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二章 〜下級魔物使い〜
百四十三話 新たなスタートは別れと共に……? その3
簡単なあらすじ『アルワヒネとクボタさんは家を飛び出しました』
それから俺はアルワヒネの手を引き、思い付く限りの場所へと彼女を連れて行った。
ただし早朝という事もあり、それは『サンディさんの牧場』や『街』等、ある程度限定された『思い付く限りの場所』ではあったのだが。
しかし、それでも少女はとても喜んでくれていたようだった。
牧場ではすぐに先遣隊ゴブリン達と仲良くなり、街の中では常に目を輝かせていたのだからな……彼女が街に行くのはこれで二回目となるが(多分)、まだまだ見た事の無いものばかりであったのだろう。
次に、俺達はカムラ地方へと足を運んだ。
……そこに何かあるのかと言われれば、そうで無い事は俺にも分かってはいるのだが。
正直に言うと、このままがっつり遠出などしたら流石にコルリスから怒られるだろうし、これ以上彼女を楽しませられるような場所を思い付かなかったからだ……
だが、そこでもアルワヒネは久し振り(多分)の広い草原に余程興奮したのか、俺の手を引き駆け回り、遊び回り、非常に喜んでいる事がよく分かるお顔を俺に見せてくれた。
それによってかなり体力が消耗したが……
でもまあ、彼女が満足そうで一安心だ。
そうして一頻り彼女と遊び続けた後に、残り少なかった体力がとうとう底をついた俺は大地に寝転がった。
アルワヒネも俺の真似をし、すぐ側で群生する草花に顔を埋めている。
その顔はもう、涙に濡れてはいなかった。
「アルワヒネ。
お前が楽しそうで良かったよ。
でも……ごめんな。
アイツらも連れて来れたら良かったんだけど、皆まだ寝てたからさ……」
そう。『皆』に対して何処か疎外感を覚えているのならば。彼等と自分との間には溝があると錯覚しているのならば。
それは『皆』によって解消してもらった方が良い。
と考え、最初は皆も連れて来ようと思っていたのだが……
コルリスの部屋内では、そこにぎっしりと詰め込まれている全員がまだ瞼の裏ばかりを見つめていたので……
当初の目的であった『皆との交流』は断念し、『俺だけで彼女をなるべく楽しませてやる』という方向にそれをシフトしているのが今であるのだ。
だからと言うか何と言うか、この外出の目的が本来予定していたものとはやや離れてしまっているように感じ、俺はアルワヒネに謝罪したのである……
が、そう言った俺に向けて植物少女はニコリと微笑み、首を左右に振った。
意図せずとは言え、その悩みを有耶無耶にしようとしているような気がして、何だか申し訳ないと思っていたが……彼女が気にしていないのだから、とりあえず良しとしようか。
「……あのさ。
もしもお前が、『俺の魔物ではない』って事を気にしてるんなら……改めて言うけど、今からでも俺の仲間になる気はない?
正直俺は、そうしてくれると嬉しい。
それに、そうすればもっと色々な場所にも連れて行ってやれると思うし……
ああいや、それは違うな。
もし断ったとしても、今度からはお前も一緒に連れて行くよ。
勿論、お前がそうしたいのならだけどな。
……どうかな?別に今すぐ答えを出さないといけないワケじゃない。ゆっくりで良いから考えてみてほしいんだ」
次に、俺はそんな事をアルワヒネに言った。
前に一度断られてはいるが、もしも彼女がそうしてくれるならば凄く嬉しい。
最早、家族同然の存在である彼女が……
彼女の反応を俺は待った。
すると、またアルワヒネはぽつりぽつりと喋り始める。
それを要約すると……
『その申し出は嬉しいけど、元の棲家にいる姉妹達の事を忘れられない』というような事を彼女は話しており、結果で言えば返ってきたのはNOという答えであった。
まあ、何となく断られるような気がしていたし、そんな理由があるのならば仕方がないであろう。
「そっか……分かったよ」
俺はアルワヒネの頭を撫でた。
また悲しげな表情となってしまった彼女の顔が晴れるまで、ずっと。
暫く寝転がったままでいると、近くからぐう、という音が聞こえてきた。
それはアルワヒネの腹が鳴る音だった。
ちなみに、彼女はそれを恥ずかしがる素振りすら見せなかった。これだけ可愛らしい様相をしていると言っても、その辺りの感覚はやはり魔物寄りであると言う事か。
そんな腹の音の主は俺の方に向けてころころと転がり近寄って来ると、超至近距離でじっと俺の顔を凝視し始めた。
「腹減ったんだけど?」とでも言いたいのだろうか。
いや、きっとそうなのだろう。
……なら喋れば良いのでは?
今こそある程度だが話せるようになったその口で、望みを俺に伝えるべき絶好のタイミングではないのだろうか?
とは思いつつも、無言の要求を受けて俺は起き上がる。
さて……ではちっこいお嬢様が空腹のようだし帰るとするか。コルリスには怒られるだろうから、心の準備もしておかなくてはならないな。
「よし……じゃあ、帰るか」
俺がそう言うと彼女はまたニコリと笑ってから元気に立ち上がり、まだ体力の回復し切っていない俺を置き去りにして全力での帰宅を始めた。
いやぁもう流石に降参だ。ついて行けないよ。
俺はとぼとぼと歩き始める……
そんな鈍足なる家主を見たアルワヒネは、俺を煽りながら100m程先を歩くという、先導としてはとても給料を出す事が出来ないような仕事ぶりでの移動に、帰宅方法を変更するのであった。
それから俺はアルワヒネの手を引き、思い付く限りの場所へと彼女を連れて行った。
ただし早朝という事もあり、それは『サンディさんの牧場』や『街』等、ある程度限定された『思い付く限りの場所』ではあったのだが。
しかし、それでも少女はとても喜んでくれていたようだった。
牧場ではすぐに先遣隊ゴブリン達と仲良くなり、街の中では常に目を輝かせていたのだからな……彼女が街に行くのはこれで二回目となるが(多分)、まだまだ見た事の無いものばかりであったのだろう。
次に、俺達はカムラ地方へと足を運んだ。
……そこに何かあるのかと言われれば、そうで無い事は俺にも分かってはいるのだが。
正直に言うと、このままがっつり遠出などしたら流石にコルリスから怒られるだろうし、これ以上彼女を楽しませられるような場所を思い付かなかったからだ……
だが、そこでもアルワヒネは久し振り(多分)の広い草原に余程興奮したのか、俺の手を引き駆け回り、遊び回り、非常に喜んでいる事がよく分かるお顔を俺に見せてくれた。
それによってかなり体力が消耗したが……
でもまあ、彼女が満足そうで一安心だ。
そうして一頻り彼女と遊び続けた後に、残り少なかった体力がとうとう底をついた俺は大地に寝転がった。
アルワヒネも俺の真似をし、すぐ側で群生する草花に顔を埋めている。
その顔はもう、涙に濡れてはいなかった。
「アルワヒネ。
お前が楽しそうで良かったよ。
でも……ごめんな。
アイツらも連れて来れたら良かったんだけど、皆まだ寝てたからさ……」
そう。『皆』に対して何処か疎外感を覚えているのならば。彼等と自分との間には溝があると錯覚しているのならば。
それは『皆』によって解消してもらった方が良い。
と考え、最初は皆も連れて来ようと思っていたのだが……
コルリスの部屋内では、そこにぎっしりと詰め込まれている全員がまだ瞼の裏ばかりを見つめていたので……
当初の目的であった『皆との交流』は断念し、『俺だけで彼女をなるべく楽しませてやる』という方向にそれをシフトしているのが今であるのだ。
だからと言うか何と言うか、この外出の目的が本来予定していたものとはやや離れてしまっているように感じ、俺はアルワヒネに謝罪したのである……
が、そう言った俺に向けて植物少女はニコリと微笑み、首を左右に振った。
意図せずとは言え、その悩みを有耶無耶にしようとしているような気がして、何だか申し訳ないと思っていたが……彼女が気にしていないのだから、とりあえず良しとしようか。
「……あのさ。
もしもお前が、『俺の魔物ではない』って事を気にしてるんなら……改めて言うけど、今からでも俺の仲間になる気はない?
正直俺は、そうしてくれると嬉しい。
それに、そうすればもっと色々な場所にも連れて行ってやれると思うし……
ああいや、それは違うな。
もし断ったとしても、今度からはお前も一緒に連れて行くよ。
勿論、お前がそうしたいのならだけどな。
……どうかな?別に今すぐ答えを出さないといけないワケじゃない。ゆっくりで良いから考えてみてほしいんだ」
次に、俺はそんな事をアルワヒネに言った。
前に一度断られてはいるが、もしも彼女がそうしてくれるならば凄く嬉しい。
最早、家族同然の存在である彼女が……
彼女の反応を俺は待った。
すると、またアルワヒネはぽつりぽつりと喋り始める。
それを要約すると……
『その申し出は嬉しいけど、元の棲家にいる姉妹達の事を忘れられない』というような事を彼女は話しており、結果で言えば返ってきたのはNOという答えであった。
まあ、何となく断られるような気がしていたし、そんな理由があるのならば仕方がないであろう。
「そっか……分かったよ」
俺はアルワヒネの頭を撫でた。
また悲しげな表情となってしまった彼女の顔が晴れるまで、ずっと。
暫く寝転がったままでいると、近くからぐう、という音が聞こえてきた。
それはアルワヒネの腹が鳴る音だった。
ちなみに、彼女はそれを恥ずかしがる素振りすら見せなかった。これだけ可愛らしい様相をしていると言っても、その辺りの感覚はやはり魔物寄りであると言う事か。
そんな腹の音の主は俺の方に向けてころころと転がり近寄って来ると、超至近距離でじっと俺の顔を凝視し始めた。
「腹減ったんだけど?」とでも言いたいのだろうか。
いや、きっとそうなのだろう。
……なら喋れば良いのでは?
今こそある程度だが話せるようになったその口で、望みを俺に伝えるべき絶好のタイミングではないのだろうか?
とは思いつつも、無言の要求を受けて俺は起き上がる。
さて……ではちっこいお嬢様が空腹のようだし帰るとするか。コルリスには怒られるだろうから、心の準備もしておかなくてはならないな。
「よし……じゃあ、帰るか」
俺がそう言うと彼女はまたニコリと笑ってから元気に立ち上がり、まだ体力の回復し切っていない俺を置き去りにして全力での帰宅を始めた。
いやぁもう流石に降参だ。ついて行けないよ。
俺はとぼとぼと歩き始める……
そんな鈍足なる家主を見たアルワヒネは、俺を煽りながら100m程先を歩くという、先導としてはとても給料を出す事が出来ないような仕事ぶりでの移動に、帰宅方法を変更するのであった。
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