白衣の下(Ⅰ)悪魔的破天荒な天才外科医黒崎ヒカルと惨めな過去を引きずる女子大生の激甘ラブストーリー。先生ったらいきなり襲ってくるんだもん 涙

高野マキ

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先生の独断と強引なデート


部屋に入るなり 私を抱きしめる。耳を甘噛みし 

「俺のいない間 何していたっ ?、ん? 言ってみろ」

先生は私の耳から首筋に舌を這わし 手慣れた手つきで ブラウスのボタンをはずしにかかる。

「もう 逢わないって  決めて …た…」

先生の家族の事を思いだし 、さっきまでの疼きが引いていく。
先生はブラウスを脱がす手を止め、私の顔を 自分に向かせて 鋭く凝視する。

「リノから聞いたよ」

先生はうっすらと微笑む。

「リノ…?」私の知らない名前。

「お節介な 内科の女だ」

(…笠原先生?)

先生は膝の上で私を横抱きして ベッドに座り 私の髪の毛に指を絡める。かるく唇を押し付けながら

「逢わないって決めた割には、この体たらくか?」


「あ …ぅう…」

指の動きを続けながら、私のはだけた肩に鼻さきを押し付けすうっと空気を吸い込むと、

「お前の匂いは何故かホッとする…」

先生の指の動きに合わせもうどうでも良くなってきた。インモラルな先生との世界に引きずり込まれていく…


ブラウスは最後のボタンを外されることなく私の体からずり落ち裸体を先生に預けた。私はライオンに捕まり餌食となる。先生はシャツを脱ぐと、たくましい胸で私を抱く。

      「あぁ」
この瞬間をずっと待ちわびていた。頬を密着し腕を絡ませ、お互いの息遣いを確認する。
          生きている。

「待たせたな…」

「…せんせい… ダメ…」一瞬、先生の家族、私の家族が脳裏を過ぎる。
   (このまま溺れてしまっていいの…ミチル‼︎)

「ふん、目の前にぶら下がっているパラダイスに連れて行ってやるよ」



「イヤダァ 見ないで…」

私は顔を左右に振り手をばたつかせた。

「抵抗されると もっと虐めたくな るもんなんだぜ」

‥‥‥


先生は私を愛おしむように抱きながら腕時計の時間を確認した。

「お楽しみは今夜にお預けだ っ 、そろそろ弟が出てくるぞ」

「えっ  今夜…?」

(もしかして…デートに誘ってる?)

その場で起き上がると、先生は服を着出す。

「おい ぐずぐずするなっ 外来で待ってるから 後から弟連れて来い」
私は急かされるまま服を着て 先生の後から実験棟を出た。弟は、検査室から出てきていた。

「姉ちゃん 、何処うろついてたんだよ ったくぅ‼︎」

「ごめん っ、ごめん、トイレ」

外科外来―外待合の掲示板に再び

      【1診 黒崎】と表示が点灯する。

お昼をすぎ 診察を待つ患者も少なくなる。


「あら、黒崎先生の診察あるじゃないのぉ」
若い上品そうなお母さんが、小学生くらいの男の子の手を引いて掲示板を見上げている。

受付の事務員に 担当医師が黒崎だと伝えている。
休みと聞いていたのでしかたなく別医師の受診を納得したが、黒崎先生が居るなら変えて欲しいと交渉しだした。
事務員は少し困惑気味に応対し 、中待合で聞いてくると返事をしている。


中待合から主任看護師が出てきた。

 「綾野君、入って、入って!」

私達は、上品なお母さんの交渉の成り行きを見届けられないまま1診へ入った。先生ときたら、さっきまでの暴れようが嘘のように平然と医者の仮面を被り弟を触診する。 

 「今わかる検査で、まあ順調かな…来週、来れるか?」

先生は私を無視して弟に尋ねる。

「来れるっ来れる」  弟はまた学校をサボる気でいる。

先生は弟のげんきんな態度に微笑む。

 「そうか… じゃ、予約入れとく」

 「あの…出来るだけ 朝一番が有り難いのですが…」

他人行儀にお願いした。先生はモニターを見て、予約が入っている事を告げる。

 「だよねぇ…有名人だもんね」   恨めしげに先生を見つめる。

 「なんだ、朝イチがいいのか?」

弟の顔を見る先生に、弟は大袈裟に首を左右に振り否定した。
私は弟の頭を平手打ちした。

 「バカっ、あんたの 魂胆なんて、見え見えなんだからっ!」

 「チェッ けち!」

先生は姉弟げんかに苦笑いしながら
 「訳を言えよ」と私に聞く。

 「聞かなくったってわかるでしょっ! 診察時間が遅いと学校サボれるからよ…ったくぅ先生も鈍いんだからっ!」

 「…」

苛々して 先生にタメ口で八つ当たりしてしまった。
同席していた看護師は私の大胆な態度に先生がキレないか不安げに先生の表情を伺っている。

先生は椅子に踏ん反り返り足を組む。

 「なんだよぉ、勉強嫌いなのかぁ…」

面白がるように弟に話しかける。“ふん”とふて腐れ横を向く 弟。

 「じゃ、先生っ 来週以外で朝イチ予約空いている日ないですか…」

私は意地でも弟の企みを、阻止したかった。モニターの予約状況を見て「半年後まで一杯だなぁ…」
ニヤつく先生と 弟…

唇を噛み締め私は仕方ないと天井を見上げため息をついた。

 「そんなに成績悪いのか?」  意地悪く聞く先生。

 「悪いってもんじゃ 人様にお見せできない綾野家の恥」
私はまた弟の頭を叩く。弟タダシは俯き加減に私を睨んでいる。

 「アンタが悪いのよ」

 「アハハッ、姉ちゃん 頭叩きすぎだろう?なあ…」

面白がる先生…は、型破りな提案をしてきた。

  「予約取らずに来いよっ」

   「はぁっ⁈」

  「え~そんなこと出来るの~」
タダシが素っ頓狂な声を上げる。



 「特別だぞっ 外来に来たら声かけろよ、じゃすぐに診てやるよ」

先生は立ち上がると読影板の(シャウカステン)スイッチを切った。


そこへ外来看護主任が入ってきた。

 「先生、もう一人診察お願いします。○○君のお母さんが先生でないと困るって…」
主任が困り果てていた。

 「今日は休みだ !誰か手すきに診させろよっ」

先生が立ち上がると、小柄な外来主任を見下ろす。

 「先生っ、診てあげてよ」  粘る主任が懇願する。

 「面倒くせぇ―っ 休診! 休診だぁ」

先生はパソコンの電源を落とした。


 「でもぉっあのお母さんが しつこくってぇ…」

先生は完全に無視を決め込む。主任はとうとう俯いてしまった。

 「た…っくぅ!   おいっ 橘ぁっ」
いきなり呼んだと思ったら、

 「はいっ 先生」 

2診で診察中の橘先生が、バックヤードを覗く。

 「橘ぁ お前っ手が空いたら、○○君診てやれっ!  受付で親がバックレてるってさ…後は頼んだからなっ」
橘先生は呆然とし頷くしかない。「はい…」

    (センセっ、傍若無人すぎっ)

私は呆れながら先生を見上げた。先生は私を無視して白衣のポケットから丸めた紙を私に握らすとそのまま無言で診察室を出て行ってしまった。

  外来の掲示板は再び

    【1診 休診】

と、表示が点る。



病院からの帰り、弟とファミリーレストランで遅い昼食を摂った。
タダシは ‘腹が減った’とハンバーグのセットにデザートまで注文し、ライスの大盛りに旺盛な食欲を発揮する。
私はラザニアを注文し、彼が食べ物に夢中になっている隙にテーブルの下で先生から貰った紙くずを拡げた。

   “本学正門 6時”

(大学で待合せ…?)
先生には、確かめておきたい事があった。
タダシの手術代と奥さんの事…いつも先生のペースに巻き込まれて 
うやむやになる先生の個人情報。
私は先生を愛し始めているかもしれない…不安が拡がる。
あの先生はきっと逃げ出す。私の気持ちは重いと思われるのが落ちだ。
       (どうしよう…)

「姉ちゃんっ、ぐちゃぐちゃ掻き回すなよ、汚ねぇ」

  「っ…!」    弟に言われて我にかえった。 

ラザニアは原形を留めていなかった。



 (情けない、弟に行儀の事は言えないよ…)



学校に戻る事を渋った弟と、結局二人で家に帰った。
私は、叔母に今から大学に戻りそのあと友人に会うと嘘をついた。
帰りが遅くなるようなら友人宅に泊めてもらうと…
 
シャワーを浴び 入念に身体を洗う。
身体には昼間の淫らな行為の証拠が残っている。湯気で躯に残った身体の匂いが浴室に立ちこめ、途中で止められた行為の続きをシャワーの激しい水流で思い出す。


     (あぁ…先生が欲しい)
まだ先生自身を迎え入れた事のない体に迎え入れる瞬間を妄想するだけで下腹部の奥がキュッと締まり、先生に貫かれたいと願いながら、私は一人で果ててしまった。



服をあれこれ迷ううち バスに乗り遅れてしまった。焦っ…
時間がない。私はとりあえず ジーンズとチュニックをひっかけ 
自転車で大学へ…


(あ―なんてドジ!せっかくのデートなのに…)

大学まで自転車で20分 必死でペダルを踏む。

(あの角を曲がってっと…結局 普段着じやん)

自分に腹を立てながら自転車で角を曲がると、

     ‘ 青い外車’
(あの外車?  待たせちゃったかっ…)
車の近くに行く。 自転車を押して そっと中を覗く。

「自転車 置いて早く乗れっ」

先生は恐い顔で私を睨む。

「あっ はいっ」
私はキャンパス内の駐輪場まで疾走し 自転車に施錠すると正門まで走った…酸欠状態で  頭がボーっとなりふらつく。
先生は車から降りてふらつき汗だくの私を抱きかかえ助手席に導くと、

「…ったく、最低な女だな、待たせるなよっ」

呆れ顔で 冷えたミネラルウォーターを突き出してきた。


(あぁ有り難い!)
差し出された水をグヒグビ飲む。

 「ふっハァ  美味っ」

その一部始終を見ていた学生達の視線など私が気づくわけもない。
座席は低く 腰が沈み込む。シートベルトをすると、低い金属的なエンジンの音と、ともに先生はアクセルを踏み込む。背中が背もたれに吸い込まれるほどの 加速。でもスピードを上げるわけでもなく優しい運転をしてくれた。



車は静かに山手通りから246に入る。

 「先生、何処に行くの?」

 「そうだな、まずはメシ」

いつの間にか私の手は先生の手の平の中に収まる。余りにも自然で違和感なく私は、先生の指の間に自分の指を絡ませながら聞く。

 「先生に確かめたいことがあります」

 「…」

先生は黙ったまま表情も変えず車の運転を続ける。

一呼吸おき、質問を続けた。
 「弟の手術費が 信じられない安さなのは何故?まさか、私と寝たからですか⁉︎ 奥さんに知られないための口止め料とか…」

黙って聞いていた先生は、クックッと笑いだした。
車は第三京浜に入っていた。
 
 「フン幼稚園並の推理だな」

先生はハンドルを右側に切り車は滑るように一般道路へと合流した。
二人の手は変わらず指を絡めその指先の温もりだけが今の二人の真実。

     (怒っていない…)

 「俺が妻帯者だと誰から聞いた?」


  「…」

私は只野先生から聞いたとは言えなかった。
 
 「さて、もう着くぞ」

     (鎌倉?)

辺りは竹林に覆われ、細い道の脇はライトアップされていた。幽玄の世界に迷い込んでしまったような 妖しい光景。


竹林の道の突き当たりの暗闇に、御料理旅館の看板と明かりが浮び上がっている。車は静かに料理屋の 前に止まる。中から 老齢の男が近づいて来る。

「着いたぞ」
先生は私の手を離すと 車から降りて、素早く助手席側に回りドアをあけてくれた。私の手を引いて降りるのを助ける。その一連の流れるような動作が自然で 別人じゃないかと錯覚してしまう。

車の鍵を出迎えの男に預けるといつものリュックを肩掛けにし私の手を引いて竹やぶの小道を奥へと進んで行く。先生の隙のないマナーでエスコートされる。

  (ったく調子狂っちゃうよ… なっ、何 ! この人格変化)

玄関先で女将さんはじめ数人の仲居さんが三つ指でお出迎えしてくれた。

    (うっわぁ  ドラマじゃん!)

 「黒崎様 お荷物を、」
女将が 先生のリュックを持とうと手を差し出すが

 「いや 自分で持つから…それよりいつもの部屋は大丈夫?」

 「はい 、お取り申しあげてございます」

余程の馴染みと見えて普段、鬼みたいに険しい表情の先生が今夜は優しく見える。女将さんの先生に贈る笑顔も眩しすぎるほど綺麗だった。





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