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神界転生
飼い主帰る
しおりを挟む「あの子ったら、急に仕事辞めたいって…上司のパワハラとか…かしら?」
「〝会社をやめたぁ⁉︎ 家にかえるぅ⁉︎ 〟‥全く、何を考えているの? 朝子さん、簡単に イトちゃんのわがまま許してはいけませんよ」
「あら タマ 帰ってたの? お腹空いてるでしょ…ちょっと待ってね…直ぐに カリカリ 入れてあげるね」
ウミャ~オ
〝私がこの家に来てから 人間の年月にすると二十年が過ぎた。
神である私が天より情劫を受けるため、野良修行に出されて間もない頃 この家の娘が 小学校で食べ残したパンを施してくれたのが家猫になるきっかけだった。〟
私に給餌しているのは、この家の主の妻 朝子。
先ほどから ガミガミと口煩いのは、主の母 ヨネ。
「おばあちゃん、そんなに怒ってると また血圧上がりますよ
パパが帰って来てから 相談します。‥ イトも ただの〝ワガママ〟で 大関東商事辞めたと言うわけでもないでしょうから、あの子の言い分も聴いてみないと‥」
「タマや、美味しいかい? お前 最近 外遊びが過ぎないかい?
いつあの世からお迎えが来てもおかしく無い歳なのよ… 外遊びばかりしていると悪い病気に憑かれるよ!」
「もう お義母さん 縁起でもないこと…。タマは 招き猫です!」
〝私より確実に先にあの世に行くのは 婆さん お前だよ‥〟
ゥミャ~オ ‥
〝イト‥が帰ってくるのか‥ 〟
家の主は 南 孝徳 名前のごとく 親孝行な息子
その息子を産み育てたのが 南 ヨネ 既に夫は先立った。
孝徳の妻 朝子
孝徳と朝子には 2人の子供がいる。
長女のイトと長男の徳也
私を餌付けしたのが、長女のイトだ。
給食のパンを毎日残し、持ち帰ってくると ヨネ婆さんに酷く叱られるのを見越して 私に施してくれていた。
ほどこし? フン… イトの都合で 野良猫の餌にしていたのだが、
まぁ 当時の私には 尊い糧だった。
その後 縁あって 野良修行から ヒトの世界に長居し過ぎた。
そろそろ 暇乞い‥と考えていた矢先 10年前に一人暮らしを始めた飼い主が 帰って来る‥
恩人に挨拶せずに 消える事は 神界では 許されない。
私のように 早くに家猫となれる 徳の高い猫は尚更、何らかの挨拶を残して去らねばならぬ。
〝やれやれ仕方がない。
あの無礼極まりない 娘に 挨拶してから 去ろう。〟
その夜‥ 深夜丑三つ時とこの国では良く言われるが、その時間になると本来の姿を現す事ができた。
〝 今夜は月も明るくていい。最期の集会に出かけてみるか‥〟
我々天界に住む者は 一定期間ヒトの世界で 艱難辛苦の劫を受ける修行を課されている。
元々徳高い猫族は、直ぐに家猫に収まり、食いっぱぐれする事なく病になっても犬猫病院で治療してもらえる。
最近は バカな人間が 金も無いのにペットを欲しがり やがて養えなくなると放置するなど 家猫となっても油断できない世知辛い人間界ではあるが‥
気の利く南家では 私が外に出られるように 勝手口の扉の一部を私用の出入り口に細工してくれている。
そこから屋外に自由出る。丑三つ時の空気に触れた途端 やっと窮屈な猫形から 本来の人形(ひとがた)の姿に変わることが出来た。
ブロック塀を飛び越えたところで
『蒼霊さま 蒼霊さま』
私の本名は 蒼霊(そうれい) という。
遠い昔 私の先祖は碧界に浮かぶ蒼霊墟で 東王父(東華帝君)に飼われていたらしい。
それ以来 代々 私の血筋は蒼霊と呼ばれ、髪の毛も碧界の深い青を黒と混ぜたような黒色で 耳は直立し 顔立ちは、細面でややつり目がちの両眼。瞳の色は碧海の青緑色を代々遺伝している。
『無虞(ムグ)…変わりないか?』
『有難うございます。この通り相変わらず気楽な野良生活です。
蒼霊さまこそ、お変わりございませんか?』
『うむ‥変わりは無いが、ちと長居し過ぎた‥そろそろ帰ろうと思う』
『それは よろしゅうございます。斑翁(まだらおう)さまも 蒼霊さまのご帰還を首を長くしてお待ちでございましょう。お戻りになられたなら晴れて上神…初代蒼霊様以来の猫族の上神(しゃんしぇん)』
『いや、まだ一つ無しえぬ劫が残っているのよ‥』
東の地平線が暗闇から薄紫に変わる頃 猫達は それぞれの棲家に帰って行った。
私は専用の出入り口から台所 居間を抜けて 扉を少し開けているその隙間から 主(あるじ)の寝床に潜り込んだ。
イトが居る時は イトに添い寝していたが アレが出て行ったその日から 1番寝心地の良い主の部屋で寝ている。
主は 私の出入りを気にするでなく 自室でも仕事に追われている様子だった。
イトと寝ている時は 丑三つに元の姿に戻って穢れを知らぬイトの躰を堪能したが、主と寝るようになって 丑三つに外出し、戻れば出来るだけ 足元の離れた場所で身体を丸くして寝ている。
昼間はほとんど 寝て過ごす。
起きていても 朝子の執拗な愛撫か、ヨネの愚痴を聴かされるのが オチだからだ。
『タマーッ タマちゃーんッ ただいまぁ !』
イトが帰って来た。
今年の正月に 冴えない顔色で 私の事も忘れてしまったかのように
三ヶ日が終わる頃 東京へ戻っていった。
ただの一度も 私の首筋の毛を撫でる事はなかった。
どうせ ろくでもない男に騙されているか、仕事が上手くいってないんだろう ぐらいに思っていた。
それがどうだ…このはしゃぎ様に猫撫で声は!
〝厄でも落ちたか?〟
期待はしていなかったが、帰宅と同時に私の人間界での呼び名を呼ぶアレに 一応礼儀を通そう。
ミャ~ゥゥ
イトはスーツケースを無造作に玄関に置くと ノソノソと出て行った私を瞬時に抱き上げ 強く抱きしめて頬擦りをしだした。
ククゥ やっやめろ! オマエの匂いが移るだろ!
イトッ やめないかっ 引っ掻くぞっ それとも 噛んでやろうか⁉︎
「タマッ タマちゃぁぁん! 会いたかったよ~ 大好きだよ 」
〝うわー! やめんかっ バカ娘っ〟
イトときたら 私の鼻先に何度も口づけをしてきた。
〝お前には 節操と言うものがないのか?
口づけなどは 密やかにかに、軽やかにするモノだ。
っく‥ 私は お前の愛玩物では無い!〟
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