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scene.6 アヴリルの純心 03.
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── 五日目 / 安全保障省 本館 大元帥執務室 09:05
訓練や実際の戦闘などの現場以外に、戦闘後の報告書や戦闘員の評価査定、会議の資料作成などのため、机で仕事をすることも多いアヴリルは、午前中をその時間に当て、執務室で書類を書いていた。しかし、いま書いているものは五日前の「顛末書」と「始末書」であり、なかなかペンが進まない。
その時扉がノックされ、戦闘員が二名執務室に入って来た。
「失礼します。大元帥さま、午後……」
戦闘員二名は、伝えようとしていた内容を忘れたかのように、黙ったまま立ち尽くしている。
「どうしました、何か用件があったのでは」
「あ……はい、あの、午後からの訓練ですが」
「わたしはまだ動けないので、大天使長に頼んでありますが」
「あ、そう、ですか、あの、大元帥さまは……?」
「放っておくのも心配なので、立ち会いはします」
「かしこまりました、あの……」
「なんでしょう」
「……いえ、失礼します」
執務室から出た戦闘員ふたりは、お互いの顔を見合わせた。
「……どうしたんだろうか」
「いや、わからん……」
「さすがに訊き難いな……」
「触らぬなんとかに祟りなしだろ……」
───
── 五日目 / 神々の塔 内 ミネルヴァ執務室 11:55
戦の女神ミネルヴァの執務室では、顛末書と始末書を机に並べ、アヴリルを眺めながら何かを言いたそうにしてはいるものの、黙ったままのミネルヴァの姿があった。
「この度はご迷惑とご心配をお掛けしまして、申し訳ありません」
「……あ、いえ、そうね、それはそうとして、からだの具合はどうなの?」
「まだ戦闘には加われませんが、日常生活は問題なく」
「そう、それは安心だけど……」
「書類に不備などありますでしょうか」
「こういうのは形式的なものだから、内容がわかればいいんだけど……」
「そうですか、では失礼いたします」
「ああ、アヴリルこれ」
ミネルヴァに呼び止められ、アヴリルは差し出された書類を受け取った。
「これは?」
「労災の請求書よ。提出してもらわないと労働省がうるさいから」
「かしこまりました、では失礼いたします」
書類を受け取り、アヴリルはミネルヴァの執務室をあとにした。
「……何か、あったのかしら」
ミネルヴァもまた、「触らぬなんとかに祟りなし……」と黙ってアヴリルを見送った。
───
── 五日目 / 労働省 本館 総合窓口 12:34
労働省の本館にある労働基準局へ、依頼してあった調書の受け取りに来たミシャは、総合窓口で立ち尽くしたままの天使を見て、訝し気に声を掛けた。
「こんな所で突っ立ったまま、どうかしたんです?」
「いえ、待っててくれと言われたので待っているのですが」
「それなら待ってても来ませんよ、これだけ混雑してますし」
「そういうものなんですか」
「優先度の低い用事は後に回されますから。ちなみにどういった用件で?」
「労災の請求書を提出しろと言われたのですが、書式がわからなかったので」
「ああ、わたしわかりますから、そっちのテーブルで」
ふたりは場所を移し、ミシャは書類を見ながらテキパキと記入事項を促した。こういう書類って、あんまりお目に掛かるものじゃないからわかり難いわよねえ、と記入されて行く内容を見て、ペンを動かす者の顔を確認する。
「……もしかして大元帥さま!?」
「はい、どうされました?」
「どうしちゃったの!? その髪」
「短いほうを見てない、と仰ったので」
「え、確かに言ったけど、それで切っちゃったの!?」
「そうですが、そこまで驚きますか」
「別人じゃない……」
腰まであった灰茶の絹のような髪は、見事なショートヘアへと変貌を遂げ、少し長めに残した前髪の隙間から、濃緑と薄茶の混ざるヘーゼルの瞳を覗かせる。黒い制服に身を包んだ姿からは、からかわれて動揺していたところなど想像すらできず、ひたすら眉目秀麗な軍人にしか見えないアヴリルがそこにいた。
「なんだかルフェルや司法長官側に行っちゃったみたいな……」
「それはどういう方向なんですか」
「こう、自分に自信しかないような」
「あれだけ自信があれば、こんなに悩んでいませんよ」
「大元帥さま、何か悩んでるの?」
「そうですね、悩んでます」
「なになに? どんなこと?」
アヴリルは小さく溜息を吐き、お時間があるなら場所を変えませんか、とミシャに言った。 "他人の不幸は蜜の味" を座右の銘にしているミシャは、当然場所を移すことに同意する。
───
── 五日目 / 大天使長の破壊した庭園(復旧作業中) 13:15
「……で? 何を悩んでるの?」
着々と復旧作業が進み、元の美しい姿を取り戻すまであと少し、というエデンの南にある小さな庭園のベンチに座り、ミシャは楽しそうにアヴリルに訊いた。
「その前に、どっちが好きですか」
「眉目秀麗この上ないので、モテモテでしょうね」
「他の方のことはいいので、ミシャさんはどっちが好きですか」
ミシャはあらためてアヴリルを眺めた。短く揃えた髪のせいか、小さな頭に小さな顔はより等身を高く見せ、覆うもののなくなった顔は、はっきりとその輪郭をあらわにしている。広い肩幅は制服のせいか男らしさを増しているようにも見え、禁欲的でありながら、優しい目元が意外性を煽る。
「短いほうが、そそるわねえ」
「そそ……え?」
「あら、言葉の選び方を間違えたかしら」
「いえ、あの、それはどういう意味でしょうか」
「 "興味を持ち、何かをしたい気持ちが刺激される" 、という意味だけど」
「 "そそる" の意味を知りたいわけではないのですが」
「でもそのまんまよ、短いほうがそそるわ」
「少しは興味を持っていただけた、ということでしょうか」
「少しどころか、興味津々だけど?」
きっと話が嚙み合ってない、と思ったアヴリルは、「訓練に顔を出して来ます」と言い残し、庭園をあとにした。残されたミシャは、やっぱり言葉の選び方を間違えたかしら……そそるじゃなくて……興奮する? 駆り立てる? 高揚する? 煽情的? 挑発的? 誘われる? あ、惹かれるかしら……と、色々考えていた。
───
── 五日目 / 診療所 診察室 18:45
「熱も出てないようですし、経過は順調ですね」
アヴリルを診察したエアリエルは安心したように言った。その言葉とは裏腹に、少々浮かない顔をしたアヴリルは、診察室で大きな溜息を吐き、エアリエルとフィールを不安にさせる。
「何かあったんですか? 大元帥さま」
「どっちが好きか訊ねたのですが」
「……た、溜息を吐かれるようなことを?」
「いえ、 "短いほうが、そそるわねえ" と」
「ああ、それは確かに、そうですね」
「 えっ 」
「男っぽさが前面に出ましたよね!」
「そそるって、好意的な言葉なのでしょうか」
「悪意や敵意を感じます?」
「そうではありませんが、好意というよりは好奇心のような」
……相手がミシャなだけにそこは否定できない、とエアリエルもフィールも目を逸らした。しかし大元帥さま、ミシャに対する恋心が駄々漏れですよ、とエアリエルもフィールもわずかに心配した。
「訓練中にまた考えごとをされるのも危険ですので、本人にお伝えになればいかがです?」
「何をですか?」
「ご自分のお気持ちを」
「あの、それはどういう意味でしょうか」
「……畏れながら大元帥さま、ミシャに対する恋心が、そこかしこにあふれておられますが」
「…………恋……です…か?」
……まさかこっちも鈍い方なの!?
恋……とつぶやきながら、ふらふらと診察室を出て行くアヴリルの後ろ姿を見ながら、エアリエルとフィールは前途多難だな、と思った。
───
── 六日目 / 神々の塔 内 裁きの間 14:05
「死罪」 「死罪」 「死罪」
「残念だがおまえをアビスへ追放することが決まった」
裁きの間では「人間殺し」の罪により正にいま裁きを受けた天使がいた。法の女神ユスティア、罰の女神ミーシス、死の女神フィオナはそれぞれ死罪を言い渡し、この天使は奈落へと追放され、堕天使となる。
そして罪人の水晶が裁きの間に運び込まれた時に事件は起こった。
今回のお裁きは証拠集めもつうつうやったし、審理もぼちぼち、楽さしてもうたなあ、と隣の部屋で資料を片付けていたユリエルは、裁きの間が騒めいたことに慌てて飛び出して来た。念のために、と同席させた法務部の職員は床で倒れ、神々を仰ぐと苦虫を嚙み潰したような顔をしている。
死罪が確定している場合、水晶は神々の真横の扉から運び入れられるため、混乱を来した罪人が逃げ出しても水晶を砕かれ追放は滞りなく終わる。しかし、いまこの状況を鑑みるに、ここに水晶はなく職員は伸びている。神さんの御前で水晶強奪するあほうがおるとは……ユリエルは目の前が暗くなった気がした。
「伝令の天使呼んでや、各省に通達」
「……ユリエル、一刻も早くひっ捕らえろ」
「へえ」
ユスティアの視線が痛い、と思いながらユリエルは走った。
───
── 六日目 / 神々の塔 出入口 14:50
神々の塔の出入口まで行くと、ルフェルやサリエル、フィール、アヴリルたちも集まって来た。
「どういうことだ」
「逃げられましてん」
「……おまえがいながら?」
「目ぇ離してましてん……水晶持って逃げよるとは思わ」
「神々の前で 水晶を 奪われて 逃げられた、と」
「ほんますんまへん」
すると外が一瞬騒がしくなり、その騒めきはすぐにおさまった。慌てて外に出ると、召喚した剣を振り回し、暴れている者と、その左手にしっかりと掴まれている天使の姿が飛び込んで来た。
「……よりにもよって、そないえげつない展開にしやんでも…」
「ミシャ……さん」
ルフェルの苛立ちと、アヴリルの焦燥と、フィールの心配を一身に背負い、ユリエルはいま目の前の罪人より罪人らしくうなだれていた。
「話を聞こうか」
ルフェルが罪人とミシャに近付きながら言うと、罪人は嗤いながら答えた。
「話すことなんか何もない。手土産をひとつ持って行く約束をしてるだけだ」
「……手土産?」
「堕天する時に、穢れのない魂をひとつ連れて行く」
「なるほど、それで座り心地のいい椅子が待っている、と」
ユリエルとアヴリル、サリエルがルフェルのそばまで来ると、罪人は「それ以上近寄るな」と言いながら、ミシャの頬に剣を添える。剣……諸刃やさかい、取り扱いに気ぃ付けてくれますやろか……無理やろな……
「あない近くにおったら魔法も撃てへん……」
「同じく、邪視も使えませんね」
「斬撃波も撃てんうえに、斬り込むには……距離があるな」
飛べば間に合う……しかし剣をかわして飛ぶとなると、到達点が高くなる。滞空時間が長くなるのはこの状況では悪手だ。一瞬でいい、何とか気を逸らせんものか……ルフェルが思案していると、何となく事情を察したミシャが言った。
「気にしなくていいから、危ないことしないで」
「いまから堕天するってのに、余裕だなおまえ」
「うるさいわね、これで最後なら好きにさせてもらうわよ」
罪人の持つ剣がミシャの頬をかすめた瞬間。
── 罪人は崩れ落ち、ミシャはアヴリルの腕の中にいた。
「……この距離からこめかみ狙うて、どないやねん」と、ユリエルが驚いたように言うと、
「きれいに爪先入りましたね」と、サリエルは感心し、
「罪人確保、撤収」と、ルフェルは総合情報局へ戻って行った。
ユリエルは胸をなでおろしつつ、始末書もんやろな……と、裁きの間へと足取り重く戻った。
「どうしたの、大元帥さま」
アヴリルはミシャを抱き締めたまま、小さく震えていた。
「……生きた心地が……しませんでした……」
「だからって、またそんな無茶なことを……」
「……どこにも……行かないでください」
「どこにも行かないけど、どういう意味?」
「……好きなので」
「好きなの……えっ!?」
「ミシャさんが、好きなので」
「……大元帥さまが?」
「……はい」
「わたしを?」
「……はい」
「…………じゃあ、ひとつお願いを聞いてくれる?」
「……なんでしょう」
「左足……怪我してるみたいだから診療所行きましょう」
───
── 六日目 / 診療所 処置室 15:38
「また随分とザックリ……」
エアリエルは傷口を確かめながら眉をひそめた。
「すみません、他に方法がなかったので」
「謝る必要はありませんが、カルテに記載するために理由を」
「からだが反応してしまったので」
「もう少し具体的にお願いできますか」
「邪魔だったので、左足で剣を払ったのだと思います」
「大元帥さま、できれば、からだで武器を阻止するのは控えられたほうが……」
「そうですね、気を付けます」
── 六日目 / 診療所 待合室 15:38
「ミシャ、少し頬切れてるから手当てを」
「ああ、大丈夫よこれくらい」
「……ねえ、本当に連れて行かれたら、どうするつもりだったの?」
「その時はアビスをシメるしかないでしょ」
「あなたが言うと冗談に聞こえないわ……」
「本気よ? わたしのために誰かが傷付くなんて、"正義" の称号が聞いて呆れるわ」
「そうは言うけど、大天使長さまも大元帥さまも……その……ああいう方だから……」
「そうね……さすがにあの状況で飛ぶとは思わなかったけど」
「それだけ必死だったということでしょ」
「必死……ねえ……」
ミシャはしばらく何かを考えるように、待合室の窓から黙って空を眺めていた。あの時飛び込んで来たのがルフェルだったら、きっと "あら、ありがとう" で終わってるわよね……それで怪我をすれば、当然心配だし怒りもするけど……悲しくなったりはしない、かしら……いえ、悲しいわけじゃなくて、なんていうか……
「ねえフィール、悲しいでも寂しいでもないんだけど、胸がざわつくことって何ていうの?」
「苦しい……とか? つらい、侘しい、切ない」
「うーん……いまのところ、切ないが一番しっくり来るような」
「どういう状態のことを言ってるのかわからないから、何とも言えないけれど」
「まあ、いまの状態なんだけど」
処置室から、お手数をお掛けしました、とアヴリルが出て来たのを見て、ミシャの瞳が少し緩んだ。そのミシャを見ながらフィールは、ふふっと笑い小声でつぶやいた。
「恋しい、かしら」
── 恋しい
「せっかく司法長官に、胸の傷、治してもらったところなのに」
「そうですね、もう少し高めに飛ぶべきでした」
「飛んじゃいけない、という話をしてるのよ」
「からだが反応してしまったので」
「あら、そう、へえ、じゃあしょうがないわね」
「ミシャさん、もしかして怒ってます?」
「もしかして、怒ってないように見えます?」
「いえ、しっかり怒っているように見えますが」
「……大元帥さま、ひとつ約束してちょうだい」
「なんでしょう」
「自分のからだも、もっと大事にしてくれる?」
「それは、時と場合によります」
「もしものときに困るので、大事にしてください」
「困りますか?」
「困ります」
「ちなみに、何が困るんでしょう」
「アヴリルにもしものことがあったら、ひとりで残されるわたしが困るでしょう?」
「……そういう……意味ですか」
「足なんか怪我しちゃったら歩くのも大変じゃない」とミシャが言うと、「それは大丈夫です」とアヴリルは翼を広げる。「変幻可能なので」と言いながら、白く大きな六枚の翼を羽ばたかせ、「まるで天使みたいね」と笑うミシャに、「暴れん坊ですけどね」とアヴリルは少し申し訳なさそうな顔をした。
「危険な時にしか、からだは反応しないの?」
「叩き込まれているというか、沁み付いているようなものですから」
「……叩き込まないと駄目ってことかしら」
「何の話です?」
ミシャはアヴリルの首に手を伸ばし、少し宙に浮いているそのからだを引き寄せると、しっかり抱き締めながら「こういう話」と囁いた。硬直したまま、思考が停止していることを確認したアヴリルは、精一杯考えたあとで「叩き込んでいただければ」と、優しくミシャの腰に手を回した。
鈍い男と鈍い女ではどうにもならないじゃないの、と心配していたエアリエルとフィールは、納まるべきところに納まったのかしら、と安心しつつ、「大元帥さま、きっと尻に敷かれるんでしょうね……」とアヴリルの未来を案じながら、何よりも「ここが診療所の待合室だってこと、わかってるのかしら」と、ふたりで大きな溜息を吐いた。
───
── 後日 / 大天使長の破壊した庭園(復旧作業中) 13:05
「あ、そういえば」
「どうされました?」
「 "そそる" でも間違いではないんだけど」
「そそりますか」
「興奮するし、高揚するし、駆り立てるし、煽情的で挑発的だと思ったの」
「……あの、どういう顔をすればいいのかわからないんですが」
「でもね、ピンと来たのは "惹かれる" と "恋しい" だったわ」
「…………あの、どういう顔をすればいいのか」
やっぱり、空中で急所は外せるのに、自分の急所は隠せないのねえ、とミシャはしみじみ思いながら、ベンチに腰をおろすアヴリルの顔を覗き込んだ。前髪の隙間から見える、濃緑と薄茶が混ざったヘーゼルの瞳は、瞳孔の周りを向日葵が花開いたように彩り、その眼差しをさらに優しくする。
ミシャはアヴリルの頬を両手で包み、えっ、とうろたえるそのまぶたに優しくくちづけると、頬を包んだまま瞳をもう一度覗き込み、「大好きよ」と止めを刺した。無事止めを刺されたアヴリルは耳まで赤く染まり、「……初々しいですね」と、フィールと庭師、そしてルフェルが物陰から見ていたことに、気付くことはなかった。
───
※ 司法長官ユリエルの台詞解説
つうつう:すんなり物事が進むこと/ぼちぼち:まあまあ/楽さしてもうた:楽させてもらった/そない:そんなに/えげつない:酷い/しやんでも:しなくても/やさかい:だから/あない:あんなに/どないやねん:どういうことだ
訓練や実際の戦闘などの現場以外に、戦闘後の報告書や戦闘員の評価査定、会議の資料作成などのため、机で仕事をすることも多いアヴリルは、午前中をその時間に当て、執務室で書類を書いていた。しかし、いま書いているものは五日前の「顛末書」と「始末書」であり、なかなかペンが進まない。
その時扉がノックされ、戦闘員が二名執務室に入って来た。
「失礼します。大元帥さま、午後……」
戦闘員二名は、伝えようとしていた内容を忘れたかのように、黙ったまま立ち尽くしている。
「どうしました、何か用件があったのでは」
「あ……はい、あの、午後からの訓練ですが」
「わたしはまだ動けないので、大天使長に頼んでありますが」
「あ、そう、ですか、あの、大元帥さまは……?」
「放っておくのも心配なので、立ち会いはします」
「かしこまりました、あの……」
「なんでしょう」
「……いえ、失礼します」
執務室から出た戦闘員ふたりは、お互いの顔を見合わせた。
「……どうしたんだろうか」
「いや、わからん……」
「さすがに訊き難いな……」
「触らぬなんとかに祟りなしだろ……」
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── 五日目 / 神々の塔 内 ミネルヴァ執務室 11:55
戦の女神ミネルヴァの執務室では、顛末書と始末書を机に並べ、アヴリルを眺めながら何かを言いたそうにしてはいるものの、黙ったままのミネルヴァの姿があった。
「この度はご迷惑とご心配をお掛けしまして、申し訳ありません」
「……あ、いえ、そうね、それはそうとして、からだの具合はどうなの?」
「まだ戦闘には加われませんが、日常生活は問題なく」
「そう、それは安心だけど……」
「書類に不備などありますでしょうか」
「こういうのは形式的なものだから、内容がわかればいいんだけど……」
「そうですか、では失礼いたします」
「ああ、アヴリルこれ」
ミネルヴァに呼び止められ、アヴリルは差し出された書類を受け取った。
「これは?」
「労災の請求書よ。提出してもらわないと労働省がうるさいから」
「かしこまりました、では失礼いたします」
書類を受け取り、アヴリルはミネルヴァの執務室をあとにした。
「……何か、あったのかしら」
ミネルヴァもまた、「触らぬなんとかに祟りなし……」と黙ってアヴリルを見送った。
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── 五日目 / 労働省 本館 総合窓口 12:34
労働省の本館にある労働基準局へ、依頼してあった調書の受け取りに来たミシャは、総合窓口で立ち尽くしたままの天使を見て、訝し気に声を掛けた。
「こんな所で突っ立ったまま、どうかしたんです?」
「いえ、待っててくれと言われたので待っているのですが」
「それなら待ってても来ませんよ、これだけ混雑してますし」
「そういうものなんですか」
「優先度の低い用事は後に回されますから。ちなみにどういった用件で?」
「労災の請求書を提出しろと言われたのですが、書式がわからなかったので」
「ああ、わたしわかりますから、そっちのテーブルで」
ふたりは場所を移し、ミシャは書類を見ながらテキパキと記入事項を促した。こういう書類って、あんまりお目に掛かるものじゃないからわかり難いわよねえ、と記入されて行く内容を見て、ペンを動かす者の顔を確認する。
「……もしかして大元帥さま!?」
「はい、どうされました?」
「どうしちゃったの!? その髪」
「短いほうを見てない、と仰ったので」
「え、確かに言ったけど、それで切っちゃったの!?」
「そうですが、そこまで驚きますか」
「別人じゃない……」
腰まであった灰茶の絹のような髪は、見事なショートヘアへと変貌を遂げ、少し長めに残した前髪の隙間から、濃緑と薄茶の混ざるヘーゼルの瞳を覗かせる。黒い制服に身を包んだ姿からは、からかわれて動揺していたところなど想像すらできず、ひたすら眉目秀麗な軍人にしか見えないアヴリルがそこにいた。
「なんだかルフェルや司法長官側に行っちゃったみたいな……」
「それはどういう方向なんですか」
「こう、自分に自信しかないような」
「あれだけ自信があれば、こんなに悩んでいませんよ」
「大元帥さま、何か悩んでるの?」
「そうですね、悩んでます」
「なになに? どんなこと?」
アヴリルは小さく溜息を吐き、お時間があるなら場所を変えませんか、とミシャに言った。 "他人の不幸は蜜の味" を座右の銘にしているミシャは、当然場所を移すことに同意する。
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── 五日目 / 大天使長の破壊した庭園(復旧作業中) 13:15
「……で? 何を悩んでるの?」
着々と復旧作業が進み、元の美しい姿を取り戻すまであと少し、というエデンの南にある小さな庭園のベンチに座り、ミシャは楽しそうにアヴリルに訊いた。
「その前に、どっちが好きですか」
「眉目秀麗この上ないので、モテモテでしょうね」
「他の方のことはいいので、ミシャさんはどっちが好きですか」
ミシャはあらためてアヴリルを眺めた。短く揃えた髪のせいか、小さな頭に小さな顔はより等身を高く見せ、覆うもののなくなった顔は、はっきりとその輪郭をあらわにしている。広い肩幅は制服のせいか男らしさを増しているようにも見え、禁欲的でありながら、優しい目元が意外性を煽る。
「短いほうが、そそるわねえ」
「そそ……え?」
「あら、言葉の選び方を間違えたかしら」
「いえ、あの、それはどういう意味でしょうか」
「 "興味を持ち、何かをしたい気持ちが刺激される" 、という意味だけど」
「 "そそる" の意味を知りたいわけではないのですが」
「でもそのまんまよ、短いほうがそそるわ」
「少しは興味を持っていただけた、ということでしょうか」
「少しどころか、興味津々だけど?」
きっと話が嚙み合ってない、と思ったアヴリルは、「訓練に顔を出して来ます」と言い残し、庭園をあとにした。残されたミシャは、やっぱり言葉の選び方を間違えたかしら……そそるじゃなくて……興奮する? 駆り立てる? 高揚する? 煽情的? 挑発的? 誘われる? あ、惹かれるかしら……と、色々考えていた。
───
── 五日目 / 診療所 診察室 18:45
「熱も出てないようですし、経過は順調ですね」
アヴリルを診察したエアリエルは安心したように言った。その言葉とは裏腹に、少々浮かない顔をしたアヴリルは、診察室で大きな溜息を吐き、エアリエルとフィールを不安にさせる。
「何かあったんですか? 大元帥さま」
「どっちが好きか訊ねたのですが」
「……た、溜息を吐かれるようなことを?」
「いえ、 "短いほうが、そそるわねえ" と」
「ああ、それは確かに、そうですね」
「 えっ 」
「男っぽさが前面に出ましたよね!」
「そそるって、好意的な言葉なのでしょうか」
「悪意や敵意を感じます?」
「そうではありませんが、好意というよりは好奇心のような」
……相手がミシャなだけにそこは否定できない、とエアリエルもフィールも目を逸らした。しかし大元帥さま、ミシャに対する恋心が駄々漏れですよ、とエアリエルもフィールもわずかに心配した。
「訓練中にまた考えごとをされるのも危険ですので、本人にお伝えになればいかがです?」
「何をですか?」
「ご自分のお気持ちを」
「あの、それはどういう意味でしょうか」
「……畏れながら大元帥さま、ミシャに対する恋心が、そこかしこにあふれておられますが」
「…………恋……です…か?」
……まさかこっちも鈍い方なの!?
恋……とつぶやきながら、ふらふらと診察室を出て行くアヴリルの後ろ姿を見ながら、エアリエルとフィールは前途多難だな、と思った。
───
── 六日目 / 神々の塔 内 裁きの間 14:05
「死罪」 「死罪」 「死罪」
「残念だがおまえをアビスへ追放することが決まった」
裁きの間では「人間殺し」の罪により正にいま裁きを受けた天使がいた。法の女神ユスティア、罰の女神ミーシス、死の女神フィオナはそれぞれ死罪を言い渡し、この天使は奈落へと追放され、堕天使となる。
そして罪人の水晶が裁きの間に運び込まれた時に事件は起こった。
今回のお裁きは証拠集めもつうつうやったし、審理もぼちぼち、楽さしてもうたなあ、と隣の部屋で資料を片付けていたユリエルは、裁きの間が騒めいたことに慌てて飛び出して来た。念のために、と同席させた法務部の職員は床で倒れ、神々を仰ぐと苦虫を嚙み潰したような顔をしている。
死罪が確定している場合、水晶は神々の真横の扉から運び入れられるため、混乱を来した罪人が逃げ出しても水晶を砕かれ追放は滞りなく終わる。しかし、いまこの状況を鑑みるに、ここに水晶はなく職員は伸びている。神さんの御前で水晶強奪するあほうがおるとは……ユリエルは目の前が暗くなった気がした。
「伝令の天使呼んでや、各省に通達」
「……ユリエル、一刻も早くひっ捕らえろ」
「へえ」
ユスティアの視線が痛い、と思いながらユリエルは走った。
───
── 六日目 / 神々の塔 出入口 14:50
神々の塔の出入口まで行くと、ルフェルやサリエル、フィール、アヴリルたちも集まって来た。
「どういうことだ」
「逃げられましてん」
「……おまえがいながら?」
「目ぇ離してましてん……水晶持って逃げよるとは思わ」
「神々の前で 水晶を 奪われて 逃げられた、と」
「ほんますんまへん」
すると外が一瞬騒がしくなり、その騒めきはすぐにおさまった。慌てて外に出ると、召喚した剣を振り回し、暴れている者と、その左手にしっかりと掴まれている天使の姿が飛び込んで来た。
「……よりにもよって、そないえげつない展開にしやんでも…」
「ミシャ……さん」
ルフェルの苛立ちと、アヴリルの焦燥と、フィールの心配を一身に背負い、ユリエルはいま目の前の罪人より罪人らしくうなだれていた。
「話を聞こうか」
ルフェルが罪人とミシャに近付きながら言うと、罪人は嗤いながら答えた。
「話すことなんか何もない。手土産をひとつ持って行く約束をしてるだけだ」
「……手土産?」
「堕天する時に、穢れのない魂をひとつ連れて行く」
「なるほど、それで座り心地のいい椅子が待っている、と」
ユリエルとアヴリル、サリエルがルフェルのそばまで来ると、罪人は「それ以上近寄るな」と言いながら、ミシャの頬に剣を添える。剣……諸刃やさかい、取り扱いに気ぃ付けてくれますやろか……無理やろな……
「あない近くにおったら魔法も撃てへん……」
「同じく、邪視も使えませんね」
「斬撃波も撃てんうえに、斬り込むには……距離があるな」
飛べば間に合う……しかし剣をかわして飛ぶとなると、到達点が高くなる。滞空時間が長くなるのはこの状況では悪手だ。一瞬でいい、何とか気を逸らせんものか……ルフェルが思案していると、何となく事情を察したミシャが言った。
「気にしなくていいから、危ないことしないで」
「いまから堕天するってのに、余裕だなおまえ」
「うるさいわね、これで最後なら好きにさせてもらうわよ」
罪人の持つ剣がミシャの頬をかすめた瞬間。
── 罪人は崩れ落ち、ミシャはアヴリルの腕の中にいた。
「……この距離からこめかみ狙うて、どないやねん」と、ユリエルが驚いたように言うと、
「きれいに爪先入りましたね」と、サリエルは感心し、
「罪人確保、撤収」と、ルフェルは総合情報局へ戻って行った。
ユリエルは胸をなでおろしつつ、始末書もんやろな……と、裁きの間へと足取り重く戻った。
「どうしたの、大元帥さま」
アヴリルはミシャを抱き締めたまま、小さく震えていた。
「……生きた心地が……しませんでした……」
「だからって、またそんな無茶なことを……」
「……どこにも……行かないでください」
「どこにも行かないけど、どういう意味?」
「……好きなので」
「好きなの……えっ!?」
「ミシャさんが、好きなので」
「……大元帥さまが?」
「……はい」
「わたしを?」
「……はい」
「…………じゃあ、ひとつお願いを聞いてくれる?」
「……なんでしょう」
「左足……怪我してるみたいだから診療所行きましょう」
───
── 六日目 / 診療所 処置室 15:38
「また随分とザックリ……」
エアリエルは傷口を確かめながら眉をひそめた。
「すみません、他に方法がなかったので」
「謝る必要はありませんが、カルテに記載するために理由を」
「からだが反応してしまったので」
「もう少し具体的にお願いできますか」
「邪魔だったので、左足で剣を払ったのだと思います」
「大元帥さま、できれば、からだで武器を阻止するのは控えられたほうが……」
「そうですね、気を付けます」
── 六日目 / 診療所 待合室 15:38
「ミシャ、少し頬切れてるから手当てを」
「ああ、大丈夫よこれくらい」
「……ねえ、本当に連れて行かれたら、どうするつもりだったの?」
「その時はアビスをシメるしかないでしょ」
「あなたが言うと冗談に聞こえないわ……」
「本気よ? わたしのために誰かが傷付くなんて、"正義" の称号が聞いて呆れるわ」
「そうは言うけど、大天使長さまも大元帥さまも……その……ああいう方だから……」
「そうね……さすがにあの状況で飛ぶとは思わなかったけど」
「それだけ必死だったということでしょ」
「必死……ねえ……」
ミシャはしばらく何かを考えるように、待合室の窓から黙って空を眺めていた。あの時飛び込んで来たのがルフェルだったら、きっと "あら、ありがとう" で終わってるわよね……それで怪我をすれば、当然心配だし怒りもするけど……悲しくなったりはしない、かしら……いえ、悲しいわけじゃなくて、なんていうか……
「ねえフィール、悲しいでも寂しいでもないんだけど、胸がざわつくことって何ていうの?」
「苦しい……とか? つらい、侘しい、切ない」
「うーん……いまのところ、切ないが一番しっくり来るような」
「どういう状態のことを言ってるのかわからないから、何とも言えないけれど」
「まあ、いまの状態なんだけど」
処置室から、お手数をお掛けしました、とアヴリルが出て来たのを見て、ミシャの瞳が少し緩んだ。そのミシャを見ながらフィールは、ふふっと笑い小声でつぶやいた。
「恋しい、かしら」
── 恋しい
「せっかく司法長官に、胸の傷、治してもらったところなのに」
「そうですね、もう少し高めに飛ぶべきでした」
「飛んじゃいけない、という話をしてるのよ」
「からだが反応してしまったので」
「あら、そう、へえ、じゃあしょうがないわね」
「ミシャさん、もしかして怒ってます?」
「もしかして、怒ってないように見えます?」
「いえ、しっかり怒っているように見えますが」
「……大元帥さま、ひとつ約束してちょうだい」
「なんでしょう」
「自分のからだも、もっと大事にしてくれる?」
「それは、時と場合によります」
「もしものときに困るので、大事にしてください」
「困りますか?」
「困ります」
「ちなみに、何が困るんでしょう」
「アヴリルにもしものことがあったら、ひとりで残されるわたしが困るでしょう?」
「……そういう……意味ですか」
「足なんか怪我しちゃったら歩くのも大変じゃない」とミシャが言うと、「それは大丈夫です」とアヴリルは翼を広げる。「変幻可能なので」と言いながら、白く大きな六枚の翼を羽ばたかせ、「まるで天使みたいね」と笑うミシャに、「暴れん坊ですけどね」とアヴリルは少し申し訳なさそうな顔をした。
「危険な時にしか、からだは反応しないの?」
「叩き込まれているというか、沁み付いているようなものですから」
「……叩き込まないと駄目ってことかしら」
「何の話です?」
ミシャはアヴリルの首に手を伸ばし、少し宙に浮いているそのからだを引き寄せると、しっかり抱き締めながら「こういう話」と囁いた。硬直したまま、思考が停止していることを確認したアヴリルは、精一杯考えたあとで「叩き込んでいただければ」と、優しくミシャの腰に手を回した。
鈍い男と鈍い女ではどうにもならないじゃないの、と心配していたエアリエルとフィールは、納まるべきところに納まったのかしら、と安心しつつ、「大元帥さま、きっと尻に敷かれるんでしょうね……」とアヴリルの未来を案じながら、何よりも「ここが診療所の待合室だってこと、わかってるのかしら」と、ふたりで大きな溜息を吐いた。
───
── 後日 / 大天使長の破壊した庭園(復旧作業中) 13:05
「あ、そういえば」
「どうされました?」
「 "そそる" でも間違いではないんだけど」
「そそりますか」
「興奮するし、高揚するし、駆り立てるし、煽情的で挑発的だと思ったの」
「……あの、どういう顔をすればいいのかわからないんですが」
「でもね、ピンと来たのは "惹かれる" と "恋しい" だったわ」
「…………あの、どういう顔をすればいいのか」
やっぱり、空中で急所は外せるのに、自分の急所は隠せないのねえ、とミシャはしみじみ思いながら、ベンチに腰をおろすアヴリルの顔を覗き込んだ。前髪の隙間から見える、濃緑と薄茶が混ざったヘーゼルの瞳は、瞳孔の周りを向日葵が花開いたように彩り、その眼差しをさらに優しくする。
ミシャはアヴリルの頬を両手で包み、えっ、とうろたえるそのまぶたに優しくくちづけると、頬を包んだまま瞳をもう一度覗き込み、「大好きよ」と止めを刺した。無事止めを刺されたアヴリルは耳まで赤く染まり、「……初々しいですね」と、フィールと庭師、そしてルフェルが物陰から見ていたことに、気付くことはなかった。
───
※ 司法長官ユリエルの台詞解説
つうつう:すんなり物事が進むこと/ぼちぼち:まあまあ/楽さしてもうた:楽させてもらった/そない:そんなに/えげつない:酷い/しやんでも:しなくても/やさかい:だから/あない:あんなに/どないやねん:どういうことだ
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