choice

陽芹孝介

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第六章 対峙

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  葵が取り出した物を見て、有紀が言った。
 「それは……絵か?」
  有紀が言うように、葵は1枚の絵を包まれた布から取り出した。
  葵が言った。
 「そうです……絵です。これを使って祥子さんは、九条さんを毒殺したんです…」
  五月は意味がわからないと、いった表情だ。
 「絵?そんなんでどうやって?」
  五月の言う事もわかるくらい、とても殺人を犯すような絵には見えない。
  それほどに、キレイで自然を最大限に表現した、森の絵だった。
  葵が言った。
 「見ればわかりますが……森の一部が削れています…」
  五月は言った。
 「ほんとだ…森が削れてる……勿体ない…。でもそれが何?」
  葵は言った。
 「この削った部分を使って、九条さんを殺害したんですよ」
  有紀も五月も目を見開いた。祥子に至っては下を向いた。
  有紀が言った。
 「説明してくれ……葵……」
  葵は言った。
 「シェーレグリーンです……」
  有紀何かに気付いたように言った。
 「シェーレグリーン……。そうか……」
  葵は言った。
 「そうです絵の感じからしておそらく18世紀位の絵です……。そして、その頃使われていた顔料はシェーレグリーン…」
  有紀が言った。
 「ヒ素化合物……そうか……だから九条氏から胃液の臭いがでていたのか…」
  葵が言った。
 「ヒ素による症状は……嘔吐、下痢などもありますからね」
  五月が言った。
 「ヒ素って、あのヒ素?そんな危ない物を顔料に使っていたわけ?」
  葵が言った。
 「当時はさほど珍しくなかったそうです。当然現在は使われていません…」
  祥子はまだ下を向いている。
  葵は続けた。
 「そうしてヒ素を手に入れ、九条さんの部屋に侵入し、紅茶やコーヒーに使用するポットに、ヒ素を混入させた…」
  五月が言った。
 「でも、九条さんがそれを飲むとは限らないんじゃ?」
  葵は首を横に振った。
 「九条さんは、朝昼晩の集合時間に遅れる事はなく、いつも一番か二番にだいたい来ていました…」
  有紀が言った。
 「そうか……祥子の部屋は九条氏の隣…」
  葵は言った。
 「そうです……つまり祥子さんは九条さんが部屋を出た後に、九条さんの部屋に侵入し……食器や生活用品などをチェックし、ある程度の行動パターンを把握したのです」
  有紀が言った。
 「なるほど……九条氏は几帳面だ。したがって、行動パターンも読みやすい…」
  葵が言った。
 「つまり、この殺害方法ができるのは……絵画に詳しい人間である…」
 「祥子さんっ!あなたにしかできない……犯行なのですっ!」
  葵に真相を暴かれる格好となった祥子は、呆然とした。
  葵は言った。
 「何故ですか?何故こんな事を?ただ絵を描きたいがために人を殺したのですか?」
  祥子は立ち上がった。
 「まだよ……まだ終わりじゃないわ…」
  祥子は薄ら笑いで包丁を取り出した。
  祥子は言った。
 「さぁ出てきなさい…」
  すると祭壇の裏から、ロープで両手の自由を奪われた亜美とマリアが現れた。
  二人とも口は布で結ばれ、声が出せなくしてある。
  祥子は言った。
 「そうよ……私がやったの…」
  異常とも言える光景を目の当たりにし、葵ら3人は反射的に身構えた。
  葵は言った。
 「屋敷に火を放ったのも…」
  祥子は答えた。
 「そうよ……火を着ける前に、愛を刺したわ…」
  愛を刺した事実を聞いた3人は唖然とした。
  五月が言った。
 「どうして?愛さんまで…あんたいったいどういうつもりっ!?」
  五月は怒りを露にした。
  しかし、祥子は気にすることなく言った。
 「取り乱したからよ……。彼女は渡辺歩とこの世界で生きていく事を選んだのに……渡辺歩に説得され心が動いた。だから殺した…それだけよ…」
  淡々と語る祥子に五月はさらに怒りを露にした。
 「あんたはっ!」
  有紀が五月を制した。
 「待て…五月……。祥子、歩はどうした?」
  祥子は答えた。
 「あなたは彼の相棒みたいなものでしょ?ふふ、でも残念……私をすぐに追えばよかったのに……。彼は愛の延命処置を選んで、行動が遅れたわ……。そのおかげで、私の放った火から逃げ遅れた…」
  3人は祥子の話す事実に目を見開き、そして有紀は祥子を睨み付けてた。
  祥子は気にせず言った。
 「彼も、逃げ遅れた赤塚も……今頃消し炭よ。ふふ、あはははははっ!」  
  祥子は気が狂ったように笑い出した。
  葵は言った。
 「そこで火から逃れるように出てきた二人を拘束し、今の状況ですか?…」
  祥子は笑うのを止めて言った。
 「ふんっ……この状況でも冷静なのね。可愛くない…」
  葵は言った。
 「あなたこそ……わかっているのですか?もうこのゲームは詰みですよ…」
  しかし、祥子は引かない。
 「それはどうかしら?」
  葵は言った。
 「冷たい言い方ですが、彼女二人に……人質としての価値はありませんよ。脱出すれば生き返るのですから…」
  確かに葵の言う通りだか、それでも祥子は引かない。
 「刺し違えてでも、月島君……あなたを殺せばこの世界は崩壊しない…」
  葵は言った。
 「解せませんね……どうしてそこまでこだわるのですか?怪我でしょ…」
  祥子はまた笑い出した。
  葵は続けた。
 「医学は日々進化を遂げています……。あなたの手が重症でも、生きてさえいれば……まだ可能性がありますよ…」
  葵の話を聞いても、祥子は笑うのを止めない。
  葵はさらに続けた。
 「もう止めましょう……僕はあなたを殺してでも、この世界から脱出しますよ…」
  葵はかなり物騒な事を言っているが、葵は本気だ。
  人質が殺害されても、誰か一人が脱出すれば…全員が生き返る。
  しかし、祥子は引かない。それどころか、さらに笑いながら言った。
 「ふふふ、あははははは……もう…遅いのよ…」
  葵は顔をしかめた。
 「遅い?」
  祥子は言った。
 「取り返しがつかないのよ……。だから刺し違えても、あなたを殺す…」
  葵が言った。
 「何故そこまでこだわるのですか?」
  祥子は言った。
 「言われたのよ「この世界はあなたの物」だと……だから、あなた達を全員殺して、人を入れ替える…私の思想にあった人間に…」
  葵は呆れた。
 「神にでもなったつもりですか?」
  祥子は言った。
 「それもいいわね…」
  葵は考えていた。
  祥子は何故そこまでして、この世界に執着するのか?
  画家のプライドか?いや、違う……。
  最初は画家のプライドかもとの世界に戻るのを拒否していると、思ったが……どうもそうでは無さそうだ。
  ではこの執着心は?この異常さは、生に対する執着に近い……。だとすれば、脱出に賛成するはず。
  その時葵の脳に一つの可能性が現れた。
 「祥子さん…あなた、まさか…」
  祥子は笑って言った。
 「やっと気付いたみたいね…あなたは一つだけ間違えた…」
 「私は…すでに死んでいるの…」   
  祥子の衝撃告白にその場にいる全員が、言葉を失った。
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