白衣の下 第一章 悪魔的破天荒な医者と超真面目な女子大生の愛情物語り。先生無茶振りはやめてください‼️

高野マキ

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先生の帰国

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大学の授業も少しづつ再開されキャンパス内も普段の活気が戻ってきた。テロから日本時間で4日が経っていた。

午前中最後の講義を受講中に携帯電話の着信バイブが振動した。
私の携帯電話は普段ほとんど着信が無い。机の下で周囲に神経を使いながら、そっと確認する。

     【病院外来】
私は講義中の静寂を壊してしまった。周りも、状況も目に入らず慌てて退出した。重要講義途中の教室は騒然としたに違いない。 
教室の外に飛び出しすぐさまかけ直す。

 「はい T大学附属病院外科外来受付です」

 「あのっ、綾野タダシの家族です電話戴いたのですが…」
 
 「すみません、診察券のID番号教えて頂けますか」

 「はっハイ」

私は慌ててカードホルダーから弟の診察券を取り出し番号を伝えた。
 
  「少々お待ち下さい 担当にお繋ぎいたします」
外来主任看護師に代わる。

  「あっ、 モシモシ お姉さん?」
 
   「しゅっ、主任さん」

  「先生さぁ たった今、病院に着いたのよ―っ たくぅ、 でさぁ、先に綾野君の事ねぇ、言ったら‘今から来い’ってぇ… 命令よっ 、たくぅ、ごめんねぇ…今から来れるかな?」

  「弟は 学校なので …ハイっ、学校に連絡して行けそうならすぐ連絡します」
私は弟の学校に連絡し‘緊急事態’と嘘をつき…強引に 弟を迎えに行った。病院へ向かうタクシーの中から後、数分で着くと外来に連絡した。
  「姉ちゃん、今日は休んでもいいよな」

弟は呑気に学校がサボれる事を喜んでいる。先生に会えると思うだけで胸の高鳴りが止まらない。巨大病院の複雑な経路を最短ルートで外科外来フロアに急ぐ。外来の液晶掲示板は、まだ

       【1診 休診】 の表示。

診察券を出すと受付の事務員が受診表をプリントアウトし中待合へ持って入って行った。相変わらず混雑している。 外来は患者で溢れかえり座る椅子もない。


外来外待合の   *本日の診療予定*  の液晶モニターから電子音と同時に【1診 黒崎】の文字が点灯した。

   (キタ―ッ)私は心の中で叫ぶ。
座る席の無い私達は、壁にもたれ中待合からのオンコールを
待っていた。 すると…無精髭をはやした不機嫌そうな背の高い男が
白衣のボタンも留めず 、肩にリュックをひっかけて 私達の真正面に現れた。ゆっくりと近づいて来る。
久しぶりのシルエットがスローモーションとなって映る。

胸が張り裂けそう。

  (センセイ)
近づく先生を見つめる瞳が熱を帯びながら潤んでくる。
先生は、正面まで来ると

「綾野君 診察しようかっ」
タダシの頭にポンと手を乗せ、最後に…私の顔を慇懃に一瞥して 中待合に消えた。その数秒間は、時間が止まった。


( 逢いたかったよセンセ―…好きすぎて死にそう…)

主任看護師が 近寄ってくると、小声で
「綾野君っ、1診に入って」

  (内緒なんだ  今日の診察…)

私と弟が診察室に入ると先生は、机のパソコンから私達の方へ向き直り、タダシに体調を問いかけた。
 
     (せんせい、何処でどうしていたの…心配したんだよ)
目の前の先生を熱く見つめてしまう。
無精髭が伸びた顔、シャツも何時ものようにクリーニングが効いてない。シャツの襟も心なしかヨレてうす汚れ…どこにでもいそうなくたびれた中年オヤジ…先生の匂いが何時もより濃い。
この匂いが私を安堵させてくれる。

弟の退院前の数値がモニターに映し出される。
先生は、キーボードを打ちながら 、

 「検査して欲しいんだが…今日は時間あるか?」

先生の瞳に見つめられゾクッと下腹部が疼く…

 「おいっ、時間あるのかっ  、無いのか?」

(私に聞いてるぅっ⁈)

 「あ―っ はいっ ありますぅっ」


 「ボケっとしてんじゃねぇよ‼︎ オーダーに割り込むからな…今からすぐに総合検査部へ行ってくれっ」

 「えっ、はぁ、はい」

 「ぼくよ、今日は姉ちゃん、ボケてっからな、頼んだぞっ全部済むまでに、 2、3時間かかるけど…辛抱な」

先生は中学生の弟を、まるで幼児扱いで頭に手の平を乗せるのが癖になっている。

 「わかってるよ、姉ちゃんのボケには慣れてっから大丈夫、任せてよ」 弟は何時からか手なずけられている。

先生は立ち上がると、
「後でな…」   
     (…?…)

先生は私達より先に診察室を出て行った。

    (あれ?)

‘後でな’と 、言った?



外来の液晶掲示板は再び

【1診 休診】

の表示に切り替わった。弟は複数の検査をはしごした。
最後は麻酔が必要で検査後、1時間程度は休んで欲しいと臨床検査技師から説明された。弟がその検査室へ入り表示板に使用中の赤いランプが灯る。廊下の左右に検査室が配置されている四階フロア。
今は昼休み時間で検査技師や職員は交替で休憩を取りこの時間は患者も疎らで閑散としていた。廊下に置かれた長椅子には、私だけが座って、弟の検査が終るのを待っていた。

廊下の端の非常階段の防火扉が開いて私が見つめる先に黒崎先生が現れた。


  (せっ、先生!)


「シーッ!ちょっと来いっ」
黒崎先生は、強い力で私の腕を掴むと 強引に防火扉の中に引き入れた。逢いたい思いが募り過ぎて、私は自分から先生に抱きついていた。先生の体臭は私の本能を素直に剥き出しにする。

   「先生っ、心配し…たよぉっ、逢いたか…った、逢い…た…かったぁ……」
感情が一気に高ぶり涙が溢れ出す。言葉は押し寄せる嗚咽に掻き消された。先生の大きな懐の中で強く抱きしめられる。
涙は止まらなず、全身がふわふわと空中をさまよい、おかしくなりそうだった。
先生に家族がいても…この気持ちは、抑えられなかった。

      (どうしよう…)
先生が欲しかった。
私は先生の胸に顔を埋めむせび泣いた。

 「言いたい事はそれだけか、 ん?」 

先生は私の顔を両手で挟み上を向かせ私の泣き顔を見つめる。
それから、ゆっくり、私の唇を奪いにくる。先生の舌の動きも素直に受け入れ鼻腔いっぱいに先生の匂いを吸い込んだ。
下半身が熱く溶け始める…


先生の熱い口づけ…私は、全身全霊で受け止めた。
強い吸引に負けないように、先生の舌に舌を絡ませる。

 「う、うん、 ぅ…」

先生はずっしりと覆い被さり私を壁に押し付ける。

 「あっ、はぁ、いやっ
ぁん…」

先生の圧力を受け止めながらも、なんとか理性を取り戻して、唇を離した。

 「人が…きちゃう」


 「今すぐにお前を犯したいっ」

先生は猛りの元を私の下半身に押し付けてくる。

 「逢いたかった、 せんせいっ、逢いたくて…」
言葉がでない 涙が溢れる。
優しい眼差しで涙を流す私をみつめる先生は、

 「来いっ!」
私の手を強引に引っ張り、非常口の防火扉を開けた。


検査室の集中する廊下は、昼休みを交替で取るためか、検査中の技師以外職員の姿は身当たらない。先生は、あとについて来いと言うと、歩幅を広げて非常口と反対の、午後からの検査を待つ大勢の患者のいる待合の前を選んで通る。私は涙顔を人に見られないように俯き、先生の後ろから隠れるようにくっ付いていく。
待合を右手に曲がると、職員専用区域に入った。昼休みで、三々五々職員達は休憩を取っている。人気も疎らだった。

けれど、先生は病院内でもひと際目立つ存在で、すれ違う何人かには、無事の帰国や学会の件など、 挨拶をされたり立ち止まって会話する場面もあり、私はその度に身がすくみドキドキした。
中には、私を不審そうに伺う人もいる。

先生は機転を効かせ、雄弁に“姪っ子”だと説明する。
外遊の土産を取りに来させたと…
その後はほとんど歩みを弱めることなく実験棟と呼ばれる病院とは別の建物へ空中渡り廊下を通って入った。

実験棟の中は、研究者達が、講義や診察中かもしくは、昼食時間か
全く人気がなく、かすかな機械音だけが響いている。照明も節電の為か一部が消され薄暗い。先生は右側の部屋の前で立ち止まるとIDカードを差し込みドアを開けた。すぐに私の腕を掴むと
「入れ」と命令し、私を押し込んだ。

その後ドアは、オートロックで閉まった。
さらに奥の扉を開けると、中に簡易ベッドがあり、仮眠室と思われた。






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