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第五章 喪失と独占
④
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……陸の部屋……
突然の愛からの告白に、歩は戸惑った。
「死ぬ?…どういう事?」
愛は言った。
「私の余命は残り、1年なの…」
歩に言葉は出なかった。
愛は涙を流しながら続けた。
「でも、この世界に来てから……病気が治ったみたいに、体調が良くなったわ…」
そういえば亜美が言っていた。
「陸はこの世界に来てから怪我が治った」と……愛の体調が良くなったのも…それが関係しているのか?
愛は続けた。
「陸の怪我が治ったと聞いて……私は、確信したわ。病気が治ったと」
歩は黙って愛の話を聞いている。
「私は……この世界に来て、幸せを実感したわ……。そして、あなたに出会えた…」
愛が歩の事を好いていた事は、歩自身も知っていたが……まさか現実世界で病気を患っていたとは、思わなかった。
愛は興奮気味に言った。
「だから……私は……帰りたくないっ!帰ったら死ぬのよっ!あなたと生きれない…」
すると今まで黙っていた歩が口を開いた。
「君の気持ちは……わかった…」
歩は愛をじっと見て言った。
「だが、だからと言って……他の皆には関係ない話だ…」
歩の強い視線に愛は少し怯んだ。
歩は続けた。
「君のように、死に怯えて生きてきた人間を、俺は何人も見てきた……でも…」
歩は言葉は強めた。
「皆はそれでも……戦っているんだよ……。明日を生きるために…」
愛は黙って聞いている。
「戦場では、明日は死んでいるかもしれない人達……子供達がいる……。でも、彼らは逃げずに……戦っているんだ。それは人との戦いじゃない……生きるために戦っているんだ…」
愛は歩の話に下を向いた。
歩は続けた。
「俺は……ここで止まる訳にはいかない…」
愛は言葉を振り絞った。
「行くの?…私は…死ぬの?」
歩は首を横に振った。
「君は死なせない……俺が治して見せる」
愛は叫んだ。
「あなたに…何ができるのっ!」
「俺は医者だ……きっと治してみせる。信じてくれ」
愛は再び下を向いた。
歩は言った。
「さぁ、鍵を開けてくれ……。俺は行くよ……たとえ君を殺してでも……」
歩の言葉に愛は呆然とした。その表情は涙でグシャグシャだった。
歩は言った。
「葵君や有紀、五月ちゃんが……それに、現実世界で多くの子供達が待っている。鍵を開けてくれ…」
愛は観念したのか、鍵を開けた。
すると部屋の扉が少し開いて、また閉じた。
愛の様子がおかしい…、愛は目を見開いている。
「愛ちゃん?…」
歩が声をかけた時だった、愛はその場で倒れこんだ。
「愛ちゃんっ!」
歩はすぐさま愛に駆け寄り、抱き抱えた。
愛の背中から大量の血が出ている。
愛は扉の隙間から、誰かに背中を刺されていた。
「くそっ!いったい誰だ!…しっかりしろっ!…」
「何か止血するものは?」
歩は辺りを見渡したが、この部屋には何も残されていなかった。
「愛ちゃんっ!下に行って、すぐに治療を…」
すると愛は歩の手を強く握った。
「ゴホッ…ゴホッ、もう…いい、わ…」
歩は怒鳴った。
「何を言ってっ…」
しかし、愛はそれを遮る。
「もう、いいの……。助けて…くれる…ん、ゴホッ…でしょ?…」
出血が多すぎる、だいぶ深く刺されているようだ。
歩は言った。
「ああ……助けるとも…」
「ふふ、バチが……あた、った…のね……。ゴホッ、ゴホッ…」
「何言ってんだよ…」
「ふふ……また…会いましょ…う…」
愛は力尽きた……。しかし、その死に顔は笑顔だった。
歩は愛の遺体を、そっと寝かし立ち上がった。
「ああ…また会える……。今度は現実世界で…」
歩はドアノブに手をかけて、ドアを開いた。
しかし、歩の目は信じられない光景を写した。屋敷の1階から階段にかけて火が上がっている。
「何だ…これは?…」
犯人が火を放ったのか?1階は火が覆っていて、逃げ場がない。
マリアは?他の皆は無事なのか?歩の頭に様々な思いや疑問が走る。
歩は扉を閉じて部屋に戻った。
「愛ちゃん……俺もダメみたいだよ…」
歩は愛の遺体に話しかけている。
「でも、きっと葵君がなんとかしてくれる……。有紀もいるからね…」
そして、とうとう部屋の扉も火で焼けて、部屋に火が進入してきた。
「あとは任せたよ……葵君……。有紀…葵君を頼むぜ…」
そして、火が部屋を覆った。
……屋敷前……
屋敷に急いで戻った3人だったが、その光景に呆然とした。
「や、焼かれてる…」
五月はそう言うのがやっとだった。
有紀が言った。
「どういう事だ?…犯人が?…」
葵が言った。
「遅かった……くそっ!」
有紀が言った。
「とにかくここは危険だっ!移動するぞっ!」
しかし、五月は恐怖のあまり、その場でへたりこんでいる。
葵が五月を抱えた。
「先輩っ!しっかりっ!」
有紀が言った。
「湖まで……走れっ!」
3人は湖に走って戻った。
湖に戻った3人は息を切らしている。
屋敷が燃え上がっているのは、湖からでも確認できる。
有紀が言った。
「全焼は免れないな…」
五月が言った。
「皆…どうなったんだろ?」
葵が言った。
「今は無事なのを祈るしかないです…」
有紀が言った。
「これからどうする?」
葵が言った。
「少し休憩して、犯人の元へ向かいましょう……。この状態では、まともに対峙できません…」
有紀が言った。
「わかったのか?…犯人が…」
葵は言った。
「ええ…わかりました。しかし、脱出方法までは…」
五月が屋敷の方を見て言った。
「でも、すごい炎……迫力が半端ないわ……。植物館、大丈夫かな?」
葵は五月の言葉に反応した。
「炎……植物館……」
葵は髪をクルクルしだした。
「まただ……なんだ?この引っ掛かりは?」
五月が言った。
「そういえば……あんた……植物館で違和感あるって、言っていたよね。まぁ、確かに色合い的にちょっと物足りなかったけど…」
葵は目を見開いた。
「そうか!あの時の違和感は……あれが無かったんだ。気温であれが……だとしたら教会のあれは…」
有紀が言った。
「どうしたんだ?葵…」
葵は口角を上げた。
「やっとわかりました……。植物館、教会、芸術館を繋ぐある物が…」
葵は立ち上がった。
「行きましょう…」
「この無益なゲームを、終わらしに…」
突然の愛からの告白に、歩は戸惑った。
「死ぬ?…どういう事?」
愛は言った。
「私の余命は残り、1年なの…」
歩に言葉は出なかった。
愛は涙を流しながら続けた。
「でも、この世界に来てから……病気が治ったみたいに、体調が良くなったわ…」
そういえば亜美が言っていた。
「陸はこの世界に来てから怪我が治った」と……愛の体調が良くなったのも…それが関係しているのか?
愛は続けた。
「陸の怪我が治ったと聞いて……私は、確信したわ。病気が治ったと」
歩は黙って愛の話を聞いている。
「私は……この世界に来て、幸せを実感したわ……。そして、あなたに出会えた…」
愛が歩の事を好いていた事は、歩自身も知っていたが……まさか現実世界で病気を患っていたとは、思わなかった。
愛は興奮気味に言った。
「だから……私は……帰りたくないっ!帰ったら死ぬのよっ!あなたと生きれない…」
すると今まで黙っていた歩が口を開いた。
「君の気持ちは……わかった…」
歩は愛をじっと見て言った。
「だが、だからと言って……他の皆には関係ない話だ…」
歩の強い視線に愛は少し怯んだ。
歩は続けた。
「君のように、死に怯えて生きてきた人間を、俺は何人も見てきた……でも…」
歩は言葉は強めた。
「皆はそれでも……戦っているんだよ……。明日を生きるために…」
愛は黙って聞いている。
「戦場では、明日は死んでいるかもしれない人達……子供達がいる……。でも、彼らは逃げずに……戦っているんだ。それは人との戦いじゃない……生きるために戦っているんだ…」
愛は歩の話に下を向いた。
歩は続けた。
「俺は……ここで止まる訳にはいかない…」
愛は言葉を振り絞った。
「行くの?…私は…死ぬの?」
歩は首を横に振った。
「君は死なせない……俺が治して見せる」
愛は叫んだ。
「あなたに…何ができるのっ!」
「俺は医者だ……きっと治してみせる。信じてくれ」
愛は再び下を向いた。
歩は言った。
「さぁ、鍵を開けてくれ……。俺は行くよ……たとえ君を殺してでも……」
歩の言葉に愛は呆然とした。その表情は涙でグシャグシャだった。
歩は言った。
「葵君や有紀、五月ちゃんが……それに、現実世界で多くの子供達が待っている。鍵を開けてくれ…」
愛は観念したのか、鍵を開けた。
すると部屋の扉が少し開いて、また閉じた。
愛の様子がおかしい…、愛は目を見開いている。
「愛ちゃん?…」
歩が声をかけた時だった、愛はその場で倒れこんだ。
「愛ちゃんっ!」
歩はすぐさま愛に駆け寄り、抱き抱えた。
愛の背中から大量の血が出ている。
愛は扉の隙間から、誰かに背中を刺されていた。
「くそっ!いったい誰だ!…しっかりしろっ!…」
「何か止血するものは?」
歩は辺りを見渡したが、この部屋には何も残されていなかった。
「愛ちゃんっ!下に行って、すぐに治療を…」
すると愛は歩の手を強く握った。
「ゴホッ…ゴホッ、もう…いい、わ…」
歩は怒鳴った。
「何を言ってっ…」
しかし、愛はそれを遮る。
「もう、いいの……。助けて…くれる…ん、ゴホッ…でしょ?…」
出血が多すぎる、だいぶ深く刺されているようだ。
歩は言った。
「ああ……助けるとも…」
「ふふ、バチが……あた、った…のね……。ゴホッ、ゴホッ…」
「何言ってんだよ…」
「ふふ……また…会いましょ…う…」
愛は力尽きた……。しかし、その死に顔は笑顔だった。
歩は愛の遺体を、そっと寝かし立ち上がった。
「ああ…また会える……。今度は現実世界で…」
歩はドアノブに手をかけて、ドアを開いた。
しかし、歩の目は信じられない光景を写した。屋敷の1階から階段にかけて火が上がっている。
「何だ…これは?…」
犯人が火を放ったのか?1階は火が覆っていて、逃げ場がない。
マリアは?他の皆は無事なのか?歩の頭に様々な思いや疑問が走る。
歩は扉を閉じて部屋に戻った。
「愛ちゃん……俺もダメみたいだよ…」
歩は愛の遺体に話しかけている。
「でも、きっと葵君がなんとかしてくれる……。有紀もいるからね…」
そして、とうとう部屋の扉も火で焼けて、部屋に火が進入してきた。
「あとは任せたよ……葵君……。有紀…葵君を頼むぜ…」
そして、火が部屋を覆った。
……屋敷前……
屋敷に急いで戻った3人だったが、その光景に呆然とした。
「や、焼かれてる…」
五月はそう言うのがやっとだった。
有紀が言った。
「どういう事だ?…犯人が?…」
葵が言った。
「遅かった……くそっ!」
有紀が言った。
「とにかくここは危険だっ!移動するぞっ!」
しかし、五月は恐怖のあまり、その場でへたりこんでいる。
葵が五月を抱えた。
「先輩っ!しっかりっ!」
有紀が言った。
「湖まで……走れっ!」
3人は湖に走って戻った。
湖に戻った3人は息を切らしている。
屋敷が燃え上がっているのは、湖からでも確認できる。
有紀が言った。
「全焼は免れないな…」
五月が言った。
「皆…どうなったんだろ?」
葵が言った。
「今は無事なのを祈るしかないです…」
有紀が言った。
「これからどうする?」
葵が言った。
「少し休憩して、犯人の元へ向かいましょう……。この状態では、まともに対峙できません…」
有紀が言った。
「わかったのか?…犯人が…」
葵は言った。
「ええ…わかりました。しかし、脱出方法までは…」
五月が屋敷の方を見て言った。
「でも、すごい炎……迫力が半端ないわ……。植物館、大丈夫かな?」
葵は五月の言葉に反応した。
「炎……植物館……」
葵は髪をクルクルしだした。
「まただ……なんだ?この引っ掛かりは?」
五月が言った。
「そういえば……あんた……植物館で違和感あるって、言っていたよね。まぁ、確かに色合い的にちょっと物足りなかったけど…」
葵は目を見開いた。
「そうか!あの時の違和感は……あれが無かったんだ。気温であれが……だとしたら教会のあれは…」
有紀が言った。
「どうしたんだ?葵…」
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