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優秀なDNA
しおりを挟む先生は人でごった返す外来のエレベーターホールを通り抜け、私を引きずるように強引に引っ張り一般立入禁止区域に入ってから、やっと私の手首を握る力を弱めた。
「つっ…痛いぃ…何なんですが!こんなっ“狼藉”許されると思っているんですかっ! だいたい……ウッ… あゞ~」
(うそぉ…ぉ…な、なんでよぉ……⁇ 最悪)
人気ない一般立入禁止区域で、力任せに壁に押し付けられた。
有無も言わせぬ乱暴でしかも繊細な口づけ…
(なんでぇ~……黒崎先生とキスしてんのょぉ…私ぃ)
頭がクラクラして 一気に貧血状態に 陥ってしまった。
黒崎先生のキスは今まで経験したものとは全く別次元の…官能的で厭らしいキスだった。
(月とスッポン ああ…ヤバい…下半身が…ゾクゾク…ー貧血も…あ…だめ……か…も)
私は失神した。
元々、貧血気味でもあった私は、黒崎先生の濃厚なキスの毒気にあてられて気を失ってしまった。
気がついた所は…
(寒う!…人の気配がない…ここ何処?)
体にかけられたブランケットを顔近くまで引き上げて ガタガタ震えながら辺りを見回した。
「起きましたかぁ! 大丈夫ですか?一度ねぇ…血液内科紹介しますから、弟さんの入院中に受診して下さいよっお姉さんっ」
只野先生が巨体を揺らしながら私の傍らに腰かけた。
濃紺のスクラブの首筋から汗が滲みている。
私はどうやら院内の何処かの診察室の寝台に寝かされているらしかった。
フリースのブランケットから顔だけだして、只野医師に聴いてみた。
「手術だったんですか?」
「今日は、手術日じゃ無いんですが…救急外来の応援ですって…僕はまだ 研修なんで現場の見学程度ですが… 黒崎先生、今まで 手術してました! 医学部の学生が見学に来た中で…凄い手術でしたよ」
只野先生は私が聞いてもいない事をペラペラと話してくれた。
「弟さんには外来で処置受けてるって伝えてますから… もう少し休んで下さいよ…後で内科から薬出ますから」
「あの…」
「あっ…薬は…黒崎先生が処方箋出してくれてますから心配いりません」
(べつに…貧血はいつもの事で…心配はしていないけど…)
只野先生は、一人で喋り、完結して診察室を出ていった。
私は人っ子一人居ない診察室の天井を見つめた。 この場所で大勢が 人生に絶望したり 命に感謝したんだろう…な、ふと思いを馳せて…感傷にしたっていると…大股で歩く足音の響きが近づいて来る…嫌な予感がした。 いきなり黒崎先生の顔が被さる。
「ぎゃっ!」
私はとっさに口を両手で塞ぎガードしていた。
「馬鹿かぁ お前?いつも俺がキスするって期待しているなら、勘違いするなよ、“ブス!”」
(はぁ――ッ!)
「ちょっとぉっ!このエロオヤジっ!いったい何様のつもりぃ―っ?
勝手に人を襲っておいてっ! この――ぉ痴漢っ犯罪者っ」
私は拳を振り回した勢いでベッドから転落しそうになり、目の前が真っ暗になった。
いつもの血が引くような感じでその場にうずくまりガタガタと震えた。
(ああ、朝からまともに食べてなかった、血が引いちゃう)
「ったくぅ…手のかかる女だな…」
黒崎先生は私をブランケットで包むと抱きしめ、顔面蒼白な私に精気を吹き込むように口づけた。
「う…ふぅ…ん」
すぐに唇を離すと 耳元で
「貧血が酷い、明日外来で診て貰え… よ……俺はお前の弟のオペで付きあってやれないからな…」
そう囁きなが厚ぼったい唇を押し付けてきた。
「やっ…」
私は言葉で拒否しながらそのゾクッとする気もち良さにうっとりして‘時間よ止まれ’と願ってしまった。キスを求めたい強い欲望と、心の中の貞操観念が葛藤し何とか黒崎先生の唇を求めたい衝動にストップをかけた。
このままだと一方的な先生の愛撫に私は酔いしれ翻弄される。
誰も居ない外来の処置室の…寝台。オープンドアの処置室では誰かが来ると二人の行為は丸見えだ…
くるしい息遣いで
「こっ、ここは…イヤ…だ」
私は彼の今の今まで、人の体を切り刻んできた手を掴み 動きを止めた。
「どうして欲し? 言ってみろよ…」
彼は私の耳を甘噛みしながら囁いた。
(これはただの性欲だよ……愛のかけらも無いよ…ミチルっ!)
私の心が拒絶する。
先生の体から発散される強い体臭も、普段なら顔をしかめてもいいはずの完全なオヤジの加齢臭が…ムンッと立ち込めても、臭いどころか、私の眠っていたエッチな欲望を煽ってくる。
(これって確かに 加齢臭だよ…)
性を求めるもう独りの私は、先生の白衣の下の汗滲みのあるスクラブの胸元の香りを思いっきり…嗅いでいた。
…そして逞しい胸板に頬擦りしながらうっとりしている。
私のアソコは、もうどうしようもない‘惨事’となっているはずだった。
先生は知ってか、わざと私の頭を大きな手の平で支えて胸に押し付ける。
ベッドに腰かけて抱きしめられた状態のままブランケットから頭だけ出した私はまるで蓑虫だった。
ブランケットの合わせ目から先生の腕が侵入してくる。
凄い速やさで私の左太股をお尻の方から持ち上げると 先生の身体に巻き付かせた。
お尻は強い力で引き寄せられ、先生の横腹あたりへ、ぴったりと密着する…。
「ヤダツ!」
やっとの事で正気を取り戻した私は、頭を振り、目一杯の力で先生の手の平から逃れ顎を上げて睨む。
「はなして下さ…い… 」
先生は上から悩ましげな眼差しで私をじっと見つめる。
私の瞳の奥の本心を見透かされた…。
(抱かれたい―)
ブランケットの中で働く事なく放置状態の私の手を掴むと先生は自らの股間へ導いた。
「うわっ…デカ!」 私は思わず 声に出してしまった。
先生が声を出して笑い出したので、私に握らせた先生の一物は一挙に萎えだした…
(あぁ…シラけちゃったよ)
手の内の肉は柔らかく萎え始める。
何だか申し訳なく…
「ゴメン なさい」
と、私が謝っていた。
先生は私の耳に唇を押し当て囁く…
「俺は いいさ…」
ブランケットの中で私のお尻を支えていた手を移動し 背後へ私をゆっくり押し倒してきた。 頭を打たないよう配慮をしながら巻き付けていた左の足首を掴むと股間を押し開かれた。
「ん ギァッ…」
ブランケットはめくれ上がり先生の視線は、私の持ち上げ開かれた脚の中心に集中している。
「エッチィ!」
とっさに出た色気のない言葉にも先生は、
「ったく…いつまでもガキやってんじゃねぇよ!お前の ヴァギナさ…びしょ濡れだぜ… このまま止めて一人で やってみるか?
今なら気持ちよくさせてやってもいいんだぜ」
いつの間にか先生の顔は私の鼻先数センチに迫っていた。
私は顔を背ける。再び耳を甘噛みされ
「逝かせて欲しいか」
頷くのが精一杯だった。
「ここではイヤ… 恥ずかしい…」
何だか…涙が出てきた。
先生は素早く私をお姫様抱っこすると、いちばん奥の6診のスライドドアを足で開け、私を診察台の上に寝かせ ドアを中からロックした。第1診察室から第6診察室までバックヤードは仕切りもなく、職員自由に行き来できたが、診察時間以外は各診察室のドアは施錠されていて、今は密室状態だった。
食欲 性欲 睡眠欲自然の摂理には逆らえない。
しかも、これからセックスする相手は 、性格こそ歪んでいるが稀にみるDNAの持ち主だった。
ここで 万が一受精が成立したとしても…宿した子どもは育てかた次第では、かなり優秀な社会貢献できる人材となるはずと、私は咄嗟にこの緊急事態を、そんな屁理屈で無理矢理自分に納得させていた。
おそらく急に脱力した私の躯をまさぐっていた黒崎先生も私の変化を感じ取ったにちがいない。
「お前!今、何考えてんだ…?」
黒崎先生の早業は 私の汚れたショーツをとうに脱がし今まさに、行為に及ぼうとしていた。
「えっ…あぁ」
目前の男は年はくってるが男前だなぁ…と見惚れてしまう。
周囲から隔離された安心感から気持ちに余裕も生まれてきた。
「先生とこれからセックスしたとして…もしかして赤ちゃんなんか出来たら…優秀な遺伝子を頂戴した素晴らしい子供になるかなぁ~って、考えてました…」
正直に答えた。
先生は、ほんの一瞬ぽかんと口を薄く開けたまま、私のお腹の上で固まってしまっていた。
そして すぐさま…
「あ~あ…止めぇッ 止めぇ~ッ」
私から身体を離し 膝下まで下げていたスクラブパンツを上げた。
診察室の椅子に腰掛けて踏ん反り返って足を組んだ。
(えっ、えっ、えっ…なっ、なっ、何?このシラケた空気…中止なのぉ…)
「おいっ」
黒崎先生は白衣のポケットに手をつっこみ、取り出した赤い錠剤を私に二個くれた。そしてすぐさま立ち上がると、バックヤードの冷蔵庫から精製水と印字されたペットボトルを出して
「これで 飲んどけ」
言われるがまま私は赤い錠剤を精製水で飲み込んだ。
私が薬を服用したことを確認すると
「じやあ… な」
と、バックヤ―ドから1診の方へ行ってしまった…
1診のドアがスライドする僅かな音も無人の広い外来診察室全体に響いた。
(行っちゃうんだぁ…ハァ…)
何だか気が抜けて がっかりしている私がそこにいた。
今まで沢山ではないが、それなりに男性とも付き合い、セックスも並みに楽しむ事ができていた。
今も体の関係は無くても学部が学部だけに男子学生数が圧倒的に多い。付き合いたいと思う男子もいるにはいる。
(だめ、だめ、奴のようなレンジャラス な男は 危ない!)
妻子持ちと推測され、不倫とか妄想すると、私にはもっとも似合わない設定だった。そんな事を頭で考えている間に…私の心は黒崎先生
にどんどん侵食されていく。
先生の頭脳が遺伝した赤ちゃんなら、一人で産み育てられるかも‥
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