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陽芹孝介

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第三部 プロローグ~世~

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  ……世界……言葉は簡単であるが、定義は様々だ。

  一般的には、人間社会のすべてであり、全人類の社会を指す。
  世界は人間によって創られ、そして廻っている。
  その人間……すなわち人類は約60億人いる。つまり60億種類の人格が存在するのだ。
  それだけの人格によって世界が創られているのだから、共存や争い、様々な摩擦が起こったとしても不思議ではない。

  何故ならそれは……この世の摂理なのだから。



  ……とある会議室……


  だだっ広く薄暗い部屋の、黒い大きな丸テーブルを囲うように、黒革の高級感のある椅子に座る5人の男性達……。
  男性達はそれぞれスーツ姿で色は異なる。男性達の席にはそれぞれ液晶モニターが設置されている。 
  皆歳は同じくらいで50~60歳位だろうか……それなりに貫禄があり、ただらなぬ雰囲気を醸し出していた。
  その内の一人、白髪頭の男性が言った。
 「それでは……『人類会議』を始める……」
  白髪頭の男性の号令に、他の4人の視線が集中した。
  白髪頭の男性は続けた。
 「『Aシステム』のPCウィルスについてだが……各国への交渉カードに使うべきだと私は思う……」
  眼鏡の男性が言った。
 「抑止力にすると?」
  白髪頭の男性は頷いた。
 「核を持たない我が国の……切り札的存在だと私は思っている」
  違う眼鏡の男性が言った。
 「交渉次第で我々にとって多大なメリットになる可能性があるな……」
  白髯の男性が言った。
 「しかし……奴等が黙っているか?」
  白髪頭の男性が言った。
 「奴等も事を起こすには……まだ早いだろ……」
  すると突然、男性達のモニターが作動した。

 「なんだっ?」「誤作動か?」

  男性達は戸惑いを隠せない様子だったが……。
 「誤作動ではありませんよ……」
  薄暗い部屋のすみから声がした。男性達は一斉に声の方を見た。
  白髪頭の男性は目を見開いた。
 「赤塚せきづか……貴様、何故ここにっ?いやっ、何時からここに居た?」
  赤塚と呼ばれる男性は、不敵な笑みを浮かべた。
 「フフフ……貴方がたの考えている事くらい……私にはお見通しですよ」
  眼鏡の男性は焦った様子で言った。
 「待てっ……話を聞くんだっ……」
  赤塚は目を見開き、笑いながら言った。
 「私利私欲に溺れた貴方がたには……ここで消えていただく……」
  男性達5人の背筋は凍りついた。しかしそれと同時に、モニターから白い光が発光し、男性達の動きが止まった。
  男性達次々と、テーブルにうつ伏せて倒れていく。
  赤塚は微笑した。
 「フフフ……ここのシステムは全て掌握しました。危機感がないのですよ……貴方がたは……」
  辛うじて意識を保っている、白髪頭の男性が赤塚に言った。
 「赤塚……き……貴様……。う……裏切るのか……?」
  そう言い残して男性は倒れた。
  赤塚は倒れている男性達に言った。
「裏切る?……フフフ……元々私には、仲間なんていませんよ……」
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