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二章 〜下級魔物使い〜
五十九話 約束……その少し前
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簡単なあらすじ『クボタさんが魔物に襲われた……!?よりも少し前の出来事です。このお話はね』
コルリス、ジェリア、そして魔物達はこの街の長であるダマレイ族長宅にて、家主と共にクボタとサチエの帰りを待ち続けていた。
三人は皆、暗い面持ちをしている。
恐らく、ダマレイは息子にしてしまった行為による罪悪感で。他二人はなかなか戻らぬ仲間への心配を募らせ、そのような表情をしているのだろう。
それを見ているせいか、魔物達も普段とは何処か違う様子だった。
ミドルスライム、チビちゃん、ケロ太、ケロ太郎は二人に寄り添うようにしてその場を動かないでいる。
そして、いつもは何も気にせず遊び回っているはずのプチ男とルーまでもが、普段とは違う環境で暫くの間主人がいない事に不安を感じているのか、先程からずっと部屋内をうろうろとしていた。
「皆様にもご迷惑をおかけして、申し訳ない……私が、私がクボタさんに、私達家族の問題を押し付けようとしてしまったばかりに……」
ダマレイは俯き加減で二人へとそう言った。
「いえ……気にしないでください」
「コルリスの言う通りよ。謝らないで頂戴。何があったのかは知らないけれど……貴方は、悪戯に他者の心を傷付けるような人じゃない。私にはそう見えるわ」
二人は言った。
その時だけは解顔し、自分達の不安を押し隠すようにして……
「でも、ちょっと心配だね……クボタさん達、どうしたんだろう」
「そうね。だけど、サチエはあんな様子だったし……きっと、説得か何かに時間が掛かっているだけよ」
ダマレイに聞こえぬよう声を潜め、二人は囁きを交わす。
もう、今はクボタが家を飛び出してから一時間以上が経過しているのだ。そのような話をするのも仕方がない事であろう。
「そう、だよね……ん?どうしたのルーちゃん」
「……むぅぅ」
不意にルーがコルリスへと抱き付き、ため息まじりにそう言った。(鳴いた?)
その表情は勿論、沈んでいる。
やはり彼女もクボタの事が気がかりなようだ。
…………と、その時だった。
突如としてケロ太が久方振りにアマガエルのような姿となり、ゲロゲロと鳴き始めたのは。
「ええっ!?ケロ太君、急にどうし…………」
コルリスの言の葉は突然ザキ地方を駆け抜けた雷と、不意に彼女を襲った〝奇妙な感覚〟によってそこで遮られた。
そして、より多く、より強くコルリスに影響を与え、彼女の言葉を奪ったのは前者ではなく、〝後者〟の方であった。
それはまるで、『絶対的に強い存在が目の前に現れた』かのような、絶望的な、圧倒的な、そんな感覚……
その直後、コルリスの首は垂れ、彼女の右手は床に置かれた。
〝それ〟を受けてしまい、気を失いそうになっているのだ。
しかし、それでもケロ太は鳴く事をやめなかった。
そのお陰で彼女はすぐに目を覚ます。
周囲を見回すとダマレイとジェリア、そしてケロ太を除いた魔物達までもが彼女と似たような状態であり、彼等もたった今意識を取り戻したようであった。
彼等は他の者達の顔を見、〝ある事〟を確信する。
自分以外も今目覚めたかのような表情と格好をしており、尚且つその誰もが『驚き』を顔に浮かべている……
つまり、他の者も恐らくは気を失いかけていたのだから、自身がこの胸に覚えた感覚は間違いではないのだと。
「今、のは……何だったんでしょう?皆も……分かりましたよね?」
「……はっきりとね。アレが何なのかは、分からないけれど。貴方もそうよね?ダマレイさん」
「ええ。ですが……あれは……いや、そんな事が……」
コルリスは言葉でも先程身に起きた〝何か〟は真実だったのだと、そして、それは自分だけに起きた出来事ではなかったのだと言う事を確かめる。
「そんな……そんなワケがない……この町に来るワケがないのだ…………しかし、もしそれが本当なら、今外にいるのは……いや!〝いらっしゃる〟のは……!」
すると、そう聞いた後でもまだボソボソと何かを呟いていたダマレイが突然、外へと飛び出して行った。
「ダマレイさん!?」
「様子がおかしいわね……皆!追うわよ!」
コルリスは未だ鳴き続けるケロ太を抱き上げ、ジェリアは残りの魔物達を引き連れ、ダマレイの跡を追った。
そうして家の外へと出た二人は、町の変貌ぶりに息を呑む事となる……
先程までこの町に溢れていた人々の活気に満ちた喧騒……それがこの町から全て、全て失われていたのだから。
今、町は完全なる静寂に沈んでいた……それも、昼間であるにも関わらずだ。
……恐らくではあるが、〝あれ〟を受けたのは族長宅にいた者達だけではなく、ここに生きる者達全てであったのだろう。
二人は目の前の小道に数名の町人達が倒れているのを発見した。やはり推測は正しかったようだ。
それを見て我に返ったジェリアが先に、一人の町人へと駆け寄る。
その町人は遊び疲れた幼児がその場で眠ってしまった時のように、意識を夢中に飛ばし、仰向けで寝息を立てていた。
「良かった……どうやらこの現象は命までは取らないもの、みたいね」
ほっ、と息を吐いた後に、ジェリアがそう言った。
それを聞いたコルリスもまた、安堵の表情を浮かべる。
〝ん……?何処かに、まだ起きている者がいるのか?ダマレイもそうだったし……今回は何か、妙だな……〟
その時、ある声が聞こえた。
男性のものだと思われ、何処か毅然としているかのような……それは、そのような声であった。
コルリス、ジェリア、そして魔物達はこの街の長であるダマレイ族長宅にて、家主と共にクボタとサチエの帰りを待ち続けていた。
三人は皆、暗い面持ちをしている。
恐らく、ダマレイは息子にしてしまった行為による罪悪感で。他二人はなかなか戻らぬ仲間への心配を募らせ、そのような表情をしているのだろう。
それを見ているせいか、魔物達も普段とは何処か違う様子だった。
ミドルスライム、チビちゃん、ケロ太、ケロ太郎は二人に寄り添うようにしてその場を動かないでいる。
そして、いつもは何も気にせず遊び回っているはずのプチ男とルーまでもが、普段とは違う環境で暫くの間主人がいない事に不安を感じているのか、先程からずっと部屋内をうろうろとしていた。
「皆様にもご迷惑をおかけして、申し訳ない……私が、私がクボタさんに、私達家族の問題を押し付けようとしてしまったばかりに……」
ダマレイは俯き加減で二人へとそう言った。
「いえ……気にしないでください」
「コルリスの言う通りよ。謝らないで頂戴。何があったのかは知らないけれど……貴方は、悪戯に他者の心を傷付けるような人じゃない。私にはそう見えるわ」
二人は言った。
その時だけは解顔し、自分達の不安を押し隠すようにして……
「でも、ちょっと心配だね……クボタさん達、どうしたんだろう」
「そうね。だけど、サチエはあんな様子だったし……きっと、説得か何かに時間が掛かっているだけよ」
ダマレイに聞こえぬよう声を潜め、二人は囁きを交わす。
もう、今はクボタが家を飛び出してから一時間以上が経過しているのだ。そのような話をするのも仕方がない事であろう。
「そう、だよね……ん?どうしたのルーちゃん」
「……むぅぅ」
不意にルーがコルリスへと抱き付き、ため息まじりにそう言った。(鳴いた?)
その表情は勿論、沈んでいる。
やはり彼女もクボタの事が気がかりなようだ。
…………と、その時だった。
突如としてケロ太が久方振りにアマガエルのような姿となり、ゲロゲロと鳴き始めたのは。
「ええっ!?ケロ太君、急にどうし…………」
コルリスの言の葉は突然ザキ地方を駆け抜けた雷と、不意に彼女を襲った〝奇妙な感覚〟によってそこで遮られた。
そして、より多く、より強くコルリスに影響を与え、彼女の言葉を奪ったのは前者ではなく、〝後者〟の方であった。
それはまるで、『絶対的に強い存在が目の前に現れた』かのような、絶望的な、圧倒的な、そんな感覚……
その直後、コルリスの首は垂れ、彼女の右手は床に置かれた。
〝それ〟を受けてしまい、気を失いそうになっているのだ。
しかし、それでもケロ太は鳴く事をやめなかった。
そのお陰で彼女はすぐに目を覚ます。
周囲を見回すとダマレイとジェリア、そしてケロ太を除いた魔物達までもが彼女と似たような状態であり、彼等もたった今意識を取り戻したようであった。
彼等は他の者達の顔を見、〝ある事〟を確信する。
自分以外も今目覚めたかのような表情と格好をしており、尚且つその誰もが『驚き』を顔に浮かべている……
つまり、他の者も恐らくは気を失いかけていたのだから、自身がこの胸に覚えた感覚は間違いではないのだと。
「今、のは……何だったんでしょう?皆も……分かりましたよね?」
「……はっきりとね。アレが何なのかは、分からないけれど。貴方もそうよね?ダマレイさん」
「ええ。ですが……あれは……いや、そんな事が……」
コルリスは言葉でも先程身に起きた〝何か〟は真実だったのだと、そして、それは自分だけに起きた出来事ではなかったのだと言う事を確かめる。
「そんな……そんなワケがない……この町に来るワケがないのだ…………しかし、もしそれが本当なら、今外にいるのは……いや!〝いらっしゃる〟のは……!」
すると、そう聞いた後でもまだボソボソと何かを呟いていたダマレイが突然、外へと飛び出して行った。
「ダマレイさん!?」
「様子がおかしいわね……皆!追うわよ!」
コルリスは未だ鳴き続けるケロ太を抱き上げ、ジェリアは残りの魔物達を引き連れ、ダマレイの跡を追った。
そうして家の外へと出た二人は、町の変貌ぶりに息を呑む事となる……
先程までこの町に溢れていた人々の活気に満ちた喧騒……それがこの町から全て、全て失われていたのだから。
今、町は完全なる静寂に沈んでいた……それも、昼間であるにも関わらずだ。
……恐らくではあるが、〝あれ〟を受けたのは族長宅にいた者達だけではなく、ここに生きる者達全てであったのだろう。
二人は目の前の小道に数名の町人達が倒れているのを発見した。やはり推測は正しかったようだ。
それを見て我に返ったジェリアが先に、一人の町人へと駆け寄る。
その町人は遊び疲れた幼児がその場で眠ってしまった時のように、意識を夢中に飛ばし、仰向けで寝息を立てていた。
「良かった……どうやらこの現象は命までは取らないもの、みたいね」
ほっ、と息を吐いた後に、ジェリアがそう言った。
それを聞いたコルリスもまた、安堵の表情を浮かべる。
〝ん……?何処かに、まだ起きている者がいるのか?ダマレイもそうだったし……今回は何か、妙だな……〟
その時、ある声が聞こえた。
男性のものだと思われ、何処か毅然としているかのような……それは、そのような声であった。
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