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第十四話 川と山と百合根町
③
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縁の登場によって、不気味に笑っていた原の表情は一変した。
「証拠が……あるだとぉっ!?」
縁はニヤリとした。
「そうだよ……でも残念だっねぇ……。開かないでしょ?そのファイル……」
原は目を見開いた。
「何だとっ!?何故それをっ……はっ!」
原の反応に、縁は更に広角を上げた。
「残念だけど……誕生日とか、携帯や免許書の下四桁とかじゃ、開かないから……」
縁は原のPCを指さした。
「そのUSBメモリー……」
確かに原のPCにはUSBスティックが刺さっている。
桃子は目を丸くした。
「USBメモリー?」
「桃子さん……覚えてる?片山さんが握っていた物……」
「確かプラスチックの小さな……っ!?まさかっ……」
「そう……あれはUSBスティックのキャップだったんだよ」
縁の言葉に今野が反応した。
「そうか……つまりその本体を持っている、原所長が犯人……」
追い詰められた原だったが、何とか抵抗した。
「これは私のメモリーだっ!」
しかし縁は言った。
「そのUSB縦に傷がついてるでしょ?キャップにも傷が付いてたんだよ。キャップを付ければキッチリと傷が合うと思うよ」
「そんなもの……キャップが外れて、たまたま片山が握っていたんだ」
原は必死に抵抗したが、縁が次の言葉で止めを刺した。
「じゃあファイルを開いてみてよ。因みにパスワードはここにあるから」
縁はメモ書きをヒラヒラとさせて、原に見せびらかしている。
縁の行動に、原は驚愕した。
「なっ!?……それはっ!?……そんな……」
原はガックリとし、自分の机に項垂れた。
縁は原の机に行くと、USBを抜き取って、今野にメモと一緒に渡した。
「公安に提出してよ。苦労したんだぜ……畳引っくり返したりしてさぁ……」
受け取った今野は目を丸くした。
「これは……いったい何なんだい?縁君……」
「これには……この研究所の正体が隠されてるのさ」
桃子は目を丸くした。
「正体……だと?片山は……売人じゃないのか?」
縁は呆れた表情で言った。
「売人?片山さんは刑事だぜ」
今度は今野が目を丸くした。
「刑事?被害者の片山さんが?」
縁は言った。
「片山さんはこの研究所を追っていたんだ。百合根町の為に」
桃子が言った。
「百合根町の……為に?」
縁は頷いた。
「ああ、そうさ……この自然研究所は仮の姿……。正体はスクランブル・スピリットの製造工場さ」
縁の出した結論に、所長室にいた者は全て驚愕した。
「スクランブル・スピリットの……製造工場だと?」
そう言った桃子の表情も驚いた感じで、その桃子の表情に縁は驚いた。
「なんだ?桃子さん……知らなかったのか?」
「当たり前だっ!まさか覚醒剤を密造してるなんて……。余りにも予想外だ」
「それでよくここまで、推理できたなぁ……」
呆れ気味の縁に、桃子はムッとした表情で言った。
「お前が薬と殺人を、別で考えろ……と、言ったのだろっ……」
縁と桃子の掛け合いをよそに、憔悴しているのは、矢那崎だった。
「そんな……まさか……覚醒剤の密造?」
矢那崎は思ってもみなかった縁の結論を、受け入れられない様子だ。
縁は矢那崎に言った。
「アンタはまんまと利用されたんだよ」
矢那崎に言い放った縁の言葉に、今野が反応した。
「利用?……どっ、どういう事だい?」
「そこにいる矢那崎は、原所長に被害者の片山さんの個人情報を提供したのさ」
縁の言葉に矢那崎は言葉を失い、目を見開いた。
桃子が言った。
「なんの為にだ?」
「地元の実業家とのパイプを持ちたかったんだろ?大方、「仕事の引き継ぎの為に、片山さんの使用するパワードが必要だ」と、でも言われて、ヒントになりそうな警察の捜査資料でも提出したんだろ」
矢那崎は縁の言葉に反応し、さらに目を見開いた。
「新井場縁……お前……僕の行動を見ていたのか?」
縁は矢那崎に呆れ気味で言った。
「見てるわけねぇだろ。でもアンタの言動を見てれば予想はつくよ」
すると今野が怒りに満ちた表情で矢那崎に言った。
「ほ……本当なのかい?……君はそんな事のために捜査資料を?」
今野の怒りに満ちた表情に、矢那崎は下を向いてしまった。
縁が言った。
「今は矢那崎よりも……原所長っ!そのメモリーをこっちに渡してもらおうか」
睨み付ける縁に対して、原は首を横に振った。
「こっ……これは私の物だっ!今からパワードを解除しようと思っていたんだっ!」
誰の目にも往生際が悪く写っていたが、まるで子供が駄々をこねるように、原は縁の要求を拒否している。
しかし縁はニヤリとして言った。
「アンタには開けれないよ……。パワードはこちらにあるからね。言ったろ?個人情報じゃ開けれないって……それはつまり、パワードは個人情報となんの関係もないって事さ」
縁の言葉に原は昇天したかの表情になった。縁の言う通りなら、原にファイルを開ける術はない。
原の昇天したかの表情は、原自信が敗けを認めた事による表情だった。
縁は愕然とする原に言った。
「全く恐れ入ったよ。自然調査を隠れ蓑に、覚醒剤を製造してるなんてね。アンタの指示で研究者の大崎にスクランブル・スピリットを造らせてたんだ。そして、それを捜査していた片山さんを二人で殺害した」
すると桃子が目を見開いた。
「縁……大崎も共犯なのか?」
「ああ……そうだ。だから後は大崎を確保すれば……」
そう言いかけた縁だったが、桃子の悲壮な表情に反応した。
「どうした?桃子さん?」
「大崎は……瑠璃を連れて……医務室に……」
桃子の言葉に縁は驚愕した。
その縁の表情に、桃子と今野は容易に理解した。殺人犯である大崎と共にいる瑠璃が危ないと……。
縁は憔悴している原や、驚愕している桃子と今野に見向きもせずに、所長室から飛び出して行った。
「縁君っ!ちょっとっ!」
慌てて縁を追おうとする今野を、桃子は引き留めた。
「待てっ!今野刑事っ!闇雲に出てもダメだっ!」
「しかし……」
「この部屋にも殺人犯がいるのだぞっ……君は原を確保しておいてくれ。縁は私が追うっ!」
桃子は今野にそう言うと、原に詰め寄った。
「言えっ!大崎は何処にいるっ!」
桃子に詰め寄られた原は、絶望の余り放心している。
すると矢那崎がブツブツと呟きだした。
「そんな馬鹿な……慈善事業のはずが、覚醒剤だって?ありえない……新井場縁の妄想だ。こんな事は……」
現実を受け入れない矢那崎に、桃子は詰め寄り、矢那崎の胸ぐらを掴んで、壁に押し付けた。
「貴様っ!いい加減にしろっ!私利私欲に目が眩み、犯罪の片棒を担ぐとは……。貴様が現実を見ろっ!」
桃子の迫力ある言葉に、矢那崎はその場で崩れ落ちた。
桃子は侮蔑するかの表情で、矢那崎を見下し、今野に言った。
「今野刑事……後は頼む……」
桃子はそう言うと、所長室から飛び出した。
今野は桃子に言われた通りに、原に手錠を掛けて、へたりこんでいる矢那崎に言った。
「捜査資料の漏洩と、殺人の共謀罪で、君にも話を聞くからね」
頭を抱え込んだ矢那崎は、目を向ける事なく、今野に言った。
「僕の将来を奪おうとすれば……僕をここにつれてきた今野刑事も、責任を問われますよ……」
「それに怯えていたら、刑事なんて出来ないよ。それに君と違って大人の僕には責任を取る義務がある」
矢那崎の自己中心的な考えがそう写ったのか、今野の目には思い通りにいかずに落ち込む子供のように見えた。
所長室を飛び出した桃子は、ただならぬ胸騒ぎを覚えた。
ここに来てからの、見たことのない縁に様子が頭から離れない。
縁らしくない……いや、桃子の知らない縁と、言った方が正しいか、スクランブル・スピリットの存在を知った時の、縁の鬼気迫る表情……。
それは所長室を飛び出した時も見せていた。
桃子は直感で感じた。
……何をするかわからない……。
縁が大崎の居場所を知ってか知らないでか……それは定かではないが、一刻早く縁を探さないといけない。
辺りがすっかり日が落ち、暗がかった研究所の廊下を走り続けた。
「証拠が……あるだとぉっ!?」
縁はニヤリとした。
「そうだよ……でも残念だっねぇ……。開かないでしょ?そのファイル……」
原は目を見開いた。
「何だとっ!?何故それをっ……はっ!」
原の反応に、縁は更に広角を上げた。
「残念だけど……誕生日とか、携帯や免許書の下四桁とかじゃ、開かないから……」
縁は原のPCを指さした。
「そのUSBメモリー……」
確かに原のPCにはUSBスティックが刺さっている。
桃子は目を丸くした。
「USBメモリー?」
「桃子さん……覚えてる?片山さんが握っていた物……」
「確かプラスチックの小さな……っ!?まさかっ……」
「そう……あれはUSBスティックのキャップだったんだよ」
縁の言葉に今野が反応した。
「そうか……つまりその本体を持っている、原所長が犯人……」
追い詰められた原だったが、何とか抵抗した。
「これは私のメモリーだっ!」
しかし縁は言った。
「そのUSB縦に傷がついてるでしょ?キャップにも傷が付いてたんだよ。キャップを付ければキッチリと傷が合うと思うよ」
「そんなもの……キャップが外れて、たまたま片山が握っていたんだ」
原は必死に抵抗したが、縁が次の言葉で止めを刺した。
「じゃあファイルを開いてみてよ。因みにパスワードはここにあるから」
縁はメモ書きをヒラヒラとさせて、原に見せびらかしている。
縁の行動に、原は驚愕した。
「なっ!?……それはっ!?……そんな……」
原はガックリとし、自分の机に項垂れた。
縁は原の机に行くと、USBを抜き取って、今野にメモと一緒に渡した。
「公安に提出してよ。苦労したんだぜ……畳引っくり返したりしてさぁ……」
受け取った今野は目を丸くした。
「これは……いったい何なんだい?縁君……」
「これには……この研究所の正体が隠されてるのさ」
桃子は目を丸くした。
「正体……だと?片山は……売人じゃないのか?」
縁は呆れた表情で言った。
「売人?片山さんは刑事だぜ」
今度は今野が目を丸くした。
「刑事?被害者の片山さんが?」
縁は言った。
「片山さんはこの研究所を追っていたんだ。百合根町の為に」
桃子が言った。
「百合根町の……為に?」
縁は頷いた。
「ああ、そうさ……この自然研究所は仮の姿……。正体はスクランブル・スピリットの製造工場さ」
縁の出した結論に、所長室にいた者は全て驚愕した。
「スクランブル・スピリットの……製造工場だと?」
そう言った桃子の表情も驚いた感じで、その桃子の表情に縁は驚いた。
「なんだ?桃子さん……知らなかったのか?」
「当たり前だっ!まさか覚醒剤を密造してるなんて……。余りにも予想外だ」
「それでよくここまで、推理できたなぁ……」
呆れ気味の縁に、桃子はムッとした表情で言った。
「お前が薬と殺人を、別で考えろ……と、言ったのだろっ……」
縁と桃子の掛け合いをよそに、憔悴しているのは、矢那崎だった。
「そんな……まさか……覚醒剤の密造?」
矢那崎は思ってもみなかった縁の結論を、受け入れられない様子だ。
縁は矢那崎に言った。
「アンタはまんまと利用されたんだよ」
矢那崎に言い放った縁の言葉に、今野が反応した。
「利用?……どっ、どういう事だい?」
「そこにいる矢那崎は、原所長に被害者の片山さんの個人情報を提供したのさ」
縁の言葉に矢那崎は言葉を失い、目を見開いた。
桃子が言った。
「なんの為にだ?」
「地元の実業家とのパイプを持ちたかったんだろ?大方、「仕事の引き継ぎの為に、片山さんの使用するパワードが必要だ」と、でも言われて、ヒントになりそうな警察の捜査資料でも提出したんだろ」
矢那崎は縁の言葉に反応し、さらに目を見開いた。
「新井場縁……お前……僕の行動を見ていたのか?」
縁は矢那崎に呆れ気味で言った。
「見てるわけねぇだろ。でもアンタの言動を見てれば予想はつくよ」
すると今野が怒りに満ちた表情で矢那崎に言った。
「ほ……本当なのかい?……君はそんな事のために捜査資料を?」
今野の怒りに満ちた表情に、矢那崎は下を向いてしまった。
縁が言った。
「今は矢那崎よりも……原所長っ!そのメモリーをこっちに渡してもらおうか」
睨み付ける縁に対して、原は首を横に振った。
「こっ……これは私の物だっ!今からパワードを解除しようと思っていたんだっ!」
誰の目にも往生際が悪く写っていたが、まるで子供が駄々をこねるように、原は縁の要求を拒否している。
しかし縁はニヤリとして言った。
「アンタには開けれないよ……。パワードはこちらにあるからね。言ったろ?個人情報じゃ開けれないって……それはつまり、パワードは個人情報となんの関係もないって事さ」
縁の言葉に原は昇天したかの表情になった。縁の言う通りなら、原にファイルを開ける術はない。
原の昇天したかの表情は、原自信が敗けを認めた事による表情だった。
縁は愕然とする原に言った。
「全く恐れ入ったよ。自然調査を隠れ蓑に、覚醒剤を製造してるなんてね。アンタの指示で研究者の大崎にスクランブル・スピリットを造らせてたんだ。そして、それを捜査していた片山さんを二人で殺害した」
すると桃子が目を見開いた。
「縁……大崎も共犯なのか?」
「ああ……そうだ。だから後は大崎を確保すれば……」
そう言いかけた縁だったが、桃子の悲壮な表情に反応した。
「どうした?桃子さん?」
「大崎は……瑠璃を連れて……医務室に……」
桃子の言葉に縁は驚愕した。
その縁の表情に、桃子と今野は容易に理解した。殺人犯である大崎と共にいる瑠璃が危ないと……。
縁は憔悴している原や、驚愕している桃子と今野に見向きもせずに、所長室から飛び出して行った。
「縁君っ!ちょっとっ!」
慌てて縁を追おうとする今野を、桃子は引き留めた。
「待てっ!今野刑事っ!闇雲に出てもダメだっ!」
「しかし……」
「この部屋にも殺人犯がいるのだぞっ……君は原を確保しておいてくれ。縁は私が追うっ!」
桃子は今野にそう言うと、原に詰め寄った。
「言えっ!大崎は何処にいるっ!」
桃子に詰め寄られた原は、絶望の余り放心している。
すると矢那崎がブツブツと呟きだした。
「そんな馬鹿な……慈善事業のはずが、覚醒剤だって?ありえない……新井場縁の妄想だ。こんな事は……」
現実を受け入れない矢那崎に、桃子は詰め寄り、矢那崎の胸ぐらを掴んで、壁に押し付けた。
「貴様っ!いい加減にしろっ!私利私欲に目が眩み、犯罪の片棒を担ぐとは……。貴様が現実を見ろっ!」
桃子の迫力ある言葉に、矢那崎はその場で崩れ落ちた。
桃子は侮蔑するかの表情で、矢那崎を見下し、今野に言った。
「今野刑事……後は頼む……」
桃子はそう言うと、所長室から飛び出した。
今野は桃子に言われた通りに、原に手錠を掛けて、へたりこんでいる矢那崎に言った。
「捜査資料の漏洩と、殺人の共謀罪で、君にも話を聞くからね」
頭を抱え込んだ矢那崎は、目を向ける事なく、今野に言った。
「僕の将来を奪おうとすれば……僕をここにつれてきた今野刑事も、責任を問われますよ……」
「それに怯えていたら、刑事なんて出来ないよ。それに君と違って大人の僕には責任を取る義務がある」
矢那崎の自己中心的な考えがそう写ったのか、今野の目には思い通りにいかずに落ち込む子供のように見えた。
所長室を飛び出した桃子は、ただならぬ胸騒ぎを覚えた。
ここに来てからの、見たことのない縁に様子が頭から離れない。
縁らしくない……いや、桃子の知らない縁と、言った方が正しいか、スクランブル・スピリットの存在を知った時の、縁の鬼気迫る表情……。
それは所長室を飛び出した時も見せていた。
桃子は直感で感じた。
……何をするかわからない……。
縁が大崎の居場所を知ってか知らないでか……それは定かではないが、一刻早く縁を探さないといけない。
辺りがすっかり日が落ち、暗がかった研究所の廊下を走り続けた。
応援ありがとうございます!
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