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スピンオフ「デュインズ」
野営と命
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「まあいい、早く行くぞ」
「なっ、貴様が仕切るな! 迷路が分かってもいないくせに!」
「何を面倒なことを……。迷路だとしても、道を破壊すればいい話だろう」
「あっ、あの――」
そう言ってリーベは剣を取り出す。スラリと鞘から抜いて飛び出せば、壁へ容赦なく攻撃を与える。
ロッティの声はリーベの剣戟に間に合わず、既に壁が破壊されてから響いた。
紙を切るかのように切り刻まれた壁は、ガラガラと音を立てて崩れていく。道が開けたのならば、あとは進むのみだ。
「行くぞ」
「来た、――上です!」
「!」
瓦礫の上を行こうとしたリーベに奇襲してきたのは、通常の個体よりもひと回りもふた回りも大きい虎であった。
鋭い爪と牙を向け、リーベを殺さんと飛びかかる。
リーベは咄嗟に剣を抜き、なんとか虎をいなした。反撃されると思っていなかったのか、警戒した虎が数メートル離れて着地する。
「なっ……」
「この階層のボスです! 迷路に対する破壊行為は許さないんです!」
「それを早く言え! 姉上!」
「え!? あっ……きょ、〈強化〉」
リーベはアリスの魔術を受けると、迷いなしに虎の方へと走った。
幾人もの冒険者をあの世に送ってきたであろう虎は、リーベの速度に対応しきれずそのまま体を分断された。
ロッティやネルも手伝えればいいと思っていたが、魔術を出す時間もないまま圧勝であった。
下層の蛇を倒したという話が、これで信憑性が高くなる。
「す、すごい……」
「姉上のおかげだ。ありがとうございます、姉上」
「ううん」
「おいおいおいおい、今の強化魔術はなんだ? 最低ランクのものじゃないか。本当に彼の役に立っているのか?」
鼻で笑うような言い方は、ユージーンの素なのか。それともわざとなのか。
アリスを馬鹿にしたいという魂胆は見え見えで、リーベに勝てないと分かったからその仲間であるアリスに攻撃が向いた。
いかにもプライドの高いユージーンのことだ。自分より目立っているリーベに腹が立っているが、その怒りを消化する方法がこういった形しか取れない。
「ちょっと、やめてくださいよ。助けてもらった方にそんな事言わないでください」
「事実を言ったまでだ。それに弱いやつに助けてもらっても、今後が不安じゃないのか?」
「うっ……」
ロッティもアリスを庇いたかったが、アリスが付与した魔術が余りにもお粗末なのは、魔術師である彼女なら知っていることだ。
ほんの僅かな強化で、虎を殺すか殺せないかが変わるわけが無い。今の戦闘は、完全にリーベだけの力で終わらせたのだ。
「ハッ。助けられた分際で姉上に文句を言うとは……。感謝も知らない人間は可哀想だね」
「なん……!」
「こら、リーベ! す、すみません。私が弱いのが悪いんです……」
「ふんっ、わ、分かれば良い。行くぞ!」
リーベは厳しいとも言える言葉を投げる。半分は本音で、半分はユージーンを煽るための演技だ。
いくらこちらが偽っているとはいえ、アリスを馬鹿にされたことに変わりないため、リーベの腹が立っているのは間違いない。
ユージーンは単純だ。リーベに勝てないから弱者を虐め始めたのに、煽られれば再び怒りの矛先がリーベへと向く。
このまま口論になってもまずい上に、自分勝手で制御が難しいユージーンは、いい所を見せようと動くだろう。
だからアリスはあえて卑下する言い方をした。子供をあやすかのように。
ユージーンはアリスの言葉を受けて、捨て台詞を吐いてスタスタと早足で先に行ってしまった。それを追って、ロッティとネルが続く。
「ぷっ、くくく……うひひひ……!」
「……はぁ、母上。あなたも悪い人ですね」
「リーベこそ。でもアドリブで支援要請振ってくれてありがと~」
一同はひとつ上である六階層に来ていた。
「なんだここは……、祠?」
「きれい……」
今までの殺伐とした階層とは異なり、幻想的で美しい場所であった。
空間の真ん中には池があり、その中心には祠がある。
簡単に全体を見渡せてしまうほどさして広くはないが、他に敵反応もない。
もっと言えば、中心の祠からは治癒効果のある力が溢れている。
(一階層目が最初で最後の補給地点だと思っていたけど、途中で存在していたんだ)
第一階層で行った探知は、全ての階層を調べ上げたのではなかった。
一刻も早く合流したかったことと、〝ゲスト〟を撒きたかったこともあって、三人を見つけたときに切り上げていた。だからアリスにとっても、六階層以上は未知の領域だ。
とはいえ流石に魔王もこれ以上良心的ではないだろう。補給地点もこれで最後のはずだ。
むしろこれ以上の階層は、強敵が続くからこそ警告の階なのかもしれない。
魔王の気まぐれな慈悲なのか、それとも人間を面白がっているのか。罠なのか。それは本人しか知り得ないことだ。
「ここで野営をするぞ!」
「はあ? 危機感ってものがなさすぎるんですよ」
「うう、う、うるさい! 僕は疲れたんだ! さっさと準備をしろ!」
「はいはい……」
(ちょうどいいや。残りの階層も探知しとこ)
「姉上。僕らも野営の準備を」
「うん」
それぞれの野営を準備し、互いに周囲を警戒しながら休息に入った。
ユージーンは寝床を用意すると、警戒心がまったくないのかすぐに眠ってしまった。本人の言う通り疲れているのかもしれないが、あまりにも無用心である。
アリスとリーベも、三名から少し離れた場所で休息を取った。リーベはまだ人の身であるため、彼もここで仮眠を取ることにした。
「……ロッティ。ちょっと、相談」
「ネルが相談なんて珍しいわね。どうしたの?」
「あの女の人のこと」
「ええ?」
「わたしたちは、あの人の仲間……ううん。配下についたほうが、いい」
「は、はあ? 悪い魔術でも受けた?」
ロッティはネルが意味の分からないことを言い出したと思った。長い付き合いで知っていたが、ネルはちょっと天然のようなところもある。しかしこんなおかしなことをいう友人ではないはずだ。
だから、このダンジョンのせいで気が触れてしまったのかもしれないと考える。
そうでなければ、あの弱々しい魔術師の部下になろうなんて発言しないはずだ。
「受けてない。ロッティはわたしのスキル、知ってるでしょ」
「知ってるけど……あれって、ごくごく低確率で成功するじゃない」
「うん。でもあれで、わたしたちは生き残れた」
ネルの持つスキル、〈僅かな観察眼〉。それは持っていないと言ったほうがいいほど、成功確率が低いスキルだった。
酷く低い確率ではあるものの、見た相手のステータスと正体を見破るという大きな効果を持っている。
所持者の死ぬリスクが高まると、確率がほんの少しだけ上昇する。
そしてそれにより、ネルは魔王戦から逃げることが出来た。魔王が勇者や他の仲間を一掃する前に、地下霊園から逃走したのだ。
「あの女の人の、ステータスを見た。あの人は、魔王を凌ぐ力を持ってる」
「はあ!? 流石に嘘よね?」
「むぅ……」
「ご、ごめんごめん」
ユージーンはさておき、信頼しているロッティに疑われて、ネルは少しだけ機嫌を損ねた。
ネルは素直で、礼儀や作法が少し抜けているものの、嘘はつかない。ついたところで人を困らせるような事は言わない。
だからこの発言も、生きるため。彼女は真実を話しているのだ。
長い付き合いのロッティもそれを知っていたが、やはり先程の戦闘を加味しても信じられなかった。
片割れの青年の方ならばまだしも、ネルは〝女の人〟と言ったのだから。
「わたしは、ユージーンなんてどうでもいい。ロッティとパーティーだから助けているだけ。だからロッティにだけ言ってる。あの人と話して、少しでも生存率を上げたい」
「まぁ……そこまで言うなら……」
「じゃあ早速いこう」
「へ? どこに?」
「話し合い。今しかない」
「えぇ!?」
ネルの行動力に驚かされながらも、ロッティはネルについていった。
こちらも野営の設置を済ませており、既にリーベの方は眠っている。
ロッティは「邪魔をして悪いなぁ……」と思いつつも、命の恩人であるネルの申し出を断れなかった。
「どうしたんですか? 寝ないんです? 私が見てますから寝ててください。……弱い私に言われても心配かもしれませんけど」
「嘘言わなくていい、です。あなたのステータス、見た」
「……? どういうことですか?」
「レベル200。幾つもの魔族の混合種。数多のスキル。人ならざる者」
「……」
「あ、えっと、ネルはですね! 低確率でステータスを閲覧できるスキル持ちなんです」
ロッティがそう説明をすると、いままでへこへこと媚びへつらうような様子だったアリスは表情を変えた。
ヘラヘラとしていた締まらない表情は、普段のアリスの顔へと変わる。頼りがいがあるとはいえないが、妙に冷静な姿は先程の〝姉上〟ではない。
「そっか。そこまで細かく説明できる時点で、取り繕う必要はないよね」
アリスのその言葉を聞くと、ネルは跪いた。知恵が乏しい彼女なりの精一杯の敬意だ。
ロッティは焦りながらも、ネルに続いて跪く。彼女の方はまだ頭がいいはずだが、どうにも慣れないのはまだアリスの実力について、半信半疑だからだろう。
ロッティの様子からしてアリスも察していたし、そこを突っ込むつもりもない。
「お願いです。わたしはまだ死にたくない。どうか、仲間に――部下に加えて」
「君達を殺す気はないけど……。依頼のためにギルドまでは生きて返すつもりだったし」
「……ありがとう、ございます」
ネルは安心したようにホッと息を吐いた。まさにそれは恐怖から少しだけ開放されたような、表情だった。
彼女がアリスのステータスを見たのは、本当に間違いないのだろう。
今まで突破されなかった情報だ。たまたま運がよくて見られたとはいえ、それでもやり遂げた内容は〝トラッシュ〟では偉人レベルと言ってもいい。
たかが冒険者レベルの小娘に正体を見破られたことは、少々悔しいものの――その態度とスキルの幸運で、アリスは許してやることにした。
「〝アレ〟はいいの?」
「ユージーン? わたしは、ロッティと一緒なら。どうでもいい」
「あっ、そう」
「なら早速頼みがあるんだけど」
「任せて……ください」
「なっ、貴様が仕切るな! 迷路が分かってもいないくせに!」
「何を面倒なことを……。迷路だとしても、道を破壊すればいい話だろう」
「あっ、あの――」
そう言ってリーベは剣を取り出す。スラリと鞘から抜いて飛び出せば、壁へ容赦なく攻撃を与える。
ロッティの声はリーベの剣戟に間に合わず、既に壁が破壊されてから響いた。
紙を切るかのように切り刻まれた壁は、ガラガラと音を立てて崩れていく。道が開けたのならば、あとは進むのみだ。
「行くぞ」
「来た、――上です!」
「!」
瓦礫の上を行こうとしたリーベに奇襲してきたのは、通常の個体よりもひと回りもふた回りも大きい虎であった。
鋭い爪と牙を向け、リーベを殺さんと飛びかかる。
リーベは咄嗟に剣を抜き、なんとか虎をいなした。反撃されると思っていなかったのか、警戒した虎が数メートル離れて着地する。
「なっ……」
「この階層のボスです! 迷路に対する破壊行為は許さないんです!」
「それを早く言え! 姉上!」
「え!? あっ……きょ、〈強化〉」
リーベはアリスの魔術を受けると、迷いなしに虎の方へと走った。
幾人もの冒険者をあの世に送ってきたであろう虎は、リーベの速度に対応しきれずそのまま体を分断された。
ロッティやネルも手伝えればいいと思っていたが、魔術を出す時間もないまま圧勝であった。
下層の蛇を倒したという話が、これで信憑性が高くなる。
「す、すごい……」
「姉上のおかげだ。ありがとうございます、姉上」
「ううん」
「おいおいおいおい、今の強化魔術はなんだ? 最低ランクのものじゃないか。本当に彼の役に立っているのか?」
鼻で笑うような言い方は、ユージーンの素なのか。それともわざとなのか。
アリスを馬鹿にしたいという魂胆は見え見えで、リーベに勝てないと分かったからその仲間であるアリスに攻撃が向いた。
いかにもプライドの高いユージーンのことだ。自分より目立っているリーベに腹が立っているが、その怒りを消化する方法がこういった形しか取れない。
「ちょっと、やめてくださいよ。助けてもらった方にそんな事言わないでください」
「事実を言ったまでだ。それに弱いやつに助けてもらっても、今後が不安じゃないのか?」
「うっ……」
ロッティもアリスを庇いたかったが、アリスが付与した魔術が余りにもお粗末なのは、魔術師である彼女なら知っていることだ。
ほんの僅かな強化で、虎を殺すか殺せないかが変わるわけが無い。今の戦闘は、完全にリーベだけの力で終わらせたのだ。
「ハッ。助けられた分際で姉上に文句を言うとは……。感謝も知らない人間は可哀想だね」
「なん……!」
「こら、リーベ! す、すみません。私が弱いのが悪いんです……」
「ふんっ、わ、分かれば良い。行くぞ!」
リーベは厳しいとも言える言葉を投げる。半分は本音で、半分はユージーンを煽るための演技だ。
いくらこちらが偽っているとはいえ、アリスを馬鹿にされたことに変わりないため、リーベの腹が立っているのは間違いない。
ユージーンは単純だ。リーベに勝てないから弱者を虐め始めたのに、煽られれば再び怒りの矛先がリーベへと向く。
このまま口論になってもまずい上に、自分勝手で制御が難しいユージーンは、いい所を見せようと動くだろう。
だからアリスはあえて卑下する言い方をした。子供をあやすかのように。
ユージーンはアリスの言葉を受けて、捨て台詞を吐いてスタスタと早足で先に行ってしまった。それを追って、ロッティとネルが続く。
「ぷっ、くくく……うひひひ……!」
「……はぁ、母上。あなたも悪い人ですね」
「リーベこそ。でもアドリブで支援要請振ってくれてありがと~」
一同はひとつ上である六階層に来ていた。
「なんだここは……、祠?」
「きれい……」
今までの殺伐とした階層とは異なり、幻想的で美しい場所であった。
空間の真ん中には池があり、その中心には祠がある。
簡単に全体を見渡せてしまうほどさして広くはないが、他に敵反応もない。
もっと言えば、中心の祠からは治癒効果のある力が溢れている。
(一階層目が最初で最後の補給地点だと思っていたけど、途中で存在していたんだ)
第一階層で行った探知は、全ての階層を調べ上げたのではなかった。
一刻も早く合流したかったことと、〝ゲスト〟を撒きたかったこともあって、三人を見つけたときに切り上げていた。だからアリスにとっても、六階層以上は未知の領域だ。
とはいえ流石に魔王もこれ以上良心的ではないだろう。補給地点もこれで最後のはずだ。
むしろこれ以上の階層は、強敵が続くからこそ警告の階なのかもしれない。
魔王の気まぐれな慈悲なのか、それとも人間を面白がっているのか。罠なのか。それは本人しか知り得ないことだ。
「ここで野営をするぞ!」
「はあ? 危機感ってものがなさすぎるんですよ」
「うう、う、うるさい! 僕は疲れたんだ! さっさと準備をしろ!」
「はいはい……」
(ちょうどいいや。残りの階層も探知しとこ)
「姉上。僕らも野営の準備を」
「うん」
それぞれの野営を準備し、互いに周囲を警戒しながら休息に入った。
ユージーンは寝床を用意すると、警戒心がまったくないのかすぐに眠ってしまった。本人の言う通り疲れているのかもしれないが、あまりにも無用心である。
アリスとリーベも、三名から少し離れた場所で休息を取った。リーベはまだ人の身であるため、彼もここで仮眠を取ることにした。
「……ロッティ。ちょっと、相談」
「ネルが相談なんて珍しいわね。どうしたの?」
「あの女の人のこと」
「ええ?」
「わたしたちは、あの人の仲間……ううん。配下についたほうが、いい」
「は、はあ? 悪い魔術でも受けた?」
ロッティはネルが意味の分からないことを言い出したと思った。長い付き合いで知っていたが、ネルはちょっと天然のようなところもある。しかしこんなおかしなことをいう友人ではないはずだ。
だから、このダンジョンのせいで気が触れてしまったのかもしれないと考える。
そうでなければ、あの弱々しい魔術師の部下になろうなんて発言しないはずだ。
「受けてない。ロッティはわたしのスキル、知ってるでしょ」
「知ってるけど……あれって、ごくごく低確率で成功するじゃない」
「うん。でもあれで、わたしたちは生き残れた」
ネルの持つスキル、〈僅かな観察眼〉。それは持っていないと言ったほうがいいほど、成功確率が低いスキルだった。
酷く低い確率ではあるものの、見た相手のステータスと正体を見破るという大きな効果を持っている。
所持者の死ぬリスクが高まると、確率がほんの少しだけ上昇する。
そしてそれにより、ネルは魔王戦から逃げることが出来た。魔王が勇者や他の仲間を一掃する前に、地下霊園から逃走したのだ。
「あの女の人の、ステータスを見た。あの人は、魔王を凌ぐ力を持ってる」
「はあ!? 流石に嘘よね?」
「むぅ……」
「ご、ごめんごめん」
ユージーンはさておき、信頼しているロッティに疑われて、ネルは少しだけ機嫌を損ねた。
ネルは素直で、礼儀や作法が少し抜けているものの、嘘はつかない。ついたところで人を困らせるような事は言わない。
だからこの発言も、生きるため。彼女は真実を話しているのだ。
長い付き合いのロッティもそれを知っていたが、やはり先程の戦闘を加味しても信じられなかった。
片割れの青年の方ならばまだしも、ネルは〝女の人〟と言ったのだから。
「わたしは、ユージーンなんてどうでもいい。ロッティとパーティーだから助けているだけ。だからロッティにだけ言ってる。あの人と話して、少しでも生存率を上げたい」
「まぁ……そこまで言うなら……」
「じゃあ早速いこう」
「へ? どこに?」
「話し合い。今しかない」
「えぇ!?」
ネルの行動力に驚かされながらも、ロッティはネルについていった。
こちらも野営の設置を済ませており、既にリーベの方は眠っている。
ロッティは「邪魔をして悪いなぁ……」と思いつつも、命の恩人であるネルの申し出を断れなかった。
「どうしたんですか? 寝ないんです? 私が見てますから寝ててください。……弱い私に言われても心配かもしれませんけど」
「嘘言わなくていい、です。あなたのステータス、見た」
「……? どういうことですか?」
「レベル200。幾つもの魔族の混合種。数多のスキル。人ならざる者」
「……」
「あ、えっと、ネルはですね! 低確率でステータスを閲覧できるスキル持ちなんです」
ロッティがそう説明をすると、いままでへこへこと媚びへつらうような様子だったアリスは表情を変えた。
ヘラヘラとしていた締まらない表情は、普段のアリスの顔へと変わる。頼りがいがあるとはいえないが、妙に冷静な姿は先程の〝姉上〟ではない。
「そっか。そこまで細かく説明できる時点で、取り繕う必要はないよね」
アリスのその言葉を聞くと、ネルは跪いた。知恵が乏しい彼女なりの精一杯の敬意だ。
ロッティは焦りながらも、ネルに続いて跪く。彼女の方はまだ頭がいいはずだが、どうにも慣れないのはまだアリスの実力について、半信半疑だからだろう。
ロッティの様子からしてアリスも察していたし、そこを突っ込むつもりもない。
「お願いです。わたしはまだ死にたくない。どうか、仲間に――部下に加えて」
「君達を殺す気はないけど……。依頼のためにギルドまでは生きて返すつもりだったし」
「……ありがとう、ございます」
ネルは安心したようにホッと息を吐いた。まさにそれは恐怖から少しだけ開放されたような、表情だった。
彼女がアリスのステータスを見たのは、本当に間違いないのだろう。
今まで突破されなかった情報だ。たまたま運がよくて見られたとはいえ、それでもやり遂げた内容は〝トラッシュ〟では偉人レベルと言ってもいい。
たかが冒険者レベルの小娘に正体を見破られたことは、少々悔しいものの――その態度とスキルの幸運で、アリスは許してやることにした。
「〝アレ〟はいいの?」
「ユージーン? わたしは、ロッティと一緒なら。どうでもいい」
「あっ、そう」
「なら早速頼みがあるんだけど」
「任せて……ください」
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