山桜記 陰謀渦巻く北信越のご城下 幕府御庭番の目を潜り御家騒動断絶を乗り越えられるか‼️

高野マキ

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大晦日

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12月13日
三笠屋は、朝から総出ですす払いをして、店表に門松を立て、歳神をお迎えする準備が万事整った。


あと半月もすれば正月と言う年の瀬の頃…

三月前、猟師の弥比古が三笠屋に逗留中、何度か猟師仲間が出入りする事があった。

その中でもひときわ鋭い眼光を放ちながら若い猟師達を差配している男がいた。

その男が、湯治の為にしばらく逗留すると言う。


湯治場は正月明けまで満室で長逗留はできないらしい…


お繁は、男の弱みに付け込み宿賃を撥ね上げ、離れの部屋しか空いていないと吹っ掛けた。
男はすんなりとお繁の言い値で三笠屋に宿泊する事になった。

宿場女郎を抱えた旅籠、三笠屋


近くには病に効くと名高い湯治場があり、客も三笠屋で色を漁っては、己の精力を確かめ病の癒え具合の計りにしたりしていた。

 「弥比古の旦那のお仲間かい」


   「たしか…古傷が疼き出したとかで、白鳥の湯へ癒しにきたらしい…」


   「ははぁ…冬場に鉄砲が撃てないって訳かい。それじぁ疼くはずさぁ―今夜から、下の鉄砲は撃ちまくりだよ女郎さん達ゃおお忙しだぁアハハハ」


あいも変わらず、飯盛り女達はまだ男女の睦事すら知らず、売られたか、拐かされて来た女童も働く炊事場できわどい会話を繰り返していた。


駒は魚丸が突然宿を引き払った後、また弥比古が現れる前と同じように女中部屋の隅で寝起きしていた。


駒の知らない弥比古との約定などは 女将のお繁の舌先三寸で、守られるはずも無かった。


離れの客は、宿帳に鬼怒ヶ沢の猟師仁吉と記されていた。


六尺は下らない大男で、その姿はまるで赤い鬼の様だと飯盛り女達も噂し、姿のわりには立ち居振る舞いもお武家様の様だと手代達は出来るだけ近づかないように避けた。


日中はほとんど部屋から出る事も無く、物音一つたてず食事を運んだ女中に聞いても…

 「何やら難しい本を読んでいる姿しか見たことないよ」


 「女も呼ばず、夕餉の後に湯治場に出掛けるだけかい」


男が逗留し始めた数日は男の噂で持ち切りだった女中部屋の女達も、つまらぬ男と知るやあっさりしたもので男の事など話題にも上ら無くなった。


やがてその年も大晦日を迎え、この日ばかりは借金の無い奉公人は宿下がりが許され朝から郷に帰って行く者もいた。


宿下りするのは大概男衆で、女達は皆それぞれに借金を背負って働きに出ている者が大半だった。

三笠屋の女将お繁も毎年大晦日から明けて正月三が日は店を亭主に任せて宿下がりするのが恒例だった。


毎年、この時は口煩く亭主や残った奉公人達に店の事を
あれこれ事細かく指図したあと、籠かきを呼ぶと下前田城下より中山道を美濃に下る途中にある小さな宿場にある実家に帰って行った。


一年の内でこの数日間だけが、お繁の亭主で宇立の上がらないひも亭主と陰口を叩かれて久しい大旦那も、妻の目を気にせず堂々と廓に出入り出来る。番頭も、商いに興味の無い大旦那に代わり店の切り盛りを全て任され大いに張り切る。


大旦那は店表でお繁を見送ると早速着替えて馴染みの遊女がいる廓へいそいそと出掛けってしまった。


番頭は大旦那が正月三が日まで帰って来まいと踏んで、早速奉公人達を集めると、三が日まで何事も無いよう仕事に勢を出すように話し、今夜は女将より特別に年越し蕎麦と金一封の褒美がある事を伝えた。


居残りの奉公人達からは歓声が沸き起こる。


番頭は、毎年この瞬間だけ、店の主になったような気分を味わうのだった。


大晦日、下前田のご城下は深夜まで賑わっていた。

三笠屋でも駒達子供の下働きが部屋に下がった後も泊まり客の部屋からは女郎や飯盛り女達や手代達が騒ぐ声がいつまでも聞こえて来た。


 「お路っ お路っちゃんたらっ」

駒の姉役のお路は何やかやと駒の面倒を良く見てくれる下働きの女童であった。


薄い煎餅布団をすっぽりと被りモゾモゾとうごめくお路を同じく姉役のお幸が呼びかける。

下働きの女中部屋は普段は、老若の飯盛り女でひしめき合って寝ている時間だが、大晦日だけは金一封を懐に除夜の鐘を待つ事無くご城下の神社仏閣へ初詣でに出かけている。


幼い女童は大晦日には天狗の貢ぎ物として神隠しに逢うとのこの地方の言い伝えから家屋から一歩たりとも出歩かせない習わしになっていた。


「お路っちゃんっ、いつまでほじくっているんだよぉ」


お幸はお路の薄い掛け布団を一気に剥ぎ取った。

  「おっ幸ったら…やめとくれぇっ」

駒の目に、背を丸め寝巻きの裾を腰の上までからあげて尻を丸出しにしたお路の異様な姿が現れた。


 「お路ぃ姉さんっ、どうしたんだぁ腹でも痛いのかぁ」

 駒が慌てふためく。


 「しっ 、静かにおしよっ お駒ちゃんっ、お路ちゃんは、気をやり損ねちまったんだよ」

 お幸がニヤニヤと笑う。

 「お幸っちゃんよくもっ邪魔だてしておくれだねぇっ」

お路は尻を出したまま身体を起こすとお幸を敷き詰められた布団に押し倒した。


  あっ…

駒は二人の喧嘩を止めようとしたが様子がおかしい。


お幸がハアハアと妖しげに吐息を漏らしながら寝巻きの裾を開け脚を大きく開いてお路の胴体を挟みつけた。


その間にお路も乱れた裾を直す事なく細くしなやかな腕をお幸のあらわに開いた太股の間に差し入れ忙しなく動かし始めた。


    ハァ…ハァ…

 「お路ちゃん…もっともっと上だよう…そこっそこをもっと擦り込んでえ…ハアハア…」


「お幸ぃったら、脚の力を抜くんだよぉ…中のおサネがでやしないよ」


 「お路ちゃ…んもっと強く擦っておくれぇぇ! 」


駒は何やら腹の下にもやもやとした圧迫感と小便を我慢しているような変な気持ちに襲われ下腹部を抑えた。


   「ハアハア…お路っちゃ…ん…ん堪忍っ堪忍だよぉ…焦らさないでぇ…」


お幸は涙ながらに身もだえ苦しい吐息を漏らしながらお路の行為を急かす。


    「お駒っちゃんっ」

    「はっ、はい」
急にお路から呼ばれ返事をすると、


 「お幸ちゃんの脚を持っとくれっ 離すんじゃないよ」
    …


駒は無我夢中で命令に従う。

駒がお幸の片足を抑えた事でお路はもう片方のお幸の脚を膝から折り曲げ割開いた…
駒の目の前に熟れたアケビがぱっくりと割れたような女童の万個が飛び込んできた。


     ゴクン…

生唾が駒の口中いっぱいに湧いてくる。


「お駒ちゃん、良く見ておきなよ
あんたもいつかは男の人にされるんだから」




   「これがおサネといって自分で気を遣りたい時はこれを捜して…ご覧よ…こうして…」


     ヒャァー ハァ―

お路はお幸の小さな陰核を激しく人差し指で擦りつける。


  「やるぅ…やるよぉっっ おみちぃ― アアアー」


お幸は身体を震わせ素っ頓狂な声をあげだした。


  「おっおこうちゃん気持ちよいかい?…どうなんだい」


   「いいぃ…いいよぉ」



     アハァァ……

お幸の身体がまるでからくり人形のようにガクンガクンと波打ちながら痙攣を繰り返す。



お幸は死んだようにピクリとも動かなくなり…やがてスーと寝息をたて出したではないか…

お路も息を潜めたその時…

ゴーンと除夜の鐘が真冬の寒風に乗って締め切った雨戸を通して聞こえてきた。

    ッ…




雨戸に何やら小石の当たる音がする。


    「豊松かい?」

お路が急いで雨戸を開けた。


 「おや…お待ちかねの男で無くて悪かったねえ―」


お路が驚くのも無理は無かった。人気の無い中庭に立っていたのは旅姿の女だった。


    「お駒ちゃんっ」

今しがたまで生々しい睦事(むつみごと)のイロハを見せつけられて、気が動転している駒は、ぼうっと呆けていた。

   「お駒ちゃんっ、知り合いかいっ? 」

お路は自分の色待ち人で無かったので、気落ちしつつも女を招き入れた。


    「萩姉ちゃん…」



 「お駒ちゃん脅かせてごめんね」

 「萩姉ちゃん…旅支度して、どこか遠くへ行っちまうの…」

駒の不安げな問いかけに…


 「ううん…その逆なのよ―今しがた江戸表より戻ったばかりなの」

 「…」

きょとんとした駒の表情をみて、
  …そうよね…お駒ちゃんが知るわけも無いか…


「ところで、弥比古さんからお駒ちゃんの事は三笠屋お繁さんに重々頼んであるって聴いていたけど―………どうやら 弥比古さんには、よい顔して…舌先三寸だったみたいね」


~お沙汰につづく


神鶴鶴藩江戸詰御側用人水埜彦四郎は、江戸上屋敷の腰元、萩に様々な重要な仕事を任せていた。

元々町道場の娘だった萩は、参勤交替で藩主に供だって江戸に下向した当時神鶴藩小姓組頭の彦四郎に一目惚れしてしまい 父の伝手で何とか神鶴藩江戸屋敷に奉公に上がった。

武芸に秀でた萩は、たちまち藩邸の使用人の噂に登った。
そこに眼をつけた江戸詰家老 猿渡頼母之正から江戸上屋敷内で、お小姓に混じり江戸表下向中の藩主の身の回りの世話を任され、藩主に危険ある時は身をとして警護しろと命じられた。
この役目により、萩は一目惚れした相手 水埜彦四郎配下の腰元として藩主直胤のそば近くで 勤める事になった。







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