白衣の下 第一章 悪魔的破天荒な医者と超真面目な女子大生の愛情物語り。先生無茶振りはやめてください‼️

高野マキ

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入院

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発熱した弟を私は自宅へ連れて帰った。そして、一ヶ月後、再び入院する事になった。
入院までに外来診察室で家族として黒崎先生に会う。


第1診察室
只野先生がほほ笑み、黒崎先生の隣の椅子を勧めてくれ、最初にお世話になった外来主任看護師は、

 「あなたも大変ねぇ変なドクターに当たって…まあ、腕
は確かだから少しだけ辛抱してね」

四十代半ばと思われる主任は誰とは言わず、パソコンのモニターと
睨めっこしていた黒崎先生の背中めがけて毒を吐いた。
黒崎先生はカルテをパラパラとめくりながら、体を向き直って私を直視した。
銀縁眼鏡を額に引っ掛けた精悍で男らしい顔。
思わず見とれてしまうほど大人ハンサムだ。

「うっせえ、ババァだなぁっ」
だけど、その厭味で尊大な態度だけは、私の中で有り得なかった。 ムッカ

 「つうかぁ…、センセイも、充分、ジジイなんですけどっ」
………………

診察室は一瞬のうちに凍りつく。

黒崎先生の眉間に深い縦皴が一本刻まれた。


 「あっ、 先生っ、 さっき綾野君のX線届きましたぁっ」
只野先生は慌てて場を取り繕い、素早くシャウカステンに画像を
貼付け、ライトのスイッチを入れた。
弟の骨組みが目に飛び込む。


黒崎先生は画像めがけて、
「ダレだっ、このレントゲン撮った奴はっ?」

ドン!と机を拳で叩いた。

「ダレが撮ったか、放射線科に確かめろっ!…この画像じゃわからんっ…」

黒崎先生が立ち上がるがはやいか 、バックヤードから2診 3診で診察していたドクター達が中断して様子を見に出てきた。


(ヤバくない?この状況…黒崎先生、沸点低くすぎでしょ)


只野先生は固まったまま下を向き、主任はオロオロしながら、

「落ち着きなさいよっ…ちょっとぉ、」
と、先生の肩に手を添えたその途端、

 「誰にものを言ってるんだっ…こんな画像で判らんだろうがぁあっ!俺が放射線科に行ってくるっ」

黒崎先生はもう手がつけられないほど狂暴化してた。
そんな先生を私は意外にも冷静に観察していた。彼の地雷を最初に
踏んでイライラさせた私がこの場を収めなければいけないとなぜだか思った。


「せんせー、先生に画像なんて必要無いんじゃないですか?」

私は椅子に腰かけたまま、立ち上がっていた先生の、ノリが効いたシャツの裾を引っ張り、上目遣いで話しかけた。

「どういう意味だ」

「だって……先生の頭の中に、弟の全身の画像が入っているんじゃいかなぁって、ふと…思って……………先生さ…初診の時も弟の足をょっとだけ触って、まだだなって言ったでしょ?」

「知らん…そんなこと覚えてないなっ」

顔を背けた先生を、なんとなく、駄々っ子の様で単純な人だと直感した。
その場の雰囲気も解れてきたので、私は話しを続けた。

「今まで弟の病気の事で、あっちこっちの病院に行き、沢山のお医者さんに診察してもらって治療や手術も受けたけれど、検査、検査…………弟も私もウンザリなんです。もう一発でバッチリ決めてほしいのよ!でさ、黒崎先生に診察を、お願いしてから検査したのは、この前と二回だけじゃん。弟は痛い思いもせずに…」


只野先生の唾液を飲み込む音が診察室に響いた…

診察室内は静寂を取り戻した。

「先生って…大人としては、はっきり言って…私の知るかぎり、最低だと思ってます、礼儀もなってないし、でも、お医者さんとして先生を信頼して、弟をお願いしたいです…看護師さんも先生の腕は、確かっておっしゃるし…先生を信じます」

黒崎先生は 横を向いたまま、

「綾野君には…出来るだけ辛くないように、完治を目指すつもりで、試行錯誤中だ。手術の跡も残らない方法を考えてはいる…」

この時、少なくとも先生が弟の身体の事や暮らしの先の事まで真剣に考えてくれている事が何となくわかった。

「先生に全て…お任せします、よろしくお願します」


私は深くお辞儀した。 
(これが礼儀と言うもんだよ、バカオヤジ)



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