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スピンオフ「デュインズ」
あるはずの無い近道
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「ユージーン!」
「んがっ!?」
「起きてください! 凄いものを見つけました!」
「な、なんだ!?」
ロッティは普段ならば考えられぬほどの興奮気味で、熟睡していたユージーンを叩き起こした。あのユージーンですら驚いてしまうほど、その姿は意外だ。
ユージーンは驚愕のあまり飛び起きて、素直にロッティのあとについていく。
連れて行かれた先には、祠があった。それ以前に、祠の前にはあり得ないものが存在していた。
来たときにはなかったはずの、門があるのだ。
非常に作り込まれた上質な門は、たった一晩で生成できるものではない。どことなく禍々しさも帯びているそれは、〝良いもの〟とは言い難い。
「ネルが仕掛けを見つけまして、起動したらこれが……」
「これは転移の門です」
「なんだと!?」
「彼が先に入ったところ、最高階層に繋がっていたそうです」
「な、なんということだ……!」
「……向かいますか?」
「愚問だな! 当然だろう!」
「ですよね……」
聞いた自分が馬鹿だった、とロッティは頭を悩ます。なんとしても結果を出したいユージーンならば、二つ返事で「行く」というのは目に見えていた。
ダンジョンは階層が増えるごとに、敵のレベルも強くなっていく。最高階層ともなれば、待ち構えているのはこのダンジョンを支配しているボスだ。
〝以前〟のロッティであれば、最高階層に向かおうとするユージーンを、なんとしてでも止めただろう。
呆れる程度で済んでいるのは、やはり例の人物との〝契約〟が存在するからなのか。
「しかし、奴はよく戻ってこれたな」
「けっ、気配遮断スキルがあるみたいですよ!?」
「ほう? よく分からんが……まあいい! 行くぞ!」
しっかりと眠って元気たっぷりのユージーンは、意気揚々と門をくぐる。どんな危険があるかなんて知りもしないのに。
彼の中では危険よりも、最高階層に到達したという名誉を得る未来だけしかない。
門の奥は薄暗く、ぼんやりと蝋燭の光が階層内を照らしていた。薄い明かりの中で見えるのは、少し劣化した祭壇。
そしてその前には、巨大な鬼のような化け物が眠っている。数メートル、十数メートルあるであろう巨体は、地鳴りにも近い大きないびきをかいて寝ていた。
微かに見えるのは鎖に繋がれている足だ。このダンジョンに拘束するためのものだ。それは人間から与えられたものではなく、魔王によるもの。
ダンジョンのボスであろうとも、魔王の支配を受けているのだ。
「あ、あれは起こしたら駄目なやつよね……」
「探索するにしても、静かが、いちばん」
「わ、わかっている……!」
ひそひそと声を荒らげないように、小さな声で会話をする。ステータスを閲覧できなくとも、最終階層のボスなんて歯が立たないのは分かり切っていることだ。
出来るだけ音を抑えて、この階層の調査に徹する。
ボスを避けるために大回りで階層内を歩く。祭壇も劣化していることから、道もよくはない。石畳は亀裂を生じていたり、段差があったりと歩くのが困難な場所もある。
薄暗い中、足元に注意を配りながら、五人はそっと歩く――のだが。
べちゃり、とユージーンが石畳の段差に躓き、顔面から倒れてしまったのだ。
「ギャッ! くそっ、何でこんなに道が悪いんだ! 祭壇があるならば整えておけ!」
「ちょっ、ばか!」
「はあ……」
怯えながらゆっくりと視線を向ける。ロッティの目には祭壇が映り、戦闘態勢のボスはいなかった。
〝何もいない〟ことで、ロッティは一先ず安心する。
「よかった~、いない……」
「いないだと!?」
「さっき、寝てた。いない、おかしい」
「……あ」
しっかり者のロッティでも、未踏の地である最上階層であるならば冷静さを欠くのも仕方のないこと。
〝居たはずのもの〟が〝いなくなって〟ホッとするなんて、いつもならばありえない。
安心しきっていたロッティは、ネルに注意されて顔面蒼白になる。
『――騒がしいのう!』
ロッティが何か行動を起こす前に、その声は響いた。
階層全体がビリビリと震え、立っているのが困難なほど。実際にユージーンは揺れる足元で立ち続けていることが出来ず、尻もちをついてしまっている。
ネルはなんとか保っているが、後方支援タイプのロッティは足腰が強いとは言えないため、座り込んでしまっている。
もっとも、ロッティは恐怖から足がすくんでしまったこともある。
巨大な鬼はいつの間にか棍棒を手にしており、得意げに振り回している。
ブオンブオンと風を斬る音が、その棍棒の大きさを良く伝えてくる。
「ひ、ひぃぃいぃ!」
「くっ……!」
『気持ちのいい眠りだったというのに! だが人間を見るのは初めてだ! 褒めてやろう! どれ、挨拶代わりだ!』
興奮も相まって、容赦なく武器を振り下ろした。巨体で大きな武器を振り回しているというのに、その速度は対応できるものではなかった。
ロッティはギュッと目を瞑り、死を待った。ユージーンは汚く泣き叫ぶ。
「ぎゃああああ!」
「ああ……こんなとこで、馬鹿と死ぬなんて……」
「……きっと、大丈夫」
「ネル……?」
ネルが言うとの同時に金属同士が激しくぶつかり合うような音がして、ロッティは恐る恐る上を見た。
振りかぶっていたはずのボスはよろめき、攻撃は弾かれ防がれている。
「……え!?」
「はじかれた」
「なんだと!?」
『なっ……!? 儂の攻撃を防いだだと!?』
上空から、黒い影が落ちる。タンタンッと天井や壁を蹴ったそれは、最終的にアリスの目の前に着地した。
着地したことで、アリスとリーベ以外のメンバーはやっとその存在を視認できた。
漆黒に統一された――フリルのあしらわれたワンピースのような衣装に、視界の悪そうな髪型。十代半ばくらいの少女は、アリスの足元に跪いている。
「アリス様。勝手に手を出してしまったことを、お詫び申し上げます。大変申し訳ありません」
「んーん、いるのは分かってたよ」
「えっ、そうなのですか。母上」
「最初の探知で引っ掛かってね。だから〈転移門〉で逃げたんだけど、まぁベルの機動力なら関係ないもんね」
「はい。エンプティより命令を受け、密かに監視しておりました。異世界であることから、絶対にアリス様に危険が及ばぬようにしろ――と」
アリスが敗北しないのは誰もが知っていること。だがそれでもなお、エンプティはまだ心配してくれる。
ここまで来るとなんだか健気で可愛らしく感じてしまう。――もっとも、アリスにとって〝子供達〟はみんな可愛いものなのだが。
「でもまぁ、あの子は本当に心配性だね」
「エンプティだけではありません。私がこの仕事を受けたのも、アリス様を案じてのことです。ハインツも誰もが心配しておりますよ」
『おい! 貴様たち! 一体何の話をしておるのだ! どうやって儂の攻撃を防いだ!?』
「あぁ、またせてたね。リーベ、男の対処を任せていい? 必要とあらば殺害も許可するから」
「お任せ下さい、母上」
「なるべくすぐ終わらせるよ」
アリスとリーベはそれぞれ分かれて、自身の仕事に向き合う。アリスは情報収集、リーベはパーティーの処理だ。
鬼は真面目なのか、律儀にアリスを待っていた。変身前のヒーローを攻撃しない子供番組の敵のようなものかと思ったが、純粋に自身の力が少女に負けるはずがないと信じて疑わないだけだろう。
ダンジョンのボスであればアリスの正体にも気付きそうなものだが、勇者ですらその変身に気付け無いほどアリスの変化は巧妙なものだ。
「さて、お待たせ~」
『ふざけているのか、貴様!』
「大真面目だよ。――ちなみに、魔王がここを監視してるってことは、ある?」
『ここは最も人の街に近い塔であり、ダンジョンでも弱い方だ。いつでも切り捨てられる場所。…………監視する術は限られておるし、監視などしておらん』
「そう、良かった」
アリスは楽しそうに笑うと、力を込めた。
アリスの周囲は禍々しい瘴気で包まれ、全身が見えなくなるほどそれらは彼女を覆った。
瘴気に共鳴しているのか、地鳴りが響き渡り周囲が少しだけ崩れる。
アリスを包み込んでいたものは、一気に晴れた。霧散していく瘴気のなか現れたのは、金髪碧眼の町娘ではなく、いつもの魔王アリスだった。
『な、なんだ、これは……! この未知なる力は一体……!?』
「私は魔王。アリス・ヴェル・トレラント。少しばかり話をしよう」
『魔王、だと……!? そんな、有り得るはずがない! あの御方以外の存在など……!』
「私はここの世界の魔王ではない。だが、いずれここの世界の魔王になる者だ。今の魔王を殺して、その椅子に座る」
『な、なんと不敬な……!』
口では嫌悪を表しているものの、最初のように襲いかかる様子もない。アリスが正体を見せたことで、その実力を実感したのだろう。
具体的な数値までは見抜けないが、本能で〝戦ってはならない〟と判断したのだ。
「さて、聞きたいことがあるんだ」
『……情報ならば売らん。これでも――見捨てられていようと、あの方についていくと決めた。殺すなら殺せ』
「このダンジョンの仕組みもか? 何故ボスを殺さないと、下層の魔物が復活する?」
『……なに?』
「私の世界では別の者を再配置か、蘇生させなければならない。勝手に復活してくれるならば、それに越したことはない」
鬼はアリスからの言葉を受けて、文化の違いに驚かされた。
――デュインズの魔王は忙しい。だから何度もこのダンジョンの様子を確認することなんてしない。だからこそボスが耐えれば復活できる魔術が、ここで役に立っているのだ。
アリスの話を聞いた限りでは、彼女が頻繁に部下の様子を見ているように聞こえて驚いている。
これはアリスが元人間ゆえのことなのだが、そんなこと鬼が知る由もない。
『〈輪廻の唄〉を知らぬのか?』
「なにそれ?」
『最高位魔術だ。どちらかと言うと呪いに近い』
「へー! 便利そう! やって見せて!」
『ダンジョンに付与されたのは魔王様だ。儂には使えん』
「ちぇーっ、じゃあいいや」
「んがっ!?」
「起きてください! 凄いものを見つけました!」
「な、なんだ!?」
ロッティは普段ならば考えられぬほどの興奮気味で、熟睡していたユージーンを叩き起こした。あのユージーンですら驚いてしまうほど、その姿は意外だ。
ユージーンは驚愕のあまり飛び起きて、素直にロッティのあとについていく。
連れて行かれた先には、祠があった。それ以前に、祠の前にはあり得ないものが存在していた。
来たときにはなかったはずの、門があるのだ。
非常に作り込まれた上質な門は、たった一晩で生成できるものではない。どことなく禍々しさも帯びているそれは、〝良いもの〟とは言い難い。
「ネルが仕掛けを見つけまして、起動したらこれが……」
「これは転移の門です」
「なんだと!?」
「彼が先に入ったところ、最高階層に繋がっていたそうです」
「な、なんということだ……!」
「……向かいますか?」
「愚問だな! 当然だろう!」
「ですよね……」
聞いた自分が馬鹿だった、とロッティは頭を悩ます。なんとしても結果を出したいユージーンならば、二つ返事で「行く」というのは目に見えていた。
ダンジョンは階層が増えるごとに、敵のレベルも強くなっていく。最高階層ともなれば、待ち構えているのはこのダンジョンを支配しているボスだ。
〝以前〟のロッティであれば、最高階層に向かおうとするユージーンを、なんとしてでも止めただろう。
呆れる程度で済んでいるのは、やはり例の人物との〝契約〟が存在するからなのか。
「しかし、奴はよく戻ってこれたな」
「けっ、気配遮断スキルがあるみたいですよ!?」
「ほう? よく分からんが……まあいい! 行くぞ!」
しっかりと眠って元気たっぷりのユージーンは、意気揚々と門をくぐる。どんな危険があるかなんて知りもしないのに。
彼の中では危険よりも、最高階層に到達したという名誉を得る未来だけしかない。
門の奥は薄暗く、ぼんやりと蝋燭の光が階層内を照らしていた。薄い明かりの中で見えるのは、少し劣化した祭壇。
そしてその前には、巨大な鬼のような化け物が眠っている。数メートル、十数メートルあるであろう巨体は、地鳴りにも近い大きないびきをかいて寝ていた。
微かに見えるのは鎖に繋がれている足だ。このダンジョンに拘束するためのものだ。それは人間から与えられたものではなく、魔王によるもの。
ダンジョンのボスであろうとも、魔王の支配を受けているのだ。
「あ、あれは起こしたら駄目なやつよね……」
「探索するにしても、静かが、いちばん」
「わ、わかっている……!」
ひそひそと声を荒らげないように、小さな声で会話をする。ステータスを閲覧できなくとも、最終階層のボスなんて歯が立たないのは分かり切っていることだ。
出来るだけ音を抑えて、この階層の調査に徹する。
ボスを避けるために大回りで階層内を歩く。祭壇も劣化していることから、道もよくはない。石畳は亀裂を生じていたり、段差があったりと歩くのが困難な場所もある。
薄暗い中、足元に注意を配りながら、五人はそっと歩く――のだが。
べちゃり、とユージーンが石畳の段差に躓き、顔面から倒れてしまったのだ。
「ギャッ! くそっ、何でこんなに道が悪いんだ! 祭壇があるならば整えておけ!」
「ちょっ、ばか!」
「はあ……」
怯えながらゆっくりと視線を向ける。ロッティの目には祭壇が映り、戦闘態勢のボスはいなかった。
〝何もいない〟ことで、ロッティは一先ず安心する。
「よかった~、いない……」
「いないだと!?」
「さっき、寝てた。いない、おかしい」
「……あ」
しっかり者のロッティでも、未踏の地である最上階層であるならば冷静さを欠くのも仕方のないこと。
〝居たはずのもの〟が〝いなくなって〟ホッとするなんて、いつもならばありえない。
安心しきっていたロッティは、ネルに注意されて顔面蒼白になる。
『――騒がしいのう!』
ロッティが何か行動を起こす前に、その声は響いた。
階層全体がビリビリと震え、立っているのが困難なほど。実際にユージーンは揺れる足元で立ち続けていることが出来ず、尻もちをついてしまっている。
ネルはなんとか保っているが、後方支援タイプのロッティは足腰が強いとは言えないため、座り込んでしまっている。
もっとも、ロッティは恐怖から足がすくんでしまったこともある。
巨大な鬼はいつの間にか棍棒を手にしており、得意げに振り回している。
ブオンブオンと風を斬る音が、その棍棒の大きさを良く伝えてくる。
「ひ、ひぃぃいぃ!」
「くっ……!」
『気持ちのいい眠りだったというのに! だが人間を見るのは初めてだ! 褒めてやろう! どれ、挨拶代わりだ!』
興奮も相まって、容赦なく武器を振り下ろした。巨体で大きな武器を振り回しているというのに、その速度は対応できるものではなかった。
ロッティはギュッと目を瞑り、死を待った。ユージーンは汚く泣き叫ぶ。
「ぎゃああああ!」
「ああ……こんなとこで、馬鹿と死ぬなんて……」
「……きっと、大丈夫」
「ネル……?」
ネルが言うとの同時に金属同士が激しくぶつかり合うような音がして、ロッティは恐る恐る上を見た。
振りかぶっていたはずのボスはよろめき、攻撃は弾かれ防がれている。
「……え!?」
「はじかれた」
「なんだと!?」
『なっ……!? 儂の攻撃を防いだだと!?』
上空から、黒い影が落ちる。タンタンッと天井や壁を蹴ったそれは、最終的にアリスの目の前に着地した。
着地したことで、アリスとリーベ以外のメンバーはやっとその存在を視認できた。
漆黒に統一された――フリルのあしらわれたワンピースのような衣装に、視界の悪そうな髪型。十代半ばくらいの少女は、アリスの足元に跪いている。
「アリス様。勝手に手を出してしまったことを、お詫び申し上げます。大変申し訳ありません」
「んーん、いるのは分かってたよ」
「えっ、そうなのですか。母上」
「最初の探知で引っ掛かってね。だから〈転移門〉で逃げたんだけど、まぁベルの機動力なら関係ないもんね」
「はい。エンプティより命令を受け、密かに監視しておりました。異世界であることから、絶対にアリス様に危険が及ばぬようにしろ――と」
アリスが敗北しないのは誰もが知っていること。だがそれでもなお、エンプティはまだ心配してくれる。
ここまで来るとなんだか健気で可愛らしく感じてしまう。――もっとも、アリスにとって〝子供達〟はみんな可愛いものなのだが。
「でもまぁ、あの子は本当に心配性だね」
「エンプティだけではありません。私がこの仕事を受けたのも、アリス様を案じてのことです。ハインツも誰もが心配しておりますよ」
『おい! 貴様たち! 一体何の話をしておるのだ! どうやって儂の攻撃を防いだ!?』
「あぁ、またせてたね。リーベ、男の対処を任せていい? 必要とあらば殺害も許可するから」
「お任せ下さい、母上」
「なるべくすぐ終わらせるよ」
アリスとリーベはそれぞれ分かれて、自身の仕事に向き合う。アリスは情報収集、リーベはパーティーの処理だ。
鬼は真面目なのか、律儀にアリスを待っていた。変身前のヒーローを攻撃しない子供番組の敵のようなものかと思ったが、純粋に自身の力が少女に負けるはずがないと信じて疑わないだけだろう。
ダンジョンのボスであればアリスの正体にも気付きそうなものだが、勇者ですらその変身に気付け無いほどアリスの変化は巧妙なものだ。
「さて、お待たせ~」
『ふざけているのか、貴様!』
「大真面目だよ。――ちなみに、魔王がここを監視してるってことは、ある?」
『ここは最も人の街に近い塔であり、ダンジョンでも弱い方だ。いつでも切り捨てられる場所。…………監視する術は限られておるし、監視などしておらん』
「そう、良かった」
アリスは楽しそうに笑うと、力を込めた。
アリスの周囲は禍々しい瘴気で包まれ、全身が見えなくなるほどそれらは彼女を覆った。
瘴気に共鳴しているのか、地鳴りが響き渡り周囲が少しだけ崩れる。
アリスを包み込んでいたものは、一気に晴れた。霧散していく瘴気のなか現れたのは、金髪碧眼の町娘ではなく、いつもの魔王アリスだった。
『な、なんだ、これは……! この未知なる力は一体……!?』
「私は魔王。アリス・ヴェル・トレラント。少しばかり話をしよう」
『魔王、だと……!? そんな、有り得るはずがない! あの御方以外の存在など……!』
「私はここの世界の魔王ではない。だが、いずれここの世界の魔王になる者だ。今の魔王を殺して、その椅子に座る」
『な、なんと不敬な……!』
口では嫌悪を表しているものの、最初のように襲いかかる様子もない。アリスが正体を見せたことで、その実力を実感したのだろう。
具体的な数値までは見抜けないが、本能で〝戦ってはならない〟と判断したのだ。
「さて、聞きたいことがあるんだ」
『……情報ならば売らん。これでも――見捨てられていようと、あの方についていくと決めた。殺すなら殺せ』
「このダンジョンの仕組みもか? 何故ボスを殺さないと、下層の魔物が復活する?」
『……なに?』
「私の世界では別の者を再配置か、蘇生させなければならない。勝手に復活してくれるならば、それに越したことはない」
鬼はアリスからの言葉を受けて、文化の違いに驚かされた。
――デュインズの魔王は忙しい。だから何度もこのダンジョンの様子を確認することなんてしない。だからこそボスが耐えれば復活できる魔術が、ここで役に立っているのだ。
アリスの話を聞いた限りでは、彼女が頻繁に部下の様子を見ているように聞こえて驚いている。
これはアリスが元人間ゆえのことなのだが、そんなこと鬼が知る由もない。
『〈輪廻の唄〉を知らぬのか?』
「なにそれ?」
『最高位魔術だ。どちらかと言うと呪いに近い』
「へー! 便利そう! やって見せて!」
『ダンジョンに付与されたのは魔王様だ。儂には使えん』
「ちぇーっ、じゃあいいや」
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