OVER-DRIVE

陽芹孝介

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第十八話 異物と異形

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  血を吹き出しながら倒れたロックの眼は閉じており、死んでいるのか、気を失っているか不明だった。
  エリス達は一目散にロックの元へ走り出した。
  黒マントはフードを被り、ロックと交戦していた側近に言った。
 「後は頼みますよ……ジャキ……」
  ジャキと呼ばれる男は膝まづいた。
 「はっ!……仰せのままに……」
  ジャキは生き残っている黒装束達に言った。
 「人喰いの蒼鬼とその仲間を始末しろ……」
  黒装束達は一斉に倒れたロックに襲いかかったが……。
 「やらせるかよっ!」
  ギルはすかさず得意の手刀で、黒装束を次々と貫く。
  ギルはエリスに叫んだ。
 「エリスッ!」
 「わかってるよっ!」
  エリスは倒れたロックを抱き抱えた。ロックは肩から脇腹に掛けて深い斬り傷があり、黒のスーツは血で色濃くなり、中の青いシャツは血で黒く滲んでいた。
  すぐ側にロックが斬った黒装束達が転がっていたが、それどころではないエリスはロックに対して、躊躇う事なく力を発動させようとしたが……。
 「……!?……何でっ!?……力が……」
  ロックの傷にエリスが手を翳したが……傷に治る気配はなく、エリスの手がロックの血で染まるだけだった。
 「何を企んでるのか知らぬが……無駄だっ!」
  ジャキがエリスごとロックを斬ろうと襲ったが……。

  キィーーーンッ!

  アシャがすかさずジャキの小太刀を食い止める。
 「無駄な事を……」
  ジャキの言葉に、アシャが言う。
 「私も彼女の行動は理解できないが……。この者達が諦めないのであれば……私も諦めぬっ!」
 「ドレルの飼い犬が……。何をほざくかっ!」
  こうしてアシャとジャキの戦いが始まった。
  ギルは襲いかかる黒装束達を倒しながら、エリスに言った。
 「エリスッ!どうしたっ?ロックはっ?」
  エリスは力が発動しない事に、混乱した。
 「力が……ロックが……治らないのっ!」
  ギルは目を見開いた。
 「何?……(精神的な事が関係しているのか?)」
  ギルは交戦中のアシャに言った。
 「エリスから離れるぞっ!」
  アシャは得意の軌道の読めない剣を繰り出し、ジャキがそれを何とか受け止めた隙に、ジャキの腹部に蹴りを入れて、ジャキを少しぶっ飛ばした。
 「心得たっ!」
  ギルはエリスに言った。
 「エリスッ!ロックを連れてさっさと逃げろっ!」
  エリスはギルの言葉に頷いて、ロックを抱えて立ち上がろうとしたが……。
 「フフフ……させませんよ……」
  傍観していた黒マントは、そう言いながら左手を、ロックに斬られた黒装束の群れに向けて、左眼を見開いた。
  ギルとアシャはそれぞれ交戦しながら、黒マントと、黒装束の群れを怪訝な表情で見ていたが……。
  なんと、死んだはずの黒装束達が起き上がったのだ。
  すぐ側で黒装束達が生き返った事により、エリスはただ呆然としている。
  黒マントは生き返った黒装束達に言った。
 「女と、死に損ないを始末しなさい……」
  ギルはたまらずエリスに叫ぶ。
 「逃げろぉっ!エリスッ!」
  黒装束達は一斉に、ロックを抱えたエリスに襲いかかった。
  エリスは恐怖のあまり目を閉じた。
 (ダメ……ロック……)

 「エリス…………あ……諦め……んな……」

  その声にエリスは目を見開いた。
  エリスの瞳には、虫の息のロックが、懸命にエリスを見つめている姿が、写っていた。
 「ロック……」
  エリスの諦めかけた眼に力が戻り、エリスは黒装束達を睨み付けた。
  するとその時だった……。

  ドサッ!ドサッドサッドサッ!

  生き返ったはずの黒装束達が、次々とその場で倒れ出し、再び死に絶えたのだ。
  そしてこの状況に、今度は朧サイドが驚いた。
  黒マントは目を見開き、ジャキは唖然としている。
  しかしジャキはすぐに眉間にシワを寄せて、アシャに突っ込んだ。
  アシャはジャキを迎え撃とうと、剣を構えたが、ジャキは無数のクナイをアシャに投げつける。

  キィンッキィンッ!

  アシャはクナイを刀でなぎ払い、そのまま向かってくるジャキを斬りつけたが……。
  ジャキは高くジャンプし、アシャの頭上を飛び越え、そのままエリスに突進した。
 「何が起こったか知らんが……。私がお前達を始末するっ!」
  アシャは表情をしかめた。
 「しまったっ!……逃げろエリス殿っ!」
  ジャキは小太刀を、エリスに振りかざした。
 「もう遅いわぁっ!」

  キィーーーンッ!

  誰もがエリスが斬られると思ったが……。
 「貴様……」
  目を見開き驚くジャキの小太刀を防いだのは……。
 「ロック……」
  傷が塞がり立ち上がったロックだった。
 「ありがとよ……エリス……」
  ジャキは目を見開き驚きを隠せない様子だ。
 「傷がっ!?……まさかこの女……」
  驚くジャキの隙をロックは見逃さなかった。

  ズザシュッ!

  ロックはジャキの小太刀を上に振り払い、そのままジャキの肩から斜めに斬った。
  ジャキは血を吹き出しながら倒れそうになったが……決死の表情で後方にジャンプし、ロックとの距離をとる。
 「ゴハッ!」
  ジャキは口から吐血し、今にも倒れそうだ。
  ロックは刀を構えて、黒マントを見据えた。
 「何が起こったかわからねぇけど……。助かったぜお前ら……」
  ロックの様子に安堵の表情をしたギルは、黒装束を蹴り飛ばした。
 「ケッ!……てっきりくたばったかと思ったぜ……」
  ロックは黒マントから視線をそらすことなく言った。
 「今回はさすがにやばかったぜ……(とは言ったものの……どうする?あのノーモーションの攻撃を……)」
 「潮時ですか……」
  そう言うと黒マントは、またもやいつの間にかジャキの側まで移動していた。
  ギルもアシャもその光景に目を見開いた。
 「この野郎……いつ動いたっ!?」
 「何をしたというのだっ!?」
  驚くギルとアシャを無視して、黒マントは気を失いそうなジャキを、肩で抱えた。
 「いいモノを見せてもらいました……」
  ロックは黒マントを睨み付けた。
 「テメェ……」
 「内容はどうであれ、ジャキを斬るとは……。君もまだまだ喰いがいがある」
  黒マントはエリスに言った。
 「異物は……君でしたね……」
 「えっ?」
  エリスが怪訝な表情をすると、黒マントはまたもやいつの間にか、会場の出入口まで移動していた。
 「また会いましょう……」
 「待てっ……テメェはっ!」
  ロックは激昂したが、それも虚しく、黒マントはジャキを抱えたまま、フッと何処かへ消えてしまった。
  残りの黒装束も既にギルが倒しており、残されたロック達は、呆気にとられた。
 「何なんだあの野郎は……」
  ギルがそう呟くと、ロックが言った。
 「俺にも正体はわからねぇ……。でもまた力を使わせたな……エリス」
  エリスは笑顔で、ロックに答えたが。
 「でも……なんとか……退けた……ね……」
  エリスはその場で倒れてしまった。
 「エリスッ!?」
  ロックはそう叫ぶと、エリスを抱き抱えた。
 「反動か?……すまねぇ、エリス……」
  その後ロックがエリスをおんぶし、一同は会場を脱出した。
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