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一章 〜雑魚魔物使い〜
6.5話 『Gランク魔物使い必見!!トロールでも分かるスライム講座!!』
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「えぇえええ、本日はみなみなみ……皆様、お集まり頂き本当にありがとうございます……」
磨き上げられた革靴と、一目で高価だと分かる紺色のスーツ、そしてシルクハット。そんな服装をした老年の紳士が、目の前でたどたどしく話している。
彼の名前はキングさん。この講座の主催者だ。
「ねえコルリスちゃん、あの人いくらなんでも緊張し過ぎじゃない?まともに講座できるのかな?」
俺はコルリスに囁く。
「まあまあ、この講座に人が来るのは初めてらしいですから、きっと嬉しくて仕方が無いんでしょうよ」
「……ありがとう。その情報のお陰で余計心配になったよ」
現在、俺達は街にある闘技場の中の控え室にいる。そしてそれは、トロールでも分かるスライム講座の会場だからだ。
控え室なんかでやったら狭いのではないか?
と、思うかもしれないが安心して欲しい。
部屋内部は意外にもかなり広いのだ。
恐らく、大型の魔物も収容出来るようにこのサイズなのだろう。
それにこの会場には今、俺達を含めて四人しかいない。気を遣ってルーとプチ男を加えても六人だ。
だからまあ、とにかく。
大丈夫なものは大丈夫であるのだ。
控え室にて行われる、この講座が何の問題も無いというのは俺が保証しよう。
この参加人数から分かるように、スライムが大変不人気な存在であるという事も……
「うぅ、こうして若い世代の魔物使いにわれわ……スライムについて教えられる日が来るとは……
よし決めた!後日皆様には特典の方をご自宅に送らせて頂きます!」
一方、心中でスライムを馬鹿にする俺とは真逆に、随分と幸せそうなキングさんは。
心情を全て、顔だけで表現してみせようとでも言わんばかりに表情を目まぐるしく変化させている。
随分と楽しそうなのは結構だが、見ているこっちが疲れてくるのでどうか落ち着いて欲しい。
しかも、今我々って言いそうになったし。
どんだけスライム好きなんだこの人は……
「それでは、ええとクボタさんでしたかね、まず貴方のご住所を……」
え、俺?俺の住所?
何でそんなの言わないといけないの?
ヤバい、色々とツッコミどころが多過ぎて殆ど聞いてなかった。
住所?ダメだ、全く分からない。
というか、あるのかさえ知らない。
「クボタ……?」
するとその時、俺達を除けば唯一の参加者である、ただ一人の女性が驚いた様子でこちらに顔を向けた。
多分、年齢はコルリスと同じくらいの、短髪で浅黒い肌の色をした軽装の女の子。勿論知り合いではない。
「貴方、今度のビギナーズカップの準決勝に出場するクボタ……さん?」
「え?ああ、そうだけど」
多分それは我が事と思い、俺は頷く。
ただし、大会の名前がビギナーズカップであるのかも分からなかったが……
「本当!?すごい偶然!
私、貴方の対戦相手のジェリア。
明日はお互い頑張りましょ!」
「え!?」
驚愕している俺に、彼女はルーにも劣らない程の眩しい笑顔で手を差し出してきた。
前から思っていた事なのだが。
コルリスといい彼女といい、何故この世界の女の子はオッさんであるこの俺にこうまで優しくしてくれるのだろうか……不思議でならない。
「こ、こちらこそ」
「ところで、ここに来たって事はクボタさんもスライム好きなのよね?ね?」
「まあ、嫌いではないけど……」
「やっぱり!本当に夢みたいだわ!
こんなに素晴らしい講義を受けられるだけでも幸せなのに、そこに同志がいただなんて……
あっ、ごめんなさい。私スライム大好きなの。
でも他の魔物使いはもっと強い魔物が良いって言う人ばっかりだったから、嬉しくてつい」
俺に謝罪の言葉を述べてはいるが、ジェリアの顔にはしまい忘れた興奮と喜びの表情が貼りついていた。
本当に、余程嬉しかったのだろう。
それとこの子はどうやら、スライムマニアのようだ。
「これから私達でスライムの良さを世に広めていきましょ!ね、クボタさん!」
そしてそんな彼女は、再びニッコリと笑い。
「そ、そうだね」
対して終始苦笑している俺は、ひとまずそうとだけ返した……
…………先程も言ったが。
ジェリアは余程嬉しいのだろう、さっきから握手した手を離す気配が無い。
それはまあ、悪い気はしないのだが。
とにかく、彼女はもう少し男と言う生き物に対して警戒心を持った方がいいと思う。
俺に対してだってそうだ。
こんなにも明るい笑顔を向けられているだけでなく、ずっと彼女を肌に感じているのだ。
このままではいくら中年になり、多少なりとも冷静な判断が出来るようになった俺と言えども。
そろそろ、高鳴る胸の鼓動を隠し切れなくなってしまうのだが……
「あ、あの~クボタさん、ご住所を……」
そこで一人、申し訳なさげに呟いたのはキングさんだった。
大丈夫ですよキングさん。
貴方が申し訳なさそうにする必要は無いんです。悪いのは講義中に喋り倒している、僕らなんですから。
「あっ!すみません!」
俺がキングさんの方へと向き直ると同時に、ジェリアが漸く俺の手を離した。
良かった。助かった。
これも彼によって差し向けられた、助け舟のお陰だ……
そうして遂に始まったスライム講座であったが。
興奮したキングさんによって約三時間も延長されたためなのか。
最後まで寝ずに話を聞いていたのは、意外にも俺とプチ男だけだった。
……スライムマニアなんだから、最後まで聞けよ。
磨き上げられた革靴と、一目で高価だと分かる紺色のスーツ、そしてシルクハット。そんな服装をした老年の紳士が、目の前でたどたどしく話している。
彼の名前はキングさん。この講座の主催者だ。
「ねえコルリスちゃん、あの人いくらなんでも緊張し過ぎじゃない?まともに講座できるのかな?」
俺はコルリスに囁く。
「まあまあ、この講座に人が来るのは初めてらしいですから、きっと嬉しくて仕方が無いんでしょうよ」
「……ありがとう。その情報のお陰で余計心配になったよ」
現在、俺達は街にある闘技場の中の控え室にいる。そしてそれは、トロールでも分かるスライム講座の会場だからだ。
控え室なんかでやったら狭いのではないか?
と、思うかもしれないが安心して欲しい。
部屋内部は意外にもかなり広いのだ。
恐らく、大型の魔物も収容出来るようにこのサイズなのだろう。
それにこの会場には今、俺達を含めて四人しかいない。気を遣ってルーとプチ男を加えても六人だ。
だからまあ、とにかく。
大丈夫なものは大丈夫であるのだ。
控え室にて行われる、この講座が何の問題も無いというのは俺が保証しよう。
この参加人数から分かるように、スライムが大変不人気な存在であるという事も……
「うぅ、こうして若い世代の魔物使いにわれわ……スライムについて教えられる日が来るとは……
よし決めた!後日皆様には特典の方をご自宅に送らせて頂きます!」
一方、心中でスライムを馬鹿にする俺とは真逆に、随分と幸せそうなキングさんは。
心情を全て、顔だけで表現してみせようとでも言わんばかりに表情を目まぐるしく変化させている。
随分と楽しそうなのは結構だが、見ているこっちが疲れてくるのでどうか落ち着いて欲しい。
しかも、今我々って言いそうになったし。
どんだけスライム好きなんだこの人は……
「それでは、ええとクボタさんでしたかね、まず貴方のご住所を……」
え、俺?俺の住所?
何でそんなの言わないといけないの?
ヤバい、色々とツッコミどころが多過ぎて殆ど聞いてなかった。
住所?ダメだ、全く分からない。
というか、あるのかさえ知らない。
「クボタ……?」
するとその時、俺達を除けば唯一の参加者である、ただ一人の女性が驚いた様子でこちらに顔を向けた。
多分、年齢はコルリスと同じくらいの、短髪で浅黒い肌の色をした軽装の女の子。勿論知り合いではない。
「貴方、今度のビギナーズカップの準決勝に出場するクボタ……さん?」
「え?ああ、そうだけど」
多分それは我が事と思い、俺は頷く。
ただし、大会の名前がビギナーズカップであるのかも分からなかったが……
「本当!?すごい偶然!
私、貴方の対戦相手のジェリア。
明日はお互い頑張りましょ!」
「え!?」
驚愕している俺に、彼女はルーにも劣らない程の眩しい笑顔で手を差し出してきた。
前から思っていた事なのだが。
コルリスといい彼女といい、何故この世界の女の子はオッさんであるこの俺にこうまで優しくしてくれるのだろうか……不思議でならない。
「こ、こちらこそ」
「ところで、ここに来たって事はクボタさんもスライム好きなのよね?ね?」
「まあ、嫌いではないけど……」
「やっぱり!本当に夢みたいだわ!
こんなに素晴らしい講義を受けられるだけでも幸せなのに、そこに同志がいただなんて……
あっ、ごめんなさい。私スライム大好きなの。
でも他の魔物使いはもっと強い魔物が良いって言う人ばっかりだったから、嬉しくてつい」
俺に謝罪の言葉を述べてはいるが、ジェリアの顔にはしまい忘れた興奮と喜びの表情が貼りついていた。
本当に、余程嬉しかったのだろう。
それとこの子はどうやら、スライムマニアのようだ。
「これから私達でスライムの良さを世に広めていきましょ!ね、クボタさん!」
そしてそんな彼女は、再びニッコリと笑い。
「そ、そうだね」
対して終始苦笑している俺は、ひとまずそうとだけ返した……
…………先程も言ったが。
ジェリアは余程嬉しいのだろう、さっきから握手した手を離す気配が無い。
それはまあ、悪い気はしないのだが。
とにかく、彼女はもう少し男と言う生き物に対して警戒心を持った方がいいと思う。
俺に対してだってそうだ。
こんなにも明るい笑顔を向けられているだけでなく、ずっと彼女を肌に感じているのだ。
このままではいくら中年になり、多少なりとも冷静な判断が出来るようになった俺と言えども。
そろそろ、高鳴る胸の鼓動を隠し切れなくなってしまうのだが……
「あ、あの~クボタさん、ご住所を……」
そこで一人、申し訳なさげに呟いたのはキングさんだった。
大丈夫ですよキングさん。
貴方が申し訳なさそうにする必要は無いんです。悪いのは講義中に喋り倒している、僕らなんですから。
「あっ!すみません!」
俺がキングさんの方へと向き直ると同時に、ジェリアが漸く俺の手を離した。
良かった。助かった。
これも彼によって差し向けられた、助け舟のお陰だ……
そうして遂に始まったスライム講座であったが。
興奮したキングさんによって約三時間も延長されたためなのか。
最後まで寝ずに話を聞いていたのは、意外にも俺とプチ男だけだった。
……スライムマニアなんだから、最後まで聞けよ。
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