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陽芹孝介

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第三章 異変

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  ……二日目…午後十一時……

  夕食を終えた皆は、各自で自由行動をしている。
  有紀が葵に声を掛けてきた。
 「葵、少し外に行かないか?」
  葵は有紀が言いたいことを察した。
 「わかりました……。11時ですからね…」
  九条が二人に声を掛けた。
 「僕も行こうかい?」
  有紀が言った。
 「いや、私と葵の二人でいい……。もし誰かいたとして、あまり人数をかけると、警戒される恐れがある。二人がベストだ…」
  九条が言った。
 「そうか、そうだな……。だが、警戒は怠らないように…」
  有紀が言った。
 「心配するな、九条氏……。葵がついている…」
  葵が言った。
 「九条さんは、団体行動の件を、皆に一応話しておいて下さい…」
  九条は苦笑いした。
 「やれやれ、損な役回りだよ…」
  こうして、葵と有紀は屋敷を出た。
  二人は最初に、倒れていた付近へ向かおうとしたら、誰かが倒れているのを確認できた。
  葵は言った。
 「やはり…」
  有紀が言った。
 「しかし、二人しかいないぞ…」
  葵はよく確認した。有紀の言うように、二人しか倒れていない。
 「予想が……外れましたか…」
  有紀が言った。
 「そうとは言い切れないぞ……もう一人いたが……二人より先に気が付き、何処かへ行ったのかもしれない…」
  葵は髪をクルクルしながら言った。
 「可能性はなくないですね……。とにかく二人の元へ…」
 「ああ……そうだな。急ごう…」
  葵と有紀は駆け足で二人が倒れている場所に行った。
  そこには赤茶色の髪のメガネをかけた男性と、小柄で清楚な女性が倒れていた。
  葵は男性に、有紀は女性に、それぞれ声を掛ける。
  葵は男性の呼吸と脈、心音を確認した。
 「脈拍、呼吸、心音それぞれ異常は無しです……。有紀さん……そちらは?」
 「同じく異常は無い……そのうち目を覚ますだろう…」
  すると、男声が目を覚ました。
 「う~ん……こ、ここは?」
  葵が優しく声をかけた。
 「大丈夫ですか?」
 「あ、あなたは?」
  男性はかなり動揺し、目の前の光景に混乱している……当然の反応だ。
  葵は敵意がないのを強調した。
 「心配しないで下さい……危害を加える事はしません…」
  男性は辺りをキョロキョロしている。
 「どこですか?ここは?あなたは、誰ですか?」
  葵は何とか落ち着かせようとした。
 「話せば長くなりますが、とにかく一度深呼吸を…」
  男性は葵に言われるまま深呼吸をし、息を整える。
  男性は状況を理解しようと、必死になっているのがわかる。
 「少し外に落ち着きましたか?」
  葵がそう言うと男性が言った。
 「はい、何とか……。しかし…」
  葵が男性に言った。
 「無理はせず、とにかく落ち着きましょう……。僕は月島葵……あなたの名前は?わかりますか?」
  男性は目を閉じて、一息ついて答えた。
 「僕は……赤塚貴文せきづかたかふみ……28歳…」
  すると有紀が葵を呼んだ。
 「葵っ!こっちへ…」
  葵は赤塚に言った。
 「少し待っていて下さい…」
   葵は有紀の元へ行った。
 「どうしました?」
  有紀は困り果てた表情で言った。
 「厄介な事が……この娘……記憶が無い…」
  葵は目を見開いて言った。
 「それは……確かですか?」
 「頭部外傷による一時的な記憶喪失ではない…。名前も年齢もわからないそうだ…」
  葵は女性の方を見た。
  女性は憔悴しょうすいして、ただ呆然としている。
  葵は言った。
 「こっちは、異常は無かったですが……厄介な事になりそうですね…」
 「ああ……1人少ないのも気になる…」 
 「ここにいても、仕方ありません……。とにかく屋敷に戻りましょう…」
 「そうだな、皆も心配するからな…」
  葵と有紀は、新たに来た二人と屋敷に戻る事にした。
  屋敷に戻り食堂で二人を紹介すると、皆は驚きを隠せない様子だ。
  記憶喪失の女性……。
  皆にとっては少なからずショッキングな出来事だった。
  歩が葵に言った。
 「葵君、考えられる可能性は……あるの?」
 「どうでしょうか……。さすがに予想外ですから…ただ…」
  九条が言った。
 「ただ…なんだい?」
 「この世界の重要なポイントは『脳』です……。この世界に転送する時にシステムトラブルが起こり……なんらかの作用を脳に与え、記憶喪失を起こした……。それが、一つと…」
  有紀が言った。
 「来る前から、記憶喪失だった…」
 「ですね……。ただ、来る前から記憶喪失だった場合は、有紀さんと最初に話した時に「私は記憶喪失です」と、答えると思うので…」
  九条が言った。
 「違うのかい?」
  有紀が言った。
 「ああ…、彼女は目を見開いて「私は誰?」「何もわからない」と言った…。この答え方は記憶喪失になったばかりの、反応ともとれる…」
  歩が呟いた。
 「だとしたら、前者の可能性か……」
  有紀が言った。
 「とりあえず新人の二人を部屋に案内しないとな……。陸、亜美と愛……すまないが二人を頼む…」
  陸が言った。
 「いいっすよ……。んじゃ赤塚さん、行きましょう…」
  赤塚はやっと落ち着きを取り戻したようで、素直に従った。
 「はい、よろしくお願いします」
  愛が言った。
 「じゃあ私達も……亜美ちゃん行きましょう…」
  亜美は女性に連れ添って言った。
 「さぁ……2階に行きましょう…」
  5人は2階へと向かった。
  すると、祥子も立ち上がった。
 「私は部屋に戻ります……。明日は朝からデッサンをしたいので…」
  祥子が2階に行くのを確認して、有紀が言った。
 「で…九条氏、皆はまとまりそうか?」
  九条は沈んだ表情で言った。
 「難しそうだね……。皆団体行動は嫌なようだ……。今の生活のペースを崩したくないそうだ…」
  五月が言った。
 「皆…協調性が無さすぎ…」
  歩が言った。
 「まぁ……前に殺人事件があったって……言えないよね…」
  葵が言った。
 「確かに……混乱を招き、疑心が広まりますから……。僕たちも、そこまで信頼はされてないでしょうし…」
  歩が頭を抱えた。
 「また後手に回りそう…」
  葵が言った。
 「後……二人だったのも気になります…」
  有紀が言った。
 「部屋も一つ余るな…」
  九条が言った。
 「もう一人来る可能性もあるけど…」
  葵が言った。
 「それともう一つ……もう既に『12人目』がここに来ている可能性です…」
 『12人目』……葵が発した言葉に、場の空気を緊張感が包む。
  歩の表情が険しくなる。
 「12人目……。アマツカ……」
  葵が言った。
 「そうとは言い切れないですが……可能性はあります…」
  九条が言った。
 「早急に脱出しないと……何か糸口は?…」
  葵が言った。
 「そうですね……一貫性がありませんからね…」
  歩が言った。
 「後手後手だな……。少しでも糸口がないと…」
  葵が言った。
 「誰が全く無いと言いました?…」
  その言葉に皆が反応し、葵に視線を集めた。
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