、しばらくこのままだ」
「こ、困ります! なんとかしてください! あなた、怪人なんでしょう⁉」
「無理だよ。ほら、ちょっとでも動くと……」
ノクスが片眉を上げて、微かに腰を揺らした瞬間。
「っ……⁉」
ぐちゅっ――と粘液がぬめる音と共に、彼の太腿がミルティの内腿に密着し、彼女の身体がぴくりと跳ねた。
「ほら。動いたら、余計えっちな音、出ちゃう」
「~~~~ッッ!」
とうとう顔だけでなく、耳まで真っ赤になる。
「さっきのなんで助けようとしたのか、の質問だけど……」
ふと、ノクスが声のトーンを下げた。
「正直、君をコレクションにするとか、軽々しく言われたの、ちょっと腹立ったんだよね」
その言葉だけは、妙に本気の響きを持っていた。
「君は誰のものにもならない。――なるなら、僕だけのものだ」
「え……? なんて……?」
「――って、言ったら……怖い?」
いたずらっぽい目で覗き込んでくる彼に、ミルティは何も返せなかった。
心臓の音ばかりが、ひどくうるさく響いている。
「ふ、ふざけたことを言ってないで、ここから脱出する方法を考えてください!」
「ん~。でも、君の太ももの感触から離れるのは惜しいな……」
ノクスがわざと、ぬるりと腰をずらすように動いた。
密着した粘液が、いやらしい音を立てて擦れる。
「ちょっ……」
ミルティは耐えきれず、絞り出すように声をあげた。
「ノクス、あなたは動かないでください! わたしが――」
「いいけど……」
ミルティはなんとか身をよじって動く範囲で両手でノクスの身体を押した。
ぐっと力を込めると、粘糸がわずかに伸びるも、ぎちぎちと音を立てるだけだった。
「……っ」
「無理したら余計に絡まるかも」
ノクスの冷静な忠告も届かず、ミルティはさらに力を入れるが――。
「ミルティ……。僕の理性を試してるの?」
「っひ!」
耳元にふっと息がかかり、ぞくりと肌が粟立つ。
「あんまり暴れられると……」
ノクスがぐっと腰を押しつけるようにして、ミルティの耳元で囁きを続ける。
「余計に擦れて反応しちゃいそうなんだけど……?」
「っあ……」
ぴったりと密着した体勢がさらに強まる。太腿の間に感じる異様な熱。
粘糸越しに伝わる熱は、ミルティの理性をじりじりと焦がしていく。
「ほら。君の太もも……すごく気持ちいいね」
「ふ、ふざけないで、くださいっ! ん……っ!」
「……もう少しだけこのままでもいいかもって思うのはさ」
ノクスはふと、真顔になって目を細めた。
ミルティの肩がぴくりと震える。
「やっぱり君といると、楽しいからなのかもね……」
「~~~~っ!」
ミルティの身体が硬直する。
「ほんと、困る。君に触れると――全部がどうでもよくなっちゃいそうで」
そう囁いたあとで。
ふと目を細め、静かに笑った。
「ねえミルティ。――このまま一緒にいようか」
その声が、驚くほど優しくて。
ミルティの心臓が、跳ねた。
「わ、わたしは――っ」
声がうまく出てこない。
目の前でほほ笑む彼の顔を見ていると、なにも言えなくなってしまいそうになる。
けれど――。
ミルティはか細い声で言った。
「わたしは白輝会の魔法少女で、あなたは怪人です。さっさと脱出してスパインを追わないと!」
「…………」
「た、楽しくなんて、ありません……!」
「…………そっか、残念」
「――っ!」
上から聞こえた声があまりにも静かで、ミルティはもうノクスの顔を見れなかった。
「僕のこと、そんなに嫌?」
「っ!」
ミルティは言葉に詰まる。
嫌なのか。そうじゃないのか。そんな単純な問いのはずなのに――答えられない。
「そういう問題じゃ――」
「――困ってる顔も可愛いね」
腰にまわっていたノクスの手が動いた。まるで確かめるように、優しく、じれったいほどゆっくりと。
ミルティはびくりと身を引こうとしたが、絡まった糸に阻まれる。
「ノク……っ!」
名前を呼ぼうとしたその瞬間、
「――そこまでよ!」
凛とした声が響き、闇に一条の光が走った。
「!」
ノクスが反射的に顔を上げる。
閃光の源は、出入り口付近。
そこにはふたりの魔法少女が凛と立っていた。
「時間切れか……」
ノクスが腰を引く素振りを見せながら、粘糸の中で片手を動かす。
次の瞬間、 黒い粘糸を逆再構成するように、青白い火花が滲んだ。
ばちっ、という音と共に、粘糸の表面が焼き切れ、ミルティの身体の拘束が緩む。
ふらりと体勢を崩しかけたミルティに手を差し出し、ノクスが小さく笑った。
「またね、ミルティ……」
そう言うと、ノクスはふわりと身を翻した。
「あ……」
「大丈夫⁉ ミルティ!」
ノクスを目で追ったミルティの背後から、先輩魔法少女がふたり駆け寄ってきた。
「ありがとうございます……。すみませんでした」
「無事でよかった」
「とりあえず白輝会に戻って洗浄室に行きましょう」
ミルティは彼女たちに支えられながら、歩き出した。
「さっきのあの男……。怪人? なにもされなかった? 何者かしら?」
先輩魔法少女の一人が心配そうにミルティの顔を覗き込んだ。
「え、あ、はいっ! 何者かは……まだ、わかりません……」
――ノクスはもういなくなってしまった。
(……次に会ったらなんて言おう)
ミルティは心の中でそんなことを考えながら、魔法少女二人と共に白輝会へ帰還するのだった。
地下路の奥に、ぬめりのある濁った気配が漂っていた。
「……この濁り。間違いない、ここにいる!」
ミルティ=クラウゼは慎重に息を整え、足元を踏みしめるように進む。
不穏な誘拐事件が続く中、白輝会に寄せられた情報のひとつに、この地下ルートに通じる目撃証言があった。
そして先ほど――確かに彼女は、件の怪人を見たのだ。
粘着性の“黒い糸”を操り、標的を絡め取る異能を持つ怪人。
「スパイン・グルー……」
肉眼では見えないほど薄く、空間を揺らす瘴気。
ミルティの手の中で、杖がかすかに震えた。
「ようこそ、ようこそ……白輝の花」
ぬるりと音を立てて姿を現したのは、怪人――《スパイン・グルー》。
細身の背の高い男の指先からはぬるぬると糸のような黒いものが垂れていた。
「最近、ボクのこと調べてたよね? ご苦労さま」
「あなたが失踪事件の犯人。怪人スパイン・グルーですね」
「いやいや、攫ったんじゃない。可愛い子たちを、手元に置いておきたかっただけ」
「今すぐその粘糸を断ち切ります――覚悟しなさい!」
ミルティは迷いなく杖を構えた。
杖先が光る。放たれた浄化弾が、空間を裂いた――その瞬間、
背後から、別の声が降ってきた。
「――おっと、それはマズいな」
「……え⁉」
ミルティが振り向くより早く、その場に“彼”が降り立つ。
漆黒をまとった長身の青年。顔の上半分を覆う仮面。その仮面の奥、碧い瞳がふわりと笑っていた。
「……ノクス⁉」
「や♡ 覚えていてくれて嬉しいね。君の顔が見れただけで、今日はいい日になりそうだ」
ミルティの指先が一瞬、わずかに揺れる。
(どうして、ノクスまで……。これでは――分が悪すぎる)
警戒と混乱で、ほんの一瞬、反応が遅れた。
「ノクス様。白輝の花もボクのコレクションにしていいですよね?」
「――は?」
ノクスの返事を待たず、スパインの指先が跳ねた。
そして――。
「――ッ⁉」
黒い粘糸が、空間を覆うように放たれた。
逃げ場のない網が、天井から、地面から、ミルティを飲み込もうとする。
「くっ――!」
とっさに跳んだ。けれど、もう遅かった。
粘糸は、彼女の背中に迫り――。
「くそ……ッ! この、バカスパイン!」
誰かの腕が、ミルティの腰を引き寄せた。
そのまま――ばちん、と音がして、世界が一変する。
冷たい粘液の感触。
息がかかるほど近い距離。
見上げた先にいたのは、
「ノ……クス⁉」
冷たい粘液に包まれながら、ミルティはきつくノクスの胸元に抱き寄せられていた。
腰、背中、太ももに絡みつく粘糸は、容赦なくふたりの身体をぴったりと固定する。
まるで逃げられないように、結びつけるために編まれた網。
「スパイン! 君を逃がしてやるために僕は来たんだ。誰がミルティを捕らえろって言った⁉」
「ヒッ……!」
「さっさとこの糸を――」
「も、も、申し訳ございません! い、今から逃げますっ!」
「あ! おいっ!」
スパイン・グルーは蜘蛛のような動きで素早く後退すると、背後の壁をすり抜けるようにして影の中へと姿を消してしまった。
残されたのは、黒い粘糸に絡まったまま、密着して立ち尽くすミルティとノクスのふたり。
「……はあ、あいつ、ほんと馬鹿だな」
ノクスは肩でため息をつきながら、どこか諦めきったように笑った。
視線を下ろした彼の目に、胸元に張りつくように押しつけられた、赤くなったミルティの顔が映った。
「――ま、役得ってことで許してあげようかな」
「な、なんで、助けようとしたんですか⁉」
「うーん……身体が勝手に?」
「そ、そういうことじゃなくて……っ!」
「まあまあ。……でも、こうしてくっついてみると、改めて思うよ」
「……?」
「君、あったかいんだね」
「~~っ!」
ミルティの顔が見る間に真っ赤に染まる。
糸から垂れる粘液まみれな上、ノクスの体温がじんわり伝わってきてしまうのが余計に腹立たしい。
彼の胸の鼓動さえも、耳元で微かに聞こえて――
「ひとまず動けないね。うん、しばらくこのままだ」
「こ、困ります! なんとかしてください! あなた、怪人なんでしょう⁉」
「無理だよ。ほら、ちょっとでも動くと……」
ノクスが片眉を上げて、微かに腰を揺らした瞬間。
「っ……⁉」
ぐちゅっ――と粘液がぬめる音と共に、彼の太腿がミルティの内腿に密着し、彼女の身体がぴくりと跳ねた。
「ほら。動いたら、余計えっちな音、出ちゃう」
「~~~~ッッ!」
とうとう顔だけでなく、耳まで真っ赤になる。
「さっきのなんで助けようとしたのか、の質問だけど……」
ふと、ノクスが声のトーンを下げた。
「正直、君をコレクションにするとか、軽々しく言われたの、ちょっと腹立ったんだよね」
その言葉だけは、妙に本気の響きを持っていた。
「君は誰のものにもならない。――なるなら、僕だけのものだ」
「え……? なんて……?」
「――って、言ったら……怖い?」
いたずらっぽい目で覗き込んでくる彼に、ミルティは何も返せなかった。
心臓の音ばかりが、ひどくうるさく響いている。
「ふ、ふざけたことを言ってないで、ここから脱出する方法を考えてください!」
「ん~。でも、君の太ももの感触から離れるのは惜しいな……」
ノクスがわざと、ぬるりと腰をずらすように動いた。
密着した粘液が、いやらしい音を立てて擦れる。
「ちょっ……」
ミルティは耐えきれず、絞り出すように声をあげた。
「ノクス、あなたは動かないでください! わたしが――」
「いいけど……」
ミルティはなんとか身をよじって動く範囲で両手でノクスの身体を押した。
ぐっと力を込めると、粘糸がわずかに伸びるも、ぎちぎちと音を立てるだけだった。
「……っ」
「無理したら余計に絡まるかも」
ノクスの冷静な忠告も届かず、ミルティはさらに力を入れるが――。
「ミルティ……。僕の理性を試してるの?」
「っひ!」
耳元にふっと息がかかり、ぞくりと肌が粟立つ。
「あんまり暴れられると……」
ノクスがぐっと腰を押しつけるようにして、ミルティの耳元で囁きを続ける。
「余計に擦れて反応しちゃいそうなんだけど……?」
「っあ……」
ぴったりと密着した体勢がさらに強まる。太腿の間に感じる異様な熱。
粘糸越しに伝わる熱は、ミルティの理性をじりじりと焦がしていく。
「ほら。君の太もも……すごく気持ちいいね」
「ふ、ふざけないで、くださいっ! ん……っ!」
「……もう少しだけこのままでもいいかもって思うのはさ」
ノクスはふと、真顔になって目を細めた。
ミルティの肩がぴくりと震える。
「やっぱり君といると、楽しいからなのかもね……」
「~~~~っ!」
ミルティの身体が硬直する。
「ほんと、困る。君に触れると――全部がどうでもよくなっちゃいそうで」
そう囁いたあとで。
ふと目を細め、静かに笑った。
「ねえミルティ。――このまま一緒にいようか」
その声が、驚くほど優しくて。
ミルティの心臓が、跳ねた。
「わ、わたしは――っ」
声がうまく出てこない。
目の前でほほ笑む彼の顔を見ていると、なにも言えなくなってしまいそうになる。
けれど――。
ミルティはか細い声で言った。
「わたしは白輝会の魔法少女で、あなたは怪人です。さっさと脱出してスパインを追わないと!」
「…………」
「た、楽しくなんて、ありません……!」
「…………そっか、残念」
「――っ!」
上から聞こえた声があまりにも静かで、ミルティはもうノクスの顔を見れなかった。
「僕のこと、そんなに嫌?」
「っ!」
ミルティは言葉に詰まる。
嫌なのか。そうじゃないのか。そんな単純な問いのはずなのに――答えられない。
「そういう問題じゃ――」
「――困ってる顔も可愛いね」
腰にまわっていたノクスの手が動いた。まるで確かめるように、優しく、じれったいほどゆっくりと。
ミルティはびくりと身を引こうとしたが、絡まった糸に阻まれる。
「ノク……っ!」
名前を呼ぼうとしたその瞬間、
「――そこまでよ!」
凛とした声が響き、闇に一条の光が走った。
「!」
ノクスが反射的に顔を上げる。
閃光の源は、出入り口付近。
そこにはふたりの魔法少女が凛と立っていた。
「時間切れか……」
ノクスが腰を引く素振りを見せながら、粘糸の中で片手を動かす。
次の瞬間、 黒い粘糸を逆再構成するように、青白い火花が滲んだ。
ばちっ、という音と共に、粘糸の表面が焼き切れ、ミルティの身体の拘束が緩む。
ふらりと体勢を崩しかけたミルティに手を差し出し、ノクスが小さく笑った。
「またね、ミルティ……」
そう言うと、ノクスはふわりと身を翻した。
「あ……」
「大丈夫⁉ ミルティ!」
ノクスを目で追ったミルティの背後から、先輩魔法少女がふたり駆け寄ってきた。
「ありがとうございます……。すみませんでした」
「無事でよかった」
「とりあえず白輝会に戻って洗浄室に行きましょう」
ミルティは彼女たちに支えられながら、歩き出した。
「さっきのあの男……。怪人? なにもされなかった? 何者かしら?」
先輩魔法少女の一人が心配そうにミルティの顔を覗き込んだ。
「え、あ、はいっ! 何者かは……まだ、わかりません……」
――ノクスはもういなくなってしまった。
(……次に会ったらなんて言おう)
ミルティは心の中でそんなことを考えながら、魔法少女二人と共に白輝会へ帰還するのだった。
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