塔の上で会いましょう

きどうかずき

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番外編

初めての話 -5

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「――ナカ、熱くて、っ気持ちいいです……!」
「んぐっ、ぁあっ!」
 セファの後孔へ雄を宛がい先端を食ませたウィルバルドは、肉筒の中へ中へと誘い込もうとする動きに耐え切れず一気に雄芯を挿入してしまう。
 散々ほぐされたとはいえ隘路を侵攻して存在感を放つ肉棒にセファは堪らず声が漏れた。
 ウィルバルドの堪え切れなかった声がセファの喘ぎと重なるのを、挿入の刺激でいっぱいいっぱいになっているセファは遠いところで認識していた。
「ごめんなさい……! 怖いですよね、でも止まらないです…!」
 ウィルバルドが初めて知る快楽は、頭の中に直接叩き込まれるかのようで気持ちがいいことしかわからずに謝りながらも腰を奥へ奥へと進めてしまう。辛うじてセファの後孔が切れていないことは確認したが後はもう衝動に飲み込まれてセファの中へ種をまき散らすことしか考えられなかった。

 歯を食いしばって行われる猛攻に、セファは狭い胎を中から押されて息が漏れる。よがっているとかではなく純粋に押しだされて出る声は濁っており言葉をうまく紡げない。
「あっ、あっ、んあっ」
 突き上げられる度に無防備に上へ上へずり上がって行くが、セファを苛む雄は許してくれずに肩を掴んで強引に引き戻す。
 技巧も何もなくセファの中を前後するだけの肉杭は、時折中の良いところを掠めるがそれ以上により奥底へ侵略しようと傲慢にセファの中を拓く。
 視界がぐらぐらと揺さぶられセファが制御できる範疇を越えて好き勝手されている。
 見上げた雄は獲物を見るような目でセファを射貫き、必死に衝動を抑えようと顔を歪めていた。セファの身体は侵入者を拒絶しようと強張るのに、セファ自身が侵入者の呻き声に煽られて中を締め付けてしまう。がつがつと後孔を使われている状況にも関わらずセファは、自分に覆い被さってくる男に蹂躙され支配されることに奇妙な充足感を得ていた。

 セファはウィルバルドの首へ回した腕に力を入れて引き寄せ、辛うじて出せるようになった声を流し込む。
「っきもちい、い?」
 肉同士が打ち付けられる卑猥な音の合間にセファは必死で意味のある単語を作る。少し裏返ってしまったがそれはウィルバルドにとって興奮を煽っただけのようで中に挿入ったペニスがびくんと跳ねた。
「夢みたいに、気持ちいいです……っは」
「んっ、良かった……。好きに動いていいから、ね? ひぐっ、あっ」
 会話をするために僅かばかり緩やかになっていた律動はセファが続けた言葉で途端に無遠慮になった。
 がんがんと奥を突かれて常であれば辛いだろう動きも、沢山弄られた末に与えられているため歓迎するように身体が拓いてしまう。
「ああっ、! あっ、だめっ」
「すみませっ、イキそうです!」
「いい、よ……イって、!」
 セファは揺さぶられて解けてしまった腕をもう一度ウィルバルドの背中へ回して爪を立てる。ぶらぶらと揺れたままの足を視界の端で見ながら喘ぎ声混じりの声で言うとウィルバルドがぐっ、と眉を顰めてひと際大きく腰を突き込んでセファの奥で熱を放出した。



「――ゔぁ、気持ちい、頭溶けそーです……」
 熱に浮かされたままの瞳でウィルバルドが言う。片手でセファの腰を掴んでもう片手で自分の口を覆って腰をぐりぐりとセファへ押し付ける。なるべく奥へ子種を送ろうとする動きはセファの良いところを掠めて、先ほどからずっとイかせてもらえなかった前も相まってもどかしさに腰をくねらせてしまう。
「う、動かさないで……」
「セファ様も動いてます。俺をもっと奥に迎えてくれてるみたいだ」
 一回出して余裕が出たのかウィルバルドが口の端に笑みを乗せて言う。泥濘の中に包まれている雄芯はすぐに復活してしまいセファの中をゆるゆると前後する。
「セファ様。さっきは、余裕なかったんですけど、次こそ、頑張るので」
「あっ……。ぅあ、しゃべりながら、動かないで、」
「ダメですか? こんなに……、くっ、気持ちよさそうなのに」
「良すぎるから、だめっ、いきたいのに辛いっ……!」
 セファが苦しそうな顔でウィルバルドの胸に手を突っぱる。中での快感だけでは射精に至れないのに感じすぎて辛いのだとぐずぐずとセファが泣く。最近ウィルバルドが関わった時に泣きやすくなってしまったセファだが、今は生理的な涙と快楽の涙とそれからこんな自分でもウィルバルドならば許してもらえるだろうという甘えた涙が混ざる。

 セファの涙にウィルバルドが戸惑って抽挿が止まってしまうと、ついさっき気持ちがいいから動かないでと懇願した身だというのに途端に快感が恋しくなって身体を揺すってしまう。色んな感情が混ざった涙はセファを素直にさせて、見上げた所にあったウィルバルドの喉元にキスしてみたり胸板を密着させてみたりと大胆な行動に走らせる。
「――セファ様、」
「っあ、うん、うごいてっ。ね、何で動いてくれないの」
「セファ様が動かないでと言ったんですよ」
「んっ、やだ、やぁお願い」
 もう自分が先ほど何を言ったかわからないセファは両腕を頭の横へ降ろし完全に無防備に拓かれた状態でウィルバルドへねだる。シーツの冷たさが気持ちよくて身をよじるセファは艶めかしい動きになっていることを知りもしない。

「次はセファ様がイケるように前も触りますね」
 完全に復活した雄をセファの中へ楔のように埋めたままウィルバルドが言う。前も指先でなぞられれば否応無しにセファの身体は期待をして疼いてしまう。
「ね、お願い、お願い。して、いっぱいして」
 ウィルバルドが与えてくれるものならば何も怖くない。どれだけセファが快楽に溺れてもきっとウィルバルドは紺青色の瞳の奥に熱をこめてセファを見てくれる。
 この小一時間でそれを理解させられてしまったセファは汗みずくの肢体をウィルバルドに絡めてねだった。
「はい、沢山しましょう。気持ちがいいことだけ、沢山」
 頬を伝った汗をセファの胸元へ落としながらウィルバルドが言う。
 律動が始まる前に少しだけ、二人で目を合わせてから額を合わせ、今目の前にいる人と快感を分け合う悦びに浸った。
 お互い汗で滑る身体を擦り合わせ、大事な所を晒している。みっともなく泣いたり眉根をしかめた所を相手に見せて受け入れられ、相手の快楽に歪んだ顔で充足感を得る。与えられていると同時に与えていることが何よりも嬉しかった。
 ふわふわとした頭でそれだけを考えたセファはゆっくりと速くなる律動にすぐに何も考えられなくなった。


「痛くないですか?」
 セファの背中の方へ手を回してしっかりと固定したまま中を突いていたウィルバルドが言う。
 セファはあの後、頭がおかしくなるほどの快楽を叩き込まれて射精に至ったが、まだ足りなかったらしいウィルバルドが控えめにねだって来たので精液を垂らした後孔を拡げて見せてやればすぐさま熱杭が戻ってきた。
 体位を変えるなんてこともせずにひたすらセファに覆い被さり腰を振ってくる雄の、そのがむしゃらさが面白くて愛しくてセファはつい煽ってしまう。
 既にウィルバルドの首へ両腕を回して隙間なく密着しているというのにもっと近づきたくてセファは開かれて空を蹴っていた爪先をウィルバルドの背中へ回す。腕が重いだとか脚がだるいだとかは行為を続けるのに支障にはならない。明日まで引きずったとてきっと元凶であるこの雄が甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるだろう。だってセファはウィルバルドの雌であり恋人なのだから。

「う、んっ。痛くない、よ……君が近くて、いいね」
「はい。もっともっと、ずっとずっと近くに行きたいです」
 熱に浮かされて陶酔した瞳でそう言われてはセファに拒絶なんてできるはずもなくこくこくと頷く。
 セファの頭を掬うように両手で触れたウィルバルドがキスを仕掛けてくる。今日の夕までは深いキスなんて知らなかったくせに生意気にもセファが逆らう気なんて起きなくなるほどに呼吸ごと喰らい尽くすキスだ。
「んっ、んくっ」
「すみません辛かったですか」
 瞼を閉じて雄の蹂躙を悦んで受け入れていたセファの目尻を拭ってウィルバルドが聞いてくる。
「ううん、気持ちい、いいよ」
「俺もです」
 イかせて、と言えば先ほどより僅かばかり上手になった手付きでセファの前を扱かれる。併せて中の気持ちがいいところを抉られては観念する他なく、セファは身体を震わせてイった。


「眠いですか? お疲れでしょうから眠ってください」
 あれからもう数えるための頭も溶かされるほど揺さぶられたセファは、やっと落ち着いたらしいウィルバルドが頭に触れる手付きで覚醒した。時計を見なくともだいぶ時間が経ったことはわかる。
 僅かに身じろぎをするとセファが動くのに合わせてシーツが追ってくる。
「――風呂に入りたい」
「後で俺が連れていきます」
 散々愛されたセファの身体は軽く拭われているようでベタついた感触はないがあれだけ汗まみれになったのだ。重怠い腕を伸ばしてウィルバルドへ触れると紺青色の瞳が僅かな光を反射してこちらを見ていた。
「一緒に入るのか?」
「お嫌ですか」
 かり、とウィルバルドの腕に爪を立てるとウィルバルドが眉尻を下げて言う。
「ふふ、嫌ではないよ。君の負担にならないならお願いしたい」
 気怠い身体に治癒魔術をかけるのは簡単だが、魔術をかけてしまうとウィルバルドに愛された痕跡も全て消えてしまう。それに明日筋肉痛になるだろう箇所も全く異常のなかった状態に戻ってしまうから、またウィルバルドとするときのことを考えるとかけない方がいいだろう。
 ――まあ一応魔術師の中で上位を名乗れるほどではあるから、筋肉がつく程度の負荷を残して回復させることもできるが、
 セファのお願いに尻尾でも生えたかのように明るくなった顔を曇らせるのは本意ではない。
 そこまで考えたセファは自分を持ち上げる腕に抵抗すること無く身を委ねた。
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